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文献名1霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻
文献名2第5篇 神風駘蕩よみ(新仮名遣い)しんぷうたいとう
文献名3第18章 救の網〔1742〕よみ(新仮名遣い)すくいのあみ
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじインデス河の激流の上にかかる橋の袂に、番小屋があった。月夜に比丘姿のアリナが、この番小屋で体を休めていた。そこへ、アリナの行方を追ってきた右守サクレンスと、その部下たち捜索隊がやってきて、アリナと同席する。アリナは修験者のふりをして右守の企みをすっぱ抜くが、最後に自分の素性を明かして、右守に挑みかかる。アリナは追っ手の白刃をかわして逃げ出すが、橋杭につまづき、激流の中に落ち込んでしまった。右守はアリナが死んだものと思い、帰っていく。一方、民衆救護団長のバランスは、その下流で子分たちと密漁をしていたが、その網にかかったのが、瀕死のアリナであった。そこへ、城へ帰る途中の太子・スバール姫、梅公別一行が通りかかる。梅公別の祈願によってアリナは息を吹き返す。バランスは、太子に禁漁法の廃止を訴える。太子はバランスの民衆を思う志に感心し、城内に入って自分の国政改革助けるよう求める。一行は城を目指して夜道を進み行くこととなった。
主な人物 舞台 口述日1925(大正14)年01月30日(旧01月7日) 口述場所月光閣 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1926(大正15)年9月30日 愛善世界社版247頁 八幡書店版第12輯 243頁 修補版 校定版251頁 普及版69頁 初版 ページ備考
OBC rm6818
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本文  浅倉山脈の千尾千谷より流れ落つる玉野川の下流をインデス河と云ふ。此河はタラハン国の中心を流れ、北より南に遠くカルマタ国の牛の湖水に注いでゐる。左守の悴アリナは身なりも軽き比丘姿、深編笠を被り乍ら、十二夜の月の朧げに照り渡る野路を辿つてインデス河の畔に着いた。激流飛沫を飛ばして淙々たる水音、見るも凄じく川瀬に竜の跳るが如く、川一面に散在せる岩にせかれて、水は白玉となつて高く飛散つてゐる。アリナは橋の傍の藁小屋をみとめて、息を休むべく潜り入つた。ここは橋番が出張して、通行人一人に対し片道三厘の橋銭を取る為に拵へた小屋である。アリナは月の光を仰ぎ乍ら、藁屋の戸を開けて、涼しき風を浴びてゐた。
 斯かる所へ二三人の黒い影、向岸より一本橋を撓つかせ乍ら渡り来る者がある。黒影の一人、
甲『やア家来共、今日は大変に草臥れたであらう。仲々捜索隊も骨の折れるものだ。やア幸ここに橋番小屋がある。どうぢや、まだ家へ帰るには四五十町の道のりがあるから、此処で休息してボツボツ帰らうぢやないか』
乙『ハイ、休息して帰りませう。夜道に日は暮れませぬからなア』
甲『夜道の怖い汝も、今日は主人と一緒だから大丈夫だよ』
乙『ハイ左様で厶います。今日は旦那様と御一緒で厶いますから千人力で厶います。何程那美山の狼が唸つた所で、ビクとも致しませぬわ』
丙『アツハヽヽヽ旦那様、此奴ア評判の臆病者で厶いまして、今迄夜道はした事のない奴で厶いますよ。夜道は昼でも恐い、其代り夜食は昼でも甘いとぬかす奴ですもの』
甲『アツハヽヽヽ』
乙『馬鹿言ふない。昼の夜食が何処にあるかい。汝も余程間の抜けた事をいふ奴だな』
甲『ヤアどうやら此番小屋には生物がゐる様だ。コリヤ コリヤ其方は何者だ』
アリナ『拙僧は諸国遍歴の修験者で厶る』
甲『ハヽア、其処辺りを法螺吹きまわる比丘だなア。ヤア分つた分つた。エー、比丘ならばチツと許り予言や神占が出来るだらう。どうか一つ拙者の願を聞いてくれまいかなア』
ア『ハイ、何事でも承はりませう。拙僧はスガ山に立籠つて仏道を修業致す天然坊と申す者、たいていの事は百発百中、天然坊の星当り、合ふも不思議、合はぬも不思議、六十一卦筮竹の変化に仍つて、或は陽となり陰となり、乾坤離兌などと、種々雑多に変化致すによつて、拙僧の神占をよく翫味なさらぬと間違が出来ますよ。お前さまはタラハン城の大権力者、右守司の職掌を勤めてゐらつしやる方で厶らうがな』
