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文献名1霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻
文献名2後付よみ(新仮名遣い)
文献名3附記 湯ケ島温泉よみ(新仮名遣い)ゆがしまおんせん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-02-22 19:06:21
あらすじ暑い夏の季節に、四週間にわたって天城山麓の景勝地である湯ケ島温泉で松村真澄・出口宇知麿の二人と霊界物語を口述したのは、実に爽快であった。宿の主人や四五人の信徒とともに吊り橋を渡り、山田峠の畷に登っていった。下田街道に出て、日光の届かぬ山路をさらに登っていく。新道から旧道に外れる松が二三本生えたところを登っていくと、一面の原野に細い道が通っており、それを登ると清滝近道の石碑が立っている。草原を四五町右に取って行くと、ダラダラくだりとなり、次第に谷川へ降りていく。そこは狩野川上流の滝である。休息の後、元来た道を旧道へ戻り、山へ登っていく。次第に山の頂上から雨雲が出てきて、ぽつりぽつりと雨が落ちてきた。右滑沢道という木標の方へ行くと、水車小屋のある谷川を俯瞰できた。二三町行くと、大川端というところに着く。ここからは天城山中のもっとも険しいところである。檜の暗く茂った谷間に踏み入れると、樹木は苔厚くむしている。左右を絶壁に挟まれた谷底に出た。丸木橋を渡って絶壁を登り切ると、天城山随道の北に近い。北口の茶屋で一服してから湯ケ島に戻ろうとしていたとき、右も左も一面の霧で、四五間先の木立でさえもぼんやりとして茫漠たる霧の海を夢路のように迷うのであった。一行は一日の光陰を有意義に費やして、夕方に湯本館の大本臨時教主殿に戻ってきた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年08月15日(旧06月23日) 口述場所 筆録者 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年9月15日 愛善世界社版280頁 八幡書店版第5輯 673頁 修補版 校定版297頁 普及版118頁 初版 ページ備考
OBC rm309901
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本文  三伏の暑き夏の朝、河辺に立ちて水流を打見やれば心涼し。霧は未だ谷川の両岸に立ち並ぶ種々の木立を霞ませて、朧なる向山の姿は、松や杉や楓雑木の青葉と入り交はり、得も言はれぬ幻の様な色彩を浮べて谷から谷へと動いて行く。湯本館の湯煙りは谷川の上を静かに静かに渡つて行く。
 猫児川と狩野川との出会つた景勝の地点に、一廓を作つて居る天城山麓の温泉場湯ケ島で、四週間を松村真澄氏、出口宇知丸と倶に霊界物語を口述筆記しながら過したのは実に壮快であつた。見上ぐる猫児峠の頂きは今朝日が射し初めた時で、大空には紺碧の絵衣を拡げて五色の光彩を照し、天城連峰の大きなうねりの太陽を背にしてコバルト色に長く続いて居るのが楼上から見えて、川の瀬に激する水音と峠を吹く風の音が耳につく。宿の主人や四五の信徒に伴はれて朝早くより危い釣橋を渡ると直に山田の畔を昇る。柿栗の葉は青々と繁り、未熟の果が秋待ち顔に蒼い顔を曝して吾等一行を目送して居る。少し登つて下田街道に出た。朝の風は何となく気分良く涼しい風は谷底から吹き来たり、日光の届かぬ山路を辿る身は、夏の日を忘るる位である。杉の木立の多い山に添うて登つて行く。