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文献名1霊界物語 第36巻 海洋万里 亥の巻
文献名2第2篇 松浦の岩窟よみ(新仮名遣い)まつうらのがんくつ
文献名3第10章 岩隠れ〔998〕よみ(新仮名遣い)いわがくれ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-10-08 13:11:08
あらすじサガレン王は述懐の歌を歌いながら険阻な谷道を落ち延びてきた。三人は巨大な岩の陰に休息を取り、昨夜からの出来事をひそひそと語り合っていた。三人は休息を終わって先に進もうとしたところ、行く手から人声が聞こえてきた。一行は竜雲の手下のヨールの一隊であることを悟り、再び大岩石の後ろに身を隠した。ヨールたちは、岩の後ろに王たちが潜んでいるとも知らずに、王たちを捕える算段を相談し始めた。そのうちにヨールの一隊の五人は酒を飲んで酔いつぶれてしまった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年09月22日(旧08月2日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年12月30日 愛善世界社版93頁 八幡書店版第6輯 615頁 修補版 校定版96頁 普及版39頁 初版 ページ備考
OBC rm3610
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本文の文字数3794
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本文  サガレン王は路々歌ふ。
『常世の国の自在天  大国彦の裔の子と
 生れ出でたる吾こそは  国別彦の神司
 イホの都をやらはれて  メソポタミヤの顕恩郷
 鬼雲彦と諸共に  教を伝ふる折柄に
 三五教の神司  太玉神が現はれて
 善言美辞の言霊を  放ちたまへばバラモンの
 大棟梁と僣称する  鬼雲彦はおぢ恐れ
 其醜体を暴露して  いづくともなく逃げ失せぬ
 大国別の子と現れし  幼き吾を奇貨となし
 朝な夕なに虐げて  暴威を振ひし天罰の
 誡めこそは畏ろしき  吾は夫より顕恩の
 郷を逃れてフサの国  月の国をば逍遥し
 あらゆる山河を跋渉し  千辛万苦を忍びつつ
 ボーナの海峡打ち渡り  錫蘭の島根に安着し
 沐雨櫛風の難をへて  漸くここにバンガロー
 神地の都に進み入り  御祖の神の開きてし
 バラモン教を遠近と  布き拡めたる甲斐ありて
 万民悉悦服し  遂に推されて王となり
 サガレン王と呼ばれつつ  ケールス姫と諸共に
 神の教や祭り事  朝な夕なに大神に
 誓ひて仕ふる折もあれ  雲を起して下り来る
 醜の曲津の竜雲が  剣の舌に屠られて
 姫は全く捕虜となり  吾に向つてウラル教
 信仰せよと責め来る  あゝ惟神々々
 大国彦大神の  御裔とあれし吾身魂
 如何でかウラルの御教に  仕へまつらむ事を得む
 神の怒りもおそろしと  心を極めて唯一人
 教を守り居たりしが  魔神の勢ひ日に月に
 栄え来りて今此処に  吾はつれなき草枕
 寄る辺渚の捨小舟  頼む蔭とて立ちよれば
 猶袖ぬらす常磐木の  松の下露冷たけれ
 さはさりながら皇神の  恵の露は乾かずに
 吾身を霑したまひつつ  テーリス、エームス両人が
 誠忠無比の真心に  漸く危難を助けられ
 此身一つはやすらかに  此処迄落のび来りけり
 思へば思へば有難や  三五教を奉じたる
 テーリス、エームス両人が  われに仕へし時よりも
 バラモン教を奉じつつ  心の中は麻柱の
