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文献名1霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻
文献名2第3篇 兵権執着よみ(新仮名遣い)へいけんしゅうちゃく
文献名3第16章 暗示〔1379〕よみ(新仮名遣い)あんじ
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじバラモン軍は、牢獄につないでいたビクトリヤ王をはじめビク国の重臣たちを和睦の酒宴に招くことになった。鬼春別、久米彦らが上座を占め、王家の人々は下座に座って和睦の謝意を述べた。ビクトリヤ王とハルナは、鬼春別・久米彦の傍らに控えている女性がヒルナ姫、カルナ姫によく似ていることに気が付き、突然バラモン軍が和睦を申し出てきたのも、彼女たちの働きがあったのではないか、とうすうす感じていた。鬼春別と久米彦は、ヒルナ姫とカルナ姫を自分の妻のように扱っていた。将軍たちの酔った機嫌を幸い、ヒルナ姫とカルナ姫は酒の冗談にかまけて将軍たちをからかった。ヒルナ姫とカルナ姫は、酒席のからかい話にまぎれて、ビク国王家の人々を解放するために自分たちがバラモンの将軍たちに取り入っていることを知らせた。刹帝利もハルナもそれによって二女の働きを悟り、女の魔力にひそかに舌を巻いていた。鬼春別と久米彦は、ますます酒に酔ってよい機嫌になり、歌を唸りだした。そして二女にも歌を所望した。ヒルナ姫とカルナ姫は、歌の中に自分たちの赤誠と状況をバラモン軍に悟られないように籠めた。これによって刹帝利をはじめ左守、右守、ハルナ、タルマンらビク国の人々は二女の貞節と活躍を知ることになった。両将軍をはじめバラモン軍の士官たちは酔いつぶされて、酒宴の席で眠ってしまった。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年02月14日(旧12月29日) 口述場所竜宮館 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年3月8日 愛善世界社版189頁 八幡書店版第9輯 573頁 修補版 校定版195頁 普及版95頁 初版 ページ備考
OBC rm5316
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本文  ビクトリヤ王が和睦の酒宴に招かれて、鬼春別、久米彦両将軍始め、スパール、エミシ、シヤム、マルタは客人側として、上座に順序よく座席を占めた。一方には刹帝利を始め左守右守並にタルマン、ハルナ、ヱクス、シエールなどがズラリ並んで、平和克復の祝宴が始まつた。ビクトリヤ王は鬼春別、久米彦両将軍の前に恭しく頭を下げ、
刹帝利『両将軍様、此度は御仁慈の思召を以て、吾々一族をお助け下さいまして、何とも御礼の申上げやうも厶いませぬ』
と泥棒に家を焼かれ、家族を殺された上、自分の命を助けて貰うたのを感謝するやうな、割の悪い立場に立つて、さも嬉しげに、恨を呑んで挨拶をしてゐる。鬼春別は威丈高になり、さも鷹揚に胡床をかき、
鬼春別『ア、イヤ刹帝利殿、其お言葉には恐れ入る。拙者は武骨なる軍人で厶れば、窮屈な行儀作法などは、大に困り申す。野武士の本領を現はし、尊き殿内をも省みず、胡床をかいて御無礼を致しまする。刹帝利殿心悪しく思はず、許して貰ひたいもので厶る』
刹帝利『ハイ、何を仰せられまする。軍人様は素朴なのが価値で厶います。現代は虚礼虚式の流行する世の中、貴方の如き赤裸々の軍人様は本当に頼もしう存じます。サアどうか一つ召し上り下さいませ』
と盃をさす。鬼春別は毛だらけの太い手をヌツと出し、盃を前に突出し、刹帝利の手よりナミナミとつがれて、グツと呑み干し、
