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文献名1霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻
文献名2第1篇 追僧軽迫よみ(新仮名遣い)ついそうけいはく
文献名3第1章 追劇〔1790〕よみ(新仮名遣い)ついげき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2019-01-11 17:46:43
あらすじ玄真坊は、シャカンナの元部下たちを引き連れて、バルギーといっしょに逃げたダリヤ姫を捜索していた。部下の一人、コブライとともに山中の立岩までやってきた。コブライは玄真坊の待遇に文句を言いつつ、女に逃げられたことをからかっている。日が暮れてきたため、二人は立岩のくぼみで眠りについた。そこへダリヤ姫を捜索している山賊の部下たちがやってくる。山賊たちは暗闇に怖気づいて、怖さを紛らわすために歌を歌いだした。玄真坊とコブライはそれに気づいて目を覚ます。コブライは玄真坊をからかおうと、ダリヤ姫の声色を使い、玄真坊を茨の中へ飛び込ませようとする。玄真坊はダリヤに近づこうとするが、落とし穴に落ち込んでしまう。その悲鳴に驚いたコブライも、いっしょに穴に落ちてしまう。山賊たちはてっきり化け物の仕業と思い、逃げてしまった。
主な人物 舞台 口述日1925(大正14)年11月07日(旧09月21日) 口述場所祥明館 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1929(昭和4)年2月1日 愛善世界社版7頁 八幡書店版第12輯 501頁 修補版 校定版7頁 普及版2頁 初版 ページ備考
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本文  神の恵の豊かなる  言霊開く天恩郷
 其頂上に聳え立つ  銀杏の大木は天を摩し
 黄金の扇子をかざしつつ  これの聖場は万寿苑
 五六七の御代の果迄も  変る事なき瑞祥閣
 四方は錦の山屏風  引立てまはし綾の機
 経と緯とに織なして  我日の本は云ふも更
 大地のあらむ果までも  神光照らす光照殿
 いよいよ茲に落成を  告げし菊月上八日
 南桑田の平原を  一目に瞰下す要害地
 天正二年の其昔  織田の右府に仕へたる
 土岐の一族光秀が  偉業の跡を偲びつつ
 祥明館の奥の間で  千年を因む松村氏
 三五の光の瑞月が  暗き此世を照さむと
 神の御言を蒙りて  何時もの通り横に臥し
 褥の船に身を任せ  畳の波に浮びつつ
 太平洋を横断し  印度の海を乗越えて
 往古文明と聞えたる  七千余国の月の国
 タラハン城に仕へたる  左守の司の隠れ処に
 スガの港のダリヤ姫  言葉巧にそそのかし
 をびき出したる天真坊  悪鬼羅刹に憑依され
 タニグク谷の山奥に  其醜態をさらしたる
 滑稽悲惨の物語  千山万水(山河草木)子(戌)の巻の
 初頭にこまごま記しゆく  あゝ惟神々々
 御霊幸ひましませよ。
