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文献名1霊界物語 第66巻 山河草木 巳の巻
文献名2第1篇 月の高原よみ(新仮名遣い)つきのこうげん
文献名3第1章 暁の空〔1683〕よみ(新仮名遣い)あかつきのそら
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-04-10 14:11:08
あらすじ
主な人物【セ】照国別、梅公、照公、サンヨ(老婆)、タクソン(乙)、エルソン(甲)【場】-【名】神素盞嗚大神、八島主命、清照姫、黄金姫、大足別、花香(妹)、姉(ヨリコ姫) 舞台トルマン国のタライの村のサンヨの家 口述日1924(大正13)年12月15日(旧11月19日) 口述場所祥雲閣 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1926(大正15)年6月29日 愛善世界社版7頁 八幡書店版第11輯 731頁 修補版 校定版7頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm6601
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本文  三千世界の救世主  泥にまみれし現世を
 洗ひ清むる瑞御霊  神素盞嗚の大神の
 堅磐常磐に鎮まれる  ウブスナ山の大霊場
 斎苑の館の神柱  八島の主の命を受け
 此世の運命月の国  ハルナの都に蟠まる
 醜の曲津を三五の  誠の道に言向けて
 世界の平和と幸福を  来さむ為の宣伝使
 常夜の暗も照国の  別命は国公や
 梅公、照公伴ひて  荒風すさぶ河鹿山
 霜にふるへる冬木立  神の使命を畏みて
 スタスタ登り下りつつ  数多の敵の屯せる
 難所を漸く突破して  水底までも澄み渡る
 葵の沼の月影も  清照姫や黄金姫の
 教司に廻り合ひ  茲に袂を別ちつつ
 神の依さしの宣伝歌  声も涼しく唄ひつつ
 東南を指して行く  月日重ねて漸くに
 デカタン国の高原地  タライの村の棒鼻の
 茶屋の表に着きにけり。
梅公『先生、葵の沼も随分広いものですな。清照姫様、黄金姫様にお別れしてから、一瀉千里の勢で、人造テクシーに乗つて、随分駆け出した積ですが、たうとう夜が明けたぢやありませぬか。速力といひ、時間から考へて見れば、先づ二十里は確に突破したでせう。其間は一方は湖面の月、一方は茫々たる原野、人家も無く、時々怪獣の逃出す音に驚かされ、やツと此処で人家を見つけ、休息しようとすれば、どの家も此家も戸を締めて静まり返つてゐるぢやありませぬか』
照国『ウン、旭のガンガンとお照り遊ばすのに、気楽な所と見える哩。茫漠たる原野に人口稀薄と来てゐるのだから、生存競争だとか、生活難だとかいふ忌まはしい騒ぎも起らず、太平の夢を貪つてゐる此国人は、実に羨ましいぢやないか』
梅公『併し先生、私の考へでは各戸戸締めをして静まり返つてゐるのは、貴方の仰有る太平の夢ぢやありますまい。コレ御覧なさい、此処には血汐が流れて居ります。此血は決して犬や豚の血ぢやありますまい。大足別の部下が人民を殺害したり、いろいろの凶悪な事を行つた記念ではありますまいか。私の考へでは、人民が恐れて戸をしめて、息を殺してゐるのだらうと思ひますがな』
