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文献名1霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻
文献名2前付よみ(新仮名遣い)
文献名3北欧に於ける宇宙創造説よみ(新仮名遣い)ほくおうにおけるうちゅうそうぞう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月07日(旧10月20日) 口述場所水明閣 筆録者内崎照代 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月23日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 450頁 修補版 校定版62頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm760010
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本文  太初は空の空であつた。そこには眼にふれるものが何も無かつた。無限に広がつてゐる虚無には、ただ「ギンヌンガ・ギャップ」と言ふ深淵があるだけであつた。「ギンヌンガ・ギャップ」とは「顎を開いた決裂」といふ意味である。この深淵は永久の常闇の中にひたすら広がりに広がつて居たので、その大きさも深さも到底測り知られる限りではなかつた。
 茫々たる「ギンヌンガ・ギャップ」の深淵の北の果と南の果とに、二つの世界ならぬ世界があつた。北の果にある世界を「ニフルハイム」と呼び、南の果にある世界を「ムスベルハイム」と呼ぶ。
 「ニフルハイム」は極寒の世界である、暗黒の世界である。そこには物凄い霧と暗とが永久に総てを閉ぢこめて居る。この世界のただ中に、いつまでも尽きる事のない泉が湧いてゐる。泉は「フフエルゲルミル」と呼ばれた。泉からは氷のやうに冷たい水が滾々と迸り出で、十二の河となつて流れ出てゐる。流れ流れて行くうちに「ギンヌンガ・ギャップ」から吹いて来る剣のやうな疾風に触れて、山なす氷の塊となり、氷の塊は悠々と転がりつづけて、はては「ギンヌンガ・ギャップ」の底知れぬ深淵に雷のやうな響を立てて落ち込むのであつた。
 「ムスベルハイム」は極熱の世界である。火と光熱との世界である。この世界のただ中に「スルトル」と呼ばれる絶大の巨人が坐り込んで極熱界の四辺を守つて居る。「スルトル」の手には火焔の剣がしかと握られてゐる。巨人は絶えず凄まじい勢で剣を振りまはす。ふりまはす度に剣の刃から切尖から閃々たる火花が雨のやうに降りこぼれて、深淵の底に横はつてゐる氷の塊の上に落ちる途端に、耳を聾する様な音がして濛々たる蒸気が数知れぬ雲となつて高く高く舞ひ上るのであつた。勢ひ盛んに立ち上つた蒸気の雲が、氷寒世界の「ニフルハイム」から吹きすさんで来る冷たい風に凍つて、宇宙に堅くかたまつた時、それで測り知られぬ大きな魔物として活きて動くやうになつた巨魔の名を、「イミル」若くは「オルケルミル」といふ。「沸きかへる塊」といふ意義である。凝固まつた氷の魔であるから時として「リムツルス」(氷霜の巨人の意)と呼ばれることもある。古「エッダ」の詩篇は、この氷の巨魔を歌つて、

 古き昔
 イミルが住みし頃には
 砂なくなく
 涼しき波もなかりき
 大地も見出されず
 はた天空もあらず
 すべては一つの混沌にして
 いづこにも草を生ぜざりき

