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文献名1霊界物語 第57巻 真善美愛 申の巻
文献名2第1篇 照門山颪よみ(新仮名遣い)てるもんざんおろし
文献名3第2章 煽動〔1452〕よみ(新仮名遣い)せんどう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-09-01 18:28:30
あらすじテルモン山の神館の奥の間には、小国別の病はすます重く、命は旦夕に迫ってきた。小国別は顕幽の弁別がつかない精神状態となってきた。三千彦は小国別の帰幽を遅らせてもらうよう神に願った。小国別の意識が戻り眠りについたとき、館の周囲に老若男女の叫び声が聞こえてきた。オールスチンと三千彦は共に玄関口に出てみると、荒くれ男たちが酒に酔って押し掛け、オールスチンを突き飛ばし、三千彦を捕えてテルモン山の山奥に運んでしまった。ワックスは驢馬にまたがって群衆を指揮しながら采配を振るっている。さすがの悪人ワックスも、父オールスチンが倒れているのを見逃せず、自分の悪行を見せないように目隠しをして応急手当てをして去って行った。ワックスは、悪友のエキスとヘルマンに命じて三千彦を山奥の岩窟に閉じ込めておいた。ワックスは、デビス姫も三五教に通じているので町に戻ってきたら自分のところに連れてくるよう、群衆をたきつけた。求道居士、ヘル、デビス姫、ケリナ姫の四人は、そんな騒動が起こっているとも知らず、宣伝歌を歌いながらテルモンの町に向かってやってきた。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月24日(旧02月8日) 口述場所皆生温泉 浜屋 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年5月24日 愛善世界社版21頁 八幡書店版第10輯 265頁 修補版 校定版22頁 普及版9頁 初版 ページ備考
OBC rm5702
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本文  テルモン山の神館の奥の間には、小国別の病益々重く、命旦夕に迫つて来た。館の内は上を下へと騒ぎ廻り、小国姫、三千彦及び家令のオールスチンは、二人の看護婦と共に病床につききり、死に行く人の身の上を案じ、胸を躍らせつつあつた。三千彦は最早是非なしと神に向つて天国へ救ひ玉はむ事を祈願した。小国別は顕幽弁別のつかざる精神状態となつた。小国別は嬉しさうな顔して空を眺め、
『アア貴方はチヤンドラ・デーワブトラ様(月天子)、貴方はスーラヤ様(日天子)ようマア……只今参ります。併し乍らモウ一目吾二人の娘に会ふまで御猶予を下さいませ。アア何と云ふマノーヂニヤスヷラ(楽音)だらう。女房にもあの声が聞かしてやり度い。これ小国姫、お前はあのマノーヂニヤスヷラ(楽音)が聞えて居るか。あの綺麗なエンゼルが目につくか。もしもしエンゼル様、暫らく御猶予を願ひます。これが此世の別れで厶いますから』
と頻りに掌を合して居る。
小国姫『モシ旦那様、確りして下さいませ。貴方は病気のために左様な幻覚を感じて居られるのでせう。マノーヂニヤガンダルヷ(楽)の声も聞えては居ないぢやありませぬか。そしてエンゼルのお姿も決して見えませぬよ。確りなさいませ。軈て姉妹二人が帰つて参りますから』
 小国別は女房の声が耳に這入らぬと見えて、尚も言葉をつづけ、
『何とマア美しい花だこと、もしエンゼル様、之はダリヤの花で厶いますか。エ、桃の花、こんな大きな桃の花が、どうして又咲いたのでせう。何と仰有います、第一天国の桃林の桃の花、ヘー、美しいもので厶いますなア。私、それへ参るのですか。いや有難う厶います』
小国姫『モシ三千彦の先生様、どうで厶いませうか。到底主人の生命は駄目で厶いませうな。せめてデビスやケリナの帰つて来る迄、何とかして命をとり止めて頂き度いものです』
三千彦『お喜びなさいませ。決して幻覚でも何でもありませぬ。貴方の目には分らぬか知りませぬが、あの通りチヤンドラデーワブトラ様やスーラヤ様がエンゼルとなつて天国に救ふべくお見えになつて居ます。今お願を致しますから、親娘対面が済む迄、天国行の猶予を願ひませう』
と三千彦は拍手をうち、天の数歌を歌ひ祈願を籠めた。月天子、日天子の両エンゼルは三千彦の乞を容れ、四辺に芳香を投げ、微妙の音楽につれて一先づ天上に帰り玉うた。殆ど帰幽して居た小国別は再び正気になり、目を静かに開ひて四辺を打眺め、
