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文献名1霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻
文献名2第1篇 神授の継嗣よみ(新仮名遣い)しんじゅのけいし
文献名3第3章 懸引〔1389〕よみ(新仮名遣い)かけひき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ治国別は神示により、未明に松彦たちが王子・王女を連れて帰ってくることを悟り、門口を開けて湯を沸かし、座布団を並べるなどして準備して待っていた。長年の山暮らしで髯も伸びきった王子たちに、治国別は湯を勧めた。王子たちは、三五教の宣伝使たちがビク国を救ってくれたことにお礼を述べた。王子たちは代わる代わる垢を落とし身なりを整えた。すると戻ってきたときの山男の風体とは打って変わり、みな貴公子然たる男ばかりであった。身なりを整えたダイヤ姫は、治国別の前に手をついて再生の恩を感謝した。万公は、ダイヤ姫の美しさに心を奪われ、一同の前で姫の美貌をほめそやし、惚れてしまったと公言するありさまであった。松彦と竜彦にたしなめられ、万公は客人の炊事の支度をすることになった。松彦と竜彦は、王子たちを無事に連れ帰ったことを王城に報告に行く役目があるので、万公一人で王子たちの世話をすることになった。万公は、一人では手に余るのでぜひダイヤ姫に手伝いをしてほしいと頼み込んだ。治国別はまた万公に注意を与えたが、結局万公が炊事をしてダイヤ姫がその他の雑事を手伝うことになった。松彦と竜彦は城に到着した。知らせを待っていたタルマンは、早速首尾を尋ねた。いたずら好きの竜公は、話をじらして脚色して、タルマンをやきもきさせた。左守と右守はこの場にやってきて、タルマンの顔が土色になっているが、松彦と竜彦がニコニコと笑っているので、奉迎がうまくいったことを悟った。一同が話していると、治別と万公に付き添われて長兄のアール王子が駕籠に乗ってやってきた。左守と右守はアールの姿を見ると、うれし涙がこみあげて一言も発せず、左右の手を取って刹帝利の居間へ案内して行った。竜公にからかわれてやきもきしていたタルマンもようやく胸をなでおろし、アールの後を追って刹帝利の居間へ急いだ。治国別は後に残した五人が気にかかり、万公を連れてすぐに館に戻って行った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年02月21日(旧01月6日) 口述場所竜宮館 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年3月26日 愛善世界社版33頁 八幡書店版第9輯 631頁 修補版 校定版32頁 普及版14頁 初版 ページ備考
OBC rm5403
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本文  暁の空は茜さし、百鳥の声は千代千代とビクの国家の繁栄を祝し、又ビクトリヤ王が親子対面の慶事を寿ぐ如く、今朝は何となく勇ましく鳥の声さへ聞えて来る。
 治国別は神示に仍つて、今朝未明に松彦一行の帰つて来る事を悟り、門口の戸を開け放ち、湯などを沸かし、座蒲団を並べて待つてゐた。そこへ八男一女はイソイソとして帰つて来た。五人の男兄弟は熊のやうに顔一面に鬚ムシヤムシヤと生やしてゐる。一見した所では、どうしても人間らしく見えなかつた。而して永らく山住居をしてゐたので、体中苔が生えたと疑はるる許りに垢がたまつてゐる。
松彦『先生様、お蔭に依りまして、漸く六人の御兄妹をお迎へして帰りました』
治国『ああ三人共御苦労であつた。サアサア六人様、こちらへお上り下さい。そして湯を沸しておきましたから、お兄さまから順々に湯浴みをして下さい』
