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文献名1霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻
文献名2第1篇 水波洋妖よみ(新仮名遣い)すいはようよう
文献名3第6章 夜鷹姫〔1815〕よみ(新仮名遣い)よたかひめ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2017-12-08 22:49:41
あらすじ妖幻坊と高姫が湖上を進んでいくと、一艘の小船とすれ違った。高姫はその船に乗っている男を見て顔を赤くする。妖幻坊はそれを見て、高姫が他の男に恋慕していると嫉妬し、小船を追いかける。小船は、もと来た離れ小島に横付けとなっていた。妖幻坊は船に乗っていた男を追いかけていく。それは梅公別であった。梅公別は高姫に「まんざら他人でもない」と挨拶して、妖幻坊の嫉妬をあおる。妖幻坊は高姫に、梅公別を蟻の竹やぶに誘い込むように命令する。高姫は、竹やぶで蟻に責められている男女を救うように梅公別をそそのかす。実は梅公別は、二人の男女が高姫にだまされて蟻に責められていることは、常磐丸の船内で透視して知っていた。そして二人を助けに小船でやってきたのであった。すでに蟻の魔の森に鎮魂を修し、神霊を送って蟻を退けておいてあった。また、高姫が自分を蟻の餌食にしようとしていることを知っていたが、だまされた振りをして、森に飛び込む。妖幻坊と高姫はそれを見て満足し、船に乗って島を去っていく。一方梅公別はフクエと岸子を救い出し、スガの港を指して進み行く。
主な人物 舞台 口述日1926(大正15)年06月29日(旧05月20日) 口述場所天之橋立なかや別館 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1929(昭和4)年4月3日 愛善世界社版68頁 八幡書店版第12輯 630頁 修補版 校定版71頁 普及版27頁 初版 ページ備考
OBC rm7206
本文のヒット件数全 6 件/魔の森=6
本文の文字数4481
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本文  妖幻坊、高姫の二人は太魔の島に繋いであつた小船を失敬し、四五町許り湖上を進んだ折しも、矢を射る如く一艘の小船此方を指して馳せ来るに出会した。高姫は目敏くも其船を見てハツと胸を轟かせながら顔色を紅に染めた。妖幻坊は此体を見るより稍不審を懐き、
妖『改めて千草の高姫様、いや女帝様、凄い御腕前にはこの杢助、驚愕否感激仕りました。帰命頂礼謹請再拝謹請再拝』
高『これはしたり、杢助様、妙な事を仰しやいますね、何をそれ程感激なさつたのですか。他人行儀に改まつて謹請再拝だなんて、よい加減に揶揄つておいて下さいな』
妖『忍ぶれど色に出にけり吾恋は
  物や思ふと人の問ふ迄。

と云ふ百人一首の歌をお前知つて居るのだらう』
高『ヘン、馬鹿にして下さいますな、そんな歌位よう知つて居ますよ、それが一体何だと仰有るのです、怪体の事を云ふぢやありませぬか』
妖『お前は今彼処へやつて来た一艘の船の若者を見て、顔を紅葉に染めたぢやないか、お前の寝ても醒めても忘れる事の出来ない恋人に相違あるまいがな、さうだから凄いお腕前だと云つたのだ』
高『何の事かと思へば又嫉いて居るのですか、水の上で妬くのも余り気が利かぬぢやありませぬか。サ、そんな気の利かぬ事を云はないで艪を操つて下さいな』
妖『艪を操るより実はあの男の艶福家にあやかり度いのだ。トルマン城の王妃の君、千草の高姫さまに思はれた天下唯一の美男子だからなア。俺のやうな虎とも獅子とも訳の分らぬ毛の深い男と一緒に暮すよりも、縮緬のやうな肌をした若い男と同棲した方が、どの位世の中が楽しいか分らないからのう。いや醜男には生れて来たくないものだ』
高『それや何を仰有います、よい加減に妾を虐めて置いて下さいませ』
妖『本当にお前はあの男を知らぬと云ふのか』
高『絶対に知らない事は知らないと云ふより外に道はありませぬもの』
妖『日出神の生宮、底つ岩根の大ミロク様の身魂は、決して嘘は云はないでせうね』
高『勿論の事です』
