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文献名1霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻
文献名2第4篇 新政復興よみ(新仮名遣い)しんせいふっこう
文献名3第17章 琴玉〔1762〕よみ(新仮名遣い)ことたま
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-11-20 15:29:34
あらすじ国愛別の祖国、ヒルの国(=インカ国=日の神の子孫の国)もまた、珍の国と同様、常世国より来た悪思想により人心動揺し、社会は不穏な形勢となっていた。折りしも国司・楓別命の長子・国愛別が逐電したというので、長老秋山別・モリスは国内をくまなく捜索したが行方を得られなかった(実は珍の国で侠客として活躍していたことは、これまでの物語に述べられている)。そこで、やむなく妹の清香姫を世継として立てていた。清香姫は、兄がこの国家の危機を立て替えなおそうと、まずは世情の調査の為に城を抜け出したことを知っていた。城に居ては、昔かたぎの両親や長老たちが、新しい考え方をさえぎるばかりであったからである。清香姫の意見も常に入れられず、国家の刷新を神明に祈って、ただ身はやせ衰えるばかりであった。ところが、秋山別、モリスの両老は姫の様子を見て、恋の病と勘違いし、婿選びの準備をはじめてしまう。これに愛想をつかした清香姫はついに、兄と同じように城を出て国の改革に身を投じようと決心するに至る。
主な人物 舞台 口述日1924(大正13)年01月24日(旧12月19日) 口述場所伊予 山口氏邸 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1927(昭和2)年10月26日 愛善世界社版239頁 八幡書店版第12輯 360頁 修補版 校定版251頁 普及版66頁 初版 ページ備考
OBC rm6917
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本文  神の恵に蔭もなき、名さへ目出たきヒルの国の高倉山の本城は堅磐常磐に都の中央の下津岩根に厳然と立並び、三五の貴の教と共に国家は益々隆昌に赴き、日暮河の清流は清く都の中心を流れて、交通運輸の便宜よく、げに地上の天国と称へらるるに至つた。
 楓別命、清子姫の二人の間に国愛別、清香姫の一男一女があつた。祖先の清彦が日出神の神徳を受けて、茲にインカ国なるものを樹て(日の神の子孫の意)衆生崇敬の的となつてゐた。衆生は楓別命を国司と仰ぎ、大師と崇め、親と親しみ、上下一致余り煩はしき法規もなく、極めて平穏無事に栄えてゐた。然るに常世国より交通機関の発達につれて、種々の悪思想往来し、比類なき天国の瑞祥を現はしたる此神国も、今は漸く人心動揺し、個人主義の教発達して、遊惰の者多く現はれ、不良老年、不良中年少年は上下に充ち、義を忘れ利に走り、恰も常世の国の状態となり、国司を軽んじ、役人を卑しめ、民心悪化して不安の空気は国内にみちて来た。楓別命、清子姫は朝夕神に祈り、国家の隆昌と衆生の安寧を朝な夕なに国魂の宮に祈願しつつあつた。何時の間にやら世子たるべき国愛別命は姿を隠し、行衛不明となつて了つた。楓別夫婦を始め、秋山別、モリスの両老は額に青筋をたて、部下の役人を督して国内隈なく捜索すれ共何の手掛りもなかつた。茲に於てか止むを得ず、大会議を開いた結果、妹の清香姫をしてヒルの国の世子とする事となつた。
 清香姫も兄の命と同様、時勢の日に日にブル階級に非なるを知り、如何にもして吾国家を救はむと肝胆を砕きつつあつた。されども昔気質の両親を始め、時勢に眼暗き老臣等は一々清香姫の意見に反対し、いつも用ひられなかつた。清香姫は国家の前途を思ひ泛べて夜もロクに眼られず、神明に祈つて、国家に蟠まる妖雲を一掃し、新しき天地を開かむと、それのみに心を砕いて、身は日に夜に痩衰ふる許りであつた。
 モリス、秋山別の老臣は城内の評議所に首を鳩めて、心配気に何事か囁き合つてゐる。
秋山『モリス殿、此頃の如き姫様の御様子、御身は何う思はるるかな』
モリス『左様で厶る、察する所、気の病ではあるまいかと御案じ申してゐるのだ。貴殿の御考へもヤハリ気病と思はれるだらうな』
秋山『いーかにも、左様で厶らう。今から思ひ出せば、拙者も貴殿も、紅井姫様、エリナ様について恋におち、終にはシーズン河の難に遭つたと云ふ歴史も厶れば、まして妙齢の美人、恋病を患ひ給ふは当然で厶らう。一時も早く適当な御養子を迎へて姫様の御心を慰めねばならうまい。いつも姫様が、吾々に対し、気の利かぬ爺だ、気の利かぬ爺だと仰有るが、今考へてみれば、早く妾に夫を有たせ、気の利かぬ奴だ……との謎であつたかも知れぬ、恋に苦労した吾々に似ず実に迂闊な事で厶つたワイ』
と両人は一も二もなく、そんな妙な所へ気を廻して了つたのである。
秋山『それにしても、適当な御養子を選まねばなるまいが、露骨に姫様へ伺てみたら何うだらうかな』
モリス『マサカ、貴女の夫は誰に致しませうか……などと、余り失礼で、いふ訳にもゆかず、困つたぢやないか』
秋山『しかし、候補者を二三人物色して、写真でも撮り、姫様の居間にソツト散らしておき、姫様がお気に召したら、ソツト机の引出へ収めておかれるだらうし、気のくはぬ写真は、あの御気象だから、屹度引裂くか墨をぬらつしやるに違ひない。そして姫様の心を瀬踏した上、遠廻しにかけて探つてみようでないか、之が老臣たる者の肝腎要の御用だらうと思ふ』
モリス『成程、それでは拙者が、部下の相当な家庭に育つた清家連の倅の写真を集めることに致さう。てもさても善い所へ気がついたものだ。惟神霊幸倍坐世』
と勇み立ち、両老は日も漸く下つたので吾家へ帰りゆく。
 話替つて清香姫は城内の庭園を侍女と共に逍遥し乍ら、ダリヤの花を二つ三つちぎつて手に持ち乍ら、吾居間へと帰つて来た。見れば机の上に、なまめかしいハイカラ男の写真が四五枚ズラリと並んでゐる。清香姫は一目見るより侍女を遠ざけ、襖を密閉してよくよく見れば、頑迷固陋派の清家の悴の小照であつた。清香姫は一々其写真を点検し写真の上から墨黒々と一首の歌を書添へておいた。
『此姿見れば見る程厭らしき
  根底の国の亡者なるらむ』

