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文献名1霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻
文献名2第1篇 花鳥山月よみ(新仮名遣い)かちょうさんげつ
文献名3第6章 鬼遊婆〔1773〕よみ(新仮名遣い)きゆうば
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ場面は変わって、気味の悪い黄昏時の情景。一面の枯草に血生臭い風。烏は鳴き、不気味な虫が草原一面に人の血を吸おうと潜んでいる。そこへ高姫がやってくる。高姫は、三年間、中有界にとめおかれて、修行を命ぜられていたのであった。高姫は一人の亡者を弟子に連れ、自分は現界に立ち働いているつもりで、道行く人をウラナイ教にひっぱりこもうと待ち構えていたのであった。弟子のトンボはあまりの閑古鳥と高姫の人使いの荒さに文句を言い、逃げようとしたところをつかまれて、ばったり倒れてしまった。そこへやってきたのは、八衢に彷徨っているキューバーであった。高姫はこれ幸いとキューバーに宣伝をはじめ、自分のあばら家に引っ張り込もうとする。キューバーは宿を探していたところへ、渡りに舟と、高姫についていく。トンボは、二人がどんな相談を始めるやら窺いに、高姫の破れ屋に足音を忍ばせてつけていく。
主な人物 舞台 口述日1925(大正14)年08月23日(旧07月4日) 口述場所丹後由良 秋田別荘 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年10月16日 愛善世界社版72頁 八幡書店版第12輯 416頁 修補版 校定版73頁 普及版38頁 初版 ページ備考
OBC rm7006
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本文  黄昏時に頭から壺をかぶつたやうな空の色、何とも知れぬ血腥さい、腸の抉れる如うな風がピユーピユーと吹いてゐる。痩こけた烏が二三羽、羽衣を脱いだ柿の木の枝に梢諸共空腹を抱へて慄ふてゐる。
 地上は枯草が一面に生ひ立ち、処まんだら赤い生地を現はしてゐる。何とも知れぬ、いやらしい虫が枯草を一面に取りかこみ、人の香がすると一斉に集まり来り、人間の体を吸はうとして待ちかまへてゐる。そこへ現はれて来たのは、三年間中有界にとめおかれ、修業を命ぜられたウラナイ教の高姫であつた。
 高姫は新規の亡者を一人伴ひ乍ら、自分はヤツパリ現界に立働いてゐるつもりで、野分に吹かれ乍ら、東海道五十三次のやうな弊衣を身に纒ひ、新弟子のトンボと一緒に道行く人を引張込まむと待構へて居た。
トンボ『もし生宮様、もういい加減に帰らうぢやありませぬか。何だか此街道は淋しくて淋しくて犬の子一匹通らぬぢやありませぬか。何時まで蜘蛛が巣をかけて蝉がとまるのを待つやうにして居つても、蝉が来なくちや駄目でせう』
高姫『これ、トンボ、お前は何と云ふ気の弱い事を云ふのだい。仮令人間が通らなくても、此生宮が此処に出張して居れば、沢山の霊が通つて大弥勒の生宮の御神徳に触れ、御光に照され、百人が百人乍ら、お蔭を頂いて天国へ上るのだぞえ。それだから肉体人が来なくても、霊界人が来さへすればいいのだ。お前の俗眼では一人も人間が来ないやうに見えるだらうが、此生宮の目には、今朝から八万人許り来たのだよ。それはそれは忙しい事だよ。お前も肉体が曇つてゐるので、あれ丈けの亡者が一人も目につかぬのは無理もない。然し乍ら今朝から通つた八万人の亡者が、お前の顔を見て羨ましさうにしてゐたよ』
ト『何故又私のやうな不幸者を羨ましさうにして通るのでせうか。サツパリ合点が行きませぬがな』