妖『そんなら此処で一つお前と約束しよう、お前が知つて居るか居ないか、あの船を追つかけてあの若者に会はして見よう。もし、向の方からお前の顔を見て何とか言つたら決して知らぬとは言はさないからな、関係のない男女には言葉を交さないのがこの国の規則だ。又只一度でも関係したら、内証でも言葉をかけなければならぬ規則だから、どうだ高姫、知らぬと云ふなら調べて見ようか』
高『なんとマア嫉妬心の深い執念深い人だこと、もうそんな事は水に流して一時も早うスガの港に行かうぢやありませぬか』
妖『お前がさう云へば云ふ程私の疑が増して来る許りだ。若しお前に関係があつたとすれや如何して呉れる。サアそれから定めておこう』
高『さう疑はれちや行り切れませぬから、貴方の御勝手に調べて下さい、さうしたら屹度疑が晴れるでせう。妾の身は晴天白日ですからなア』
妖『よし、おい出た。サアこれからが化の皮の現はれ時ぢや、高姫さま、確りなさいませや』
高『何なと仰有いませ、その代りあの男と妾と関係が無かつたと云ふ事が分つたら、どうして呉れますか』
妖『ハヽヽ如何するも斯うするもない、分つたらお前も疑が晴れて結構だらうし、俺も嫉妬心がとれて大慶だ。万々一俺の云ふ事が違つたら今後どんな事でもお前の云ふ事に絶対服従を誓つておく。しかし俺が勝つたらどんな事でもお前は俺の無理難題を聞くだらうなア』
高『あもやの喧嘩で餅論ですワ』
 「よし面白い」と云ひ乍ら妖幻坊は船首を廻し一艘の船を目当に追かけて行く。一艘の船は自分の現在盗つて来た船の繋いであつた場所へと横づけとなつた。妖幻坊はオーイ オーイと熊谷もどきに呼はり乍ら早くも岸辺についた。梅公別は二人の姿をつくづく眺めながら、
『ヤア、誰かと思へば千草の高姫さまで御座つたか、其後は打ち絶て御無沙汰致しました。貴女のお居間でグツスリと寝さして貰ひ、いかい失礼を致しましたが、ますますお達者でお目出とう、見れば立派なお婿さまをお貰ひなさつたやうですね。私とても万更他人ではありますまい。併し女と云ふものはよう気の変るものですね。どうか私の時のやうに、気の変らないやうに、今度の婿さまを大切にして上げて下さいや。斯う云ふても私は貴女に再縁を迫るやうな事もありませぬから御安心下さいませや。さうしてお二人お揃ひで此島へ何の御用でお出ですか』
高姫『これはこれは何処の方かは知りませぬが、人違ひをなさるも程がある。成程妾は千草の高姫に間違はありませぬが、広い世界には同じ顔をした女もあり、同じ名の女もあるでせう、そんな事を云ふて貰うと夫ある妾、大変に迷惑致します』
梅公『高姫さま呆惚けちやいけませぬよ、人違ひするやうな老眼でもなし、昼夜間断なく夢にまで貴女の姿を見て探して居る私、どうして間違へる気遣ひがありませうか』
 妖幻坊は面色朱を注ぎ身体一面、慄はせ乍ら高姫と梅公をグツと睨めつけ、
妖『これや、そこな青二才奴、誰に断わつて俺の大切の女房と何々しやがつたか、サ、その理を聞かせ、返答次第によつては容赦は罷りならぬぞ。これや女帝、いや阿魔奴、夜鷹、辻君、惣嫁、十銭、下等内侍、蓆敷奴が、八尺の男子を今迄馬鹿にしよつたな、サアこの裁きを確りと付けて貰ひませうかい』
高『これ杢助さま、辻君だの、十銭だの、蓆敷だの、余り情ないお言葉ぢやありませぬか、妾こそ全く知らないのですもの。此人は妾の美貌を見て精神が錯乱したのでせう、さうでなければ見ず知らずの妾を見て、こんな事を云ふ道理がありませぬもの』
妖『マアこの青二才はこの島に置いておきや逃げる気遣ひはない、その代り此の借船は預かつて置く』
と確りと自分の船尻に縛りつけ二三町許り沖へ漕ぎ出し、
『サア、夜鷹さま、斯うなつちや此方のものだ。本当の事を云ふて貰ひませうかい』
 高姫は進退これ谷まり隠すにも隠されず虚実取混ぜて覚束なくも白状をする。
『前斎苑の館の救世主、神素盞嗚尊の三羽烏の御一人、第一霊国の御天人様、曲輪の術に妙を得たる天下無双の英雄豪傑、縦から見ても横から見ても、頭から見ても、尻から見ても、何処に一所穴のない吾夫様、其御慧眼には遉の千草の高姫も感嘆の舌を捲かざるを得ませぬワ』
妖『何だ、長たらしい俺の名を並べやがつて、機嫌を取らうと思つたつて其の手に乗るものか、善言美詞も時と場所によるぞ。阿婆摺れ阿魔奴、そんな追従は聞きたくない。貴様の恋人に間違ひはなからうがな、女なら女らしくあつさりと白状しろ』
高『エヽもう斯うなれや破れかぶれだ。サア私をどうなとして下さいませ、お前さまに捨てられちや、最早此世に生甲斐もありませぬから、覚悟を決めました。サア、早う殺しなさい』