 誠一つを立て通し  吾を助けて今此処に
 誘ひ来りし真心は  天地の神も明かに
 知ろしめすらむ惟神  神の御前に真心を
 捧げて感謝し奉る  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  魔神は如何に猛るとも
 誠の力は世を救ふ  誠一つを立て通し
 唯身を神に打任し  過去を憂へず将来を
 案じ過さず今のみを  やすく守りて神の道
 この瞬間に善を云ひ  善を行ひ善思ふ
 これぞ天地の神の子と  生れ出でたる人の身の
 朝な夕なに慎みて  尽しまつらむ道ならめ
 あゝ惟神々々  神の御霊の幸はひて
 松浦の里に至るまで  如何なる曲もさはりなく
 心平にやすらかに  進ませたまへ惟神
 国治立大御神  大国彦大神
 御前にかしこみねぎまつる  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』
 一行は嶮岨な谷道を、夜を日についで逃れ来りしこととて、足も疲れ体も何となく倦怠の気分になつて来た。もはや此処迄落ち延ぶれば一安心と、谷道の傍に土から生えたるが如く現れたる大巨岩の傍に休息して、一昨夜の騒動を追懐しながら、窈々と話に耽りつつあつた。
 早くも竜雲の部下の捕吏は、ヨールに引率され、名自鋭利なる手槍を提げ、装束もいと軽々しく、草鞋、脚絆の扮装にて、黒頭巾を被り黒の衣を甲斐々々しく纒ひながら、サガレン王一行の落ち延び来るを今や遅しと待つて居た。此谷道は東西に嶮しき山、壁の如くに屹立し、其谷間を流るる河森川の細道伝ひに霧籠む中を下り来たのである。濃霧のため、二三間先の人影はどうしても見る事は出来なかつた。
 三人は漸くにして身体の疲れも回復し、又もや立つて谷道を下らうとする時、些しく下手に当つて怪しき人声が聞えて来た。テーリスは其声にどこともなく聞き覚えがあつた。テーリスは小声になり、
『もし王様、あの声は確に竜雲の部下ヨールの声で御座います。悪に抜目のなき竜雲奴、王様を道にて捕へむと、すばしこくも此処に先廻りをして待たせて居ると見えまする。コリヤうつかりしては居られますまい。先づ暫し声を潜めて……幸ひ霧の中、彼等が通過するのを待つ事に致しませうか?』
王『どこ迄も水も漏らさぬ彼等が計略、実に呆れたものだ。汝が云ふ如く、暫く此処に潜むで彼等が動静を窺ふ事と致さう』
エームス『もし王様、アレあの通り四五人の声がザワザワと近よつて参りました。早く此の岩の後に隠れませう』
 王はうなづきながら、大岩石の後に二人と共に身を隠した。直径四丈許りもあらうと思ふ大岩石である。三人は濃霧に包まれ、其岩の後に忍んで、ヨールの部下の通過するのを待つ事とした。
 ヨールはサガレン王の一行が此岩の後に隠れ居るとは夢にも知らず、何事か小声に囁きながら大岩の前に来り、
『サア皆の者、此処で暫く息をやすめ鋭気を養ひ、サガレン王、テーリス、エームスの悪人共が落ちのびて来るのを待つ事にしよう。此地点は実に絶好の場所だ。東西に岩山は屹立し、一方は細き喉首のやうな谷道、北は胸突く許りの急坂、此処へやつて来るに相違ない。さうすれば袋の鼠も同様だ。マア悠りと水でも飲んで鋭気を養ひ、首尾克く三人を生擒り、竜雲様にお誉めの言葉を頂かうぢやないか。今が出世のしどきだ。この期を失しては、いつの日か抜群の巧妙を現はす事が出来よう。思へば思へば実に幸運が向いて来たものだワイ』
レツト『ヨールさま、万々一サガレン王が此道へ来なかつたらどうしませう。それこそ薩張駄目ですなア。屹度南下して来るには限つて居りますまい。もしも王が道を北に採り、遠くボーカ湾を越えて、印度のデカタン高原の方へでも逃げて居たら、それこそ骨折損の疲労まうけ、どうする事も出来ないぢやありませぬか』
