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文献名1霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻
文献名2第5篇 神風駘蕩よみ(新仮名遣い)しんぷうたいとう
文献名3第19章 紅の川〔1743〕よみ(新仮名遣い)あけのかわ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ右守の手下、カークとサーマンは、太子とスバール姫が梅公別に助け出され、城に向かっていることを右守に注進しようと、インデス河の川辺を走っていた。そこへ、右守の弟エールが、王女バンナを捜索しているのにでっくわした。カークとサーマンの報告を聞いたエールは、右守の計画の一大事と、梅公別一行を待ち伏せて、太子を亡き者にしてしまおうとたくらむ。エールは社の陰から太子を狙って切り付けるが、太子は身をかわす。バランスはエールを捕まえ、急流に投げ込んでしまった。カーク、サーマンはそれを見て一目散に逃げ出してしまう。
主な人物 舞台 口述日1925(大正14)年01月30日(旧01月7日) 口述場所月光閣 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1926(大正15)年9月30日 愛善世界社版258頁 八幡書店版第12輯 248頁 修補版 校定版263頁 普及版69頁 初版 ページ備考
OBC rm6819
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本文  カーク、サーマンの二人はインデス河の河辺を膝栗毛に鞭うち一生懸命に走り行く。右手の草村より手招きして『オーイオーイ』と叫ぶ者がある。二人は聞覚のある声と立とまつて、息をついでゐた。そこへ萱草を分けて、のそりのそりとやつて来たのは右守司サクレンスが弟エールであつた。二人はエールの顔を見るより、地上に蹲まり、
カーク『これはこれは、エールの君様、思はぬ所でお目にかかりました。貴方は又斯様な所に何をしてゐらつしやるのですか』
エール『イヤ、一寸秘密の用向があつて』
カ『秘密の御用向と仰有るのは、アリナの行衛を捜してゐられるのでせう。貴き御身を以て供をも連れず、只一人なぜ斯やうな所にお出ばりになつてゐられるのですか』
エ『イヤ、アリナの行衛も捜索せなくてはならぬが、王女バンナ姫様のお行衛を尋ねて、此処迄やつて来たのだ。此少し先方に賤の岩屋と云つて岩窟がある。此処はカラピン王様の御先祖の奥津城の跡、それ故若や、バンナ姫様がお参りになつてゐるのではあるまいかと、只一人ワザとに捜しに来たのだ』
カ『姫様は、そしてゐられましたか』
エ『イヤ、お姿が見えないのだ。あゝ困つた事だワイ。併しお前は秋野ケ原の水車小屋の番を仰せつかつてゐた筈だが、どうして又帰つて来たのだ』
カ『之に付いては大変な珍事が突発致しました。それ故御報告がてら、帰つたので厶います』
エ『椿事とは何事だ。民衆救護団でもやつて来て、太子を奪取つたのではないか』
カ『ハイヽヽヽイエヽヽヽー、さうでも厶いませぬが、三五教の宣伝使がやつて参りまして、太子殿下及スバール姫を救ひ出し、たつた今駒に跨つて、ここを通るで厶いませう。太子が城内へ帰られたならば、先づ第一に右守司様の御迷惑、用意を遊ばさねばなるまいと、一生懸命に御注進に帰る途中で厶います』
エ『ヤ、其奴ア大変だ。オイ両人、事成就の上は汝を立派な役に使うてやるから、どうだ、此少し向方に、一方は河、一方は岩山、其処には古ぼけた宮が建つてゐる。之から其宮の後に三人忍び居り、太子の帰るのを待伏せ、太子の命を取つて了ふか、但しは激流へ投込むか、何とかして片付けねば成らぬ、どうだ、俺の命を聞くか』
カ『ハヽヽヽヽイ、貴方の御命令なれば、決して否は致しませぬが、三五の宣伝使といふ奴、到底一筋縄ではゆかぬ奴で厶いますから、用心をせなくちやなりませぬ』
エ『ナアニ、あの地点は攻むるに難く防ぐに易きタラハン国第一の険要の喉首だ。彼処にさへをれば、仮令千万人の敵が来ても大丈夫だよ』
カ『如何にも左様、成程御尤も。オイ、サーマン汝どうだ。御命令を奉ずるかな』
サ『そら……、俺だつて、出世のしたいのは同じ事だ。そんな安全な所なら、俺も御用を承はらうかい』
エ『ヤ、両人共、合点がいたなれば、早く岩山の森迄行かう。軈て太子の一行が帰つて来る時分だらう』
