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文献名1霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻
文献名2第3篇 転化退閉よみ(新仮名遣い)てんかたいへい
文献名3第20章 九官鳥〔1829〕よみ(新仮名遣い)きゅうかんちょう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1926(大正15)年07月01日(旧05月22日) 口述場所天之橋立なかや別館 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1929(昭和4)年4月3日 愛善世界社版249頁 八幡書店版第12輯 691頁 修補版 校定版260頁 普及版98頁 初版 ページ備考
OBC rm7220
本文のヒット件数全 1 件/ハルの湖=1
本文の文字数3361
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本文  キユーバーは、杢助に呶鳴りつけられ高姫には嘲笑され、お為ごかしに五百円で買つた北町の家を貰つた事は貰つたものの、杢助、高姫の事だから、何時変替を云うて来るかも分らない。
キユーバー『エヽ本当につまらない、高姫さまの提灯持をして町々をふれ廻り、杢助の奴は手を濡さずして結構な神館を占領し、千草姫と喋々喃々、意茶ついて居るかと思へば、ごふ腹で耐らないワ。待て待て茲が一つ辛抱のし所だ、時節を待つて杢助を叩き出し、完全に高姫を此方の物となしスガの神館の神司となつて一つ羽振を利かしてやらう』
と、伊万里焼の達磨の出来損なひのやうな面構を晒し乍ら悄々と帰つて行く。北町の神館に帰つて見ればきちんと錠が卸り、こじても捻ぢても、些とも開かない。
キユ『エヽ杢助の奴人を馬鹿にして居やがる。待て待て、ひよつとしたら隣の元の家主に鍵を預けて置きやがつたかも知れぬ』
と呟き乍ら樽屋の表へ立はだかり、
キユ『御免なさい、拙僧はウラナイ教本部の高等役員キユーバーですが、もしや杢助さまが鍵でも預けては置かなかつたでせうか、一寸お尋ね致します』
 主人の久助は蛙の鳴くやうな妙な声がするので表へ来て見ると妖僧が立つて居る。
久助『ヤ、御用で御座いますかな』
キユ『別に用と云ふやうな事はありませぬが、今日からあの神館は拙僧の所有物となり居住する積りです。杢助さまが鍵でも預けて置きはしませぬかな』
久『確に預かつて居ますが、………この鍵は誰が来ても渡して呉れな………との仰せ、仮令貴方がお買ひになつても滅多にお渡し申す訳には参りませぬ』
キユ『元来この家の代金は拙者が三百円、杢助さまが三百円出して買つたのですから、当然半分は拙者の物、併し乍らお前さまも聞いて居られるだらうが、スガの宮の神館は問答の結果、杢助さまの領有となり、最早此神館は不必用となつたので、拙僧に買つて呉れぬかとのお頼みだから、残り三百円をおつ放り出し今買つて来たのですよ。怪しう思はれるのなら、余り遠くもないからスガの神館迄行つて調べて来て下さい』
久『あのお金はさうすると貴方が半分お出しなさつたのですか、ヘエー』
キウ『さうですとも、拙僧はスコブッツエン宗の教祖大黒主様の片腕とも云ふべき豪僧だ、何時もお金が懐に目を剥いて居る。杢助如きは諸国修業の遍歴者だからお金の有らう筈はなし、話に聞けば、ハルの湖で高砂丸に乗り込み、高姫が暴風雨に遇うて沈没したので、夫婦共真裸となり、命辛々スガの港に着いた位だから、一文半銭も金を持つて居る道理がないのだ。あの三百円も実は怪しいものだよ。どこかで何々して来よつたのかも知れたものぢやない』
久『アヽ左様で御座いますか。そんなら如才は御座いますまいから鍵をお渡し申ます』
と懐より取り出しキユーバーに渡した。キユーバーは機嫌を直しながら肩を四角に揺り、北町の小路を大股に跨げて帰り行く。
キユ『ヤア久し振に俺の巣が出来たワイ、ヤ巣では無い御本丸が出来たのだ。弥々今日から北町城の城主天然坊キユーバーの君様だ。斯うなると第一に必要なものは嬶村屋だ、否女帝様だ。何れこの神館へは些つとは美しい女も参つて来るだらう、四五日の間に物色して、これぞと云ふ奴を選み出し、当座の鼻ふさぎに引つ張り込んで置かう、その間に千草姫が何とかならうから』
等と独言をほざき乍ら、押入れから夜具を引つぱり出し、揚股をうつて寝て仕舞つた。
 暫くすると、トントンと表戸を叩いて隣のお三がやつて来た。
お三『御免なさいませ、キユーバー様はお宅で御座いますか』
 武士の子は轡の音に目を醒まし  乞食の子は茶碗の音に目を醒まし
 キユーバーは女の声に目を醒ます  寝呆けた顔を撫でながら