甲『ヤ、これは恐れ入つた。如何にも御察しの通り、右守司のサクレンスで厶る』
ア『アツハヽヽ、貴殿は何か捜索物があるやうだが、サクレンスといふ名前では、紛失物の所在は到底サグレンスで厶る。貴殿の尋ねらるる者は、物品でもなく、家畜でもなく、米食ふ虫で厶らうがな』
サクレンス『ハイ其通りで厶います。何うしてマア其方はそれ程能く御存じで厶いますか』
ア『アツハヽヽ拙僧は月の精より衆生済度の為、此地上へ降りし者、悪人を懲し善人を救はむが為、一笠一蓑一杖に八尺の身を任せ、諸国を遍歴致してゐるが、タラハン国は大変な騒動が起つた様子で厶るなア』
サク『ハイ一つお伺ひを致したう厶いますが、私の希望は成就するで御座いませうか』
ア『どういふ希望だ。有体に言はつしやい。道徳を守つて、如何なる秘密も決して拙僧は他言は仕らぬ。事と品に仍つては、其方の力になつて進ぜたい』
サク『ハイ、有難う厶います。実の所はタラハン国の大王殿下は命旦夕に迫り、太子様は女に現を抜かして、駆け落を遊ばし、今に行衛は分らず、国家の滅亡は旦夕に迫る場合、某は右守司として国家の窮状をみるに忍びず、吾弟エールを以て、已むを得ず王位にのぼせ、幸王女バンナ姫を后となし、タラハン国家の復興を企てつつある最中で厶います。此目的は必ず成功致すで厶いませうかな』
ア『ハヽヽヽ、危い哉災なる哉。其方の面相には殺気が漲つて居りますよ。そして眉間の間に有々と剣難の相が現はれてゐる。すぐ様其野心を改めざるに於ては、忽ち災身に及ぶで厶らう。其方は太子殿下を何処かへ隠し、再び世にあげない考へで厶らうがな。拙僧は聊か太子に由縁のある者、其お行衛を捜さむ為、実は修騒者と化け、此界隈を夜間を窺ひ実は捜してゐるのだ』
サク『ナニ、太子殿下に由縁のある者とは、何人で厶るかな』
ア『アツハヽヽヽ右守殿も耄碌せられたなア、そら其筈でもあらう。二つの眼は近眼でもあり、片足は不具でもあり、左様な難き不完全なる体を動かして、アリナの所在を尋ねまわるとは、テも偖も御苦労千万、右守殿が躍起となつて尋ねて居るアリナの君は斯く申す拙僧で厶る。美事相手になるならなつて見なされ、アツハヽヽヽ』
サク『最前から何だか怪しき奴だと思つてゐたが、如何にも其方は左守の悴アリナに間違ない。ヤア可い所で出会うた。オイ家来共、有無をいはせず此アリナをふん縛れ』
『アイ』
と答えて両人は前後よりアリナに武者振りつかむとする。アリナは飛鳥の如く身を換し、右に左に敵の鋭鋒をさけ乍ら、金剛杖にて、白刃の刃をうけ流してゐる。併し乍らアリナも到底多勢に無勢、グヅグヅしてゐて命を取られちや大変と、一本橋を一生懸命に西側の岸に向つて駆出す途端、粗末な橋杭に躓いて、ザンブと許り激流の中に落込んで了つた。右守其他の家来共は手を拍つて万歳を三唱し、肩肱怒らし乍ら勇み進んで家路をさして帰りゆく。
 民衆救護団の女団長バランスは沢山の乾児を養ふ其費用に窮し、右守が禁断の場所と定めておいた、魚が淵と云ふインデス川の稍水の淀んだ場所に於て、乾児と共に網打を月夜を幸ひ始めてゐた。此地点は岸辺に老木繁茂し、魚の集合所には最適当の場所であり、且つ沢山な種々の魚介が棲息してゐる。万一此場所に網を入れ、役人に見つからうものなら、忽ち石子責の刑に処せらるるといふ厳しき掟である。バランスは数十人の乾児に見張をさせ乍らバサリバサリと網を打ち、沢山な魚を捕獲して居た。十網許り打つた時、非常に重たいものが網にかかつた。バランスは腕力に任せて引上げて見ると人間の死骸である。義侠心に富める彼女は、
『吾網にかかるは何かの因縁だらう。何処の人かは知らね共、モシ命の助かるものなら、所在手段を尽して助けてやらねばなるまい』
と、乾児に命じ沢山の焚物を集めさせ河縁に火を焚いて温めてゐた。そして人工呼吸や、種々の手段を尽してみたが、息を吹返さず、殆んど絶望の淵に沈んでゐる時しもあれ、駒に跨り此場に現はれて来たのは、水車小屋に捉はれてゐたスダルマン太子の一行である。バランスは一目見るより月影にすかして、スダルマン太子たる事を知り、捨鉢気味になり、ゴテゴテぬかさば強力に任せ、馬諸共河中に投じてくれむものと、身構をした。太子は後を振向き乍ら、
『宣伝使様、何うやら土左ヱ門が網にかかつたやうです。助けてやる事は出来ますまいかなア』