と言つてゐる。茫々たる虚無の中に生れ出た氷の魔「イミル」は、食物を探しもとめて闇の中をうごめき廻つて居た。そのうちに「アウヅムブラ」といふ絶大な牡牛を見出した。「アウヅムブラ」とは(飼育するもの)といふ意義である。この牛も濛々たる蒸気の雲が冷えて凍つて生れ出たものであつた。「イミル」は喜んで牡牛の側に駈けよつて行つて見ると、大きな乳母から雪のやうに白い乳母が四つの川となつて滾々と流れ出てゐる。「イミル」は日毎その乳汁を飲んで命をつなぐことにした。
 絶大なる牡牛「アウヅムブラ」も生きて居る以上、何かを食べてその命をささへなくてはならぬ。「アウヅムブラ」は大きなそして粗くて堅い舌を出しては氷の塊に凍りついてゐる塩を嘗めて居た。
 昼となく夜となく嘗めつづけてゐるうちに、氷の塊の中から男の頭髪が現れて、それから全身が現れ出た。氷の塊の中から飛び出して来たのは「ブリ」といふ神であつた。体が大きくて力が強くて、容貌の麗しい神であつた。そして間もなく「ボル」といふ男の子を生んだ。
 かうして神々が生れ出るやうになると、巨魔「イミル」も巨人どもを産み出すやうになつた。ある日、「イミル」は乳汁に飽いて、うたた寝をしてゐるうちに、体中に汗をかいた……と思ふと、左の腋の下から一人の男と一人の女とが生れ、足から六つの頭を持つた男が生れた。六頭の怪魔は「ベルゲルミル」と呼ばれた。神々の永久の敵となつた「霜の巨人」どもは、みなその子孫である。
 神々と巨人共が現れると、その間に激しい戦が始まつた。神々は善きもの義しきものの力として、巨人どもは悪しきもの邪なものの力として、どうしても仲よく暮して行くことが出来なかつたのである。しかしいつまでもいつまでも闘つてゐるうちに、双方もやや争に飽いて、「ボル」神が「ボルトルン」(悪の荊)の娘「ベストラ」を娶る事になつて、「オーディン」「フィリ」「フエ」といふ三人の神をまうけた。其の中の「オーディン」こそ、ゆくゆく神々の王者となつて、あらゆる世界を支配すべき運命を持つた最も高く最も偉い神である。
 三人の神々が生れると、すぐに父の「ボル」神を援けて、また巨人どもと烈しい戦を開いた。巨人族の頭領である「イミル」は血みどろになつて荒れまはつたが、たうとう三人の神に斬りさいなまれて、凄じい叫び声とともに、丘を覆すやうにどつと倒れた。と見ると、傷口から紅の血が潮のやうに噴き出して、大きな河となり、はてはあたりに恐ろしい血の洪水を惹き起した。首領の敢ない最後に気ぬけがしてゐた巨人どもは、驚き騒いで、あちらこちらに逃げまどつてゐたが、たうとう一人も残らず滔々たる血の流れに押し流されて、苦しみもがきながら溺れ死んでしまつた。ただ「ベルゲルミル」といふ六頭の巨人だけは、おのが妻と一しよに一艘の船に乗り込んで、血のの上を漕いで漕いで世界の果ての果てまで逃げて行つてしまつた。
 「ベルゲルミル」夫婦が落ちて行つた世界は「ヨッツンハイム」と呼ばれる。二人はこの世界に住み留つて、新しい「霜の巨人」どもを生んだ。
『わたしたちが、こんな寒いわびしい世界に住むやうになつたのも、全く神々のせゐだ。思へば憎い奴等ではある』
 「ベルゲルミル」夫婦は、いつも口癖のやうに、かう話しあふのであつた。だから「霜の巨人」どもも、両親の恨をうけついで、神々を目の敵のやうに思ひなし、折さへあると自分の世界から脱け出して神々のゐるところに襲ひかかるやうになつた。

   天地万物の創成

 神々は、その強敵である巨人どもにうち勝つことが出来たので、茫々たる虚無の空際を普く見渡して、確かな、そして住みよい世界を造らうと決心した。
 「オーディン」は「フィリ」と「フェ」とに対つて、
『わしたちは、先づしつかりした、形のある世界を造らなくてはならぬ。それには巨魔「イミル」の体を使ふのが一番いいと思ふ』
と言つた。「フィリ」と「フェ」とはすぐにそれに同意した。