 又一枚の写真に、
『さいこ槌目鼻をつけたやうな面
  今打たたき破り捨てたし』

 又一枚の写真に向ひ、
『折角の男の子の姿に生れ来て
  女に似たるあさましさかな』

 又一つの写真に、
『どれ見ても誠の魂は一つだに
  なしと思へば悲しくなりぬ』

 最後の写真に、
『チト許り男らしくは思へども
  わが背の君となる魂でなし』

と楽書をして状袋に入れ、「秋山別、モリス両老殿」と表面に記し、手を拍つて侍女を招んだ。侍女の春子は襖を静かに押開け、
『姫様、お招きになりましたのは何か御用で厶りますか』
清香『春、お前御苦労だが、之を持つて秋山別、モリスの所へ届けて下さい。そして返事を聞くに及ばないから、渡してさへおけばトツトと帰つて来るのだよ』
 春子は「ハイ、畏まりました」と足早に立つて出でてゆく。後に清香姫は一間を密閉し、二絃琴を取出して心静かに述懐を歌つてゐる。
『妾は夜なきヒルの国  高倉城の国司の娘
 清香の姫と生れ来て  兄の命と諸共に
 月よ花よと育くまれ  何の不自由も夏の宵
 涼しき浴衣を身にまとひ  時雨の川に船遊び
 何不自由なき上流の  社会に育ちし身の因果
 世の有様も明かに  悟り能はぬ目無鳥
 ヒルの御国も末遂に  夜の暗路とならむかと
 思へば悲し足乳根の  父の行末母の身の上
 救はむ為に兄妹は  互に心を照し合ひ
 世の潮流に従ひて  危き国家を救ふべく
 神に祈りて待つ内に  嬉しや時の廻り来て
 兄の命は逸早く  これの館を脱け給ひ
 朝な夕なに霜をふみ  つぶさに世情を甞め給ふ
 吾は孱弱き女子の  兄に代りて只一人
 此神国を守らむと  心を千々に砕けども
 昔心の取れやらぬ  父と母との心意気
 秋山別の老臣や  頑迷固陋のモリス等が
 清家とか云ふ無機物を  此上なき物と珍重し
 国の政治は日に月に  日向に氷と衰へて
 神の依さしのヒルの国  埋もりゆくこそ悲しけれ
 又何者の悪戯にや  吾心根も白雲の
 霊も暗き仇男  怪しき姿を写し出し
 わが文机に並べおく  醜の企の恐ろしさ
 察する所秋山別や  モリスの企みし業ならめ
 斯くなる上は片時も  これの館に住むを得じ
 又誘惑の魔神の手に  捉へられては一大事
 兄と誓ひし神業は  いつの世にかは成りとげむ
 今宵の暗を幸に  用意万端ととのへて
 侍女をもつれず只一女  進み行かなむ珍の国
 山は嶮しく川深く  嵐は強く雨しげく
 魔神の輩多くとも  此世を思ふ真心を
 我三五の大神は  必ず愛させ給ひつつ
 吾兄妹の望みをば  必ず立てさせ給ふべし
 今宵を限りに此館  出でゆく吾身の果敢なさよ
 あゝ足乳根の父上よ  母上御無事にましまして
 吾兄妹が神業の  完成するのを待たせませ
 吾ゆく後は嘸やさぞ  頑迷固陋の老臣が
 狼狽へ騒ぐ事だらう  其有様が目のあたり
 目にちらついて憐れさも  一入深き秋の空
 常夜の暗に包まれし  悲しき思ひの浮ぶかな
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましまして
 清香の姫が宣り言を  いと平けく安らけく
 遂げさせ給へと願ぎ奉る  旭は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  動かざらましヒルの国
 地揺り山裂け河溢れ  海嘯は高く襲ふとも
