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文献名1霊界物語 第58巻 真善美愛 酉の巻
文献名2第3篇 千波万波よみ(新仮名遣い)せんぱばんぱ
文献名3第12章 素破抜〔1487〕よみ(新仮名遣い)すっぱぬき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじダルは船中の無聊から阿呆陀羅文句を歌いだした。その歌は、ヤッコス、ハール、サボールの三人は偽の改心であり、キヨの港に着いたら三五教の宣伝使を一網打尽にしようと企んでいることをすっぱ抜き、今のうちにやっつけてしまおうと宣伝使たちに呼びかけていた。ヤッコス、ハール、サボールの三人は図星を指されて青い顔で震えていたが、伊太彦は三人に危害を加えるつもりはないと安心させ、何か歌うように促した。ヤッコスはダルの前に進むと左右の耳を握って弁解を歌いだした。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月29日(旧02月13日) 口述場所皆生温泉 浜屋 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年6月15日 愛善世界社版149頁 八幡書店版第10輯 423頁 修補版 校定版160頁 普及版57頁 初版 ページ備考
OBC rm5812
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本文  南北二百里の航路にはそろそろ退屈気分が漂ひ、いろいろと腮を解く雑談が初まつて来た。彼方にも此方にも欠伸に節をつけたり放屁を刻んだり、他愛もなく笑ひ狂ふて居る。ダルは船中の無聊を慰むる為め、骨と皮との餓鬼のやうな体を前後左右に揺り阿保陀羅文句を並べだした。
ダル『カカポコカカポコ、ポコポコポコ。──エー憚り乍ら、所は何処と尋ねましたら、愛想もこそも月の国、人を取り食ふ曲津神八岐の大蛇の住家なる、大雲山の岩窟に、後前バラバラ バラモンの、神を祭つた洞の中、中はホラホラ外はスブスブと、焼野の鼠ぢやないけれど、この世を乱すバラモンの、ガラクタ神が巣をくんで、彼方此方と駆け廻り、人の女房を誘拐し、汗水垂らして儲けた金を、スツカリコンのコンコロコンと、引つたくり、六百六号の御開山、鼻落ち女に現をぬかし、終の果にはフガフガフガと、鼻声交りに、痘痕の面を曝しつつ、人には嫌はれ鬼や悪魔と厭がられ、一人よがりのヒヨツトコ男、此処にも一人や三人は、あるかも知れないバラモンの、泥棒上りの目付役、おつとどつこい間違つた。泥棒やめて神様の、誠の教にコツクリコツと帰順をなされました。それは誠に誠に御結構とは云ふものの行先が、私は案じられてなりませぬ。キヨの港に着いたなら、ウンバラサンバラ、バラバラバラバラ バラモンの、捕吏の奴等がやつて来て、玉国別の宣伝使、神の使を初めとし、俺達二人を引んづかみ、惨い目見せて呉れむずと、心の鬼が角生やし、待つて居るのに違ひない、カカポコカカポコ、ポコポコポコ。人の心は分らない、改心したと見せかけて、これの湖水をまんまと渡り、岸へヒヨツクリコと登るや否や、又もや地金を現はして、目付の役を振り廻し、難い顔をして居るだらう。何程改心したとても、瓦は黄金になりはせぬ。身魂の悪い曲津神、何を云ふやら蜜柑やら、金柑桝で量るやら、橙だいの厄介物よ、これを思へば迂つかりと、温い夢みてネーブルと、云ふよな訳には参らない。罪の島へとやつて来て、蟹や貝をば漁りつつ、寄せ来る浪にも怯ぢ怖れ、腹はペコペコ胃袋を、充実させむと穴さがし、岩窟の口へとやつて来て、俺等の両腕引掴み、バラバラバラと引き裂いて、頭からかぶらうとした奴は、矢張り鬼の性来だ。これを思へば怖ろしや、チヤカポコチヤカポコ、ポコポコポコ。これこれ申し皆さまよ、随分用心なさいませ、虎狼を船に乗せ、虎穴に入つてやすやすと、睡つて居るよな剣呑さ、それより一層今此処で、同盟軍を組織して、改心したと見せかけて、猫を被つて居る狸、成敗したらどうでしよか、後の後悔間に合はぬ、こんな奴等の命をば、助けた所で世の為に、一つもなるでは有らうまい、お米が高うなる許り、製糞機械がウヨウヨと、辛い時節に迂路づいて、コソコソコソと暗いとこ、穴のありかを嗅つけて、スパイの役をする餓鬼は、人間姿の犬畜生、仇を打つなら今ぢやぞや、チヤカポコチヤカポコ、ポコポコポコ、骨と皮とになり果てた、ばつちよ笠見たよな俺等の、肉でも叩いて喰はうと、企んだ餓鬼は怖ろしい、因縁悪い生れつき、可愛さうだと思へども、吾身が可愛と思ふたら、敵をムザムザ許せない、悪人輩を平げて、根底の国へ追ひやれば、キツと世界の為となる、杢平も助も、田吾作も喜んで、お前は世界の救ひ主、偉い手柄をして呉れた、餅でもついて祝はうと、近所合壁呼び集へ、疳瘡や痒癬の親方を、ようま殺して下さつた、なぞと云ひ云ひ手を拍つて、踊り狂ふに違ひない、ああ面白い面白い、バラモン軍の目付役、ヤッコス、ハール、サボールの、贋改心の御大将、茲に本音を吹くがよい、海賊船に出会つた時、お前の視線が何となく、奇妙奇怪にキラキラと、光つて居たのを一寸見た。