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文献名1霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻
文献名2第1篇 花鳥山月よみ(新仮名遣い)かちょうさんげつ
文献名3第4章 共倒れ〔1771〕よみ(新仮名遣い)ともだおれ
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ一方、太子チウインは妹チンレイ、右守の娘ハリスと共に、キューバーが談判にきた当初から様子を察知し、王と左守には内密で、全国から兵を招集すべく密かに動いていた。一方、大足別はキューバーが戻ってこないので、城を攻めるわけにもいかず、こう着状態に陥っていた。千草姫に一度は気絶させられたキューバーは正気を取り戻し、今度は自分が姫を気絶させようと躍起になっている。その間に、王は密書により、太子が国内より兵を集めて合流することを知る。またそれは、千草姫・右守の先見の明による計略であったことを知る。王と左守は、はじめて右守の心を知り、その死を悼んだ。一方、千草姫は気絶したふりをしたりしてキューバーをからかっていたが、最後に双方同時に手を握り合うということになった。キューバーも千草姫も厳しく相手の手を握り合い、二人とも気絶してその場に倒れてしまった。
主な人物 舞台 口述日1925(大正14)年08月23日(旧07月4日) 口述場所丹後由良 秋田別荘 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年10月16日 愛善世界社版47頁 八幡書店版第12輯 407頁 修補版 校定版47頁 普及版25頁 初版 ページ備考
OBC rm7004
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本文の文字数4735
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本文  太子のチウインは妹のチンレイ及び、右守の娘ハリスと共に初めてキユーバーが談判に来た時、ソツと物蔭より様子を聞き、容易ならざる大事件となし、ガーデン王や左守には内密にて、妹のチンレイ及び右守の娘ハリスと夜中諜し合せ、王命と佯り全国の兵員を召集すべく、腹心の部下に命を下した。
 一方ガーデン王、左守は城内五百の兵に武装をさせ乍ら、敵軍押し寄せ来らば、唯一戦に粉砕し呉れむと部下を督励して、士気の皷舞に全力を注いで居た。大足別将軍は三千の兵を率ゐて、城下迄押し寄せて来たが、キユーバーを守りたる数十騎の注進により、殿内深くキユーバーの入り込みし事を知り、徒に戦端を開き、キユーバーの生命を失つては大変だ、大黒主に如何なるお目玉を頂戴するかも知れない。古今無双の英雄豪傑キユーバーには、何か深い策略があつて、唯一人城内に入り込み、樽爼折衝の間に円満解決の曙光を認むべく活動して居るのだらう。先づキユーバーの命令の来る迄、総攻撃をしてはならぬ、……と部下を厳重に戒め、キユーバー警護の意味にて三日三夜滞陣して居た。ガーデン王、左守は、千草姫の姿が見え無くなつたのは、右守の最後を聞き、禍の身に及ばむ事を恐れて逃げ出したのだらう……位に考へ、軍備の方に全心を集注し、千草姫が秘術を尽しての善戦善闘も気がつかなかつた。扨てキユーバーは半時許りして息を吹き返し、団栗眼をぎろつかせ千草姫の顔を見て、
『ヤア、お前は千草姫ぢやないか。かよわい腕をしながら俺の脈処を折悪く掴みよつて、ど甚い目に会したぢやないか。俺は暫くの間、幽冥旅行をやつて居たよ。掴むと云つても余りひどいぢやないか』
千草姫『ハイ、妾どんなに心配したか知れませぬわ。貴方の御命令を遵奉し、力一杯握りましたら、貴方はウンといつた切り、何と云つても返事して下さらないのですもの。大変怒つて返事して下さらないと思ひ、早速バラモンの神様に水垢離取つて御祈願した処、やつと物云つて下さつたのですもの。幽冥旅行したのなんのと本当に腹の悪いお方よ。半時許りも妾に怒つて物を云ふて下さらないのですもの』
キユ『いや、本当に気絶して居たに違ひない。決して嘘は云はない。これから手を握るのなら指の先を握つてくれ。脈処を握られると困るからな』
千草『世界の救世主様が妾の細腕に握られて気絶なさると云ふやうな道理がどこに御座います。嘘許り仰有います。ホヽヽヽヽヽ』