 稀代の売僧坊主奸侫邪智の曲者乍ら、どこともなく間のぬけた面構、頭は仔細らしく丸めてゐるが、元来毛のうすい性で、別にかみそりの御節介に預らなくとも済む筈のピカピカ光つた調法な頭の持主、鼻の先が妙に尖り、目は少し許り釣上り、前歯が二本厚い唇からニユツとはみ出し、何程オチヨボ口をしようとしても、此二枚の前歯丈は雰囲気外に突出して、治外法権の状態である。川瀬の乱杭宜しくといふ歯並に、茹損ひの田螺の如うな歯くそだらけの歯をむき出し、ダリヤ姫の捜索に両眼を血走らせ、谷間の坂道を息使ひ荒く、泡を吹き飛ばし乍ら、数多の小盗児連を四方八方に間配り、自分はダリヤ姫が逃げたらしいと思はるる山路を選んで、泥棒の中でもチツと許り気の利いたらしいコブライを引き具し、猪の通つた跡を洋犬が嗅ぎつけるやうな調子で、此山中に名高い立岩の麓迄やつて来た。時々毒虫に驚かされ、猛獣に肝をひしがれつつ、夕陽のおつる頃、足が棒になつたと呟き乍ら、根気尽きて路傍の草の上に、座骨の突出した貧弱な尻をドスンと卸した。
天真坊『オイ、コブライ、どうだ、一寸一服やらうぢやないか、交通機関にチツト許り油をささなくちや運転不能となりさうだ。どうも此急坂を夜昼なしに踏破したものだから、膝坊主がチツと許り抗議を申出でて、止むを得ず休養を命ずる事にしたのだ。エヽ汝は此間にそこら中を、一寸、偵察して来てくれないか、あのダリヤだつて、何程足が速いと云つても女だ、余り遠くは行くまいからのう』
コブライ『成程、そりやさうかも知れませぬな、併し乍ら吾々はもう暮六つ下つてをりますから、目の角膜院が就寝の喇叭を吹きかけました。夜分迄日当は貰つて居りませぬから、コブライも化身さまと一所に休養さして貰ひませうかい、何と云つてもタカが人間です、天帝の化身ともあらう聖者が、根気尽きて行倒れを遊ばすといふ此場合、どうしてコンパスが働きませう。そんな事いはずに休む時にや気良う休まして下はいな、こん丈広い山野を一人の女を何時迄捜したつて、さう易々と見付かるものぢやありませぬワ。斯うして一服して居ると、ダリヤさまが後からバルギーと一緒に意茶つきもつて通るかも知れませぬ。さうすりや、居乍らにして、目的の瑞宝を手に入れるも同然ですからなア』
天『エー、泥棒の癖に弱音をふく奴だな。エ、併し乍ら人間万事塞翁の牛の尻といふから、何が都合になるとも分らない。今日は特別の恩典を以て黙許しておかうかい、ウツフヽヽヽ』
コブ『天真坊さま、笑ひごつちやありませぬよ。僕は、私は真剣に弱つてるのですからな。エ、併し人間万事塞翁の牛の尻と仰有いましたね、塞翁の馬の糞とは違ひますか』
天『馬でも牛でも可いぢやないか、俺が牛の尻といふたのは、物識といふ意味だ』
コ『成程、天帝の化身さま丈あつて、何でも能く物を知つて御座るといふ謎ですな』
天『きまつた事だ、三千世界の事なら、宇宙開闢の初めから、小は微塵に至る迄、漏れなく落なく、鏡にかけたる如く知りぬいてゐる名僧知識だ、オツホン』
コ『エツヘヽヽ、それ程何もかも能く分る牛のケツ先生が、あれ程大きいダリヤ姫の行方を捜すのに、シヤカンナ頭目の部下二百人迄借用して、捜索せにやならぬとはチツと矛盾ぢやありませぬか』
天『馬鹿をいふな、恋は異なもの乙なもの、オツとどつこい、恋は曲者といふぢやないか、久米の仙人でさへも、女の白い脛をみて空中から墜落したといふ話がある。何程天帝の化身でも、女に迷ふた以上は咫尺暗澹、全く常暗となるのは当然の理だ』
コ『ヘーン、さうですかいな、妙ですな、怪体な事をいひますな、不可思議千万、奇妙頂礼、古今独歩、珍々無類、石が流れて木の葉が沈んで、天が地となり、地が天となりさうな塩梅式だ。女といふ奴ア、之を聞くと実に恐ろしい代物だワイ。さうすると天真坊さま、お前さまを盲にする丈の器量を持つてゐるダリヤ姫は、余つ程偉い者ですなア。婦人は孱弱き男子なりといふ熟語は聞いてをりますが、婦人は最強き男子なりと云ひたくなるぢやありませぬか』