谷川を隔てて雑木の青葉が色々と濃厚の彩を見せるばかりで、風に吹かるる薄の刃が、さらさらと音を立てて波の打つやうに靡いて居る。一面に蒼黒い草の色がうねうねと続いて、右と左に高い山が山の上から上からと頂きを現はして来ると、真蒼に晴れた空にふわりふわりと白い煙のやうな雲が浮んで来る。新道から旧道へ外れる松の二三本ある処を上ると一面の原野で、萩や薄や竜胆の葉が元気よく風にひるがへつて小ダンスを始めて居る。中に一筋の細い小道が通つて、それを四五町許り登ると清滝近道の石碑が建つて居る。稍平坦な草原続きの露を分けて又もや四五町右に取つて行くと、ダラダラ下りになつた坂道に青々としたくぬぎの林があつて、其下は深い谷川で物凄まじく木魂を返す水の音が山々に広がつて居る。松の老樹が危げに谷に倒れかかつて居るのを飛び越えて進んで行くと、僅かに脚を入れる位の羊腸の小径に団子石がゴロリゴロリと転がつて居て、歩む度に谷川へ落ちて行く。木の根に縋り蔓を伝ひ下へ下へと二町計りも降ると、直に狩野川の上流の滝で、一尺以上もあるヤマメの集まつて居る滝である。安藤、杉山、福井氏等が二三日前に料理して差し上げたのは此滝で捕獲したヤマメだと愉快気に話しつつ行く。
 此処は狩野川の上流の滝で、二十丈に余る飛瀑は薄曇りになつた大空の反射を受けて鼠色に崩れ落ちる勢で木の葉や枝が夏の谷風にあほられてひるがへるのが、如何にも見事である。茲でしばらく休息して再び元来し道へ帰つて、それから又旧道を登る。山道の左右に雑草が茂つて風になびきつつ一行を招いて居るやうな心地がする。次第々々に、山の頂上から雨雲が出て来た。湯ケ嶋新田の小村はモウぽつりぽつりと雨が落ちて居る。
 委細構はずどしどしと山路を登る。松や樅が一面に生茂つた山を隔てて谷底の水音を耳にしながら木小屋を一つ通り越すと、道は真直に果ても無く続いて雑木の先は雨に濡れて冴え冴えしい色をして居るのに、平素から蒼白い顔の宇知丸さまは一層蒼い顔になつて居る。林静子浪子の紅裙隊も今日は何となく元気が薄いやうな感じがした。小禽の囀る声に送られて、右滑沢道と書いた木標を右へ下を見下しながら行くと、粉の様な雨の中に水車をかけて木を挽き割る小屋が小さく霞んで、筧や水車や谷川の流れが面白い俯瞰図を描いて居る。
 二三町行くと出水の山道に出る所を通ると大川端と云ふ所に着く。これから先は天城山中の最も嶮しき所となる。檜の暗く茂つた谷間に一歩踏み入れると、何れの樹木も皆苔厚く蒸して木々の雫は雨よりも多く、生々しい草木の匂ひが湿つぽく鼻を突いて来る。右も左も見上ぐる許りの絶壁に包まれ、曇つた空の雨雲が蔭のやうに頭上を走つて居る。道もロクに無い中を分けて行くと谷底に出た。此処には大きな岩と岩とに掛渡した丸木橋があつて、それを危く渡ると又もや這ひ上がるやうにして絶壁を登らねばならぬ。明治四十二年の山崩れに押し倒されたと云ふ大木が、未だに岩と岩との間に挟まつて居るのを伝つて、僅かに岩の上に這ひ上ると、さつと吹き来る山風が峰の木々を吹き廻すので自然の舞踏が演ぜられる。
 此山路を登り切ると天城山隧道の北に近いので、早幾重にも下になつた連山が雨雲の動いて行く間から頂上だけを出して空の灰色と雲の灰色と山の黒ずんだ色とで色は冴えて居ても、雨に霞んだ夢の様な木々の色が絵に描くには極めて面白さうに感じられた。北口の茶屋で一寸休息の後湯ケ嶋に出立しようとした時、右も左も一面の霧で四五間さきの立木でさへもぼんやりとして谷は勿論空と山との境さへ見えず、只茫々漠々たる霧の海を夢路の様に迷ふのであつた。一行は一日の光陰を有意義に費やして、夕方の空に湯本館側の大本臨時教主殿へと帰つて来た。
   大正十一年八月十五日
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