アール『イヤ、何共御礼の申上やうが厶いませぬ。父が大変御厄介に預かつたさうで厶います。其上又吾々兄妹をお救ひ下さるとは、貴方方は神様のやうに存じます』
と荒くれ男に似ず、嬉し涙をハラハラと流してゐる。
治国『御礼を云はれては恐れ入ります。何事も神様の為に御用をさして頂いたので厶いますから、御心配なく御湯をお召し下さいませ。オイ万公、御湯場へ御案内を致せ。そして垢をおとして上げるのだよ』
万公『ハイ承知致しました。サ、アールさま、貴方からお入りなさい。背中を流しませう』
と云ひ乍ら湯殿へ案内した。松彦、竜彦は代る代る六人の兄妹を湯浴みさせ、親切に洗うてやり、それからスツカリと鬚を剃りおとし、ホーフスから預つた六人分の衣類を着替へさせた。何れも斯うなつてみると、気品の高い貴公子然たる男計りである。ダイヤ姫は女の事とて、男が背を流す訳にもゆかず、只一人湯浴をなし、念入りに身体の垢をおとし、ラブロックを整理し、美はしき小袖に身を纒ひ、ニコニコし乍ら治国別の前に両手をついて、再生の恩を感謝した。
 万公はダイヤ姫の姿を見て、肝を潰し、
万公『ヤア、これはこれはと許り花の吉野山、女は化物だと聞いてゐたが、コラまアどうした事だ。小北山のお菊から比べてみると雲泥の相違だ。何とマア立派なシヤンだなア、エヘヘヘ』
松彦『オイ万公、ヤツパリお菊が恋しいか、困つた男だなア。それではモンクになつても駄目だぞ』
万公『イヤ、もう文句も何もありませぬ。素的滅法界惚ました、ああ惚た惚た。われ乍らよう惚たものだ』
松彦『アハハハハ、彫刻師か井戸掘の検査のやうに言つてゐやがるな。困つた男だなア。それぢや何時迄も万公で行かねばなるまい』
万公『万公の同情を寄せて、此姫様をお迎へして来たのだから、何れ此……何でせう、お兄さまがあるのだから、刹帝利家を継がれる筈はなし、どこかへ○○をなさるお身分だから、ねえ松彦さま、モウお菊は思ひ切りますワ、エヘヘヘヘ』
松彦『アハハハハ、身分不相応と云ふ事を知つてゐるか、本当に困つた奴だなア』
万公『門閥や、財産や、地位や、名望や、そんな物が何になりますか。そんな物を以て神聖なる恋愛を制肘せられちや堪りませぬワ、キツと私のものですよ。貴方だつて、万公にやるのは惜しいでせうが、そこは部下を愛するといふ神心を以て、私に媒介して下さるでせうなア。否キツと子弟を愛する慈悲深いお心から、周旋をして下さるだらうと固く信じて居ります。刹帝利様だつて、一旦ない者と定めて厶つたから、つまり云へば拾ひ者ですワ。さうだから、キツと吾々がお迎へにいつた御褒美として、貴方方の周旋の如何に仍つて、万公に与へると仰有るでせう。キツと抜目なく、先生、頼みますで……』
ダイヤ『ホホホホ、あのマア万公さまとやら、御親切に能う云つて下さいます。併し私には既に業に夫が厶います。年は十一才でも女として一人前の心得は持つて居りますからねえ』
万公『これはしたり、貴方の夫といふのは何方ですか。まさか兄妹同士、そんな馬鹿な事はなさいますまいし……』
ダイヤ『ハイ、先生様にお願ひ申し、父に掛合つて頂いて、左守司の息子ハルナさまと、二三年したら結婚するやうに願つて頂きたいもので厶います。私はハルナさまが一番好きなので厶いますからねえ』
 万公は首を頻りにふり、
万公『折角乍ら、ハルナさまは駄目ですよ。既に業にカルナ姫といふ立派な奥さまが出来ました。そして貴女とは年が違ふのですからそんな事は思ひ切つたが宜しからう』
ダイヤ『あれマア、ハルナさまとした事が、一年の間にチヤンと奥さまを持たれたのですか。私、どうしませう』
万公『ハハハ、さうだから、それ丈年の違ふ男にラブしても駄目だと云ふのですよ』
ダイヤ『ハルナさまと私と年が違うといつても、僅か十年許りですよ。貴方は三十年も違ふぢやありませぬか。そんな方と夫婦になつたら、世間の人がお半長右衛門だと云つて笑ひますがな。ホホホホ、あのマアいけ好かないお顔』