梅『如何にも溺死者とみえます。神様に祈つて蘇生さして頂きませう』
と言ひ乍ら、駒をヒラリと飛下り、バランスの前に進みよつて、丁寧に腰を屈め、
『見れば溺死人とみえますが、貴方等は親切に介抱して厶る様子、実に奇特神妙の至りで厶る』
 バランスは此言葉を聞いて、案に相違し、握りかためた拳のやり場に困つたといふ顔付にて、
『ハイ、私は実の所はバランスといふ漁業団長で厶いますが、禁断の場所を犯して魚族を捕獲する折しも、吾網にかかつたのは比丘姿の旅人、どうかして助けたいものだと、此通り火を焚いて温め、いろいろと手を尽しますれど最早駄目で厶います。モシ之が蘇生するものならば、どうか宣伝使のお祈りによつて助けて頂きたいもので厶います』
 梅公別は直に天津祝詞を奏上し、天の数歌を唱へ死者の前額部に右の示指をあてて一生懸命に霊を送る事殆ど五分、不思議や死人はウンと唸り出し、幽かに手足を動かし始めた。バランスを始め一同の歓喜は例るに物なき程であつた。漸くにして死人は元気回復し、四辺をキヨロキヨロと見まわし乍ら、篝火にすかし見て、
ア『ヤア貴方はスダルマン太子様で厶いますか』
『何、汝はアリナであつたか、ヤア可い所で其方に出会ひ、余も満足だ』
ス『アリナ様、妾はスバールで厶います。貴方は死んでいらつしやつたので厶いますよ。ここに厶る大きなお方の網にかかり貴方は救はれたのです。種々と此方が御介抱を遊ばしたさうで厶いますが、どうしても蘇生の望みがないので、失望落胆してゐられた所へ、三五教の宣伝使梅公別様、即ち此御方が神様に祈つて、貴方を助けて下さつたのですよ。サア御礼を申しなさい』
ア『ハイ、有難う厶います。モシ宣伝使様、エー、漁師様、再生の御恩、末代迄も忘れは致しませぬ』
と簡単に落涙して感謝の辞を呈する。
太『ヤア結構々々、汝バランス、禁断の場所を冒した罪は国法上許し難いなれど、汝が仁愛の心に免じ忘れておく』
バラ『之は之は太子殿下で厶いましたか。御仁慈のお言葉骨身に堪へて有難う存じます。大体斯様な不公平な法律を発布し、自然に発生く魚族を右守の司の特別漁猟区域となし、人民一般に天然の恩恵を均霑させないといふのは余り矛盾では厶いますまいか。妾は民衆の味方と成つて斯かる不公平なる法律を撤回し、四民平等の神意に基き、タラハン国の政治を根本的に改革致し度く念願して居ります。斯様な所で太子様に申上げるのは畏れ多うは厶いまするが、妾の一言は国民全体の声で御座いますから、何卒々々仁慈の御心を以て、斯かる狭苦しき法律を撤回遊ばす様、違法ながら謹しんで殿下に直訴を致します』
太『ヤ、実に天晴な汝の志、感心々々。余は之より城内に帰り国政の大改革を断行する考へだ。汝は民衆の母として今日迄国家の為大活動をやつてゐた事は、うすうす聞いてゐる。付いてはどうだ、余の政治を助けてくれる心はないか』
バラ『ハイ、思ひもよらぬ殿下の思召、何分鄙に育つた不作法者、到底廟堂に立つ事は出来ませぬ。まして今迄茶坊主の妻と迄成下つて居りました卑しき女で厶いまするから……』
太『其方にも似合はぬ其言葉、国民救護の為ならば、勇んで余が言葉を聞いても可いぢやないか。今迄の如く特権階級が威張り散らし、下民衆の難儀を知らず顔に、吾身勝手の事を致すやうな悪政はやらせない積だ。どうか余が頼みを聞いてはくれまいか』
バラ『ハイ、思ひ掛なき殿下の御見出しに預り、日頃の願望も成就の時が参りました様で厶います。左様ならば令旨に従ひ、殿下に付添ひ入内致すで厶いませう』
太『ヤア満足々々、時を移さず、汝は余について城内へ来てくれよ』
バラ『畏まりました。併し乍ら此アリナ様は到底此様子では歩行は難からうと存じますから、妾が馬となり、背に負ぶつてお供を致しませう』
梅『ヤ、バランスさま、天晴々々。男子にまさる貴女の勇気、貴女こそ神の化身とも云ふべきお方で厶います』
バラ『左様にお褒め下さつてはお恥しう厶います。サア参りませう』
とバランスはアリナを背に負ひ乍ら、駿足の後より従ひ行く。此時大空の月は淡雲を押分けてニコニコし乍ら、一行五人の夜の道芝を清く明けく照させ玉うた。インデス河の河波は月光を浴びて金鱗の如くキラリキラリと瞬いてゐる。
(大正一四・一・七 新一・三〇 於月光閣 松村真澄録)
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