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文献名1霊界物語 第63巻 山河草木 寅の巻
文献名2第3篇 幽迷怪道よみ(新仮名遣い)ゆうめいかいどう
文献名3第14章 嬉し涙〔1621〕よみ(新仮名遣い)うれしなみだ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ黒雲がもうもうとして天地四方を包み、夜とも昼とも見わけのつかない光景となってきた。吹き来る風はなまぐさく湿っぽく、表面は冷たいのに熱気を含んでいた。伊太彦一行は相当に高い山に行き当たり、ほかに道がないため登って行った。険しい道を行くと、四方八方から嫌らしい泣き声が聞こえてくる。一行は天津祝詞を奏上しようとしたが、唇が強直してどうしても声を発することができなかった。山の頂で一行はへとへとになり、倒れてしまった。そこへ下の方から一人の婆がすたすたと登ってきて、自分は高姫を守護している銀毛八尾の狐だと名乗った。狐は、アスマガルダが高姫を打擲しようとしたため高姫は家を飛び出してどこかへ行ってしまい、その恨みで一行をこの山に踏み迷わせたのだという。狐は地獄に落ちたくなければ降参して言うことを聞け、と脅した。五人は声が出ないまま、しきりに首を振って抵抗する。狐の婆はいばらの鞭を振り上げて伊太彦の頭を打ち付けた。伊太彦は血を流しながら、決して三五教の教えは捨てないと首を振っている。ベースはこの様の恐ろしさにくじけ、首を縦に振りだした。狐婆は妖術で座布団を出すとベースをその上に座らせ、果物や葡萄酒を与えた。ベース以外の者はみな、伊太彦どうように依然として首を横に振っている。婆はベースのように観念しろと脅しながらますます鞭で四人を打ち据えた。四人は運を天に任せ、心のうちに神を念じていた。すると山岳も崩れるばかりに犬の唸り声が聞こえてきた。この声を聴くと婆は銀毛八尾の正体を現して逃げ出した。四人はにわかに元気回復し、血潮の痕跡もなく、すっくと立ちあがって天津祝詞を奏上した。ベースは茨の中に突っ込まれて唸っている。四人がベースのために祈っていると、猛犬スマートを連れた初稚姫の精霊が現れた。初稚姫は、伊太彦たちが試験に及第したと告げ、ウバナンダ竜王の玉を取って帰るようにと告げた。初稚姫が天津祝詞を奏上すると、気が付けば一行五人は竜王の岩窟に、邪気に打たれて倒れていた。伊太彦たちは嬉し涙を流し、両手を合わせて初稚姫を伏し拝んでいる。岩窟の奥の方から鏡のように光る大火団が現れ、一同の前に爆発した。そこには優美高尚な美人が十二人の侍女をしたがえていた。美人は初稚姫に向かって手を仕え、自分は神代の昔、大八洲彦命によって改心の修行のために岩窟に押し込まれたウバナンダ竜王であると名乗った。時がきて宣伝使が玉を受け取りにやってきたが、伊太彦の神力が奥方のために薄らいでしまい、解脱できずに困っていたという。五人が竜神の毒気で魂が離脱してしまっていたところ、初稚姫がやってきて言霊を聞かせてくれたおかげで解脱ができ、このような天女になることができたと明かした。ウバナンダ竜王は伊太彦に、玉を授けるのでエルサレムに行って献じるようにと告げ、自分たちは眷属たちとともにハルナの都の言霊戦を陰ながら支援すると伝えた。竜王は玉を伊太彦に渡し、初稚姫に改めて感謝を述べた。一同はそれぞれ述懐を述べ竜王に別れを告げた。竜王は雲を起こして侍女たちとともに空中に舞い上がり、姿は煙のように消えてしまった。初稚姫は岩窟の細い穴を伝って磯端に出た。一行も後に続いて出てみると、そこには玉国別と治道居士の一行が船を横づけにして待っていた。伊太彦は船に飛び乗ると、玉国別にしがみつきうれし泣きに泣いた。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年05月25日(旧04月10日) 口述場所教主殿 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1926(大正15)年2月3日 愛善世界社版192頁 八幡書店版第11輯 331頁 修補版 校定版197頁 普及版64頁 初版 ページ備考
