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文献名1霊界物語 第57巻 真善美愛 申の巻
文献名2第2篇 顕幽両通よみ(新仮名遣い)けんゆうりょうつう
文献名3第9章 婆娑〔1459〕よみ(新仮名遣い)ばしゃ
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ高姫はシャルと共にあばら家でさ湯を飲みながら、ブツブツ不機嫌な顔で小言をつぶやいている。日の出神なら陽気を温かくしてほしいとシャルが口答えすると、高姫はいつもの屁理屈で説教しにかかった。口答えするのも面倒になったシャルは、高姫の言うとおりに四つ辻に新しい見込み信者を引っ張り込みに文句をブツブツ言いながら出かけて行った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月25日(旧02月9日) 口述場所皆生温泉 浜屋 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年5月24日 愛善世界社版119頁 八幡書店版第10輯 302頁 修補版 校定版125頁 普及版55頁 初版 ページ備考
OBC rm5709
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本文  霜に打たれて茶滓のやうになつた椋の葉は、凩に吹かれてハラハラと小鳥の群立つやうに四辺に飛び散つて居る。木の葉の羽衣を脱いだ栗の梢には成育悪しき虫の綴つた毬栗が二つ三つ蜘蛛の巣と共に中空に慄つて居る。鴉は皺嗄声を出して岩窟の麓の屑屋葺の屋根にとまつて悲しげに鳴き立てる。どこともなしにボーンボーンと諸行無常を告ぐる梵鐘が聞えて来る。鬼哭耿々として寂寥身に迫り、歯の根も合はぬガタガタ慄ひ、破れ障子の隙間から耳を射すやうな凩がピウピウと矢のやうに這入つて来る。黒ずんだ破れ畳は歩く度毎に足にもつれつき、幾度となく人を転ばして笑つて居る。霜柱は覚束なげに一本橋を真白けに染め、川水は直濁に濁り、岩を噛んでは吠猛つて居る。高姫はシャルと共に裏の岩山から小柴の朽ちた、半水を含んだ枯枝を拾ひ来り、縁の欠けた囲爐裏に燻べ、耳の欠けた四角い湯釜を天釣に釣り下げ、真黒けの竹の柄杓で汲んでは飲み、汲んでは飲み、燻つた顔をつき合せ乍ら目玉計りをキヨロづかせ、又煽り乍ら、何かブツブツ不機嫌な顔をして囁いて居る。
高姫『これシャル、お前も此処へ来てから大分日日が立つたやうだが、もう些と此生宮の精神が分りさうなものぢやないか。朝から晩迄灰猫のやうに囲炉裏の傍にヘバリついて、湯ばかり餓鬼の様にガブガブ呑んで居ないで、些と外へ出て活動しては如何だい。第一霊国の天人の身魂日の出神の生宮に亡者引をさして、お前は灰猫爺の様に燻つて居ても、社会の為貢献する事が出来ないぢやないか。些と活動して貰はなくては、どうしてウラナイ教のお道が開けますかい。お前サンも見掛によらぬどたふしものだなア』
シャル『そりや何をおつシャールのだ、よう考へて御覧なさい。斯う俄に陽気が悪くなり夜とも昼とも分らぬやうな世の中にどうして活動が出来ますか。外はビユウビユウと凩が吹き、霜柱が立つて鴉さへも怖さうに啼いて居るぢやありませぬか。日の出神の生宮なら些と日輪様でも昇つて貰つて陽気が暖かくなるやうにして下さい。どれ程活動しようと思うても体が縮こまつて、寒うて淋しうて何だか怖ろしうて手も足も出せないぢやありませぬか。日の出神様も好い加減なものですよ。これ程毎日日日頼むのに日一日と寒くなる計り、こんな薄着でどうして日が越せませうか』