と糞度胸を据ゑて、もたれかかる。
妖『それ程殺して欲しけれや、敢て遠慮はしない覚悟だが、併しお前を殺すと忽ち困るのは俺だ。お前の美貌を種に一芝居打たにやならぬからのう』
高『ホヽヽヽヽ、それやさうでせうとも、ねえ貴方、どうして此の可愛い女房に刃が当てられませう、そこが人情の美しいところ、見上げたるお志、益々好になつて来ましたワ』
妖『エヽ馬鹿に晒すない、すべた阿女奴。それよりも約束を履行して何でも俺の云ふ事を聞いて貰はうかい』
高『ハイ何なりと聞きませう、お前さまが死ねと仰有つても嫌とは云ひませぬ、(低い声)ことはないけど、マアマア何でも聞きますから仰有つて下さい』
妖『そんなら俺に誠意を現はす為め、あの男を甘くちよろまかして魔の森へ甘く放り込んでくれ。さうすれや彼奴は蟻や蜘蛛に命を奪られて仕舞ふから、俺もお前に尻を振られる心配もなし、夜の目も楽に寝られると云ふものだ。どうだ得心か…黙つて返事をせぬのは嫌と吐すのか』
高『イエイエ、決して決して嫌とは申ませぬ、夫の為になる事なら、如何な事でも命を的に決行して御覧に入れませう、サア早く船をつけて下さい』
 妖幻坊は「お手並拝見」と云ひ乍ら梅公別の上陸した地点に引き返し見れば、梅公は二人の様子の唯ならぬに気を揉み、万々一大喧嘩でも湖上でおつ始めよつたら、忽ち湖中に飛び込み二人の危急を救はむと、じつと様子を見て居たのである。雲突く許りの妖幻坊は高姫と共に上陸し、
妖『其処に居る青二才奴、此方の云ふ事をよつく承はれ、吾こそは斎苑の館の総務を勤むる時置師の杢助だ。其方は照国別のヘボ宣伝使の草履持を致す木端野郎だらうがな。俺の女房と慇懃を通じたとか云ふ話だが、今日は大目に見ておくから、以後は必ず慎んだが宜からうぞ』
梅『ヤ、貴方が噂に高き時置師の神、杢助様で御座いましたか、存ぜぬ事とて偉い失礼を致しました。高姫さまと私との仲は双方共一度は恋慕致しましたが、未だ要領は得て居りませぬ。それ故赤の他人も同様ですから、余り貴方からお咎めを蒙る訳も御座いますまい』
妖『ハヽヽヽヽ、口は調法なものだのう、ゴテゴテ云ふにや及ばない、お前の良心に問うたら分るだらう。
 人問はば鬼は居ぬとも答ふべし
  心の問はば如何こたへむ。

と云ふ道歌を知つて居るだらう、俺も男だ、敢て追及はしない。高が青二才の一匹や二匹つかまへてゴテゴテ云ふのは時置師の沽券にも関するから、寛大の処置を取つて不問に付しておく、有難う思へ』
高『もし梅公別様、時置師の神様はあゝ仰有つても決してお前さまを憎むやうな方ぢやないから悪く思はないやうにして下さい。併しあたいに恋慕したつて駄目ですから其点は固く堅く注意しておきますよ。お前さまも宣伝使の卵ださうだから、一つ手柄初めにこの魔の森に落ち込んで苦んで居る男女の命を救けておやりなさい。さうすれや杢助さまの怒もとけ、お前さまの手柄も立つと云ふもの、どうです一つ侠気を出して決行する気はありませぬかな』
 梅公別は言霊別の化身で高姫や妖幻坊の正体を感知しない筈はない。さうして魔の森に高姫に誑かされ、二人の若き男女が蟻に責められ蜘蛛の糸にまかれ苦んで居る事は、既に已に常磐丸の船中に於て透視して居るのである。夫故に梅公別は両人を救ふべく小舟を操つて一人此所に上陸したのである。梅公別は早速鎮魂の神業を魔の森に修し、強き神霊を送つて居たから蜘蛛も蟻も如何する事も出来ないのを知つて居た。それ故泰然自若として妖幻坊、高姫の船中の争を見物して居たのである。今高姫が侠気を出して二人の男女を救へと云つた心の奥底は、梅公別をあの蟻の魔の森に飛び込ましめ、喰ひ殺さしめむと企んで居る事もよく承知して居た。それ故梅公別は二つ返事で承諾し妖幻坊、高姫の目の前で泰然自若魔の森へ飛び込んで仕舞つた。妖幻坊、高姫は両手を拍つて高笑ひ、竹藪の入口に進みよつて腮を突出し尻を叩き所在罵詈嘲笑を逞うし「ゆつくりお喰れなされ」と捨台詞を残し、再び船に身を任せ、何処ともなく浮び行く。梅公別は無事に二人を救ひ出し、暫し大銀杏の根下に腰打ちかけ、種々の成行き話を二人より聞き取り乍ら三人一つの小船に身を任せ、スガの港をさして進み行く。あゝ惟神霊幸倍坐世。
(大正一五・六・二九 旧五・二〇 於天之橋立なかや旅館 加藤明子録)
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