『ア、女房、そこに居たか。貴方は三千彦様、ア、大変な美しいエンゼル様に結構な処へ導かれて行く所だつた。娘は未だ帰つて来ぬかな』
小国姫『ハイ、未だ帰りませぬが、軈て神様のお蔭で無事な顔を見せるで厶いませう。御安心下さいませ』
と自分も二人の姉妹の事を案じ乍ら故意とに気楽さうに云つてゐる。小国別は『会ひたいものだな』と頻りに憧れ乍らスヤスヤと眠りに就いた。此時館の周囲に当つて老若男女の叫び声が聞えて来た。小国姫は夫の看護に手が放されないので、ソファーの側らに看護婦と共に附きつて居る。オールスチンは三千彦と共に玄関口に現はれ見れば赤鉢巻に赤襷の荒くれ男酒に酔ひ潰れてヒヨロヒヨロし乍ら雪崩の如く押かけ来り、矢場にオールスチンを突飛ばし、其上をドカドカと踏みにじり、三千彦を寄つて集つて手をとり、足をとり、凱歌を挙げてドンドンドンとテルモン山の山奥指して、数十人の荒男がワツショワツショと掛け声諸共運び行く。オールスチンの悴ワックスは、驢馬に跨り群衆を指揮し乍ら采配を振つて居る。目的物の三千彦は漸く攫はれた。ワックスは先づ一安心と玄関口に進入し見れば、父のオールスチンが人事不省になつて倒れてゐる。矢場に両眼に目隠しを施し、水を吹かけ気つけを飲ませ、漸くにして蘇生せしめた。両眼を布で括つて置いたのは父にワックスの姿を覚られぬための用意であつた。流石悪人のワックスも父の危難を見ては救はずには居られなかつたからである。ワックスは三千彦を悪友のエキス、ヘルマンに命じ山奥に拉し去らしめ、冷たい岩窟の中に押込めて置いた。
ワックス『サア、之からデビス姫を生捕せねばならぬ。さりとて何とか群衆を誑さねば此目的は達し得ない』
と再び驢馬を引返し十字街頭に立ち、豆太鼓を叩き乍ら、又もや辻説法を始め出した。
ワックス『宮町の老若男女諸君よ、諸君の尽力によつてテルモン山の神館に禍する三五教の悪宣伝使三千彦を漸くの事に生捕りました。彼奴は館の嬢様デビス姫と密かに牒し合せ此神館を横領し、あらゆる魔法を使つて町民諸氏を苦しめる準備を致して居りましたぞ。此度の小国別様の御病気も全く三千彦がなす業、大恩ある生神様の御恩を報ずるは今この時で厶る。何程デビス姫が大切なお嬢さまとは云へ、バラモン教の教敵なる三五教の悪宣伝使と情を通じ、父のお館を占領し、町民を苦めむと致さるる以上は、一時改心が出来るまでは吾々の手に預つて、お館に帰さないやうにせなくてはなりませぬ。今の心で館へ帰られては大変で厶るぞ。如意宝珠のお館の宝も三千彦と両人牒し合せ奪ひ取つたに相違厶いませぬ。それで皆さまの力をかつて、デビス姫が今ここに帰り来らば、有無を云はせず、テルモン山の岩窟に連れ行く事に致しませう。之は決してワックスの私言では厶いませぬ。館の小国姫の御命令で厶いますぞ。皆さま、宜しく頼みます』
と呶鳴りつけた。熱しきつたる群衆は馬鹿息子のワックスが言葉を、さまで信用するものはないが、群衆心理と云ふものは不思議なもので、三千彦を捕虜とした勢に乗じ、一も二も無くワックスの言葉を鵜呑みにし、第二の計画としてデビス姫を捕縛せむと宮町を後に郊外まで駆け出した。
 折から大原野の中央を宣伝歌を歌ひ乍ら、男女四人連れ此方に向つて進み来るものがあつた。
エミシ『神が表に現はれて  善神邪神を立分ける
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 只何事も人の世は  直日に見直せ聞き直せ
 身の過ちは宣り直せ  三五教の宣伝使
 治国別に助けられ  バラモン教のカーネルと
 仕へ侍りし此エミシ  現実界の欲を棄て
 一切万事神界に  身も魂も任せつつ
 比丘の姿と相成りて  山川渡り野路を越え
 神の教を遠近に  宣り伝へ行く折もあれ
 エルシナ川の激流に  落ち込み漂ふ人々を
 命を的に救ひ上げ  検め見ればこは如何に
 バラモン教に仕へたる  ベル、ヘル、シャルの軍人
 ケリナの姫の四人連れ  やうやう三人の命をば
 取り返しつつ川岸を  伝うて来たる草野原
 ベルとヘルとの両人は  俄に悪心萌芽して
 吾等二人の命をば  奪らむとしたる浅間しさ
 月照彦の神力に  照らされ悪魔は忽ちに
 雲を霞と逃げて行く  後に二人は勇み立ち
 月の光を身に浴びて  露野を渉り進む折
 道の傍の方岩に  俄に唸く人の声
 はて訝かしと窺へば  デビスの姫やベル、ヘルの
 三人の男女と知るよりも  二度ビツクリの二人連れ