高姫『エエ訳の分らぬトマ助だなア。いつも云ふ通り苦労の塊の花が咲く御教だ。寒い目をするのも飢い目をするのも苦い目をするのも皆神様のお恵だよ。現世は仮の世と云うて、限りがある。どうせ一度は死なねばなりませぬよ。死んでから、エターナルに無上の歓喜を摂受し、天国の住民として暮さうと思へば、五十年や百年寒い目をしたつて飢い目をしたつて易いものだ。肉体を苦しめて、霊を鍛へ上げ、立派な立派な神の生宮となるのだよ。此高姫の事を考へて御覧なさい。何程日の出神の生宮と云うたつて、肉体が有る限り矢張りお前サンと同じやうに寒い時には寒い、飢い時には飢いのだ。結構な火と水とを戴いて喉が乾けば水を頂き寒ければ火を戴いて暖まる、何と云ふ勿体ない事を云ふのだえ。火と水とお土との御恩を忘れては人間は此世に立つてゆけないと何時も云ふぢやありませぬか。扨も扨も覚えの悪い健忘症だなア、苦しいのが結構だよ。苦しみの後には屹度楽しみが来る、寒い冬の後には春が来る、何程冬を春にしようとしても、それは天地のお規則だから、人間が左右する事は出来ませぬぞや』
シャル『何程、火の御恩と仰有つても、こう日月の光もなく、四面暗澹として闇が砕けたやうに、空から落ちて来ては根つから火も暖かうないぢやありませぬか。此処の火は、何だか水の中に屁を放つたやうに力がありませぬわ。何程焚いても焚いても体が暖まる所へはゆかず、煙たい計りで、焚物迄が腹を立てて、ブツブツ小言を云ひ、シユンシユンと涙迄澪して居るぢありませぬか。こんな火にあたつたところで燈明の火で尻を炙つて居るやうなものです。此頃の火は老耄たのでせうか、テント勢力がありませぬわ』
高姫『コレ、何と云ふ勿体ない事を云ふのだい。お燈明で尻を炙つたやうだなどとは怪体の事を云ふぢやないか。お前さまは霊が悪いから、精霊が籍を八寒地獄に置いて居るから、それで寒いのだよ。妾のやうに御神徳を頂きなさい。精霊は地獄、肉体は八衢に彷徨うて居るやうな事で、どうして神の生宮と云へますか』
シャル『何だか知りませぬが、高姫さまの仰有る事は些とも腹に這入りませぬがなア』
高姫『定つた事だよ、そこら中泥坊に歩いて居たやうな悪党者だから、一旦染み込んだ灰汁は容易に落ちはせぬワイ。誠水晶の塊の日本魂の結構な結構な生宮さまの身魂と、蛆虫の生いた糞まぶれの身魂とはどうしてもバツが合はないのは当然だ。何を云うても最奥第一霊国と最下層地獄に霊を置いて居る者との応対だから、妾が云ふ事が分らぬのも無理はないが、併しこう永らく妾の傍に居るのだから、も少しは身魂が研けさうなものだが矢張身魂が我羅苦多だから骨の折れる事だよ。毎日日日お前一人にかかつて言霊の原料が無くなるほど説き諭して居るのに、鵜の毛の露程も改心が出来てゐないぢやないか、盲聾と云ふものは、どうにもかうにも料理の仕様が無いものぢやなア。天人の霊にこの高姫が一言云うて分る事を、地獄霊のお前には数百万言を費さねばならぬのだから、本当に厄介者を引張込んだものだ。是でも神様は至仁至愛だからトコトン改心させねばならぬ。お前さへ改心して呉れたなら、世界中一遍に改心すると底津岩根の大神様が仰有るのだから何卒日の出神が手を合して頼むから、聞いて下さい。神も人一人改心させようと思へば骨が折れるぞよ。チト神の心も察して下されよ。日の出神の生宮の申した事は一分一厘毛筋の横巾程も間違ひは厶らぬぞよ』