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本文  黒雲濛々として天地四方を包み、夜とも昼とも見別のつかぬやうな光景となつて来た。吹き来る風は何となく腥く、且つ湿つぽく、表面は冷たく、どこやらに熱気を含み、体から沾つた汗の滲む空気である。伊太彦一行は足に任せて、方向も定めず、膝栗毛の続く限り進んで行くと、相当に高い岩骨の山の麓に行き当つた。相当に高い山らしいが、五合目あたりから、灰色の雲が包んで巓を見る事が出来なかつた。一行は此山を登るより道がない。針のやうな草や、荊の間を種々と苦心して右へ避け左へ避け、板壁のやうな嶮しい所を登つて往く。四方八方から、何とも知れぬ悲しいやうな嫌らしいやうな泣声が聞えて来る。猿の声でもなければ秋の夕の虫の音でもない。実に絶望の淵に沈んだ時のやうな嘆声である。一行は天津祝詞を奏上せむとしたが、どうしても唇が強直して声を発する事が出来なかつた。灰色の雲の中へ身を没するやうになると、スーラヤ山の死線を越えた時のやうな再び不快の気分に襲はれた。一同は不言不語運を天に任し、伊太彦の後に従ひ登つて往くと、山の巓は、蠣殻を打ちあけたやうな小石が一面に被さつて居て恰も剣の山を登るが如くであつた。伊太彦は頂上のバラの花のやうな形した岩の上にソツと腰を下した。後れ馳せながら四人はヘトヘトになり、顔色蒼白め、唇を紫色に染め、さも絶望の淵に沈んだやうな面貌で辿りつき、気息奄々として夏犬のやうに舌を垂らし、胸に浪をうたせながら蠣殻のやうな小石の上に倒れて仕舞つた。
 其処へ下の方からスタスタ偉ひ勢で登つて来た一人の婆がある。一同の屁古垂れた姿を見て婆は大口を開いて、
婆『オホヽヽヽ。これや伊太に阿魔女に三人のガラクタ共、往生致したか。もう此処迄来た以上は往も戻りもならず、此処で露の命を捨てて八万地獄へ落ちるのだが、夫でもお詫を致して助けて貰ふ気はないか。三五教の宣伝使だなどと申て、よくもよくも世界を股にかけて歩きよるな。俺を誰だと思ふて居るか。高姫の守護を致して居る銀毛八尾のお稲荷様だぞ。これや開いた口が窄まるまい。一口でも喋るなら喋つて見い。アスマガルダの馬鹿者が、此方の肉の宮を打擲せむと致し嚇かしやがつた為めに、此方の生宮は、とうとう吾家を飛び出し行衛不明となつて仕舞つたのだ。恨を晴らさうと思ひ此方の計略によつて、此山に踏み迷はしてやつたのだ。サア、心を改めてウラナイ教に帰順致すか、どうだ、きつぱりと返答致せ。いやいや返答は出来まい。耳は聾、口は開かず、言葉も出ぬものだから、併し耳は少し聞えるだらう。此方の申すやうに致すなら首を縦にふれ。ても扨てもいげつないものだなア、ても扨ても小気味よい事だなア、オツホヽヽヽ』
 伊太彦は発言機関の止まつた悲しさに、一言も発する事を得ず、頻に首を横に振つて居る。外四人も伊太彦に做らつて機械人形のやうに首を横に振る。
婆『ても扨ても、ど渋太い奴だなア。絶対絶命の場合になつても、まだ俺の云ふ事が分らぬのか。銅屑の霊と云ふものは因果なものだなア。これや伊太彦』
と茨の笞をふり上げて、伊太彦の頭を続け打ちに十二三打ち続けた。頭部からは、花火の薄のやうに血がボトボトと線を劃して流れ出づる其痛ましさ。伊太彦は目をつぶつたまま、仮令死んでも三五教の教は捨てぬ。如何な責苦にあつても、ウラナイ教に帰順するものかと益々首を横に振る。婆は又々鞭を加へる。此体を見たベースは驚いて、そろそろ首を縦に振り出した。妖婆はさも嬉しさうに、忌やらしい笑を泛べて、
婆『オホヽヽヽ。お前はベースだな。よしよし偉いものだ。本当に水晶玉だ。五人の中でお前一人。「改心すれば其日から楽になるぞよ」と仰有るのだから、みせしめのため此処で一つお前に天国の楽みを与へてやらう』
と云ひ乍ら、懐から、小さい玉のやうなものを取り出しブーブーと口に当て吹くと、フワリとした綾錦の座布団が七八枚、其処に現れた。
婆『ホヽヽヽ、これやどうだ、銀毛八尾様のお働きはこんなものだよ、さあベース、さぞ足が痛からう。此上に坐りなされ。さあチヤツと坐りなされ。そして、腹が空いただらう。此玉を吹きさへすればお前の望み通りの美味の物が出て来るのだ』
と云ひ乍ら、ベースの体を鷲掴みにして七八枚重ねた柔かい布団の上に坐らした。ベースは四人の者に気兼し乍ら坐つた。婆はいろんな果物や、葡萄酒などを玉を吹ひては拵へ、ベースに与へて居る。アスマガルダも、ブラヷーダも、カークスも伊太彦同様で依然として首を横に振つて居る。妖婆は之を見て、さも慨歎したやうに、