キユ『本当にそれやさうぢや。実は気絶したのぢやないよ。お前の心底を考へる為にあんな真似をして居たのぢや。何を云つても三千世界の救世主だ。そんなへどろい事でどうならう』
千草『ホヽヽヽヽヽ、ほんとに甚いお方、人の気を揉ましてひどいわ』
と又手首を握らうとする。
 キユーバーは吃驚して手を引き、
『ヤ、もう手は一度握つたらよいものだ。それよりも今度は俺が握つてやらう、サア手を出したり手を出したり』
千草『どうか息が切れる処迄握つて頂戴な。一ぺん八衢の状況を見て来る処迄……。さうして冥官に会ひ貴方と妾と永久に暮すべき蓮座を教へて貰つて来たう御座いますわ。天国の満員にならない中に、特等席を予約して置きたう御座いますから』
キユ『ハヽヽヽヽヽ、おい姫さま、このキユーバーの手がお前の手に触るな否や本当に気絶して了ふよ。それでもよいか』
千草『よろしう御座いますとも、仮令殺されても私の体ぢや御座いませぬ。貴方に捧げたもので御座いますもの、貴方の命も同様ですわ』
 キユーバーは心の中にて……この女仲々手がよく利いて居る。柔術の極意に達して居るらしい。俺も力一杯握つて気絶させ、八衢を覗いて来る処迄やつておかねば、将来威張られちや耐らない。夫の権式がさつぱりゼロになつて了ふ。よし、また力一杯急所を握り俺の腕前を見せておかねば将来嬶天下になり、褌の紐で縛られるやうになるかも知れない。ここが千騎一騎の恋のかけひきだ……と、毛だらけの手をぬつと突出し、姫の真白のなま竹のやうな手を骨も砕けとヒン握つた。千草姫はキユーバーの心の底迄直覚して居るので、何程キユーバーが力をこめて握つても痛くも何ともない、真綿が触つたやうな気がして居る、見かけによらぬ剛の者であつた。併しわざと気絶した体を装ひ握られた刹那、ウーンと顔を顰めて其場に倒れて了つた。
キユーバー『ハヽヽヽヽヽ、遉は女だな。たうとう屁古垂れて了ひよつた。かうして半時許り幽冥界を覗かしておけば、気がついてから俺の神力に感服し、ぞつこん惚れ込むだらう。エヘヽヽヽヽヽ、これだけ俺に惚れ込んで居るのだから、大足別の軍勢に一時この城を屠らせ、ガーデン王や、左守、右守を征伐し、太子や其他の重臣を重刑に処し、このキユーバーが取つて代つてトルマン国の浄行兼刹帝利となり、天下無双の姫を女房となし、数千万の財産を横奪して天晴城主となり、大黒主の向ふを張つて、七千余国の覇者となつてやらう。あゝ面白い面白い、開運の時節到来、智謀絶倫にして其胆力は神の如く、鬼の如しとは俺の事だわい、エヘヽヽヽヽヽ。ヤ何だ大変な物音ぢや、どうれ一つ外へ出て様子を考へよう』
と、ドアを外さむとしたが、秘密の錠が卸してあるので、千草姫でなければ開ける事が出来ない。遉のキユーバーも当惑して居る。外には暫く城内と城外との小糶合ひがあつたが、用心深い大足別はキユーバーが城内に潜入し居る事を聞き、戦を中止して、キユーバーの様子を偵察せむと焦慮して居た。それ故戦は半時足らずに止んで了つた。大足別は三千の軍隊を以てトルマン城を十重二十重に取りまいて居る。ガーデン王もこの敵の大兵を遠く眺めて、打つて出づる勇気もなく援兵の来る迄差控へむと矛を磨いて警戒して居た。此の時チウイン太子の近侍が、王の傍に来たり、恭しく敬礼し乍ら、
『太子様より殿下に奉れよとの御命令にて、お預り申して居りました此御書面、お受取り下さいませ』
と差出す。
王『何、太子がこの書面を余に渡せたと云つたか。余り周章狼狽の結果、太子の事を忘れて居た』
と云ひ乍ら慌しく封押し切りながむれば、左の如き文面が墨痕淋漓として認めてあつた。

一つ今夕、父を訪問致したるキユーバーなるものは、大足別将軍と諜し合せ、本城を占領し、吾王家を覆へさむと謀るものに候へば、此際一刻の猶予も相成らず候。小子は父及び左守に協議致すも、到底六ケ敷かしからむと存じ、妹チンレイ、及び右守の娘ハリスと諜し合せ、国内の総動員をなすべく、吾が臣下を諸方に派遣し、小子も亦出城して大足別の軍を後方より攻撃致すべく準備に取かかり申し候。故に小子が総司令官となつて軍隊を編成し、城下に帰り候迄、決して敵と戦端を開き給ふべからず。一時たりとも時間を延ばし、吾軍の至るを待たせ給ふやう、偏に懇願仕り候。
      国難救援軍総大将 トルマン国太子 チウイン
   御父ガーデン王様、左守、右守殿

と記してあつた。
 ガーデン王は、此書面を読み終るや、さも満足の色を現はし、左守に向ひ、言葉も勇ましく、
『アイヤ左守殿、喜んで呉れ。太子は已に兵を召集し、近く帰つて来る様子だ。それ迄は戦ひを開くなとの事。遉は俺の悴だけあつて、軍略にかけたら旨いものだらうがな』