高『それだからお前は盲と云ふのだ。目が見えぬと黄金の台に坐つて居つても、泥の中に突込まれて居るやうな気がするものだよ。結構な結構な三千世界の救世主、底津岩根の大弥勒、日の出神の直々の御用をさして頂き乍ら、何と云ふ勿体ないお前は量見だえ。お前のやうな結構な御用をさして貰ふものは、何処にあるものか。それだから八万人の精霊が羨ましさうにして通つたのだよ』
ト『ヘーン、妙ですな』
高『これ、トンボ、トンボーもない事を云ひなさるな。「ヘーン、妙ですな」とは何だい。この生宮さまをお前さまは馬鹿にして居るのだな。そんな量見で生宮の御用をして居ると神罰が立所に当つて、頭を下にし、足を上にしてトンボ返りをせねばならぬぞや。チツト心得なされ』
ト『私やこの間から、余り辛いのと馬鹿らしいので実の所は生宮様の隙を窺ひ、うまくトンボ(遁亡)しようかと考へて居りましたが、私を羨むやうな人物が八万人も一日に通るかと思へば、何処に行つても同じ事だ。生宮様のお側にマアしばらく御用をさして頂きませう』
高『これ、トンボ、そら何を云ふぢやいな。暫く御用をさして頂くとは罰当り奴、そんな量見で居るやうなガラクタなら、今日から暇をやる。サア、トツトと帰つておくれ。お前が居らなくても肉体は女だから炊事万端お手のものだよ。無用の長物、ウドの大木、体見倒しの頓馬野郎だな。之からトンボと云ふ名を改名して、トンマ野郎と云ふてやらう。それがお前の性に合うてるだろ』
ト『生宮様トンマ野郎とは、ひどいぢや御座いませぬか』
高『ヘン、三千世界の救世主、底津岩根の大弥勒、第一霊国の天人、日の出神の生宮のお側に御用さして頂いて居るのぢやないか、何程賢い立派な人間でも、此生宮の目から見れば、何奴も此奴も皆トンマ野郎だよ。大学の博士だつてトンマ野郎だ。総理大臣や衆議院議員になるやうな奴は尚々トンマ野郎の腰抜野郎だ。お前も総理大臣や博士と同じ称号を生宮から与へられたのだから、有難く感謝しなさい』
ト『生宮さま、それでもあまりぢや御座りませぬか。どうか元の通りトンボと仰有つて下さいな』
高『さうだ。そんならお前はドン臭い男だから、ドンボと呼んで上げよう。トンマ野郎とは少しマシだからな。底津岩根の大弥勒様、第一霊国の天人、日の出神の生宮ぢやぞえ』
ト『もしもし生宮さま、もうその長たらしいお名前は聞きたんのう致しました。どうぞ簡単に云つて下さいな。法性寺入道と間違ひますがな』
高『こりや、トンマ野郎、そらナーン吐かしてけつかるのだ。トンマ野郎が嫌なら、ドンマ野郎にして上げよう。ああア、何奴も此奴も碌な奴は一匹も居やアしないわ。アゝゝゝゝ呆れた。開いた口が早速には塞がりませぬわい、イヽヽヽヽ何時迄経つても何時迄経つても生宮の申すことが分らず、改心が出来ず、イケ好かない野郎だな。ウヽヽヽヽ煩さい程、口が酸くなる程、毎日日々烏の啼かぬ日があつてもコケコーが歌はぬ朝があるとも、撓まず屈せず御説教してやるのに、エヽヽヽヽ会得が行かぬとは何と云ふオヽヽヽヽおそろしう大馬鹿だろ。カヽヽヽヽ噛んでくくめるやうに、日夜の生宮の説教も、馬の耳に風吹く如く、キヽヽヽヽ聞いては呉れず、キマリの悪い面付をして、クヽヽヽヽ喰ひ物許り目をつけ、苦労許り人にかけやがつて、ケヽヽヽヽ怪しからぬ怪体な獣だよ。コヽヽヽヽこんな事でどうして此法城が保てると思ふかい。サヽヽヽヽ扨も扨も困つた、シヽヽヽヽしぶとい代物だな。死損ひの腰抜けと云ふのはお前の事だぞえ。スヽヽヽヽ少しは生宮の心も推量し、進んで神国成就の為に大活動をしたらどうだい。セヽヽヽヽ雪隠で饅頭喰たやうな面して此生宮の脛を噛り、トンマ野郎が気に喰はぬなどと何を云ふのだ。ソヽヽヽヽそんな奴根性を持つてゐる粗末の代物を、高い米を喰はして養ふてゐる此生宮も、並大抵の事ぢやないぞえ。タヽヽヽヽ誰がこんなトンマ野郎を、仮令三日でも世話するものが御座りませうかい』
