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文献名1霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻
文献名2第3篇 兵権執着よみ(新仮名遣い)へいけんしゅうちゃく
文献名3第17章 奉還状〔1380〕よみ(新仮名遣い)ほうかんじょう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2024-03-14 20:29:27
あらすじ刹帝利をはじめとするビク国の一同は、バラモン軍の将官たちが前後も知らずに寝込んだのを見すまして、善後策についての相談会をひそびそと始めた。刹帝利、タルマン、左守は二女の勇気と知恵をほめそやした。刹帝利はタルマンの勧めでヒルナ姫の離縁を撤回し、ハルナも妻の働きに感じ入った。左守は、この事件における右守の失態を責め、改めて兵権奉還を右守に迫った。右守は、自分の妹のカルナ姫が活躍したことを盾に取って抵抗した。右守は、一度は兵権を奉還すると言いながら、奉還状を書くことを拒否するなど卑怯な態度で場をはぐらかしていた。タルマンはついに怒って、弓に矢をつがえて右守に向けて引き絞り、態度の決定を迫った。これにはさすがの右守を顔色を変えて奉還状を書くことを承諾した。右守はなおも奉還状の文言をはぐらかしたり、拇印をごまかそうとしたりしたが、左守とタルマンに見破られ、ついに兵権奉還状を刹帝利に提出した。右守は残る面々をしり目にかけながら不満をあらわしつつ出て行った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年02月14日(旧12月29日) 口述場所竜宮館 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年3月8日 愛善世界社版209頁 八幡書店版第9輯 580頁 修補版 校定版216頁 普及版104頁 初版 ページ備考
OBC rm5317
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本文  刹帝利、左守、右守其外一同は、鬼春別、久米彦両将軍及四人の副官や属僚が酒に酔ひつぶれ、前後も知らず寝込んだのを見すまし、漸く口を開き善後策につき相談会をヒソビソと始め出した。
タルマン『刹帝利様を始め皆々様、実に意外の好結果を得たもので厶いますなア。是れ全く盤古神王様の御守護の致す所は申すに及ばず、貞婦烈婦のヒルナ姫様、カルナ姫様の必死の御活動が此処に到らしめたものと考へます。誠にこんな有難い事は厶いませぬなア』
刹帝利『感じ入つたる両女の働き、其方等も王家の為、国家の為に随分骨を折つてくれたなア。実に感謝の至りだ』
タルマン『刹帝利様に一寸伺つておきたいので厶いますが、貴方はヒルナ姫に暇をお出し遊ばしたが、併し乍ら斯くの如く勲功が顕はれた上は、元のお妃にお直し遊ばすで厶いませうなア』
刹帝利『彼れの如き貞婦烈婦は、又と世界にあらうまい。此方も彼の為に国家の危急を救はれたのだから、少々の過がありとて、国を思ふ為にやつた仕事だから、別に咎る訳には行くまい。此件に付いては其方に一任致す』
タルマン『早速の御承知、有難う存じまする。ヒルナ姫様もさぞ御満足遊ばすことで厶いませう』
左守『ヒルナ姫様と云ひ、カルナ姫と云ひ、実に天晴な者だ。右守司の率ゆる軍隊も相当にあつたけれど、弱将の下に弱卒ありとでも言ふものか、一人も間に合はなかつた。カルナ姫は右守殿の妹と云ひ乍ら実に天晴の女丈夫だ。ハルナ、其方も手疵を負うて苦しからうが、あれ位な女房を持つ上は聊か慰むる所があるだらうのう』
ハルナ『ハイ』
と云つたきり面赤らめて俯いてゐる。
左守『斯く和合の出来た上は、鬼春別将軍はヨモヤ、ビク城の軍隊まで指揮せうとは致すまい。バラモン軍はバラモン軍として、又別に陣営を造るであらう。さすれば此際右守殿の兵馬の権を、スツパリと刹帝利様に奉還なさるが可からうと存ずるが、右守殿如何で厶らうな。其方は内憂外患を防ぐ為の軍隊だと主張し乍ら、国家危急の場合になつてから弱腰をぬかし、此城内をして零敗の憂目に陥らしめたのは全く其方の責任で厶るぞ。其方も一片の赤心あらば、此際罪を陳謝し、スツパリと兵馬の権を、王様にお還しめされ』