天『そこらにゴロゴロしてゐる、コンマ以下の女と違ひ、何といつても天の河原に玉の舟を浮べ、天降り遊ばした棚機姫の化身だもの、そりや当然だよ』
コ『成程、それぢや一つ七夕さまをお祈りしてダリヤ姫の在処を判然と知らして頂かうぢやありませぬか。お前さまも天帝の化身で、七夕姫と夫婦ぢやと仰有つた事を覚えてゐますが、なんぼ何でも天帝の化身様が女帝の行方が分らないとは、チツと理窟に合はないやうに思ひますがな』
天『きまつた事だい、七夕姫と彦星の俺とは昔から年に一度より会はれない規則だから、分らぬのも無理はない。それを毎日日日会ふて楽まふといふのだから、チツとはこちにも無理があると云ふものだ。併し乍ら一旦思ひ込んだ事はやり通さなくちや、男子の意地が立たない、否天真坊の威厳に関する問題だ』
コ『成程、いかにも、御尤も千万、エ、万々一、ダリヤ姫が肱鉄をかました時は貴方如何するお考へですか』
天『ヘン、馬鹿いふな、そんな事があつて堪らうかい、ダリヤはぞつこん俺にラブしてゐるよ』
コ『ウツフヽヽ、それ程ラブしてゐる者が、なぜお前さまの寝てゐる間を考へ、顔に落書までして遁亡したのですか』
天『そりやお前の解釈が違ふ。ダリヤも余り長い山道を歩いて来たものだから大変にくたぶれてゐよつた。そこへメツタ矢鱈に酒を呑ましたものだから、グツタリと寝込んで了ひ、目がくらんで人間違をしよつたのだ。バルギーの奴、酢でも菎蒻でもゆかぬ悪党だから、ダリヤや俺達の寝た間に、そつと面に落書を致し、一見俺の面とみえないやうにしておき、其間にダリヤをゆすり起し、俺の声色を使ひ、甘く夜陰に紛れ、をびき出しよつたものと察する。ダリヤは今朝あたり、ハツキリ人の面がみえるやうになつてから、バルギーのしやつ面を眺めて、さぞ案に相違しびつくり仰天した事だらうよ。ダリヤに限つて、俺を見すてるやうな心は、微塵毛頭も持つてゐやう筈がない、屹度バルギーが俺に化けて、寝とぼけ眼を幸、ゴマかしよつたのだ。何と云つても、世界の女は、一度俺の面を拝んだが最後、決して忘れるものぢやない。況や甘つたるい言を一口でもかけて貰つた女は、何程蜂を払ふやうにしたつて、俺にや能う放れないのだ、エヘヽヽヽ』
と口角よりツーツーとさがる糸のやうな、ねんばりしたものを、手の甲で手繰つてゐる。
コ『イツヒヽヽヽ、此奴ア面白い、奇妙奇天烈、珍々無類だ』
 日は西山に沈んで天から暗が砕けた如うにおちて来た。闇がりはゴムをふくらしたやうに四方八方へ拡がつてゆく。時鳥の声は彼方此方より競争的に聞えて来る。二人は止むを得ず、立岩の凹みに体をもたせかけ早くも鼾の幕がおりた。
 シヤカンナの部下と仕へてゐた四五人の小盗児連は、之もヤツパリ、ダリヤ姫の捜索を頼まれて、彼方此方の密林をかきわけ、蜘蛛の巣だらけになつてやつて来たが、背丈にのびた道傍の草や、深い木かげに星一つ見えず、進退谷まつて、一同茲に枕を並べようと横になつた。何だか暗がりで分らないがグヅグヅグヅと雑炊でもたいてゐる如うな声がする。
甲『オイ何だか妙な音がするぢやないか。ここは立岩といつて、昔から化州の出る所だ、チツと用心せななるまいよ』
乙『成程、此奴ア厭らしい。併し時鳥があれ丈ないてゐるから、マア一寸其方へ耳を傾けてグツグツを聞かないやうにすりや可いぢやないか、俺やモウ、そこらが寒くなつて、体が細かく活動し出した。寝ても立つても居られない様だ、エーエーモツと時鳥が啼いてくれると可いのだけれどなア』