ト『チヽヽヽヽチツト無理ぢや御座りませぬか、畜生か何ぞのやうに、トンマ野郎だのドンマだのと、あまりひどいです。ツヽヽヽヽ月に一ぺん位、蛙の附焼位頂いて、どうして荒男の体が保てませう。テヽヽヽヽ手も足も此通り筋張つて来ました。丸ツきり扇の骨に濡れ紙を張つたやうな手の甲になつて了つたぢや御座りませぬか。トヽヽヽヽトンボだつて、どうして貴女と共に、活動が出来ませうぞ。チツとは私の身の上も憐れんで下さい。貴女計り美味い物を喰て、いつも私には芋の皮や大根の鬚や水菜の赤葉許り、当てがつて居るぢやありませぬか』
高『ナヽヽヽヽ何を云ふのぢやいな。勿体ない、その心では罰が当るぞや、ニヽヽヽヽ西も東も南も北も此通り曇り切つた世の中、お土の上に、何を蒔いても此通り、菜葉一つ満足に出来ない暗がりの世ぢやないか。赤ツ葉の一つも頂いたら結構ぢやと思つて喜びなさい。こんな寒い風の吹く世の中に、夜分はヌヽヽヽヽぬつくりと温い茶を呑んで、煎餅布団の中へ、潜り込んで居れるぢやないか。ネヽヽヽヽ年が年中何一つ、これと云ふ働きもせず、ノヽヽヽヽノラクラと野良仕事さしても烏の威しのやうに、立つて許り居るなり、ラヽヽヽヽ埒もない皺枯声を出して頭の痛むやうな歌を唄ひ、リヽヽヽヽ悧巧さうにトンマ野郎と云うて呉れな等とはお尻が呆れますぞや。ルヽヽヽヽ流浪して行く処がないから使つて下さい、と泣いて頼んだぢやないか、レヽヽヽヽ礼を云ふ事を忘れて、不足許り申すとはホントにホントによい罰当りだよ。お前は神様の警めで、ロヽヽヽヽ牢獄へ突込まれてゐるのだ。然し乍らお前の肉体は此生宮が構ふてゐるが、その魂は、喰ひ度い喰ひ度い遊び度い遊び度いと云ふ、大牢に這入つてゐるのだよ、フツフヽヽヽヽ』
ト『ワヽヽヽヽ笑うて下さるな。私はお前さまの云ふやうな勘の悪い人間ぢや御座りませぬぞや。これでも一時はバラモン軍のリユーチナント迄勤めて来た武士ですよ。ヰヽヽヽヽ何時までもお前さまの側へ居らうとは思ひませぬから、ウヽヽヽヽ煩さうても、売口がある迄辛抱してやつてゐるのですよ。ヱヽヽヽヽえぐたらしい事を朝から晩まで聞かされて、なんぼ軍人だつてお尻が呆れますよ。私はもう貴女のお供は之でヲヽヽヽヽをしまひですよ』
と逃げ出さうとする。高姫は後から痩こけた手をグツと出し、襟首を掴み二足三足後に引き乍ら、
高『こりや灸箸、麻幹人足、逃げるなら逃げて見い。燈心の幽霊見たやうな腕をしやがつて、線香の様な足をして、かれいのやうな薄つぺたい体をして、生宮様に口答へするとは以ての外だ。サア動くなら動いて見よれ』
ト『イヤもう、えらい灸を据ゑられました。どうぞかれいこれ云はずに許して下さい。許して下さらなもう仕方が無い。あの谷川へとうしん(投身)と出掛けます』
高『エーしやれ処かい』
とパツと手を放した途端にヒヨロ ヒヨロ ヒヨロと餓鬼の如くヒヨロつき、枯れた萱草の中にパタリと倒けて了つた。
高『ホヽヽヽヽ生宮様にかかつたら、バラモンのリユーチナントも脆いものだな。サアサア之から館へ帰り、夕御飯の用意でも致しませう』
とダン尻を中空にたわつかせ乍ら帰らむとする。時しもあれ、珍らしくも歌の声が聞えて来た。高姫は此声を聞くや否や、操り人形の如くクレリと体を交し、
『ヤア来た来た、これから私の正念場だ』
と大地に二三回も石搗きを始めて勇んでゐる。
『梵天帝釈自在天  大国彦の大神は
 三千世界の救世主  神や仏は云ふも更
 青人草や草木まで  恵の露を垂れ給ひ
 救はせ給ふ尊さよ  大黒主の大棟梁
 清き教を受け給ひ  七千余国の月の国
 一つに丸めて治めむと  バラモン教を遠近に