 下つ岩根に永久に  築き上げたる此城は
 千代に八千代に砕けまじ  あゝさり乍らさり乍ら
 此の衆生をば如何にせむ  思想の洪水氾濫し
 日暮河の堤防は  将に崩壊せむとする
 此惨状を見乍らも  尚泰然と控へゐる
 老臣たちの愚かさよ  妾兄妹無かりせば
 ヒルの都も衆生も  忽ち修羅と畜生の
 地獄の淵に陥らむ  守らせ給へ惟神
 神かけ念じ奉る』
と一生懸命に歌つてゐる。其処へ襖の外から秋山別、モリスの両人一度に『姫様々々』と呼ばはつた。姫はあわてて琴の手をやめ、そ知らぬ顔にて、
『其声は秋山別、モリス殿ではないか、何用か知らないが、襖を開けてお這入りなさい』
 両人は姫の言葉に、渡りに舟と打喜び、もみ手し乍ら、襖をあけて入り来り、丁寧に辞儀し乍ら、何事か言ひ出さむとしてモヂモヂしてゐる。
清香『最前、春子に持たしてやつた品物は、お前受取つて呉れただらうな』
秋山『ハイ、確に拝見致しました。それに就て姫様に御伺ひ致したいので厶いますが、あの五枚の写真はヒルの国に於ては、地位といひ門閥と云ひ、学問といひ器量といひ、最も選抜された、ヒルの国の五人男といはれてゐる賢明な名を取つた名物男で厶ります。姫様も良い年頃、余り露骨に申上げるも如何と存じ、モリスと相談の上ソツト写真を集めて御意を伺つた次第で厶います。然るに姫様は無造作に、写真の表に墨くろぐろと歌をお書きになりましたが、一向其意を得ませぬので、どうぞ御心の在る所を忌憚なく仰せ聞け下さらば、吾々両人が如何様とも取計らふで厶りませう』
 清香姫は何と云つても今晩は都合よく此場を逃出さねばならぬのだから、余り怒らして警戒を厳にさせては却て不利益と早くも合点し、ワザと空呆けて、
清香『ホツホヽヽヽ、恥しいワ、どうかゆつくり考へさして頂戴、ねえ』
秋山『御考へなさるも結構で厶いませうが、一時も早く結婚問題をきめなくては、吾々老臣の役が済みませぬ。私が裏に一号二号と番号をつけておきましたから、姫様のお口から、一寸何号だといふ事を仰有つて下さいませぬか』
清香『さうだなア、一号でもよし、二号でもよし、三号でも四号でも五号でもよしだ、どうでもよしだ、ホヽヽヽヽ』
モ『モシ姫様、そんなアヤフヤの御返辞をされちや困るぢやありませぬか。何号なら何号とハツキリ言つて下さいませ』
清香『ホヽヽ、一生(升)の事を定めるのに、五号(合)では足らぬぢやないか、モウ五合許り集めて来て下さい、そしたら返辞をするからねえ』
モ『姫様、之でまだ足らないと仰有るのですか、之はモウ第一流ですよ。後はモウ第二流になりますから、迚もお気に入りませぬワ』
と、丸で小間物屋が店出しをしてるやうな事を云つてゐる。
清香『とも角、今日は余り咄嗟の事で決まらないから、明日中に、之といふのをきめて御返事をする。両人共、お父さまお母さまの手前、宜しく頼んだぞや』
 秋山別モリスの両人は、ヤレ嬉しや、之で一安心と笑顔をつくり追従タラタラ機嫌を取り乍ら、頭を二つ三つ掻いて、
両人『姫様、左様ならば、一時も早く御返事をお待ち申上げます』
と言葉を残してスタスタと此場を去つて了つた。清香姫はニタリと笑ひ、又もや琴を取よせて思ひの丈を歌ひ始めけり。
(大正一三・一・二四 旧一二・一二・一九 伊予 於山口氏邸、松村真澄録)
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