シャル『高姫さま貴女の仰有る事は、一から十迄間違ひだらけぢやありませぬか。一つだつて貴女の仰有つた事が的中した事が無いぢやありませぬか。よう其れ程間違つた事を云うて置いて、自分から愛想が尽きない事ですな。……明日は日輪さまを出してやらう、若しこれが間違つたら日の出神は此世に居らぬぞよ……と啖呵を切つて置きながら、其日になるとザアザアと雨が降り、そこらが真黒けになつたぢやありませぬか。其時になつてお前さまは何んな顔をなさるかと考へて居れば……アア日の出神様御苦労様で厶います。日輪様がお上りなさらないのも御無理は厶いませぬ。此高姫の傍には身魂の曇つたものがシヤツついて居るから、仕様が厶いませぬ……とか何とか甘い理窟をつけて澄まし込んで厶るのだから、私も愛想が尽きました。よう考へて御覧なさい、仮令私が極悪人であらうとも一人の為にお日様が出なかつたり、空が曇つたりするやうな道理がありますか、万一私に曇りがある為に天地が曇るのなら私の一挙一動は天地に感動して居るやうなもの、そんな偉い者ぢやありますまい。お前さまは私の悪口を云ひ乍ら私を天地稀なる比類無き英雄豪傑にして下さつたやうなものだ。其処辺の点がどうしても私には合点がゆかないのですよ』
高姫『エエ何をつべこべと下らぬ理窟を云ふのだえ。お前は因縁の悪い身魂だからバラモン教からは追出され小盗人からは除ね出され、しよう事なしにこの高姫の尻に喰ひついて居るのぢやないか。お前のやうな我羅苦多が天地を動かすやうな力はありさうな事はない。併し乍ら神様がお前を世界悪の映象として三五教の変性女子のやうに型に出して厶るのだから、世界の悪身魂がお前に写り、お前の悪身魂が世界に写るのだ。それだからお前さへ改心して呉れたら世界中が改心致すと云ふのだよ。この日の出神は天も構へば地も構ふ、又八衢も構ふ大ミロク様の太柱だから、零落れて居ると思うて侮りて居ると、スコタンを喰ふ事が出来ますぞや。先を見て居て下され、先になりてから、……アア高姫さまは立派なお方だつた、こんな事なら、口答も致さず、も些と許り大事に敬うて居たらよかつた……と地団駄踏んでも後の祭り、何程其処になりて……改心致しますから助けて下され……と云つても日の出神は知りませぬぞや。さうだから今の間に柔順しう致して素直になさるがお主のお得だ。此世でさへも切替があるのに何をグヅグヅして厶るのだ。早く心の切替をなさらぬかいナ』
シャル『高姫さま本当ですかいな。そんな事云つて大法螺を吹くのぢやありませぬか、口から法螺を吹き、尻から喇叭を吹くのは当世の流行ものですからなア』
高姫『それはお前の悪が水晶の鏡の此生宮に写つて居るのだよ。……人の事だと思うて居ると皆吾事だぞよ……と変性男子のお筆に出て居るぢやありませぬか、犬が魚を銜へて一本橋の上を渡ると、水の底にも亦一匹の犬が居て魚を銜へ倒に立てつて歩いて居るのを見て……此奴怪しからぬ奴だ、足を天にし背中を地にして歩いて居る。一つ叱つてやれ……と、ワンと云うた途端に口に銜へて居た魚がバツサリと水の中へ落ちたと云ふ話があるだらう。恰度お前さまは橋の上の犬だ。水晶の水鏡、即ち高姫の霊にお前の醜い霊が写つて何事も逆様に取られるのだぞよ。蟇蛙の膏を取る時には四方八方ガラスを立てた箱に入れて置くと、四方八方に自分の醜い姿が写るので、自分の敵と思ひ、彼方へ突き当り、此方に飛びつき、終の果にはすつかり疲れて膏を出してカンピンタンになつて死ぬものだ。この高姫が悪く見えるのは約りお前さまの霊が悪いのだ。
 立ち向ふ人の姿は鏡なり
  己が心を写してや見む。

と云ふ道歌を考へて御覧なさい、皆人が悪く見えるのは自分が悪いからぢやぞえ。ても扨ても犬蛙人種と云ふものは仕方のないものだなア』