といひ乍ら岩山の森を指して走り行く。
 一方アリナは体中、肉付のよいブクブクとした柔らかな背中に負はれ、何となく妙な気分がして来出した。そしてバランスも亦アリナのどこ共なく男らしく、凛々しい姿に、……此男ならば……といふ様な妙な気になつて居た。太子は声も涼しく、馬上豊かに月光を浴び乍ら行進歌を歌ふ。
『あゝ有難し有難し  九死一生の苦みを
 三五教の宣伝使  梅公司に助けられ
 妹背の縁も恙なく  再びここに相生の
 松の緑の色深く  駿馬に跨り戞々と
 峰の嵐に吹かれつつ  インデス河の河辺を
 勇み進んで上る内  心は頓に冴えわたり
 神のまします天国の  旅路を進む心地せり
 月の光は波の上に  瞬き初めて麗しく
 飛沫の音はタラハンの  国家復興を歌ふ如
 耳をすまして聞え来る  あゝ勇ましや勇ましや
 神が表に現はれて  善と悪とを立別けて
 吾旧国を根底より  改め給ひ民衆の
 永き平和と幸福を  与へ給ふぞ嬉しけれ
 吾師の君に従ひて  川辺の森に来てみれば
 月夜に瞬く篝火の  影に寄りそふ数十人
 何をなすやと伺へば  網にかかりし旅人の
 死骸をあぶり肉体の  命を救ひ助けむと
 民衆団の団長が  力限りに介抱し
 心を砕く折もあれ  吾師の君の言霊に
 死人は漸く甦り  よくよくみれば吾慕ふ
 賢き友のアリナなり  アリナは漸く元気づき
 バランス団長に負はれつつ  河辺を伝ひスタスタと
 吾等一行に加はりて  此処迄無事に帰りけり
 あゝ惟神々々  神の恵の尊さよ
 向方に見ゆる岩山の  神を祀りし森のかげ
 吾等は其処迄駆けつけて  一先づ息を休めつつ
 神のまにまに城内へ  轡を並べて帰るべし
 あゝ楽もしや楽もしや  一陽来復春は来ぬ
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』
 斯く歌ひつつ、駒の足音に大地を響かせ乍ら、漸くにして岩山の森蔭、古き社の前に着いた。太子一行はバランスやアリナの身の疲れを休養さすべく、ワザと此処に駒を止めたのである。梅公別は早くも此古社の後に怪しき者ありと勘付いたが、まさかの時には言霊を以て霊縛せむものとタカをくくつて、何食はぬ顔し乍ら、一行五人一の字形になつて社前の敷石に腰打かけ、煙草を燻らして居た。社の後には三人の囁き声、
エ『オイ、カーク、来たぞ来たぞ。サア俺に忠義を尽すのは今だ。彼の正中に居る奴が太子だ、彼奴を矢庭に此刀を以て袈裟掛に切り捨てるのだ。それさへすれば外の奴アどうでもよいから、サア行け行け』
カ『ハイ、参ります。併し、旦那様、私に跟いて来て下さい。何と云つても向方は五人、そんな所へ私一人行つた所で駄目で厶いますからなア』
エ『エー、気の弱い奴だな、そんならサーマンと一緒に飛出して行け』
サ『ハイ行かぬこた厶いませぬが、何だか手足がワナワナ致しまして、怖くつて堪りませぬワ』
エ『チヨツ、エー口許りの代物だなア。サア俺に跟いて来い。そして俺の手ぎわを見るがよい』
と云ひ乍ら、バラバラと不意に立出で、木下蔭を力に太子を目がけて、暗に閃く白刃の雷、アワヤ太子は真二つと思ひきや、ヒラリと体をかはし、太子は、
『曲者、待てツ』
と大喝したり。バランスは之を見るよりエールの腕を強力に任して撲りつけたる其途端に腕はしびれ、白刃はガチヤリと大地に落ちた。バランスはエールの首筋を掴んで高く差上げ乍ら、川辺に持行き、月に曲者の面を照してみれば、擬ふ方なきエールなりける。
バラ『もしもし、宣伝使様、太子様、一寸御覧なさいませ。此面は右守の弟エールの様に思ひますが、お査べ下さいませぬか』
 太子外四人はバラバラとバランスの側に駆けより、曲者の面を眺め、
太『ヤ、如何にも此奴はエールだ。怪しからぬ事を致す、悪党奴』
バラ『殿下の御証明がある以上は、此エール、此世に活かしておく代物では厶いませぬ。此奴の面には剣難の相が現はれてゐます。何れ遠からぬ内、漁業団員に命を取られる奴、エー邪魔臭い、太子様御許し』
といひ乍ら、激流目がけて、小石を投ぐるが如く、ドンブリと投込んだ。エールは投込まれた途端に、川中の突出た石に脳天を打割り川水を紅に染て、ドンドンと流れて了つた。此隙にカーク、サーマンの二人は一生懸命倒けつ転びつ、命あつての物種と右守の館を指して逃げてゆく。
(大正一四・一・七 新一・三〇 於月光閣 松村真澄録)
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