 右守はさも不愉快な面をし乍ら、
右守『これは心得ぬ左守殿のお言葉、拙者の家は兵馬の権を握る家筋なれば、其家系より生れたるカルナ姫は、拙者に代つて軍功を立てたでは厶らぬか。カルナ姫は左守の家に遣はしたりとは云へ、ヤハリ右守家に生れた者、右守家に生れたカルナ姫が斯の如き勲功を立てた上は、決して右守家に兵馬の実力がないとは言はれますまい。千軍万馬を動かして勝利を得るも、又一人の女に仍つて、目的を完全に達するも同じ事では厶らぬか。又ヒルナ姫は拙者が親族の娘、ヤハリ右守家の系統を曳いた者、之を思へば、どこどこ迄も、右守が兵馬の権を握つて居らなくては、ビクの国家は保たれますまい。左守殿は老齢の事とてチツと計り耄碌遊ばしたなア』
左守『邪智侫弁を揮つて、飽く迄野望を達せむとする憎くき其方の心根、いいかげんに改心なさらぬと、神罰立所に至りますぞ。畏れ多くも王妃を取込み、且道ならぬ道を行はしめ、遂には不羈の謀計を達せむと致した極重悪人、世が世ならば、逆磔にしても許し難き其方なれども、何を云つても其方は兵馬の権を握つてゐた実権者だから、刹帝利様も涙を呑んで今日迄お忍び遊ばしたのだ。此左守だとて其通り、又ヒルナ姫様も国家を思ふ一念より、いろいろと御苦心遊ばした跡は、歴然として居りますぞ。其方も右守の家に生れたものならば、なぜ男らしく割腹して王の前に罪を謝するか又、兵馬の権を奉還して、民家に下り其罪を陳謝なさらぬか』
 右守は少時考へて居たが、何か心に頷き厭らしい目付をし乍ら、俄に下座に直り両手を仕へ、
右守『ハハア、刹帝利様、其外のお歴々様、右守は今日只今より、仰に従ひ前非を悔い、兵馬の権を奉還仕りますれば、何卒御受取り下さいませ。そして吾々の罪、お赦し下さらば右守は民間に下り、首陀となつて田園生活に余生を送る考へで厶います』
 刹帝利は左右を顧み、
刹帝利『タルマン、左守殿、今右守の申した事、汝等に異存は無いか』
 タルマン、左守はハツと頭を下げ、
左守『吾々は此事あらしめむと、日夜心を悩ませ居りました者、いかでか異存の厶いませうや』
刹帝利『ウン、然らば右守の願を許すであらう、右守、有難く思へ』
右守『ハイ、君の御仁慈、肝に銘じ、有難く存じ奉ります』
左守『ヤア右守殿、天晴々々、武士はさうなくては叶はぬ。然らばここで奉還状をお認めなさい。そして拇印を押して貰ひませう』
 右守は此言葉にハツと当惑し、……奉還状を書いたが最後、自分の地位は台なしになつて了ふ。コリヤ困つた破目に陥つたものだ……と思ひ乍ら、さすが老獪な右守、素知らぬ面にて、
右守『刹帝利様に恐れ謹み申し上げます。拙者も右守家を相続致す武士の片割れ、一旦奉還すると申上げた以上は、決して変がへは致しませぬ。武士の言葉に二言は厶いませぬ。何卒私の人格を買つて下さいませ。言葉の上にて奉還さして頂きたう厶います』
 左守は厳然として言葉鋭く、
左守『右守殿、人格を認めよと言はれたが、其方に人格があると思はるるか、よく胸に手を当ててお考へなされ。能くもマア左様な図々しい事がいへるものだなア』
右守『御不承知とあれば已むを得ませぬ。然らば武士の言葉であれど、奉還すると申出でた事は、刹帝利様始めお歴々のお気に召さぬと見えまする。此上は止むを得ませぬ、依然として祖先の家を継ぎ、右守となつて兵馬の権を掌握するで厶いませう』
タルマン『右守殿、苟くも王様の前に申上げた言葉、決して後へは引かれますまい。左様な没義道な事を仰らるるならば、やむを得ませぬ。拙者にも考へが厶る』
と片方にあつた弓に鏑矢をつがへ、満月の如く引しぼつて、矢の穂先を右守の面体に向けた。流石の右守も之には辟易し、サツと面色を変へ、唇を慄はせ乍ら、
右守『イヤ、たつて、自説を主張しようとは申しませぬ。あ、然らば奉還致しませう』
 タルマンは尚も弓を満月に張り、アウンの息を凝らしてゐる。タルマンの弦にかかつた拇指が一寸でも動いたが最後、右守の命は忽ち風前の灯火である、否寂滅に陥るのである。
左守『然らば右守殿、サ、早く、此処に料紙も硯も厶れば、奉還状を御認めなされ』
 右守は歯ぎしりし乍ら、
『ああ是非に及ばぬ』