シャル『高姫さま、善言美辞の教だと何時も仰有るが、随分悪言暴語を放出なさるぢやありませぬか。それでは神の資格はゼロですよ』
高姫『それは又何と云ふ分らぬ事を云ふのだえ、最前からあれ程鏡の喩を引いて説明してやつたぢやないか。エエ鈍な身魂は困つたものだなア。高姫が悪言暴語するのはお前さまの霊が写つて居るのだ。いやお前さまのためだ。此高姫は半鐘のやうなものだ。柔かく打てば柔かく響く、強く打てば強く響く、高く打てば高く響く、低く打てば低い音が出るのだ。お前さまが下らぬ口を叩くからこんな言葉が出るのだよ。お前さまがモ些と素直になり、長上を敬ひ、もつと柔しき言葉を使へば柔しくなるのだ、……此神は従つて来れば誠に柔しき神であるなれど、敵対心で神の前に来て見よれ、鬼か蛇の相好になるぞや……』
シャル『モシ高姫さま、それや現界の理窟ぢやありませぬか、至仁至愛の大ミロク様なら、悪人が来れば尚可愛がり、善人が来れば又可愛がり、決して憎悪の念をお持ちなさらないのが神様でせう。己に敵する者に対して鬼畜の相を現はし、己に従ふ者には柔和の相を現はすと云ふのなら、お前さまを尊敬することが出来ませぬわ。何んな悪い者でも此方が親切にしてやれば喜んで従ひ、キツト恩返しをするものです。己に従ふものを愛し、敵するものを憎むのなら、それは自愛であつて、八衢人足や、地獄界の邪気のする業でせう。神様は決して憤慨したり憎悪したりなさるものぢやありませぬぞ。神様がもし憎悪の念を起したりなさるとすれば、神自体が既に亡ぶぢやありませぬか』
高姫『エエ、第一霊国の天人の申す事がお前等に分るものか、モ些と修業なされ。器が大きくなつたら此高姫の申す事が明白分るだらう。夫よりも早く四辻に出て旅人を引張つて来なさい。こう毎日日日結構な光陰を空費して居ては、天地の神様に勿体ない、一人でも改心さしてウラナイ教の信者を拵へねば、天地の神様に済まない。お前も此世に生れて来た甲斐があるまい。サア、トツトと四辻迄行つて来なさい』
シャル『高姫さま貴女も一緒に来て下さらぬか。又文治別とか云ふエンゼルがやつて来たら困りますからなア』
高姫『エエ何と云ふ気の弱い事を云ふのだい。文治別なんて、あんな者が千人や万人束に結うて来た所が、こたへるやうな生宮ぢやありませぬぞや』
シャル『ハハハハハ、どこ迄も我執の念の強い人ですなア。山を越え、谷を越え荊棘掻をしながら、のたくつて逃げたぢやありませぬか。なぜ夫程偉いお方なら、あのエンゼルを此処にじつとして居て凹ませてやらぬのですか』
高姫『エエ分らぬ男だなア。国治立尊様さへも謙譲の徳を守り悪神に世を譲つて艮へ退却なさつたぢやないか、そこが神様の尊い所だよ。此生宮も変性男子の系統ぢやから、謙譲の徳を守つてエンゼルに花を持たせて逃げてやつたのだよ。救世主の仁慈無限の精神が小盗人上りのお前に分らうか。「物言へば唇寒し秋の風」と、可惜口に風を引かすより、ここは一つ沈黙を守らう。サア早く四辻に行つて来なさい』
シャル『エ仕方がありませぬ、そんなら暫く行つて参ります。アア寒い事だなア。こんな事なら高姫さまの傍に居るのぢやなかつたに。今更ベル、ヘルの仲間に逆転すると云うても寄せても呉れまい。毎日日日亡者引をやつては撥ね飛ばされ、云ひ負されて耐つたものぢやないわ』
とブツブツ小言を云ひ乍ら、霜柱の置いた一本橋を怖さうに跨げながら出でて行く。
(大正一二・三・二五 旧二・九 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
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