 そこで三人の神は「イミル」の大きな体を「ギンヌンガ・ギャップ」のただなかに引き摺つて来て、体の肉で大地をつくり、流れほとばしる血でをつくり、大きな骨で山や丘をつくり、顎や歯や砕けた骨で大石小石をつくり、髪の毛で樹や草をつくつた。
 神々は大地を宇宙の真中に据ゑた。そしてそのまはりに、隈なく「イミル」の睫毛を植ゑて堅固の砦とし、またそのまはりにをひきはへて、二重の砦とした。
『大地はゆくゆく人間といふものの住居となすはずぢや。だから出来るだけ守備を固くして、巨人どもの災から免れるやうにしてやらなくてはならぬ』
 「オーディン」はかう言つて「フィリ」と「フェ」とを顧みて、快げに微笑んだ。それから「イミル」の大きな頭蓋骨を大地の遥か上に投げあげて、円い天空をこしらへ、頭脳をそこに撒きちらして、羊の毛の様な雲をこしらへた。
 投げ上げただけでは、天空が墜ちて来る心配がある。そこで神々は、力の強い四人の侏儒を世界の四隅に送つて、その肩で天空を支へさせることにした。東の隅を支へる侏儒は「アウストリ」と呼ばれ、西の隅を支へる侏儒は「ウエストリ」と呼ばれ、南の隅を支へる侏儒は「スードリ」と呼ばれ、北の隅を支へる侏儒は「ノルドリ」と呼ばれた。英語で東西南北をそれぞれEast,West,South,Northといふのは、これが為めである。
 たしかな、形ある世界が、かうして出来上つた。しかしまだ光がない。光がなくてはありとある世界は、恐ろしい常暗に閉されてゐなくてはならぬ。そこで神々は、極熱世界「ムスベルハイム」から迸り出る数知れぬ火花を採りあつめて、広々とした空に撒きちらした。火花は大空に燦きわたつて、世界を明るくするやうになつた。人の子が星と呼んでゐるのがこれである。それから神々は「ムスベルハイム」から閃き出した最も大きな二つの火花を天空に投げ上げた。人間が太陽と呼び、月と呼んでゐるのが、それである。
 神々は太陽と月とのために、美しい黄金の車をつくつた。そして太陽をのせた車に「アルファクル」(朝はやく目を覚ますものといふ意味)といふ馬と、「アルスフィン」(迅く行くものの義)といふ馬をつなぎ、月をのせた車に「アルスフィデル」(全く速かなるものの義)といふ馬をつないだ。月の光は蒼白くて冷たいが、太陽の光はあらゆるものを焼きつくすやうに熱い。だから神々は、太陽の車をひく馬のために、二つの革袋に冷たい空気をつめて、その肩に結びつけ、また「スファリン」(冷すものの義)といふ楯をつくつて、車の前部にかけることにした。楯が太陽の光線をさへぎつてくれなければ、馬は見る見る焼け爛れて、はては燃滓となつて、大地に墜ちてゆくにちがひない。
 かうして太陽と月とは、もう動き出すばかりになつたが、馬を導いてくれるものがないと、日毎正しい道を往来することが出来ぬ。
『誰に馬を駆らせる事にしよう。うつかりしたものにこの役を任せると、大変なことになつてしまふのだから』
 神々はかういつて、普く世界を見わたすと、「ムンディルファリ」といふ巨人の子たちに目がついた。「ムンディルファリ」は、それが誇らしくてたまらなくて、男の子に「マニ」といふ名をつけ、女の子に「リル」といふ名をつけた。「マニ」は「月」のことであり「リル」は「太陽」のことである。
 神々は、この二人に太陽と月との馬を導かせ様と決心した。そこで巨人「ムンディルファリ」に相談して二人を貰ひ受けて、これを天空に送つた。
『そなたたちは空にのぼつて、太陽と月とに正しい道を往来さしてもらひたい。少しでも道をあやまると大変なことになるのだから、よく気をつけるやうに』
 神々からかういひつかつた二人は、天空に昇つて行つて、「リル」が太陽の道しるべをつとめ、「マニ」が月の道しるべをつとめることになつた。
