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文献名1霊界物語 第34巻 洋万里 酉の巻
文献名2第3篇 峠の達引よみ(新仮名遣い)とうげのたてひき
文献名3第23章 動静〔964〕よみ(新仮名遣い)どうせい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-09-21 10:01:56
あらすじ三公は六公を自分の居間に呼んで、虎公暗殺の首尾を確認する。六公は虎公の勢いに負けて逃げ出してきた手前、話をはぐらかして結果をごまかそうとしている。三公はあきれはて、六公の報告を与三公と勘公に任せ、自分は徳公のところへ出立の催促に行った。徳公は、この闇の中に深い森の中へお愛を掘り出しに行くことがにわかに恐くなり、三公、与三公、勘公に役目をおろしてもらうように頼み始めた。そこへ子分たちがやってきて、虎公とお愛の幽霊が、大勢を引き連れて押し寄せてきたと注進した。与三公と勘公はアッといって腰を抜かし、その場に倒れてしまった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年09月14日(旧07月23日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年12月10日 愛善世界社版286頁 八幡書店版第6輯 466頁 修補版 校定版299頁 普及版126頁 初版 ページ備考
OBC rm3423
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本文  六公の一部隊が帰つて来たと聞いて、大蛇の三公は、六公を秘かに吾居間に通した。そこには与三公、勘公の両人が両脇に控へてゐる。
三公『オイ六、甘く往つたらうなア』
 六は頭を一寸かき、首を三つ四つ振り乍ら、
『へー、夫れは夫れは何で御座います。筑紫ケ岳の高山峠の頂上に参りました所、五人の奴は、忽ち雲を霞と逃げ散つて、行方知らずとなりにけり……と云ふ為体でごぜえやした。誠に以て大勝利を得ましてごぜえやすから、どうぞ御安心下さいませ』
三公『随分骨が折れただらうな』
六公『イーエ、どうしてどうして、滅相も御座いませぬ。大親分の御威勢と云ふものは、大したもので御座いますワ。吾々一同が高山峠へ行つてみると、虎公の奴、吾々の匂ひを嗅いで、雲を霞と逃げ去り、猫の子一匹居らぬやうになつて了ひました』
与三『オイ六公、虎公は逃げたのぢやあるまい。居らなかつたのぢやないか』
六公『そらさうだ。逃げたから居らないのだ。居らないから、逃げたと云ふのだ』
与三『貴様、今迄何をして居たのだ』
六公『俺は、大親分の命令に依つて、虎公一統の所在を探ねむと、夜を日に継いで、筑紫ケ岳に向つて、汗をタラタラ流し乍ら、崎嶇たる山路を、ウントコドツコイ、ヤツトコマカセと登つて見れば、レコード破りの大暴風雨、岩石は中天に舞ひ上り、凄じい音をして、ドサン、バタンと所構はず降つて来る、大木は惜気もなく、根元から吹倒される、木の股は裂ける、礫の雨は降る、夫れは夫れは開闢以来の大騒動だつた。其中を泰然自若として行進を続けたのは、此六公の一行だ。六公も偉いが、親分の威勢も大したものだよ。生れてからあの位壮快な目に会つた事はねえワ。虎公の野郎、此烈風に吹かれて、どつかの谷底へ、ズデンドーと落込んでくたばりやがつたに違ひないと、千尾千谷隈なく捜し求むれど、狼に食はれて了つたか、虎にいかれたか、影も形もなくなりにけり。ハテ不思議と、山頂に佇み、双手を組み、思案をして見れど、根つから、良い思案も浮んで来ず、止むを得ずオーイオーイと味方を呼び集め、一旦高山峠の絶頂で人員調査を、一二三……とやつた上、石塊だらけの峻坂を、エンヤラヤアと駆降り、樫の木の森蔭に一同集まり、大方虎公の奴、三五教の信者だから、建日の館へ行きよつたに違なからう、これにより一隊を引つれ、華々しく館にかけ向ひ、一戦を試み、一泡ふかしてくれむかと許り思つたが、イヤ待て暫し、軽々しく進んでは、却て戦ひ利あらずと、あせる胸をグツと押へ、手具脛曳いて待つ所へ、虎公の奴、神ならぬ身の知る由もなく、ヌツクリと此場に現はれ来りけり……だ』
三公『それから如何したと云ふのだ。早く後を云はねえか』
六公『言はぬが花と云ふ事が御座いますから、モウここらで打切りにさして頂きませうか、六公が六でもない事をしよつたと云つて、御立腹なせえましては、双方の気が悪うなりますから、何れ六のやつた事に六な事は御座いませぬワイ』