と小声に呟きつつ、机に向ひ筆を染め料紙に対して、手をビリビリ慄はせ乍ら、奉還状を認め、左守の手に渡した。左守は一度文面を検めむと、よくよく見れば、

一、拙者事、右守家の相続人として、兵馬の権を握り、国家の保護に任じ、今日迄何の不都合もなく、ビクの国及び王家をして泰山の安きにおきたる事、右守家の相続者として茲に刹帝利様に軍職奉還の義を申出づる事を光栄とす。
一、此度のバラモン軍の襲撃に際し、右守家に生れたるカルナ姫の軍功は、右守家が兵馬の権を握れる家系にして勇壮活溌な血液の伝はり居る事を検証したるを以て光栄とす。
一、刹帝利の妃ヒルナ姫は、ヤハリ右守家の血統より生れ、今日の軍功を立て、祖先の血統を明かにせしことを光栄とす。
一、右の如く軍功顕著なる家柄なるを以て、ここ三年の間は此儘兵馬の権を握り刹帝利殿を始め、左守に軍学の素養備はりし時を以て、兵馬の権を奉還する事を約す。
 右の条々相違之れなく候也。
   年月日   右守、ベルツ

と記してある。左守は口をへの字にまげ、改めて王の前に朗読した。王は無言のまま一言も発せず、口を結んで控えてゐる。タルマンは弓に矢を番へ乍ら、
タルマン『右守殿、此条文に仍れば、其方が兵馬の権に恋々たる執着心は十二分に現はれてゐることを認めざる得ない。傲慢不遜の言詞を改め、キツパリと男らしく、直様奉還致す様お書替へなさい。左様な奉還状は反古同様で厶る』
左守『右守殿、タルマンの言はるる通り、サ、素直に、男らしく、キツパリと奉還状をお認めなされ』
右守『サア、それは、暫くの御猶予を願ひ、沈思黙考の上認めて呈出致すで厶らう』
タルマン『右守殿、侫弁を揮ひ、一時を糊塗し、此場を遁れて、又もや野心を企む所存であらうがな。汝が面体に歴然と現はれて居りますぞ』
と心の底まで矢を射ぬかれて、遁るる途なく執着心の鬼を押へ乍ら、引くに引かれず進むに進まれぬ此場の仕儀と決心の臍を固めて、再び状を認め始めた。

   兵権奉還状の事
一、今日迄右守家の祖先がビクトリヤ家より委託されたる兵馬の権を悉皆、現刹帝利ビクトリヤ王の御許に奉還仕り度候間、何卒特別の御詮議を以て御採納下され度、偏に懇願奉り候也。
   年月日   右守、ベルツ

と記し、左守の手に渡した。左守は又之を王の前に朗読した。
刹帝利『ウン、ヨシ、直様聞届る。一時も早く左守司に引つぎを致せよ。併し乍ら之に念の為に、拇印を押しておくがよい』
右守『拇印を押すべき処なれど、昨日の騒動にカルナの奴に腕を傷つけられ、指の先迄痛みを感じ到底拇印は出来ませぬ。全快する迄御猶予を願ひまする』
左守『右守の創は右の手では厶らぬか、拇印は左の手に限りますぞ。サ、早く押して貰ひたい』
と前へ突き出す。タルマンは弓に矢を番へたまま、右守の面体を睨みつけてゐる。右守は後日の言ひ掛りを拵へん為、ソツと右の鬢の毛をむしり、指に当て、墨をつけて拇印を押した。これは指紋を誤魔かさむが為である。左守は目敏く之を見て、
左守『右守殿、此拇印は間違つて厶る。マ一度押し直して貰ひたい』
右守『これは心得ぬ左守殿の言葉、拙者の左の拇指は一本より厶らぬ。之がお気に入らなくば、左守殿、拙者の代理に其方が立派に押しておいて下され』
左守『益々以て不埒千万な右守の言葉、髪の毛を以て指紋を変じ、後日の言ひがかりを拵へむとの、伏線で厶らうがな。左様な事の、老眼と雖も、分らぬ拙者では厶らぬ。サ、早く男らしく捺印なされ』
 右守は無念の涙を零し乍ら、進退惟れ谷まつて、厭々乍らも、今度は本当に拇印を捺した。
左守『ヤ、天晴々々、刹帝利様、之にて手続きは済みまして厶います。お目出度う御座います。ヤ、右守殿、其方も目出度いなア』
右守『ハイ、根つから……お目出度う厶います』
と歯切れせぬ答弁をやつてゐる。右守は刹帝利に向ひ、
右守『目出度く奉還を御許可下さいました上は、拙者は館に帰り、暫く謹慎を致し、君の御命令を御待ち致します。何分宜しく御願ひ致します』
と言ひ乍ら、タルマン、左守其他の面々を尻目にかけ乍ら、ドシドシと廊下をワザと鳴らして出でて行く。
(大正一二・二・一四 旧一一・一二・二九 於竜宮館 松村真澄録)
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