鬼春別『イヤもう結構な酒で厶る、五臓六腑に沁み渡る様な妙味が厶る。刹帝利殿、拙者の盃を一杯受取り下され』
と無雑作にグツと突出す。刹帝利は、斯様な猫を被つた豺狼の機嫌を損ねては又大変と、さも満足の態にて盃を頂き、二三回も頭を下げ、
刹帝利『これはこれは、驍名高き将軍様のお盃、謹んで頂戴仕まつります』
鬼春別『ヤ、遠慮には及ばぬ。沢山に呑んで下さい、拙者の懐が痛む酒でもなし、御馳走は幾らなりと喰ひ放題、イヤ早戦捷の勇士の盃をお受けになれば、チツトはあやかつて貴方も豪傑になるでせう。アハハハハ』
と豪傑笑ひをやつてゐる。鬼春別の傍に怖相に控えてゐる女は、風態こそ変れ、刹帝利の目には、どうもヒルナ姫のやうに思はれてならなかつた。併し乍ら……世間にはよく似た女のあるものだなア……位に、老眼の事とて軽く見てゐた。そして今回の刹帝利以下を助けたのも、ヒルナ姫、カルナ姫両人の必死の活動に仍つた事は、少しも気がつかなかつたのである。又ハルナは……久米彦将軍の側にゐる美人は風こそ変つて居れ共、どこともなしに最愛の妻カルナにソツクリだ。そして時々自分の方へ視線を向ける事を見れば、カルナではあるまいか、今回思はぬ嬉しい解放に会うたのも、或はカルナが斡旋の力ではなからうか……などと考へ、盗むやうにして、チヨイチヨイと女の顔を見てゐた……見れば見る程よく似てゐる、……と思ひ乍ら又も一人の女を見れば、どう思うてもヒルナ姫とより見えない。ハルナのみならず、左守右守其外一同の心も同様な疑を抱いてゐた。久米彦将軍は威丈高になり、
久米彦『オイ、カルナ姫、そちは拙者の最愛の女房だ。斯様な所で一つ鶯のやうな声を出して歌つたらどうだ。何分陣中は男ばかりで殺風景極まる。そこへ其方がやつて来たのは天の配剤、拙者の心を生かす唯一の如意宝珠だ。テモさても美しい者だなア』
カルナ姫『ハイ、モウ少しお酒がまはりましたら、何か歌はして貰ひませう。将軍様からどうぞ先へ歌つて下さいませ。まだ貴方のお歌を聞いた事が厶いませぬからねえ』
 久米彦は刹帝利の手からナミナミと酒をつがれ、団栗目をむき乍ら大盃からグツと呑み干し、
久米彦『拙者は刹帝利殿に盃をさしたいのだが、見れば余程の御老体、却てお困りだらうから、最愛のカルナにさすであらう。言つても女は社交界の花、一家に取つては女王様だから、先づ女王様の御機嫌を損じないやう、取計らうが拙者の利益……と申すもの、老さらばうた刹帝利様へさすよりも、何程気分が可いか知れないからなア。アハハハハ』
鬼春別『オイ、ヒルナ殿、何湿つてゐるのだ。陣中へ来た時には、随分ベラベラと喋つたでないか、チツとあの時の元気を、こんな席で出して貰ひたいものだな。エヘヘヘヘ、ぢやと云つて、頬べたをなめたり、鼻を撮んだり、爪疵を負はされちや困るよ』
ヒルナ姫『将軍様の、マア卑怯な事を仰有いますこと、貴方は千軍万馬の中を疾駆する勇将だ厶いませぬか。槍や刀の創を何時受けるか知れないお身分で在り乍ら、繊弱い女が鼻一つ位捻ぢ取つた所が、何で厶います。そんな事仰有ると鬚をむしりますよ』
と腮の鬚をグツと握つて、三つ四つしやくつてみた。
鬼春別『アイタタタ、コレ、ヒルナ、さう無茶をするものだない。エヘヘヘヘ、ヤツパリ痛うても気分が可いワイ』
ヒルナ姫『ホホホホホ、そらさうですとも、貴方のお鬚の塵を払ふものは沢山厶いますけれど、お鬚をむしつて赤い血を出す、誠の熱烈な女は妾より外に厶いますまい。あのマア、奇妙奇天烈な、人好のするお顔ワイのう、ホホホホ』
鬼春別『イヤ久米彦殿、拙者のナイスは、顔にも似合はぬヤンチヤで厶る。昨日始めて会うてから、未だ一度も枕も交さないに拘らず、耳をひつ掻く、鼻を捻ぢる、鬚をむしる、抓る、しまひの果てにや、拙者の面に痰唾を吐きかけるので厶る。かやうなおキヤンに出会つた者は、誠に不仕合せ、……イヤ情熱の高調した時は、先づこんなものとみえますワイ。アハハハハハ』