 次に神々は、巨人の世界「ヨッツンハイム」から「ノルフィ」といふ巨人の娘「ノット」(夜といふ義)を呼びよせて、「夜の車」を掌らせることにした。「夜の車」は闇の色をしてゐる。そしてそれを牽く馬も墨のやうな黒毛である。黒面の「ノット」が静かに鞭を振ると、黒毛の馬は長い長い鬣を揺がせて、除ろに「夜の車」をきしらせ始める。揺れ動く鬣からは、霜と霜とがふりこぼれて、音もなく大地に墜ちる。かうして人間界に夜が来るのであつた。
 夜の乙女「ノット」は「デリング」(曙を意味す)といふ神と結婚して、「ダグ」(昼を意味す)といふ光り輝く美しい男の子を産んだ。神々は「ダグ」の輝かしい姿を見ると、これを呼び出して「昼の車」を掌らせることにした。「昼の車」は華やかに燦き渡つてゐる。そしてそれを牽く馬もまぶしい様に光る白毛である。白面の「ダグ」が静かに鞭をふると、白毛の馬はきらめく鬣を揺がせて、徐ろに「昼の車」をきしらせ始める。揺れ動く鬣からは、光がさつと閃き出して、あらゆる世界に明るさと喜びとを漲らす。かうして人間界に昼が来るのであつた。
 しかし善きもの義しきものには、いつも悪しきもの邪なものがつきまとふ。人間界に光を与へる太陽と月とにも、恐ろしい敵があつた。それは猛々しい二匹の狼であつた。狼の一つは「スコル」と呼ばれ、他の一つは「ハーチ」と呼ばれた。「スコル」は「反抗」といふ意であり、「ハーチ」は「憎悪」といふ意味である。
『追つかけろ追つかけろ。どこまでも追つかけて、太陽と月とを呑んでしまはなくてはならぬ。あらゆる世界が再び永久の闇につつまれてしまふやうに』
 二匹の狼はかう叫んで、凄じい勢で絶えず太陽と月とを追つかける。太陽や「月の車」をひく馬は、それに脅えて懸命に駈け出すのであるが、ときどき狼に追ひつかれて、大きな口の中に嚥みこまれかける。人の子が日蝕といひ月触といふ現象はかうして起るのである。人の子は世界が急に暗くなりかけるのに驚き怖れて、一斉にあらん限りの音を立てたり叫んだりする。と、流石の狼もびつくりして、嚥みかけてゐた太陽や月を吐き出してしまふ。
 「月の車」を司る「マニ」は、神々の言ひつけによつて大空に昇つて行つたときに、二人の子供を大地に残しておいた。子供の名は「ヒウキ」といひ「ビル」といつた。「ヒウキ」は「次第に大きくなるもの」といふ意味であり、「ビル」は「次第に細くなるもの」といふ意味である。「マニ」は子供のことが気になるので、ある時天界から遥か下なる大地を眺めおろして見た。と、二人の子供は、意地の悪い男に使ひ廻されて、夜もすがら水を運んでゐるのであつた。「マニ」はすつかり怒り出して、
『あんなひどい男のそばに、大事な子供を置いておくわけにいかぬ。ここに呼びよせることにしよう』
といつて、二人を大空に呼びよせた。かうして月は夜ごとに大きくなつたり、細くなつたりするやうになつた。
 神々は、太陽と月と「昼」と「夜」に言ひつけて、一年の月日の進みかたの印をつけさせることにしたばかりでなく、さらにまた「夕方」「真夜中」「朝」「午前」「正午」「午後」にも、彼等と力を合せて、同じやうな務を尽すように命じた。
 昔の北欧では、一年は夏と冬との二つに分れてゐるだけであつた。「夏」は優しくおとなしい男で、あらゆるものから愛せられてゐたが、「冬」は気が荒くて、意地が悪くて、すべてのものから憎まれた。北欧の冬はひどく寒い。そして身を切るやうな風が、絶えず吹きすさぶのであつた。「フリースフェルグル」(屍をのむものの義)といふ巨人がゐて、鷲の羽衣を纒うて、天界の北の果ての果てに坐りこんでゐる。この巨人が羽衣の翼をひろげて、はたはたと煽ると、剣のやうな寒風がさつと吹き出して、容赦なく大地の面を荒れまはつては、あらゆるものを枯れ凋ませるのであつた。
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