 種々雑多と介抱して  三人の命を相救ひ
 喜ぶ間もなくベルの奴  デビスの姫の身につけし
 七宝悉く掠奪し  草野に姿を隠しける
 アア如何にせむ曲神に  呪はれきつた盗人の
 如何に誠を説くとても  悟る術なき憐れさよ
 手負ひ玉ひしデビス姫  ヘルの背中に負はせつつ
 テルモン山の神館  目当に進む野路の上
 守らせ玉へ惟神  神の御前に願ぎ奉る
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 只何事も人の世は  直日に見直せ聞き直せ
 身の過は宣り直せ  神は吾等と倶にあり
 如何なる曲の攻め来とも  誠一つの大道に
 さやる術なき曲津神  一日も早く魂を
 洗ひ清めて大神の  誠の道に帰れかし
 アア惟神々々  御霊幸はひましませよ』
 ヘルはデビス姫を背に負ひ乍ら息も苦しげに一歩々々拍子をとつて歌ひ出した。
『ウントコドツコイ ドツコイシヨ  悪の酬いは目のあたり
 バラモン軍の解散と  同時に心侫け出し
 忽ち魔道に逆転し  覆面頭巾の怪装で
 旅人を掠め懐の  宝を奪ふ追剥と
 一度はなりし果敢なさよ  ベルとシャルとの悪友に
 唆かされて忽ちに  思ひもよらぬ泥坊の
 仲間となりて行く人の  衣を脱がせ金を奪り
 挙句の果は命まで  奪りて露命を繋ぎつつ
 エルシナ川の袂まで  忍び忍びに来て見れば
 ザンブと立ちし水煙  如何なる人の投身ぞや
 命を助けにやなるまいと  身を躍らして深淵に
 跳び込み二人を救ひ出し  又もやベルの悪人と
 つまらぬ事を争ひつ  再び淵に転落し
 魂は中空に跳び出して  八衢街道の旅をなし
 闇に迷へる時もあれ  忽ち聞ゆる法螺の声
 高姫館の危難をば  求道居士に救はれて
 再び此世の人となり  神の恵みを喜びつ
 居士の御後に従ひて  エルシナ谷の山口に
 来かかる折しも一万両  所持し玉ふと聞くよりも
 心の鬼は忽ちに  角振り立てて狂ひ出し
 ベルと二人が牒し合ひ  如何にもなしてこの金を
 奪はむものと四苦八苦  遂には神に嚇され
 命からがら山を越え  不動の滝に逃げ行きて
 怪しき姿に驚きつ  慄ひ戦く折もあれ
 怪しの姿は滝壺を  上りてトボトボ山坂を
 木の間を潜り帰り行く  木の間を洩るる月影に
 光眩き宝石は  星の如くにピカピカと
 輝きわたる人の顔  これ見逃してなるものか
 俺につづけと云ひ乍ら  ベルは一歩前に立ち
 暗き谷間を潜り抜け  月の白みし山口の
 草茫々と生え茂る  中に目立ちていと広き
 巌の側に来て見れば  以前の女は方岩の
 上に安坐し月光に  向つて何か祈り居る
 隙を覗ひベルの奴  猿臂を伸ばして宝玉の
 光を狙つてムシらむと  飛びかかりたる一刹那
 ズドンと許り二三間  投げ出されたる浅間しさ
 之を見るよりウントコシヨ  四辺に白く光りたる
 枯木杭を拾ひ上げ  無性矢鱈にウントコシヨ
 骨も挫けと女をば  目あてにウンと打下す
 キヤツと一声断末魔  やれ安心と胸を撫で
 ベルに水をば与へつつ  種々雑多と介抱して
 漸く息を吹き返し  又もや宝の奪合ひに
 一悶錯をおツ初め  二人は息も絶々に
 露おく草に倒れけり  かかる処へ三五の
 教の道の求道居士  ケリナの姫と諸共に
 現はれまして吾々の  命を救ひ玉ひてゆ
 ここに心をとり直し  罪亡ぼしの其為めに
 デビスの姫を背に負ひ  重たき足を引摺りつ
 テルモン山の神館  小国別の御前に
 お詫旁進み行く  吾身の上ぞ果敢なけれ
 アア惟神々々  御霊幸はひましまして
 ヘルが犯せし罪科を  一日も早く赦しまし
 生きては神の御用に立ち  死しては尊き天国の
 清き生涯送るべく  守らせ玉へ惟神
 天地を統ぶる大神の  御前に畏み祈ぎまつる』
と歌ひ乍らテルモン山の中腹、宮町を指して爪先上りの原野を帰り来る。種々雑多の旗を立てた宮町の老若男女はワックスを隊長とし、デビス姫を兎も角生捕らむものと、町内隈なく探し、遂に郊外にまで現はれて来た。求道居士一行は、そんな変事が起つてゐるとは夢にも知らず、悠々として宣伝歌を歌ひながら、道の傍のパインの森に少時息を休めて居た。群衆の喊声は時々刻々に高まり来る。
(大正一二・三・二四 旧二・八 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)
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