照国『大足別将軍がどうやら此処を通過したらしいから、或は掠奪、強盗、強姦、殺戮など、所在悪業をやりよつたかも知れないなア。実にバラモン軍といふ奴は乱暴な代物だ、兎も角此家を叩き起して様子を聞いてみようぢやないか』
梅公『何だか私は体内の憤怒といふ怪物が頭を擡げ出し、胸中聊か不穏になつて来ました。ヒヨツとしたら、此家の中にはバラモンの頭株が潜伏してるのではありますまいか。里人は已に已に家を捨てて逃去り、其後へバラモンの奴、ぬつけりこと住み込んで、吾々を騙討する計画かも知れませぬぜ』
照国『とも角、戸を叩いて呼起し、内部の秘密を調査してみようぢやないか』
梅公『オイ、照さま、君は何をふさぎ込んでゐるのだ。こんな所でへこたれて何うするのだい。これからが千騎一騎の性念場だぞ。神軍の勇士が、其青ざめた面は何だい』
照公『別に欝ぎ込んでゐるのぢやない』
梅公『そんなら何だ。心の戸締めをやつて、此家の主人の如く、家の隅くたで慄うてゐるのだらう。何時も偉相に云つてゐる刹那心はどこで紛失して了つたのだ』
照公『先づ此家を開けて見給へ、誰も居ないだらう。人間の住んでゐる家は屋根の棟を見ても活々してゐる。ここはキツト空家だよ』
梅公『馬鹿云ふな、何程不景気でも家賃が高くつても、かう五軒も六軒も空家が並ぶ道理がない。又空家なれば、はすかいピシヤンがあり相なものだ。斜かい紙の貼つてないとこを見れば人がゐるに定つてゐるワ』
照公『斜かひピシヤンつて何の事だい』
梅公『ハヽヽヽヽ世情に通じない坊んさまだなア。斜かいピシヤンといふことは、白い紙に貸家と書いて、戸をピシヤンと締め、それを斜交ひに貼ることだ。それのしてない所はキツと人がゐるのだ。兎も角戸を叩いてやらうかい。三千世界の救世主、其救世主のお使が門に立つてゐるのに、心の盲、心の聾は門を開いて迎へ入れ奉り平和と幸福とを味はふことを知らないものだ』
と云ひ乍ら、ドンドンドンと拳を固めて、メツタ矢鱈に、戸の破れる程叩きつけた。幾ら打つても叩いても、鼠の声一つ聞えて来ない。
梅公『どうも不思議だなア。不在の中へ無理に這入れば空巣狙ひと誤解されるなり、又仮令人が居つてもお入りなさいと云はない限りは、家宅侵入罪となるなり、コリヤ断念して、どつか外の家へ行つて休息することにしよう。先生、さう願つたら何うでせうか』
照国『ウン、お前の云ふのも一応尤もだが、思ひ切つて戸を叩き破つてでも這入らうぢやないか』
梅公『先生の御命令とあればやつつけませう』
と無理に戸を引開け、屋内に三人は進み入つた。見れば余り広からぬ座敷の隅に、雁字がらめに縛られ、額口から血を出して、虫の息になつた老婆が一人横たはつてゐる。
梅公『先生、ヤツパリ空家ではありませぬワ。可哀相にこんな老人が、しかも眉間に傷をうけ、雁字搦めにくくられて居るではありませぬか。此婆さまを助けて、事情を聞きませうか』
照国『あゝ兎も角神様に御願しよう。サアお前達も私と一緒に神言を奏上しよう』
 『ハイ畏まりました』と梅、照の両人は音吐朗々として神言を奏上し、天の数歌を数回繰返した。老婆は初めて気のついたかの如く、秋の虫の霜に悩みし如き細き声を張上て、
老婆『何れの方かは知りませぬが、よくマアお助け下さいました。どうぞ、お慈悲に此縄を解いて下さいませ』
梅公『お前が頼まなくても助けに来たのだ』
と言ひ乍ら、短刀を取出し縄目をプツと切つて、
梅公『サアサアお婆さま、安心なさい。モウ吾々が現はれた以上は、虎でも狼でも獅子でも恐るるに足らない。ここにゐられる先生は照国別といつて、神力無双の勇士だよ。これには何か深い理由があるだらう。一度話て下さらぬか』