とプリンと背中を向ける。
万公『ヤア此奴ア失敗つた。どうしたら年が若くなるだらうかなア。なぜ二十年も後から生れて来なかつただらう』
松彦『アハハハハ』
竜彦『オイ万公、馬鹿な事を云はずに、早くお客さまの御飯の用意をするのだ。貴様は之からボーイを命ずる。早く台所へ行つて襷がけになつて活動せぬかい』
万公『ヘー、承知しました。併し、これ丈沢山のお客さまだから、万公一人では手が廻りませぬ。炊事に女がなくてはなりませぬから、一つダイヤさまに手伝つて貰ひませうかい。それが厭なら、竜彦さまも水汲みなつとして貰ひませう』
治国『イヤ、松彦、竜彦は大変な御用がある。之から種々の準備を整へホーフスへ参り、刹帝利様にいろいろと御相談に行かねばならぬ。御苦労乍ら万公、お前今日丈一人でやつてくれ。ダイヤ様は女の事でもあり、暫く手伝つて頂けば此方も都合が好し、お前も喜ぶだらうが、どうも万公では険難で、さうする訳にも行かず困つた者だ』
万公『先生、そんな御心配はいりませぬ、私も男です。滅多に不調法はしませぬから、何卒、仮令半時でも一緒に仕事をさして下さい。きつい山坂を荊を分けて往来し、ヤツと此処迄帰つたと思へば、三助をやらされる、又炊事まで命ぜられる……といふのだから、チツと御推量下さつてもよささうなものですな』
ダイヤ『妾は山中に於て不便な生活をし乍ら、六人分の炊事をやつて来ました経験が厶います。妾一人が、そんなら炊事場を預りませう。万公さまはお休み下さいませ』
万公『滅相もない、お年のいかぬ若い姫様に、コーカー・マスターをさせては、男が立ちませぬ。又刹帝利様に聞えてもすみませぬから、夫婦……オツトドツコイ男女共稼で、コーカー・マスターを勤めませう。ねえ先生、それで差支ありますまい』
治国『ダイヤ様さへ御承知なればよからう。併しお前は飯炊役、ダイヤ様はバトラーになつて貰はう』
万公『エエ仕方がない。君命に従ふ事に致しませう』
と万公はいろいろの食料品を集め、炊事に襷がけで取掛つた。ダイヤは火を焚き、茶を沸し、チヤンと準備が整うて、膳部を運び、一々毒味を了り座敷に並べた。之より一同は朝飯を喫し、ゆるゆると山中生活の話や、又は宣伝使の苦労話や、愉快な話を交換し、ビクトリヤ城内の戦争談などを始めて、一時許り面白可笑しく時をうつした。
 治国別の内命に仍つて、松彦、竜彦両人は、衣紋を繕ろひ、ホーフスに参入した。内事司のタルマンは二人を叮嚀に向へ、奥の間に通し、茶菓を饗応し乍ら、六人の子女の消息を待ち兼た様に尋ね出した。
タルマン『大変にお待ち申して居りましたが、お子様の消息は如何で厶いましたか』
 竜彦は早速六人を無事に連れ帰つたと云つては、余り興味がない、ここは一つ内事司をぢらしてやらうと、徒好の竜彦はワザと心配相な顔をして、ナフキンで唇の唾をふき乍ら、咳払を七つも八つもつづけ、言ひにくさうにモヂモヂして揉手をし乍ら、
竜彦『エー、折角、参りましたが、中々以て、容易の事ではありませぬ。夫れは夫れは、意外にも深山幽谷で荊蕀茂り、鳥も通はないやうな難所で厶いましたよ』
タルマン『ヘー、成程、大変お困りで厶いましただらうな。そして御子女は無事に御帰りになりましたか』
竜彦『サ、そこが、ウン、何です。誠に早、骨を折りましたよ。

 月花の友は次第に雪と消え
 光明は三日の月のあとへさし
 藪医者は験より変を見せるなり』

タルマン『エ、何と仰せられます。御子女はゐられなかつたので厶いますか』
竜彦『ヘー、居られるはゐられました。それがサ、中々容易に、ウンと仰有らぬので、猪突槍を以て吾々三人を十重二十重に取囲み、蟻の這ひ出る隙間のなき迄に、攻め来る其猛烈さ。僅に血路を開いて雲を霞と逃げ帰り候……といふやうな為体で厶いましたよ。あああ、是非も厶いませぬ』
タルマン『向ふは六人さま、十重二十重だとか、蟻も這ひ出る隙間もない……とか、そんな御冗談仰有らずに、早く吉報を御聞かし頂きたいもので厶います』
