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文献名1霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻
文献名2第3篇 火の国都よみ(新仮名遣い)ひのくにみやこ
文献名3第21章 暗闘〔985〕よみ(新仮名遣い)あんとう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-10-01 12:13:57
あらすじ(第34巻第16章の続き)一方、房公と芳公は建日の館を出て黒姫の後を追い、険しい山道を登って火の国峠の登り口までやってきた。二人は火の国峠の山頂にたどり着いたが、黒姫の姿は見えなかった。日が暮れて、二人は峠山頂の木の下で一夜を明かすことにした。二人が横になると、西の方から登ってきた白髪の老人があった。老人は二人が休んでいるそばにやってきて、杖の先でかわるがわる額のあたりをぐいぐいと突いた。二人は暗がりの中に跳ね起きて、悪態をついている。老人は笑ってとぼけている。二人は怒りを覚えたが、黒姫の行方を知らないかと老人に尋ねた。老人は答えをはぐらかした。二人がまた、老人がこんな夜中にどこに行くのだと尋ねると、老人は二人の極道息子を迎えに行くのだと答えた。そして芳公と房公の特徴を挙げて極道息子だと言い、二人を雷のような声で怒鳴りたてた。二人は老人の声におどろいて飛び上がり、闇の中で衝突して火花を散らした。老人は暗闇にぼっと姿を表して、二人の過去の所業を数え上げて責め立てる歌を歌った。歌い終わると老人の姿は煙となって消え失せてしまった。房公と芳公はこの出来事に恐れおののきながらも、天津祝詞を奏上してここで一夜を明かすことになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年09月17日(旧07月26日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年12月25日 愛善世界社版248頁 八幡書店版第6輯 559頁 修補版 校定版263頁 普及版96頁 初版 ページ備考
OBC rm3521
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本文  房公芳公両人は  建日の館を立ち出でて
 黒姫さまの後を追ひ  嶮しき山坂トントンと
 捩鉢巻に尻からげ  薬鑵頭に湯気を立て
 後追ひかけて来て見れば  火の国峠の登り口
 黒姫さまのお姿は  雲か霞か魔か神か
 ドロンと消えて影もなし  「ウントコドツコイ」このやうな
 はげしい坂をば「ウントコシヨ」  黒姫さまの老年が
 どうして登つて行つたろか  影も形も見えないと
 二人は足を早めつつ  老樹茂れる坂道を
 「エンヤラヤー エンヤラヤ」  ハーハースースー云ひながら
 足をヅルヅル辷らせつ  板を立てたる「ドツコイシヨ」
 やうな嶮しき坂道を  兎の如く這うて行く
 当の主人の黒姫は  道踏み迷ひ丸木橋
 向ふへ渡つて森中に  お愛其他の男をば
 助けて居るとは知らずして  進み行くこそ憐れなり。
 二人は日のヅツプリ暮れた頃、漸くにして火の国峠の絶頂に辿りつく。そこには枝ぶりの面白い山桃の木が七八本、無遠慮に空を蔽して立つて居る。
『オイ芳公、これだけ俺達は一生懸命に走つて来たけれど、黒姫さまに追つかないのだ、大方道が違つたのぢやあるまいかなア』
『さうだなア、どうも怪しいものだ。何でも坂の上り口に右へ行く細い道があつたが、大方其方へでも迷ひ込んで行かれたのぢやあるまいか。どう考へてもそれより外に道がないぢやないか。まア兎も角も今晩は此木の下でお宿を借ることとしよう。又人でも通つたら尋ねようとままだから夜の途を急いだ処で仕方がない。俺も大分に疲れて来たからのう』