甲『ヒヨツとしたら、天真坊さまが此辺に鼾をかいて寝てゐるのぢやあるまいかな。さうでなけりや、時鳥の爺イが歯がぬけて、あんな啼様をしてゐやがるのだらう』
乙『エー、かふいふ時にや歌を唄ふに限る。一つ肝をほり出して、土手切り唄つてみようぢやないか』
甲『よからう、それが一番だ、オイ皆の奴、汝も唄はないかい』
丙『こんな所で歌でも唄ふてみよ、立岩の前に人間ありと化物が悟り、四方八方から一つ目小僧や三つ目小僧が押よせ来らば、汝どうする積だ。黙つて寝ろよ、のう丁、戊、さうぢやないか』
 丁と戊とはウンともスンとも言はず、小さくなつて慄うてゐる。乙は憐れつぽいふるい声を出し乍ら、カラ元気をおつぽり出し唄ひ出した。
『夕日はおちて御空から  暗はくだけておつるとも
 虎狼や獅子熊や  如何なる悪魔が襲ふ共
 いかでか恐れむ泥棒の  大頭目のシヤカンナが
 乾児と現れし哥兄さまだ  幽霊なりと何なりと
 居るなら出て来い天真坊  天帝の化身の命令で
 御用に出て来た俺だぞよ  何程偉い悪魔でも
 此世をお造り遊ばした  天帝さまには叶ふまい
 一の乾児の俺達は  取も直さず八百万
 神の中なる一柱  もしも曲津が居るならば
 十里四方へ飛のけよ  マゴマゴ致してゐよつたら
 手足をもぎ取り骨くだき  肉をだんごにつき丸め
 禿わし共に喰はすぞや  天下無双の豪傑が
 五人の中に一人をる  恐れよおそれ曲津共
 あゝ惟神々々  神の真の太柱
 天真坊の御家来に  楯つく悪魔は世にあらじ
 さがれよさがれトツトとさがれ  暗よ去れ去れ、一時も早く
 月は出て来い星も出よ  此世は神のゐます国
 悪魔の住むべき場所でない  あゝ惟神々々
 御霊幸ひましませよ』
と蚊のなくやうな声で囀つてゐる。甲はドラ声を張上げ乍ら、焼糞になり唄ひ出した。
『どつこいしようどつこいしよう  天帝さまの御化身は
 今や何処にましますか  ここは名に負ふ立岩の
 山中一の化物場  化物退治にやつて来た
 俺は英雄スカンナだ  俺の云ふ事スカンなら
 早く何処なと逃げなされ  天真坊の生神が
 やがて此処をば通るだろ  そしたら悪魔の一族は
 旭に露の消ゆる如  浅ましザマをさらすだろ
 何だか知らぬが此場所は  自然に体が慄ひ出し
 小気味の悪い暗の路  あゝ惟神々々
 御霊幸ひましまして  天帝様の御化身が
 一時も早く御光来  遊ばす様に願ひます
 あゝ惟神々々  叶はぬ時の神頼み』
 天真坊は此声にふつと目をさまし、
『ハハア小泥棒の奴、ここ迄やつて来てヘコ垂れよつたとみえるワイ。何奴も此奴も仕方のない奴だな、併し乍らダリヤを甘く掴へてくれよつたかな』
と息をこらして考へてゐる。コブライも亦目をさまし、天真坊が身を起して何事か考へてゐる様子なので、暗を幸ひ、自分は三間許り立岩のうしろへ廻り、優しい女の声色を使ひ、
『天真坊さま、待兼ねました。バルギーの悪人にたばかられ、貴方と間違ひ、夜の路、来てみれば、案に相違の蛙面、こら如何せうかと思案の余り、バルギーの睾丸をしめつけ、途中に倒し、此立岩のうしろに隠れて一夜を明さむと待つて居りました。恋しい師の君様、どうぞ此処までお出で遊ばし、妾の手を引張つて下さいな。ジヤツケツいばらに体を取りまかれ、身動きが出来ませぬワ』
 天真坊は此声を聞いて小躍りし乍ら、稍少時考へ込んでゐる。スカンナ外四人も亦息をこらして様子を考へてゐたが、此連中はテツキリ化物と早合点し、面をグツスリとタオルで包んで了ひ、俯いて慄ふてゐる。