三公『オイ六、シツカリせぬか。貴様の云ふ事は支離滅裂、前後矛盾、何が何だか訳が分らぬだないか』
六公『ヘヽすべて物事は分らぬ所に価値が御座いますので……』
三公『ナニ、分らぬ所で、勝を得たと云ふのか。虎公は如何なつたのだ』
六公『トラ一寸分りかねますなア。何れ何とかなつて居るでせう。そこ迄詳しう査べる余裕がなかつたので……無念乍らも、残党を引集め、やみやみ立帰つて候……と云ふ様な事でごぜえす』
 三公は面をふくらし、
三公『エヽ何奴も此奴も碌な奴アないワイ。オイ与三公、勘公、六をトツクリ査べて、委細を俺に報告してくれ。俺はこれから、徳に一寸用があるから……』
と云ひすて、此場を立つて今酒宴の開かれてゐた広い座敷へ進み行つた。
 徳、高の二人は差向ひになつて、相変らず管を巻き乍ら、何事か囁いて居る。三公は声をかけ、
三公『オイ徳、お前に言うておいた仕事に早く往つて呉れないと、遅れちや駄目だぞ』
徳公『ヘエ、行く事は行きますが、どうも根つから葉つから、はづみませぬワイ。今日は余りお酒がまはりましたので、体が自由になりませぬから、明日に延ばして下せえなア』
三公『明日に延ばせる位なら、貴様に言ひ付けるか。サア早く用意をせよ』
徳公『用意をせよと仰有つても、是丈ヨーイが廻つたら、此上、ヨーイの仕方もありますめえ。あんなシヤンに対して、私の此レツテルでは、如何も成功覚束なしと観察致しましたから、実ア、胴を据ゑて思ひ切り酒をあふつた所でげす』
三公『お前は此用を果す迄、酒を呑まぬと言つたぢやないか。肝腎要の時になつて、さうヘベレケに酔うて如何なるものか、サア早く立てい』
徳公『親方、何と云つて下さつても、腰が立ちませぬワ、腰が……それよりも直接に親方が行かれた方が、手取早う話がつくかも知れませぬで。二人の奴は元の通り埋めておき、お愛のシヤン丈を、山奥へかつぎ込み、そこは甘く、あなたの御器量で要領を得なさい。それが何より早道だ。三五教の言ひ草だないが、人を杖につくな子分をたよりにするなと云ふ事がごぜえますからな、ゲーゲブプーエー、あゝ苦しい、斯う苦して如何して道中がなるものか。動中静あり静中動ありだ。ドウセイお前さまの物になるのだもの、私がドウチウ訳にも行かないのだから、親方ドウドウセイセイ行つて来て下さいな。私もセイ一杯ドウを据ゑて、酒でも飲んで、親分のセイ功を祈つてゐませうかい』
三公『ドウも仕方のねえ奴だなア』
徳公『本当にドウも仕方のねえ奴だ。他人の女房に横恋慕をするなんて、人の風上に立つ親分にも似合はねえ卑怯未練な行方だねえか、エーゲブ、ウーーー』
 三公は癇高な声を出して、
三公『与三公勘公』
と呼んだ。此声に与三、勘の両人は、行歩蹣跚として此場に現はれ来り、
与三『親分、何ぞ御用でげすかなア』
三公『徳公を一つ裏の谷川へ連れて行つて、水を呑ませ、酔をさまさして、早く今の所へ行く様にしてくれないか』
与三『そりや与三さうな事です、オイ徳、立たぬか。貴様ア、肝腎の時になつて、何の事だ。そんな事で親方勤めが出来ると思ふか』
徳公『トクと思案をして見た所、何を言うても人里はなれた、あの森林だ。モシもお愛の奴、息でも止まつて居らうものなら、ヒユードロドロだ。夫れを思へば怖くも…何ともないが、何時の間にか酒腰がぬけやがつて、如何しても動けないのだよ。哥兄、頼みだが、今日は俺の代理を命ずるから、トツトと行つてくれねえか。本当に親方もあこ迄仕組んだ大芝居だから、此儘オジヤンになつては残念だらうし、俺達も甘い酒を親方からおごらした手前、気の毒でならねえからなア』
与三『俺や駄目だ。そんなら仕方がねえから、オイ勘州貴様、徳の代りに行つたら如何だい』
勘公『おれやモウ御免だ。今日は親の命日だからなア』
 斯かる所へ二三の乾児共慌しく駆け込み来り、
『ヤア与三の哥兄、タヽヽ大変だ大変だ。お愛の幽霊と虎公の幽霊が、沢山の亡者を連れて押寄せて来よつたぞ。サア用意だ用意だ』
 与三、勘の両人は『アツ』と云つた儘、腰を抜かしてその場に倒れて了つた。
 館の外には唸りを立てて夏の風がゴーゴーと吹き渡つてゆく。油蝉の声は館の庭先の木の上から、耳が痛い程ゼミゼミ、ミンミンミンと聞えて来る。
(大正一一・九・一四 旧七・二三 松村真澄録)
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