 開き給へど如何にせむ  三五教やウラル教
 勢ひ仲々強くして  誠の神の御教を
 蹂躙するこそ是非なけれ  未だ時節の到らぬか
 これ程尊い御教も  数多の人に仰がれず
 誹毀讒謗の的となり  日に夜に教は淋れ行く
 大黒主の権力に  押されて表面バラモンの
 信者に化けて居るなれど  心の中はウラル教
 三五教の奴許り  こんな事ではならないと
 大黒主の御心配  強圧的に軍隊を
 用ゐて信徒を召集し  否が応でもバラモンの
 教に靡かせくれんづと  大足別の将軍に
 三千余騎の兵士を  引率させてデカタンの
 大高原に進軍し  トルマン国を屠らむと
 吾にスコブツエン宗を  開かせ給へどその実は
 異名同宗バラモンの  教に少しも変らない
 只々相違の一点は  バラモン教より劇烈な
 信徒に修行を強ゆるのみ  こんな事でもしておかにや
 虎狼に等しい人心を  緩和し御国を保つこと
 容易に出来るものでない  かてて加へて此頃は
 思想日に夜に混乱し  アナアキズムやソシヤリズムが
 到る処に出没し  大黒主の此天下
 愈危くなつて来た  吾は此間に教線を
 七千余国に拡張し  大黒主の失脚を
 見届け済まして月の国  いや永遠に統治なし
 神力無双の英雄と  世に謳はれむ面白や
 神は吾等と共にあり  吾こそ神の化身ぞや
 神に刃向かふ奴輩は  何奴も此奴も容赦なく
 亡ぼし呉れむ吾宗旨  アヽ面白や面白や
 いかなる神の教をも  言向和し大野原
 風に草木の靡く如  振舞ひ呉れむ吾力
 吾等は神の化身なり  吾等は力の根元ぞ
 来れよ来れ四方の国  鳥獣の分ちなく
 キユーバーが配下としてやらう  イツヒヽヽヽイツヒヽヽヽ
 実に面白くなつて来た  天は曇りて光なく
 地上は冷えて草木さへ  皆枯れ萎む世の中に
 スコブツエン宗只独り  旭日の天に昇るごと
 日々毎日栄え行く  ウツフヽヽヽヽウツフヽヽヽヽ』
と大法螺を吹き立て乍ら四辻迄やつて来た。高姫はキユーバーの姿を見るより、カン走つた声にて、
『これこれ遍路さま、一寸待つて下さい。お前は一寸見ても、物の分りさうな立派な男らしい。私は三千世界の救世主、大みろくの太柱、第一霊国の天人、日の出神の生宮ぢやぞえ。サア一寸、私の館迄来て下さい。結構な結構なお話を聞かして上げませうぞや』
キユーバー『何、お前が救世主と云ふのか、フヽヽヽフーン、はてな』
高『これ、遍路さま、何がフヽヽヽフンだい。はてな……処か、これから世の初まり、弥勒出現、神代の樹立、世の終ひの世の始まりぢやぞえ』
キユ『ハヽヽヽヽヽ何と面白い婆さまだな。幸ひ日の暮の事でもあり、そこらに宿もなし、一つ宿めて頂かうかな』
高『サアサア宿つて下さい。結構な結構なお話をして上げますぞや、ホヽヽヽヽヽ。トンボの奴到頭草の中へ埋もつて了ひよつた。あんな奴アどうならふと構ふ事はない。生宮様に対して理窟許り吐くのだもの。何と世の中は妙なものだな。一人の奴が愛想づかして逃げたと思へば、チヤーンと神様は代りを拵へて下さる。この遍路は、どうやら生宮の片腕になるかも知れぬぞ。ホヽヽヽヽヽ』
 トンボは最前から草の中に身を隠して高姫の様子を考へてゐたが、……こんな奴に来られちや自分はもう足上りだ。然し乍ら高姫の奴、あんな男を引張り込んで、どんな相談をしとるか知れぬ。今晩は兎も角、館の外から二人の話を聞いてやらねばなるまい…………と思案を定め、両人が岩山の麓の破れ家へ帰つて行く後から、闇を幸ひ足音を忍ばせついて行く。
(大正一四・八・二三 旧七・四 於由良秋田別荘 北村隆光録)
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