コブライ『モシ天真坊さま、ダリヤで御座います、どうぞ早く来て下さいな。エー好かぬたらしい、お前さまはコブライさまぢやないか、貴方に用はありませぬよ、お前さまに助けてくれとはいひませぬ、天真坊さまに助けて欲しいのだもの』
 コブライは今度は自分の地声を出し、
『コレ、ダリヤ姫様、私は決してお前さまに野心を有つては居りませぬ。天帝の化身さまは、勿体ない、自ら、かやうな茨室へお越しになる訳に行きませぬから、私がチツとは茨掻をしても構はぬ、犠牲となつてお救ひに来たのだ。エーエーさうすつ込んでは、余計に茨が引かかるぢやありませぬか……、(女声で)イエイエ何と仰有つても私は天真坊さまに来てほしいのですワ、チツと許り、怪我をなさつたつて何ですか。真に妾を愛して下さるなら、仮令火の中水の底、茨室、どこだつてかまはないと、仰有つた事があるのですもの、今こそ誠意のためし時、此茨室へ暗がりに飛込んで救ふてくれないやうな誠意のない天真坊様なら、妾の方からキツパリとお断り申しますわ。ねえ天真坊さま、キツと妾を愛して下さるでせう。アイタヽヽ、面も手も足も茨がきだらけよ、早く助けて欲しいものだワ、ねえ……。(今度はコブライの地声で)さてさて合点の悪い姫さまだ。では僕は貴方のお世話は能う致しませぬ。モシモシ天真坊さま、お手づから親切を尽して上げて下さいな』
天『いかにもダリヤ姫の声には似てゐるが、どこともなしに怪しい点がある。コリヤ化物ではあるまいかのう』
コ(女声で)『エーエー辛気臭い、天真坊さまとした事が、妾は遠い山坂をかけ巡りお腹がすき、声はかれ、疲れはててをりますから、本当のダリヤの声は出ませぬよ。どうか御推量して下さいませ、決して化物ぢや御座いませぬから』
 天真坊は声のする方に向つて、二足三足進む折しも岩をふみ外し、三間許りの草茫々と生え茂る真黒の穴へ、キヤツと云つたぎり落ち込んで了つた。スカンナ外四人はいよいよ化物と早合点し、四這となつて坂路をのたりのたりと命からがらころげゆく。コブライも天真坊の声に驚いて声する方を目当に歩み出す途端、又もや踏み外し、天真坊の落ち込んだ穴へと一蓮托生、辷りこんだ途端に柔らかいぬくい物が体にさはつたので、ギヨツとし乍ら、
『イヤア助けてくれ助けてくれ』
と大声に叫ぶ。天真坊は落ちた途端に気絶してゐたので、コブライの落ち込んだのは少しも知らなかつた。少時あつて天真坊は息ふき返した。
天真坊『誰だ誰だ、俺をこんな所へつきはめやがつて』
コブライ『モシ天真坊さま、しつかりして下さい。暗の陥穽へ、貴方も私も落ち込んだのですよ、モウ斯うなりや夜の明ける迄、ここに逗留するより途がありませぬワ』
天『いかにも、さう聞けば確にそんな感じもする、併しあの時、確にダリヤ姫の声がしてゐたやうだが、惜い事をしたでないか』
コ『本当に惜い事をしましたね、確にダリヤさまに間違ありませなんだ。大変にあの方は貞操の固い方ですなア、私が助けようとしても、指一本さえさせないんですもの』
天『エヘヽヽ、そらさうだらうよ、併しダリヤは心配してゐるだらうよ。先づ先づ夜が明ける迄仕方がないな、あれ位親切な女だから、夜が明ける迄、俺達の安否を考へ乍ら、立岩のはたに待つてるに違ひないワ、あゝ惟神霊幸ひませ』
(大正一四・一一・七 旧九・二一 於祥明館 松村真澄録)
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