久米彦『成程、それは随分お楽しみで厶らう、拙者のナイスは比較的因循で、而も淑女で厶るから、酒の座には面白く厶らぬ。実にお羨ましう厶る』
カルナ姫『将軍様、何と仰有います、妾が淑女だから気に入らないのですか。宜しい、キツと敵を討つて上げます』
と云ひ乍ら、鼻を力に任せて、捻ぢ上げた。
久米彦『イタイ イタイ イタイ、コラ無茶な事を致すない、何ぼ惚れたと云つても余りだないか』
カルナ姫『それでも貴方、ヒルナさまのやうな目に会はして欲しいのでせう。エエ憎らしい男だこと、あたい、こんな男、嫌……でもないけれど……』
と云ひ乍ら、ピシヤ ピシヤ ピシヤと頬を撲つた。
久米彦『あああ、天下の名将も女にかけたら、サツパリ駄目だなア、エヘヘヘヘ。鬼春別殿、拙者の色男振は此通りで厶る』
鬼春別『オイ、ヒルナ、些としつかりせぬかい。久米彦に夫がヒケを取るのは、お前何ともないのか』
ヒルナ姫『妾は実の所、モツとモツとひどい目に会はして上げたいので厶いますが、どう考へても、これ丈沢山お歴々のゐらつしやる前ですもの、あたいもチツと心得て居りますのよ』
鬼春別『妾と云つたり、あたいと云つたり、人格が二人もある様だ。どちらかに一つ、きめて貰ひたいものだな』
ヒルナ姫『妾といふのは貴方の正妻ですよ。あたいといふのはバイタの霊が憑つて来て貴方の御機嫌を取つて居りますのよ。どうです、バイタの霊がお好きですか、淑女が宜しいか、どちらかにきめて下さいな』
鬼春別『妾もあたいも私も僕も拙者も、某も、やつがれも、皆一度に来い、かふ云ふ目出たい席は一人でも多いが可いからな』
ヒルナ姫『ホホホホホ、気の多いお方だこと、そんなら某の霊を呼んで参りませうか』
鬼春別『ウンウン何でもいい、某でも僕でも結構だ』
 ヒルナは俄に態度を改め、
ヒルナ姫『オイ君、鬼春別君、随分デレ助だねえ。折角骨を折つて占領したビクトリヤ城をヒルナ姫にチヨロまかされ、刹帝利に還すとは、本当に何うかしてゐるだないかオイ、チツと確りし玉へ』
鬼春別『コーリヤ、さう猛烈にやつてくれては困るぢやないか、何を言ふのだ』
ヒルナ姫『だつて君、よう考へてみ玉へ、君はヒルナ姫を我物にせうとして、久米公と随分陣中で斬り合までしただないか、……モシ将軍様、何だか妙な霊が憑つて来て、あんな事を申しますワ、何う致しませうかねえ、妾は本当に恥しうて堪りませぬワ』
鬼春別『アハハハハハ、随分憑られ易い霊だのう。大方拙者に対し、君々といふからは、ランチ将軍の霊がお前に憑つたのかも知れないよ』
ヒルナ姫『成程、さう承はりますと、何だか体がヘンになつて来ましたワ。……オイ君、お察しの通り、僕はランチだよ。君も随分乱痴気将軍になつたね。モウこんな殺伐な事はよし玉へ。それよりもヒルナ姫と夫婦になる事を考へたがよからうぞ。併しヒルナは到底君の手には合ふまいよ』
鬼春別『コリヤ、ランチ、馬鹿を云ふな。貴様のやうなヒヨツトコには、僕の熱烈な恋愛が分るかい、ヒルナ姫は既に既に拙者と情約済だ。御心配御無用、マア一杯やり玉へ』
とヒルナ姫に盃をさす。
ヒルナ姫『あれマア将軍様、妾にそんなお言葉をお使ひになると、恐ろしうなりましたワ。チツと優しう言つて下さいな、妾は怖いのだもの』
鬼春別『エツヘヘヘヘ、そらさうだらう、軍人といふ者は、元来荒つぽい性質のものだからなア。ましてランチといふ奴は、仕方のない男だから、お前の肉体に憑つて、あんな事云ひやがるのだ。余程けなりいと見えるワイ。エツヘヘヘヘ』
 カルナは又もや体を四角にし、軍人のやうな態度を装ひ、
カルナ姫『オイ、君、久米彦、久し振だねー。僕は片彦だよ。河鹿峠では随分泡を吹いて将軍の威勢は全く地におちたでないか。本当に僕も君も軍人の面汚しだね。併し君は偉いワ、ビクのやうな小さい国を占領しやうとやつて来たのは、本当に先見の明ありだ。併し乍ら一つの欠点は女に溺れる事だ』