 ひびきのいつた濁声で
 キユ『ハイハイハイハイようお出で  何用あつて御座つたか
 御用の赴き聞きませう』と  寝床を立つて上り口
 火鉢の前に四角ばり  お三の顔を睨つける
 お三はぎよつとしながらも  揉手をなして丁寧に
 鈴の鳴るよな声出して
 お三『これはこれは当家の主のキユーバー様  お寝み中を驚かしまして
 誠に申訳御座いませぬ  妾は主人の言ひつけで
 お伺ひ申しに参りました  やがて主人が見えますから
 何処へも往つては下さるな』  云へばキユーバーは禿頭
 縦に揺つて涎繰り
 キウ『てもまア綺麗な女だな  俺もお前の知る通り
 今日から此所の主とはなつたれど  飯たく女もない始末
 お前のやうな渋皮の  剥けた女をいつ迄も
 宿屋の下女にしておくは  可惜ものよ勿体ない
 おほかたお前を俺の女房に  貰うて呉れとの掛合に
 久助さまがエチエチと  媒介せうとて来るのだらう
 お前も俺に添うたなら  今日から此方の奥様だ
 この家屋敷もすつかりと  お前と俺の共有物
 俄に蠑螈が竜となり  天上したよな出世ぞや
 キユーバー司の救世主は  お前の為には福の神
 あまり憎うはあるまい』と  曲つた口から吹き立てる
 お三は顔を赤くして
 お三『これこれ申しキユーバーさま  そんな話ぢやありませぬ
 深い様子は知らね共  杢助さまが渡された
 お金がさつぱり夜の間に  木の葉になつて仕舞うたと
 親方さまの御立腹  これや斯うしては居られない
 お役人衆に訴へて  お前と杢助夫婦をば
 縛つて貰ふかと御相談  妾は聞くに聞き兼ねて
 まうしまうし御主人様  御立腹遊ばすは尤もなれど
 短気は損気と申ます  一先づ隣のキユーバーさまに
 実否を糺した其上で  訴へなさるが宜からうと
 申上げたら御主人は  そんならお前に任すから
 キユーバーが居るか居らないか  調べて来いとの御命令
 よもや如才はありますまいが  贋札などを使うたら
 お上の規則に照らされて  臭いお飯食はにやならむ
 それが気の毒と思うた故  主人の鋭鋒止めおいて
 親切づくで来ましたよ』  云へばキユーバーは驚いて
 キユ『そんな怪体の事あろか  正真正銘の百円札
 手の切れさうな新しい  立派なお金ぢやなかつたか
 昨夜の間に泥棒が  お前の家へ飛び込んで
 お金をすつかりかつ攫へ  木の葉とかへておいたのだらう
 そんな馬鹿らしい出来事が  三千世界にあるものか
 何は兎も角久助を  連れて出て来いキユーバーが
 天地の道理を説き聞せ  疑念晴してやる程に
 アハヽヽハヽヽ訳もない  しやつちもない事云うて来る』
 などと嘯き取合はぬ  お三は止むなく立帰り
 主人の前に両手つき  キユーバーの言葉其儘に
 委曲に談れば久助は  しきりに首を振り乍ら
 キユーバー館をさして行く  キユーバーは又もや揚股を
 打つて鼻歌謡ひつつ  冥想に耽る折もあれ
 表戸ガラリと引開けて  血相荒く入り来る
 樽屋の主久助は  御免なさいと慳貪な
 言葉の端も荒らかに  庭にすつくと立つたまま
 久助『山子坊主のキユーバーさま  お前はよつぽど悪党だ
 杢助夫婦と腹合せ  魔法を使つて木の落葉
 金と見せかけ甘々と  大事の大事の吾家を
 横領いたした曲者よ  もう了見はならない程に
 如何な云ひ訳なさろとも  決して耳は借しませぬ
 バラモン役所へ訴へて  私が白いかお前等の
 腹が黒いかきつぱりと  分けて貰はにやおきませぬ
 覚悟を定めて居て下されよ  いま番頭をお役所へ
 出頭さしておきました  やがて縄目の恥をかき
 町内隈なく籐丸籠に乗せられて  詐欺横領の罪人と
 引き廻されて町人の  笑ひの種となつた上
 お前の命は風前の  燈火となつて消えるだろ
 南無阿弥陀仏阿弥陀仏  頓生菩提惟神
 目玉飛び出しましませ』と  体をぷりぷりゆすりつつ
 閾を蹴たてて帰り行く  後にキユーバーは手を組んで
 キユ『自分の金でもないものを  自分の金だと法螺吹いた
 其天罰が報い来て  杢助夫婦の罪科の
 相伴せなくちやならないか  ほんに思へば口惜しい
 昔の聖人の教にも  口は禍の門とやら
 もうこれからは心得て  決して嘘は言はうまい
 とは云ふものの此証り  どしたらはつきり立つだらう』
 などと青息吐息つき  表戸ぴしやりと引きしめて
 離棟の館に立籠り  中から錠を卸しおき
 長持開けて中に入り  布団被つて慄ひ居る
 キユーバーの身こそ憐れなり。
(大正一五・七・一 旧五・二二 於天之橋立なかや別館 加藤明子録)
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