『そんなら仕方がない。芳公一泊して行かうかい』
と、両人は蓑をしきグレンと横になる。
 そこへ西の方から、コチンコチンと杖の先で道の小石を叩きながら、登つて来た一人の白髪の老人あり。老人は二人の休む傍に立ち寄り、杖の先にて二人の額あたりを交る交るグイグイと突いてゐる。二人は「アイタヽ」と言ひながら、ガバツと跳ね起き、薄暗がりにすかし見て、
『ダダ誰だい、俺の頭を杖でこづきよつた奴は、ふざけた事をしよると承知しないぞ』
『アハヽヽヽ、余り暗いものだから……何だか鼾がするので近寄つて見れば、暗がりに光つたものが一つ、其横に黒いものが又一つ倒れて居るので、こりや又狸の睾丸ではあるまいかと思つて、杖の先で一寸いぢつて見たのだよ。何を云うても暗がりと云ひ、老人で目が疎いのだから、頭の一つやそこら割れたつて辛抱して下さい。何程腹が立つても老人は大切にせねばならぬ規則だからのう……』
『何処の老人か知らぬが、知らぬとやつた事は仕方がないとしても、唯一言の断りも言はず、反対に老人尊敬論を捲し立てよつて太い奴だ。大方お前は化州だらう。さア、正体を現はせ!』
『オホヽヽヽ、どうせ化州に違ひないが、俺でさへも肝を潰すやうな闇の中に、よう光る薬鑵頭があつたものだから、ヒネた狸の睾丸ではあるまいかと、一寸泥のついた杖の先でいぢつて見たのだから、了見さつしやい。知らぬ神に祟りなしと云ふから、さう老人に毒つくものぢやありませぬぞや』
『もしお爺さま、知らずにした事は仕方がありませぬ。こちらも両人の者が、この木の下に逗留して居ると云ふ広告を出して置かないものだから、間違へられても何とも云ふ事は出来ませぬ。併しながら黒姫と云ふ五十許りのお婆さまに、お出会ひでは御座いませなんだか』
『何だか黒いものにチヨコチヨコ出遇うたが、向ふが黙つて通りよつたものだから、どれが黒姫だか黒狐だか、熊だか烏だか区別が付きませぬわい』
『お爺さま、この暗いのにお前は一たい何処へ行く積りだえ』
『俺は仕方がない極道息子が二人あつて此坂を今登つて来る筈だから迎へに来たのだよ』
『ヘエ、そのまた二人の息子とはどんな人ですか』
『さうだなア、一人は暗の晩でも薬鑵のやうに頭が光つて、一寸腰が曲り背の低い男だ。そして一人は少し図体の大きい三十男だが、そいつは又癖が悪くて弱い相撲取り、負けて負けて負け通し、人から鍋蓋と迄名を取つた困つた伜だよ。黒姫と云ふ宣伝使のお供に来ながら、アタいやらしい振舞酒に酔うて肝腎の主人を見失ひ、こんな所へやつて来て、安閑と寝て居ると云ふ、話にも杭にもかからぬ……極道息子だよ』
と雷のやうな声で呶鳴り立てられ、二人はこの声に驚いて飛び上り、暗の中を三四間無暗矢鱈に駆まはり、房公と芳公は急速力をもつて正面衝突をなし、二つ眼からピカピカと火を出し、
『アイタヽヽヽ』
と目を押へて互に踞んで仕舞ふ。
『アハヽヽヽヽ、房野丸と芳野丸とが衝突を致しましたなア。大した破産はなかつたかなア。機関庫が爆発したと見えてずゐぶん偉い光だつたよ、ワハヽヽヽ』
『コリヤ化爺、人の難儀を見て面白さうに笑ふと云ふやうな、不道徳な不人情な奴がどこにあるか、まるで鬼のやうな糞爺だなア』
『お前の云ふ通り、俺は見る影もない糞爺だ。目糞に歯糞、耳糞に鼻糞、お前のやうに尻糞はつけて居ないが、随分汚い糞爺だよ』
『オイ糞爺、俺が尻糞をつけて居るなんて、失敬な事を云ふない。この暗がりで目が見え難いと吐した癖に、尻糞迄どうして分るのだ。糞があきれて雪隠が踊るわい』
『何とまア糞やかましい男だなア。俺は火の国の聖と云つて、どんな事でもしりてしりてしりぬいて居る牛の尻だよ。お前の尻の毛が何本あると云ふ所まで知りて居るのだからのう……』
『こりや化爺、そんなら俺の尻の毛が何本あるか当てて見い!』