久米彦『ヤ、又此奴、変になりやがつたぞ。拙者のローマンスを羨望して、片彦の精霊奴、大切なカルナ姫の体を自由にしやがる。……コリヤ片彦、貴様の来る所だない、早くここを立去れ立去れ』
カルナ姫『ホホホホ、もし将軍様、あたい、何だか、恐ろしくなつて来ましたわ、何者があんな乱暴な事を言ふのでせうかね』
久米彦『ウン、お前の知つた事だない、心配するな、お前は霊が水晶だから、確りせぬといろいろの霊に憑られ易いからなア』
 斯くしてヒルナ、カルナは互ちがひに両将軍を、刹帝利やハルナを始め其他の前に翻弄して、それとはなしに自分の意志を悟らしめんと努めてゐたのである。ビクトリヤ王始めハルナは早くも二女の態度に仍つて嫉妬の念も晴れ、女の恐ろしき魔力に感歎し、且ひそかに舌をまいてゐた。
 鬼春別は酔が廻つて、ソロソロどら声をはり上げ歌ひ出した。
鬼春別『ここは名に負ふビクの国  ドツコイシヨウ ドツコイシヨウ
 ビクの都の刹帝利  老ぼれ爺さまが頑張つて
 左守右守の家来をば  抱へて威勢を近国に
 示して居つた時もあれ  バラモン教で名も高き
 鬼春別の将軍が  率ゆるナイト三千騎
 破竹の勢敵し得ず  忽ち捕虜となり果てて
 土蔵の中に手足をば  縛りて無残に投込まれ
 無念の涙を絞る折  天女の様なヒルナ姫
 天の一方から降つて来て  ドツコイシヨウ ドツコイシヨウ
 色々雑多と道を説き  抑人の生涯は
 ラブ・イズ・ベストが肝腎だ  などとしほらしい事を云ふ
 仁慈に富める此方は  兇悪一途の久米彦を
 やつと説き伏せ刹帝利  其他一同を解放し
 助けてやつたは救世主  神に等しき名将ぞ
 其酬いにやヒルナ姫  一瞥城を傾ける
 様な眼を光らして  鬼春別を慇懃に
 もてなしくるる楽しさよ  ああ惟神々々
 女の惚れる男ぞよ  情を知つた英雄ぞ
 コリヤ コリヤ久米彦某が  申す言葉に無理なかろ
 アハハハハハ、アハハハハ。
オイ、ヒルナ、モ一杯ついでくれ。そして一つ歌つたり歌つたり』
ヒルナ姫『今度此度の戦についてね  私の好きなは只一人
 色が黒うて歯が田螺  眼団栗でベラ作眉毛
 鼻は唐獅子耳兎  繻子のシヤツポン鉄の杖
 ブリキの様なサーベルさげて  自ら率ゆる三千騎
 こんな男があればこそ  今度の難儀が助かつた
 かく云ふ声はヒルナ姫  其肉体の声だない
 ランチ将軍の精霊が  一寸ヒルナの体を借り
 憎まれ口を言うたのだ  ドツコイシヨウ ドツコイシヨウ
 ドツコイドツコイ ドツコイシヨウ  サーサ之から御本人
 ヒルナの姫に任しませう。
モシ将軍様、又何だか、あたいに憑りましたよ。どうか退けて下さいませぬかねえ』
鬼春別『ハハハハ、ヤツパリ霊が良いとみえて、憑り易い女だのう。併し今日は酒の席だから、ランチだつて、ヤツパリ俺の友人だ。今日は一切治外法権だから、何でも可いワ、どうかお前の本性で一つ聞かして貰ひたいものだなア』
ヒルナ姫『将軍様、一つ唄はして頂きませう』
と云ひ乍ら、両手をピシヤピシヤ叩き乍ら、

ヒルナ姫『酒を呑む人真から可愛
酔うてクダまきや尚可愛
私や将軍さまに本当に惚た
石の飛越え見えなんだ』

鬼春別『妙々、モ一つ唄つてくれぬか。何だかお前の声は五臓六腑に沁み渡るやうだ。天女の音楽だつてこれ程に感動は与へまいて、エヘヘヘヘヘ……オイ久米彦どうだ、カルナ砲台は非常に沈黙してゐるだないか、ヤツパリ霊相応のナイスより天から与へられぬものと見えるね。ウツフフフフ』
久米彦『ヘン、仰有いますワイ、……オイ、カルナ、お前も夫の恥辱を雪ぐ為、シツカリ奪戦してくれ』
カルナ姫『ハイ、畏まりました。そんなら噴火口の詰をぬきますから、そこら中に火山灰が散るかも知れませぬよ。どうぞ警戒を願ひます、左様なら御一同様、御免下さいませ』
と云ひ乍ら、
カルナ姫『わしの好きなはハルナの都  ハルナハルナと朝夕に