 松彦はニコニコし乍ら、黙つて二人の問答を聞いてゐる。そして時々「プープー」と噴き出してゐた。タルマンは気を焦ち、膝をすりよせ乍ら、
タルマン『エ、焦らさずに早く言つて下さい。キツと勝利を得られたのでせう』
竜彦『吾々三人がヤツと格闘の結果、到底生捕にして帰る訳にも行かず、首をチヨン切つて、漸く凱旋致しました。やがて首実検に供へませう。毛は熊の如くに顔一面に生えて居りますから、御見違ひのない様にお検めを願ひます。今治国別さまの館で仮令首丈でも疎には出来ませぬから、輿を作つて舁いで参りますからよくお検め下さいませ』
タルマン『左様な事を誰が御願申しましたか、以ての外の乱暴、首計り持つて帰つて何になりますか。貴方は人殺の大罪人、これから、何程神徳の高きモンクだと云つても、許す訳には参りませぬ、覚悟をなされ』
と顔色を変へて怒り出した。竜彦は平然として、
竜彦『アハハハ、大きな体を引抱へて帰る訳にも行かず、首丈持つて帰れば大変軽便だと思ひ、刹帝利様の意志に従つて、ビクの国家を乱さむとする、悪逆無道の御子女を亡ぼし帰つたのが、何がお不足で厶るか。六人の子供が顔さへ見せてくれさへすれやよいと仰有つたでせう。別に胴体を見せいとも、手足を見せいとも仰有らなかつたでせう。さやうな不足は、吾々は聞く耳は持ちませぬ、アハハハハ』
 タルマンは余りの事に呆れ果て、真青な顔をして唇を慄はせ乍ら、恨めしげに竜彦の顔を睨んでゐる。ここへ、レーブ・アン・ルームにあつて、治国別の返辞を待つてゐた、左守右守はどうやら竜彦の声がする様だと、ドアを排し、廊下を伝うて此場に現はれ、見ればタルマンは顔色土の如くなつて慄うてゐる。二人はニコニコとして笑うてゐた。左守のキユービツトは此体をみて、……ハハア、タルマンの奴、予言者だ、宣伝使だと威張つてゐるから、懲戒の為に油を取られてゐるのだ、此奴ア面白い……と思ひ乍ら、三人の前に現はれ来り、
左守『今喫煙室に於て様子を聞けば、どうやら、不成功に終つた様子で厶いますが、イヤもう何でも結構で厶います。アールさまさへ連れて帰つて下さらば、ビクの城中は磐石の如くで厶います。ヤ、誠にお骨を折らせました、何卒治国別様へ宜しくお礼を申して下さい』
松彦『漸くの事で、いろいろと事情を申上げ、お一人丈お連れ申すことに致しました。やがて治国別様が駕籠にお乗せ申して御送りになるでせう、何卒御受取り下さいませ』
左守『有難う厶います。さぞ刹帝利様も満足遊ばす事でせう。そして其お一人と申すのは何方で厶いますか』
 竜彦は松彦の返答せぬ内に、
竜彦『アイヤ、余り顔一面に毛が生えてゐるので、男とも女とも兄とも弟共見当がつきませぬ。何だか知りませぬが、エ、一人丈やうやうと引張て帰りました。何卒、よくお調べ下さいませ』
 かく話す所へ駕籠に舁がれて万公が先に立ち、やつて来たのは総領息子のアールであつた。松彦は、
松彦『ヤ、今お帰りになりました。サ、皆さまお迎へ致しませう』
と玄関口に出迎へた。駕籠は玄関口に横づけとなつた。中からヌツと現はれた、髭をそりおとし、立派な衣装をつけた貴公子は総領息子のアールであつた。タルマン始め左守右守はアツと許りに驚いて、暫し言葉も出なかつた。
治国『皆さま、此方が御総領のアールさまで厶います』
 左守右守は俄に嬉し涙がこみ上げて来て、只一言も発し得ず、左右の手を取つて、刹帝利の居間へ案内して行く。タルマンもヤツと胸を撫でおろし、
タルマン『竜彦さま覚えてゐなさい。キツと御礼を申しますから……』
と云ひ乍ら、アールの後に従ひ、奥の間に姿を隠した。治国別は万公を伴ひ逸早く刹帝利にもあはず、吾住家に残した五人が気にかかるので帰つて行く。
(大正一二・二・二一 旧一・六 於竜宮館 松村真澄録)
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