左守『成程允文允武に渡らせらるる太子様、老臣も恐れ入つて御座います。太子様の神軍が城下に近づくを待ち、城内より一斉に打ち出し、大足別を挟撃いたせば勝利を得る事磐石をもつて、卵を砕くに等しからむと存じます。あゝ勇ましや勇ましや』
と老臣の左守は王の手を執つて雄健びし、部下又此様子を見て士気俄に振ふ。斯かる所へ千草姫の侍女は一通の封書を携へ、王の前に恭しく捧げた。此密書は千草姫、キユーバーの手を握り気絶させおき、其間に認めたものである。王は訝かり乍ら、
『何、千草姫の手紙とな、彼は既に右守の難を聞き城内を脱出せしものと思ひしに、ハテ不思議』
と手早く封押し切つて見れば、左の如き文面が水茎の跡麗しく記されてあつた。

重大なる御疑を受けし千草姫より一大事を申上げます。何卒々々心を落着けてお読み下さいませ。スコブツエンのキユーバーなる者、一ケ月前より本城を屠らむと大足別と諜し合せ、種々劃策を廻らして居りました事は、右守のスマンヂー軍事探偵の報告により之を前知し、太子チウイン、王女チンレイ、右守の娘ハリスと共に千草姫も加はり、応戦の準備に取かかるべく国内の調査を密々始めて居りました処、兵役に立ち得べきものは漸く二千五百名。万一の時の用意にと国内一般に王の命と称し、軍隊教育を施し置きました処、弥々戦はねばならなくなつて参りました。併し乍ら大足別の大軍は既に城下に迫り居りますれば、今日彼と戦ふは不利の最も甚だしきものと存じ、大黒主の信任最も厚く、大足別の謀主と仰ぐキユーバーを或手段を以て捕へおきました。やがて太子は全軍を率ゐて城下に迫る事と存じます。それ迄キユーバーを私にお任せおき下さいませ。大足別が未だ砲火を開かざるも、要するにキユーバーの消息を案じての事で御座いますれば、彼さへ吾城内に閉ぢ込みおけば、短兵急に攻寄せて来る憂ひはありますまい。この所賢明なる王様、左守殿よくお考へ下さるやう偏に懇願し奉ります。
 軍務所に於て   トルマン国王妃 千草姫
   ガーデン王様
      御机下

王『ヤ、左守殿、右守は可哀さうな事をしたわい。可惜忠臣を自ら殺すとは残念至極だ。千草姫も矢張天下国家を思ふ純良なる妻であつた。ヤ、疑つて済まなかつた。ヤ、千草姫許して呉れい』
と落涙し差俯向く。
左守『全く老臣が不明の致す処、千草姫様に対し申訳が御座いませぬ。又右守に対しても気の毒で御座います』
と流涕しつつ恐れ入る。何となく城内の士気は大に揮ひ、既に大足別を打ち滅ぼしたるが如き戦勝気分が漂ふて居た。
    ◎
 話は元へ復る。千草姫はキユーバーの独語をすつかり聞き終り、ウンと一声蘇つたやうな顔をして息苦しさうに、
『ヤ貴方は恋しき恋しきキユーバー様で御座いましたか。私は妙な所を旅行して居るやうな夢を見て居りました。併し乍ら貴方と二人が手を引いて愉快に愉快に天国の旅をしたやうに思ひます。百花爛漫と咲き乱れ馥郁たる香気は四辺に満ち、何処も彼処も透き通り、何とも彼とも云へぬ麗しさで御座いましたよ』
キユーバー『ハヽヽヽヽヽ。それやお前、俺の手で手首を握られ、気絶してお前の精霊が霊界へ飛び出して居たのだ。ほんの一寸許り触つたやうに思つたが、何分俺の腕に力が剰つて居るものだから、お前を気絶さして了ひ、大変心配致したが、バラモン自在天の御加護によつて、やつと息吹き返したのだ。もうこれからは握手だけはやらない事にせうかい』
 千草姫は可笑しくて耐らず、吹き出す許り思はるるを耐へ忍んで、態とに吃驚した様な顔をし乍ら、
千草『まあまあ嫌だわ、キユーバーさまとした事が、私を活かしたり、殺したり丸切手品師の様な事をなさるのだもの。本当に甚いわ。何程命を上げますと云つたつて、一夜の枕も交さぬ先に葬られて仕舞つては耐りませぬからね。本当に貴方は憎らしい人だわ。もう是から握手の交換は止めて呉れなんて、そんな事は嫌ですよ。気絶しない程度にそつと握手させて下さいな』
キユ『よし、そんならお前は俺の左の手を握れ。俺もお前の左の手を握つてやらう』
と云ひ乍ら両方から一度にグツと握り締めた。キユーバーは姫に厳しく左の手首を握られ、目が眩ひさうになつたので死物狂になつて、姫の手をグツと握つた。途端双方共一時に気絶し其場に倒れて仕舞つた。
 デカタン高原の名物風は四辺の樹木の梢を叩いて何となく物騒がしい。
(大正一四・八・二三 旧七・四 於由良海岸秋田別荘 加藤明子録)
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