あの八艘の賊船は、初稚丸が安々と、キヨの港へ着いた時、関守さまと腹合せ、先へ帰つて待つて居て、苦労もなしに吾々を、一網打尽にふん縛り、甘く目的達成し、ハルナの都の鬼神の、前に手柄を立てやうと、深く企んで厶ろがな、そんな企みの分らない、玉国別の神司、神の使ぢやない程に、改心するのがお身の徳、ダルに的切り図星をば、指されて胸が痛からう、仮令天地は変るとも、ダルの言葉は変らない、俺の眼で睨んだら、決して間違ひ無い程に、コラコラどうだバラモンの、悪逆無道の目付役、もう斯うなつた上からは、お前の心の黒幕を、薩張こんと打ちあけて、心の底のどん底の、暗い穴迄見て置いた。これに間違ひあるまいぞ、これこれ皆さまこのダルが、申す言葉を疑はず、固く信じて下さんせ、私は観相に妙を得た、イヅミの国で名の高い、ダルのシヤンクと云ふ男、天眼力で調べました、この大湖の中央で、一つの成敗なされませ、後で後悔せぬやうに、夫れ夫れ御覧それ御覧、心の色が現はれた、青い顔してビリビリと、手足はワナワナ慄ひ出す、これが外れぬ証拠です、ああ惟神々々、叶はぬからとて涙ぐみ、魂は中空に飛び散つて、ズ蟹のやうに目玉迄、一寸先へつん出てる、さても愚僧が三千世界を遍歴し、数千万の人相を、取り調べたる経験上、どうしても此奴は悪人だ、芝をかぶらにや直らない、地獄に籍をおいて居る、奸怪変化の容器だ、ああ惟神、あのまア目玉の飛び出やう、アハハハハツハ、アハハハハ。呆れて物が云はれない、頭を掻いて俯向いて、青い顔して泡を吹く、イヒヒヒヒツヒイヒヒヒヒ。種々雑多と言葉を構へ佯り並べて肝腎要の命をば、暫しながらへ、陸に登つた其上で、以心伝心関守と、異様な眼を交換し、威張り散らしてインチキに、かけて吾等を縛らむと、企む心は顔色に、すつかり見えて居りますぞ、ウフフフフツフ、ウフフフフ。うかうか致して居りたなら、動きの取れぬ事になる、甘い言葉を並べたて、甘い汁をば絞らうと、甘く企んだ大泥棒、バラモン教の目付役、ヤッコス、ハール、サボールの、迂散な顔を見なされや、うるさい奴が乗つたものだ。エヘヘヘヘツヘ、エヘヘヘヘ。えぐいと云つてもこれ位、えぐたらしい、餓鬼どもが又と世界に有りませうか、遠慮会釈はいらないで、今から師弟の縁を切り、えたいの知れぬ餓鬼共を、一つ成敗なされませ、オホホホホツホ、オホホホホ。怖ろし企みを懐いてる、鬼か大蛇か曲神の、お化に等しき横道もの、心の底が現はれて、思へば思へばお気の毒、恐れ入つたかバラモンの、海賊上りの目付役、俺の言葉が違ふたら、お前の前で尻まくり、犬蹲になつてやろ、カカカカカツカ、カカカカカ。叶はぬ時の神頼み、蟹のやうなる泡吹ひて、悲しみ歎いて見た所で、もう勘忍は出来ないで、観念するのが第一だ、チヤカポコチヤカポコ、ポコポコポコ、未だ未だ先はあるけれど、頂くお金の愛想だけ、此先聞うと思ふたら、お金を沢山下しやんせ、肝腎要の正念場、供養の為にダルさまが、ゆるゆる申し述べませう、カカポコ カカポコ ポコポコポコ』
 ダルに素ツ破抜かれて、ヤッコス外二人は顔色を変へ、肩で息をして船底へ小さくなつて踞で居る、伊太彦は三人の前に進み寄り、
伊太『オイ、ヤッコス、お前達は何さう鬱いで居るのだ。滑稽交りの阿呆陀羅がお前達は気分が悪いのか、誰があんな事本当にするものか、間違つて、よしやお前達がダルの云つた通りの悪人であつたにせよ、酷い事はしないよ。そんな事をする位なら、罪の島へ残して置くのだ。吾々は紳士的態度を取るものだ。決して卑怯な事はしないよ。夫よりも歌でも歌つて機嫌を直したまへ。玉国別の先生だつて些とも気にかけて厶るやうな方ではないからなア』
ヤッコス『ハイ有難う厶います。それを承はつて安心致しました。ダルの奴どこ迄も私を恨んであんな讒言するのです。何卒御推量下さいませ』
伊太『ヨシヨシ、誰も彼れもみんな、心の盲は居ないから、腹のどん底迄分つて居るのだ。仮令仮にお前がダルの云つたやうな事を企んで居つたつて、そんな事にびくつくやうなものは一人も居ないのだから、安心したがよからう。お前も一つ歌でも歌つて船中の無聊を慰めたらどうだ』
ヤッコス『ハイ、有難う厶います。そんならお言葉に甘へ長の航路で厶いますから、不調法ながら歌はして頂きませう』
伊太『ヨシヨシ、何でも構はぬ、一つ機嫌を直して歌つてくれ』
ヤッコス『ハイ有難う、御免下さい』
と云ひ乍ら、ダルの前にツカツカと進み、ダルが左右の耳を自分の両手でグツと握り、顔を前へ突き出して、一口歌つては、首をしやくり、一口歌つては首をしやくり乍ら弁解的阿呆駄羅経を喋り出した。
(大正一二・三・二九 旧二・一三 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
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