婆『ても扨ても因縁の悪いみ魂だなア。此やうに結構にして助けてやらうと思ふのに、こんな責苦に遇ふてもまだ我を立て通しよる。何奴も此奴も首を横に振りやがつて、エヽ俺が善悪の鏡を出して見せてやらう。皆がベースのやうにすればよいのだ。俺だつて何も此様なひどい事をしたくはないが、八岐大蛇様からの御命令だから仕方なしにやるのだ』
と云ひ乍ら、又もや茨の笞で三人を打ち据ゑる。流血淋漓として目も当てられぬ無残さ、四人は運を天に任して心の中に神を念じて居た。何処とも無く山岳を崩るる許りの犬の声、
『ウーワウ ワウ ワウ』
 此声を聞くより妖婆は忽ち銀毛八尾の正体を現はし、倒けつ輾びつ雲を霞と逃げて行く。伊太彦、ブラヷーダ、アスマガルダ、カークスの四人は此声の耳に入るや俄に元気回復し言霊を自由に発する事を得た。さうして今迄滴つて居た血潮は痕跡も留めず、元の如く元気よき面貌となり矗と立ち上り、天津祝詞を奏上した。ベースはと見れば猿取荊の中に突つ込まれてウンウンと唸つて居る。
伊太『あゝ惟神霊幸倍坐世』
 三人も一度に、
『惟神霊幸倍坐世』
カークス『もし伊太彦の宣伝使様、怪体の事があるものぢやありませぬか。高姫の守護神奴がこんな所迄やつて来まして、吾々を試みようと致しましたが、犬の声が聞えると忽ち正体を現はして逃げて仕舞つたぢや厶いませぬか。矢張神様は信仰せねばなりませぬなア』
 伊太彦は有難涙を流し乍ら、
伊太『アヽ、何とも有難くて言葉も出ませぬわい。時にベースは何処へ行つたのでせうな』
アスマガルダ『ここの猿取荊の中に真裸体にせられ血塗になつて苦しんで居ます。何とかして助けてやりたいものですなア』
伊太『吾々一同が神様にお願ひして救ふて頂くより仕方がないなア。サアお願ひせう』
と茲に四人は一同に天津祝詞を奏上し、ベースの取違をお詫し、稍暫し汗みどろになつて祈願を凝らした。ベースはウンウンと唸つて居る許りである。其処へ忽然として猛犬スマートを引き連れて現はれたのは初稚姫の精霊であつた。四人は姫の姿を見るより喜びと驚きとにうたれ暫時、言葉もなく、姫の端麗なる顔を見詰めて居る。
初稚『伊太彦さま、貴方は試験に及第致しました。サアこれからウバナンダ竜王の玉を受取つて聖地にお出なさいませ。妾は貴方がスーラヤ山にお登りになつたと聞き、スマートと共に船を雇うて当山に登り貴方の身の安全を守護して居りました。最早安心なさいませ』
と云ひながら迦陵嚬伽のやうな麗しい声を出して天津祝詞を奏上したまふた。ハツと気がついて見れば伊太彦以下四人は竜王の岩窟に、邪気に打たれて倒れて居たのである。
伊太『あゝ矢張り此処は竜王の岩窟で厶いましたかなア。大変な所へ往つて居りました。よくまアお助け下さいました、有難う厶います』
 外四人は嬉し涙を垂らしながら、両手を合せ、初稚姫を伏し拝んで居る。斯る所へ岩窟の奥の方より、鏡の如く光る大火団現れ来り、一同の前に爆発するよと見る間に、得も云はれぬ優美高尚なる美人が、十二人の侍女を従へ現はれ来り、初稚姫に向ひ手を仕へ、
竜女『妾は神代の昔より大八洲彦命様に改心の為め此岩窟に閉ぢ込められ、今迄修業を致して居りましたウバナンダ竜王で厶います。此度神政成就について如何なる悪神もお赦し下さる時節が参りましたので、誰かお助けに来て下さるだらうと、今日迄この宝玉を大切に保護して待つて居りました。所が伊太彦の宣伝使様が四人の伴を連れて、お出でになりましたが、斯う申すと何で厶いますが、もう些し御神力が奥さまに引かされて薄らいで居ますので、私が解脱する事も出来ませず、困つて居りました。すると伊太彦様外御一同は竜神の毒気に打たれ、精霊が脱け出され死人同様になられ困つた事だと思つて居ました所、神力無限の貴女様がお出になりまして言霊を聞かして下さつたので、昔の罪障も解け、執着心も取れて今迄の醜しかつた姿も消え、こんな天女となりました。併しこの玉は伊太彦さまにお授け致しますから、エルサレムに行き此玉を献じお手柄をなさつて下さい。妾は十二人の侍女と共に天に登り、ハルナの都の言向け和しに影乍らお助けを申ます』
と云ひながら、夜光の玉を伊太彦に渡した。伊太彦は手足を慄はせ乍ら押し戴き、叮嚀に布を以て包み懐に入れた。
初稚『竜王殿お目出度う厶います。嘸神様も御満足遊ばす事で厶いませう』
竜王『ハイ、お蔭で助けて頂きました。此御恩は決して忘れは致しませぬ』