老婆『ハイ有難う厶います。喉が渇いてをりますから、恐れながら水一杯戴けますまいか』
梅公『ヨシヨシ水は無代だ。お前が青息吐息をついてる九死一生の場合を、葵の沼で無料で購入して来た水筒の水、サアサア遠慮はいらぬ、幾らなつと呑みなさい。一杯で足りなけりや、若い者の足だ、幾らでも汲んで来てやらう』
と水筒を老婆の口にあてた。老婆は飢え渇いた餓鬼の如く、クツクツと喉を鳴らし、瞬く間に水筒を空にして了つた。
梅公『これが所謂命の清水だ、瑞の霊の御利益だ。婆さましつかりしなさいや』
老婆『ハイ有難う厶います。貴方に頂いた此清水、五臓六腑に浸み渡り、体中が活々として参りました。そして俄に温かくなつて参りました。有難う厶います』
照公『時に梅公、此御婆さまの額口にはエライ傷が出来てるぢやないか。此傷をば直してやらなくちやならうまい』
梅公『オイ照さま、お土だ お土だ』
 照公は『成程』とうなづき乍ら、表へ駆出し、一握りの黄色い真土を取つて来て、婆さまの疵口に塗り、繃帯で鉢巻をさせ、二三回数歌を奏上し、
照公『サアお婆さま、これですぐ平癒するよ』
老婆『ハイ、おかげ様で最早痛みがとまりました。人を悩める神もあれば、人を助ける神もあるとは、よく云つたことで厶います。貴方は本当に救世主で厶います。此御恩は決して忘れは致しませぬ。私はサンヨと申す者で若い時から夫に離れ、二人の娘と細い煙を立てて暮して居りましたが、姉の方は性質が悪く、十八の春私の宅に泊つた修験者に拐かされ、行衛は知れず、あとに残つた一人の妹を力として、余命をつないで居りました所、バラモン軍の大足別将軍の部下がやつて参りまして、私の娘を掠奪しようと致しますので命に代へても渡されないと拒みました所、何と云つても老人の非力、一方は血気盛りの命知らずの軍人、五六人の奴に、貴方の御覧の通り、手足を雁字り巻に縛られ、刀のむねで額を打たれ、致死期の際に、貴方に助けられたので厶いますが、何うか貴方等の御神力によりまして、誠につけ上りのした願なれど、モ一度娘に合はせて下さることは出来ますまいかなア』
と老の涙に膝をぬらしてゐる。照国別は気の毒さに堪へず『ウン』と云つた切り、両眼を塞いで、何事か祈願をこらしてゐる。照公も両眼に涙を浮かべ、老婆の痩こけた哀れな面を見つめてゐた。老婆は一行の面を打仰ぎ乍ら、宣伝使の返答いかにと待ち佗面である。少時は沈黙の幕が四人の間におりた。
梅公『婆アさま、其さらはれた娘といふのは年頃は幾つだな』
サンヨ『数へ年十八歳で厶います』
梅公『年は二八か二九からぬ、花の莟の真娘、人もあらうに、バラモン軍にさらはれるとは因果な母娘だなア。ヨーシ、私も人を救ふ宣伝使の卵だ。男子が一旦こんなことを聞いた以上、何うして見逃すことが出来よう。義侠心とかいふ奴、私の肚の中でソロソロ動員令を発布しさうだ。婆さま安心なさい。キツト私が取返してみよう、男子の言葉に二言はありませぬぞや』
サンヨ『有難う厶います。枯木に花の咲いたやうな気分になりました。私の生命は何うなつても惜みませぬから、どうかあの娘をお救ひ下さいませ。そして私は最早老齢、此世に少しも未練は厶いませぬが、姉といひ妹といひ、行衛が知れないので厶います。どうぞ貴方がどちらかにお会ひ下さらば、娘の身の上をお任せ致します』