『オホヽヽヽ、かう見た処が唯の一本も無いぢやないか。お滝の素片多女に惚けよつて、尻の毛を一本もない所迄抜かれたと見えるわい。まるきり牛蒡の切口か椢炭の切口のやうな黒い尻だのう』
『何を吐してけつかるのだい。もうよい加減にすつ込まぬか、尻の穴奴が!』
『すつ込めと云つたつて、十年許り苦しんで居る脱肛だから、容易にすつ込みはせないぞや。これと云ふのも房公芳公と云ふ極道息子があるために、それが苦になつてこんな病気が起つたのだよ。親不孝な息子もあつたものだ。こんな奴は今に天罰が当つて火の国峠の大蛇に呑まれて仕舞ふと、娑婆ふさぎの厄介者がなくなつてよいのだがなア。神が表に現はれて、善と悪とを立てかへる世の中だから、どうせ二人の極道息子の寿命も長い事はあるまい。あゝ可愛さうなやうな気味のよい事だわい、オホヽヽヽ』
と遠慮会釈もなく、暗がりにボツと姿を現はして嘲笑ふ。房公は最前の正面衝突で鼻血を出し痛さにものをも得云はず、地にかぶり付いて泣いて居る。老爺は皺がれた声で歌ひ出した。
『黒姫婆さまの供をして  心も暗い両人が
 暗い峠を登り来る  後前見ずの暗雲で
 心の舵を取り外し  顔と顔とが衝突し
 薬鑵頭が鼻打つて  赤い鼻血をタラタラと
 流して踞むいぢらしさ  黒姫司にそそられて
 遥々つらつて来た友の  難儀を見捨ててスタスタと
 高山峠を一散に  登つて出て来る不人情
 人の皮着た代物の  平気で出来る業ぢやない
 貴様二人の心には  黒姫よりもまだ悪い
 黒い顔した鬼が居る  其鬼共を追ひ出して
 生れ赤児になりかはり  尻の掃除をよつくして
 尊き神の御使と  早くなれなれ いつ迄も
 黒姫如きの供をして  男が立つと思てるか
 前代未聞の馬鹿者だ  我は国治立神
 お前の御魂を磨き上げ  誠の神の生宮と
 造り直して神界の  御用をさせてやり度いと
 此処に姿を現はして  お前等二人の眼を醒まし
 無限の力をそれぞれに  配り与ふる神ながら
 神の御息に生れたる  汝はこれから謹みて
 誠一つを立て通し  一日も早く火の国の
 花の都へ立ち向ひ  黒姫司が迷ひ居る
 恋の闇をば晴らせかし  神の大道を踏みながら
 夫のために魂を  抜かれて来る黒姫の
 其愚さは限りなし  迷ひきつたる黒姫の
 後に従ひ遥々と  ここ迄来る二人連れ
 猶更馬鹿な代物だ  国治立大神と
 云うたは真赤な詐りで  我は月照彦神
 早く御魂を立て直し  清明無垢の身となつて
 厳の御魂や瑞御魂  開き給ひし三五の
 教の柱となれよかし  神は汝の身を守り
 魂を守つて何時迄も  太しき功を立てさせむ
 あゝ惟神々々  御霊幸はへましませよ』
と歌ひ終るや、怪しき老人の姿は煙となつて消え失せ、後には尾上を渡る松風の音、ザワザワザワと聞え来る。
『オイ房公、どうだ、鼻柱は些しよくなつたかなア。あんまり常から鼻が高いものだから、今現はれた神様が鼻を捩ぢ折つて改心させてやらうとなさつたのだよ。何時とても貴様は高慢が強うて鼻を高うするから、こんな目に遇うたのだ。途中の鼻高と云ふのはお前の事だよ』
『何でもいいわ。俺はもう恐ろしくつて何どころぢやない。大方あれは、此山の大天狗に間違ひなからうぞ。何でも彼でも俺達の事を皆知つてござつたぢやないか』
『天狗の話はもう止めて呉れ。天狗と聞くと、何だか首筋がゾクゾクして来るからなア。あゝ惟神霊幸倍坐世』
『こんな処に長居は恐れだ。さア行かう。黒姫さまが火の国で待つて居られるだらうからなア』
『行かうと云つた処で是だけ峻い坂道、其上闇と来て居るのだから、どうする事も出来はせないぞ。まア此処で天津祝詞を奏上し、神様を祈つて夜を明かすこととしようかい』
(大正一一・九・一七 旧七・二六 加藤明子録)
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