 神の願を掛まくも  畏き神の御恵
 恋しいお方の其前で  お酒を頂く嬉しさよ
 世間の人は何なりと  誹らば誹れ云はば云へ
 わが赤心はハルナさま  都にゐます神ぞ知る
 何程好きな面しても  心の底が承知せぬ
 メツタに操は破らない  安心なされよハルナ草
 もえ立つやうな背の君よ  ハーレヤーレあれワのサー
 コレワのサー  ヨーイヨーイ ヨーイトサ』
とうたひ了り、ハルナにだる相な視線を投げ乍ら久米彦の前に盃をつきつけ、
カルナ姫『将軍様、エライ不調法申しました』
久米彦『エヘヘヘヘ、ヤツパリお前の歌を考へて見ると、俺を真剣に思うてると見えるのう、可愛いものだ。イヒヒヒヒ、鬼春別殿、拙者のナイスの歌は此通りで厶る、何と高等教育を受けた丈あつて、立派な者で厶らうがのう』
鬼春別『ヘヘン、仰有いますワイ、今にアフンとさしてやらう。サ、ヒルナ姫、夫の一大事だ、カルナを美事に投つけ、久米彦の肝玉をひしぐは今此時だ。サ、一杯呑んで、確り頼むよ』
ヒルナ姫『あたい、又妙な者が憑つたら困りますワ。モウこらへて下さいな』
鬼春別『エエエ、千騎一騎の此場合、モ一つで可いから、飛切り上等の奴を放り出してくれ、頼みだ』
ヒルナ姫『将軍様がヒケをお取り遊ばすやうな事があつては、あたい済みませぬから、そんなら一つうたつてみませう』
鬼春別『ウン、ヨシヨシ出かした出かした、シツカリ頼むよ』
ヒルナ姫『歌へ歌へとせき立てられて  歌の文句に困ります
 さはさり乍ら今となり  後へ引くのも卑怯だと
 金輪奈落の力出し  飛切上等の名歌をば
 一同様に聞かせませう  妾の好きなは刹帝利
 刹帝利様を助けたる  心の鬼の悪党な
 やうに思はれた将軍さま  鬼春別の君様は
 本当に本当にのろい人  人は見かけによりませぬ
 妾は将軍の心根に  ゾツコン惚てはゐるけれど
 モ一つ何だか気にかかる  将軍様の陣中へ
 奇妙な女がやつて来て  将軍様をばチヨロまかし
 魂迄もぬき取つて  一切軍務を打忘れ
 菎蒻腰になられよかと  そればつかりが心配ぢや
 イヤイヤ心配はしませぬよ  どうして心配するものか
 却て安心致します  其故如何と言ふならば
 将軍様の聰明な  心にしまりがあることを
 妾は信じてゐるからだ  刹帝利さまを助けたは
 鬼春別の将軍が  仁慈無限の御心の
 発露なりとは言ふものの  陰に女性がつきまとひ
 操つて居つたのだ皆さまよ  ドツコイ ドツコイ ドツコイシヨー
 将軍さまは偉い人  女にかけたら尚エライ
 鼻を捻ぢられ手をかかれ  鬚をしやくられ面体に
 痰や唾をかけられて  それでも一寸も怒らない
 寛仁大度の御精神  見下げたものでドツコイシヨ
 見上げたお方で厶います  こんなお方と添へぬなら
 妾は死んだがマシですよ  妾の本当に好きなのは
 ビクの都の刹帝利  ビクトリヤ王さまを助けたる
 誠の誠の勇士ぞや  お情深い英雄の
 心事にホロリとなりました  ああ惟神々々
 目玉飛出しましませよ  ア、オツトドツコイ惟神
 御霊幸はへましませよ』
と一方は刹帝利に向つて自分の赤心を現はし乍らも、鬼春別、久米彦がカンづかないやうに、うまくうたつてのけた。此歌を聞くより、刹帝利、左守、右守、ハルナ、タルマンの面々は始めて、両女が赤心を悟り且未だ身を汚してゐない事を確め、心中深く感激した。
 両将軍は二人の女に盛り潰され、女の膝を枕にして、前後も知らずゴロリと倒れ、グウグウと鼾をかき出した。刹帝利を始め、左守、右守、ハルナはソツと此場を立去り、別殿に入つてホツと息をつぎ、互に顔を見合せて、二人の女が辣腕を、目と目を以て褒めそやし居たりけり。
(大正一二・二・一四 旧一一・一二・二九 於竜宮館 松村真澄録)
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