梅公『お婆さま、お前の娘とあらば随分別嬪だらうな。お前の面立ちも一しほ気品が高く、昔は花にウソつく美人であつたらう。其俤がまだ残つてゐるよ』
サンヨ『ホヽヽヽ御冗談斗り仰有いまして……私は此通り皺苦茶だらけの狸婆で厶いますが、親の口から申すと何だか自慢のやうに厶いませうが、此里きつての美人だと、娘は言はれて居りました』
梅公『さうだらう、美人と聞けば猶更憐れを一層増すやうだ。お婆さま、心配なさいますな。キツト此梅公が助けて見せませう』
サンヨ『何分宜しう願ひます』
照公『オイ梅公、美人と聞いて、俄に貴様の顔色がよくなつたぢやないか、ハツハヽヽ』
梅公『一度に開く梅公の花嫁だ。キツと俺のムニヤ ムニヤ ムニヤ』
照公『ハヽヽヽヽ、たうとうあとをボカして了ひよつたな。併し先生、梅公が軽率にも、美人と聞いて安請合に請合ましたが、何うでせう、ここの娘も気の毒だが、大足別の部下が行く先々で所在悪虐無道をやつてゐると思へば、ここの娘の一人に全力を尽す訳にも行きますまい。あなたと私は一時も早く此場を立去り、ここの娘の一件は梅公に一任しておこうぢやありませぬか』
照国『いや、心配はいらぬ。何事も吾々の耳に入つた以上は、キツト神様の御引合せだから、娘さまの所在も分るだらう。又お婆さまも益々壮健になり、千歳の命を保つであらう。兎も角三人が肚を合せ、御神業の為に進まうぢやないか。コレコレお婆さま、照国別が呑み込んだ、キツト二人の娘を助けて上げませう』
サンヨ『ハイ有難う厶います。何分宜しくお慈悲を願ひます』
と、とめどもなく涙にひたつてゐる。
 かかる所へ門口のあいたのを幸、二人の男が慌ただしく入り来り、
甲『オイ婆さま、お前の宅は別状ないかなア』
乙『実ア、婆さま一人、娘一人、バラモン軍の襲来で困つて居るだらうから、助けに来たいと思うたが、何分俺の女房迄取さらへられて取返すことの出来ないやうな場合で、残念だつた。どうぢや、花香さまは、御無事だつたかなア』
サンヨ『あゝお前は、タクソン、エルソンのお二人さまか、ようマア親切に来て下さつた。残念乍ら娘の花香はバラモン軍にかつさらはれました。オンオンオン』
と村人の親切な言葉を聞いて恥も外聞も忘れて泣き倒れる。
タクソン『お婆さま、心配するな。キツト、バラモンの神様の御守護で、時節をまつてをれば、親子の対面をさして下さるだらう。私だつて女房を取られ、財産をボツたくられ、実に悲しい目に会うたけれど、日頃信仰のおかげで何事も神様に任せ、慰めてゐるのだ。あーあ』
と吐息をつく。
サンヨ『私は娘を取られ、吾身は雁字搦みにしばられ、剣のむねにて眉間を打たれ、虫の息になつてゐた所を、此先生方が御親切にお尋ね下さつて、いろいろと介抱なし下さつたおかげで、甦つたのだよ。どうか、此方々に御礼を申して下さい』
タクソン『ヤ、余りあわててゐるので、三人のお方に御挨拶も忘れてゐた。……コレハコレハお三人さま、誠に失礼を致しました。そして貴師はバラモンの宣伝使で厶いますか』
梅公『イヤ、吾々はバラモンではない。斎苑の館の瑞の御霊大神の神勅を奉じ、天下を救済に廻つてゐる三五教の宣伝使だ』
 タクソン、エルソンの二人は『ハツ』と驚き両手をついて、落涙し乍ら感謝の意を表してゐる。高原を吹渡る名物の大風は窓の戸をガタつかせ乍ら、ヒユーヒユーと怪しき声を立てて北から南へ渡つて行く。
(大正一三・一二・一五 旧一一・一九 於祥雲閣 松村真澄録)
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