ヨール『そこが運否天賦だ。吾々に幸福の神が守つて居れば、キツと王の一行は此道を採るに違ひない。もしも又カールの一行に幸福の神が宿つて居るならば、キツと王の一行は、ボーカ海峡を渡つて印度に走る道を採るに違ひない。それだと云つて、一つの体で両方へ行く訳にも往かず、諺に……二兎を追ふものは一兎をも得ず……と云ふ事がある。吾々は神の思召しのまにまに遵奉するに若くはない。さすれば神様は吾々の至誠を御照覧遊ばして、キツと手柄をさして下さるに違ひないわ。それよりも計略が漏れては一大事だ。ここ暫く沈黙を守つて、王の一隊の近づくのを待ち受ける事にしよう。今迄は随分各自に発言機関を虐待して来たが、もはや戦場に向つたも同様だから、言霊の停電を厳命する。皆の奴、静にものを云へ。イヤ、だまつてものを云ひたければ云つたがよい』
ビツト『もはや膝栗毛も疲れ果て、言霊も亦原料が欠乏し、止むを得ず口脚共に停電の余儀なき羽目に陥つて了つた。どうでせう皆さま、胃の腑の倉庫が、余程空虚になつたと見え、喉が汽笛を吹き出しました。一つ此処で弁当を胃の腑へ格納して鋭気を養ひ、時期を待つ事にしませうか』
ヨール『それもよからう。サア早く掻き込め掻き込め』
と各自に、握飯を出して甘さうに頬張つて居る。
 王の一行は息を凝らして、此話を一言も漏らさじと聞き耳立てて居た。
レツト『もう是れで腹は出来た。腹の虫奴が頻りに催促の矢を放射し居つたが格納庫の所有者たる吾々も、もはや是で責任が果せたと云ふものだ。悠々自適、国家の興亡われ関せず焉と云つたやうな気分になつて来た。おいビツト、其瓢箪をこちらへ借せ。何と云つても神徳の高きサガレン王に向ふのだから、一杯機嫌でなくては到底刃向ふ事は出来ないからなア』
ヨール『おいビツト、一つ此処で元気をつけて敵を待つ事にしよう。其酒をここへ出せ。併し乍ら、こいつは余程酒精がきついから沢山飲んではいけない。第一足を先に取られるから用心して飲め。決して度を過してはいけないぞ』
と、先づ自分から五升許り入る瓢の口から、グウグウとラツパ呑みを始め、瓢をレツトに渡し終り、両方の手で自分の額をピシヤツと叩き、
『アヽ何と云ふ酒だ。こんな甘い酒は生れてから飲んだことはない。どうしてまアこれ程甘くなつたのだらう』
ビツト『そりやさうでせうとも。瓢箪酒と云つて、特別酒の味がよくなるものです。さうして今日で三日間も、ドブドブドブと揺つて来たのだから、本当に呑み加減になつて居ます。そこへ体がどことはなしにホツとして居ますから、一入味がよくなつたやうに見えるのですよ。……喉のかわいた時や泥田の水も、飲めば甘露の味がする……と、都々逸にもあるぢやありませぬか』
ヨール『おいレツト、貴様計り独占して居らずに早く俺の方へも廻さぬか』
ビツト『もしもしヨールの大将、そりやちつと御無理です。あなたは先に一口お飲りになつたぢやありませぬか。今レツトが飲んだのだから次が私の番だ。それからランチ、ルーズの両人にも分配してやらねばなりますまい。一順まはる迄まつて下さい。最前から喉の虫がゴロゴロ云つて催促をして居ますから……』
レツト『そんなら早く呑め。さうして早く一順すまして、ヨールさまに渡すのだぞ』
ビツト『承知致しました』
と云ふより早く、逢うた時に笠ぬげ主義で、ガブガブと瓢箪の口から口呑をはじめた。それからクルリクルリと廻り呑にして、いつしか自分の使命も忘れてしまひ、瓢の酒をすつぱりと空にしてしまつた。五人は漸く酒が廻り足を取られ、互に大きな声で管をまき始めた。
(大正一一・九・二二 旧八・二 加藤明子録)
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