竜王『久方の天津国より天降りませし
  姫の命に救はれにけり。

 いざさらば天津御国にまひのぼり
  月の御神に仕へまつらむ』

初稚姫『古ゆ、暗きにかくれたまひたる
  汝が命を救ひし嬉しさ。

 久方の月の御国に登りまさば
  吾神業を伝へたまはれ』

竜王『有難し此有様を委曲に
  申上なむ月の御神に』

伊太彦『タクシャカのナーガラシャーを言向けて
  心傲りし吾ぞうたてき』

ブラヷーダ『背の君の厳の力を包みたる
  妾は醜の曲津神なりし。

 さりながら心改め今よりは
  神の大道に専ら仕へむ』

初稚姫『皇神をまづ第一と崇めつつ
  伊太彦司をいつくしみませ』

ブラヷーダ『有難し姫の命の御教は
  胸に刻みて忘れざらまし』

アスマガルダ『伊太彦やわが妹に従ひて
  思はぬ恵に逢ひにけるかな』

カークス『もろもろの神の試に遇ひながら
  今は嬉しき光見るかな』

ベース『曲神にたぶらかされて思はずも
  道に背きし吾ぞ悲しき。

 暗国の山の尾上に登りつめ
  心を変へし身の恥かしさよ。

 御恵の限知られぬ皇神は
  此罪人も赦したまひぬ』

初稚姫『いざさらばウバナンダ竜王永久の
  住家を捨てて御国に入りませ』

竜王『ありがたし姫の命の御言葉に
  天翔りつつ神国に往かむ』

 かく互に歌を取り交し竜王に別れを告げた。竜王は十二人の侍女と共に岩窟より雲を起し空中に舞ひ上り、忽ち姿は煙の如く消えて仕舞つた。初稚姫は岩窟の細き穴を伝ふて磯端に出た。此処は平素波荒く巨巌屹立し船の近づく事の出来ぬ難所である。さうして外に出れば底ひも知れぬ水の深さに、船を置く場所もなく、スーラヤの湖の大難所と称へられ、船人の恐れて近寄らなかつた所である。初稚姫、スマートの後に従ひ五人は細い穴を潜つて出て見ると其処には玉国別、治道居士の一行が船を横付けにして待つて居る。伊太彦は飛び立つばかり喜んで船に飛び乗り、玉国別に獅噛みつき嬉し泣きに泣いて居る。玉国別も唯、嬉し涙に咽んで落涙する計りであつた。あゝ惟神霊幸倍坐世。
(大正一二・五・二五 旧四・一〇 於教主殿 加藤明子録)
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