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文献名1霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻
文献名2第2篇 晩春の神庭よみ(新仮名遣い)ばんしゅんのしんてい
文献名3第7章 外苑の逍遥〔1924〕よみ(新仮名遣い)がいえんのしょうよう
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ旅に疲れた諸神たちは各々眠りにつき、高地秀の宮居の広庭は水を打ったように静まり、小鳥のさえずる声のみが聞こえていた。胎別男の神は神駒の疲れを休ませようと、外苑の庭に放して遊ばせていた。春風は花の香りを四辺に送り、いたるところおぼろのもやが立ち込めて、のどかな晩春の景色となっていた。そんな中、ひとり朝香比女の神は、長閑な春の日に眠るのは惜しいと、清庭に立ち居で、心静かに歌を歌っていた。晩春の景色を述懐していた朝香比女だが、その歌は次第に、旅立っていった顕津男の神への思慕に変わっていった。そして御樋代の神として顕津男の神をどこまでも探し追い求めて行こう、高地秀の宮居を旅立とう、という思いにまでなっていった。その歌を耳にした胎別神は、大いに驚いて宮居に急ぎ帰り、他の御樋代神と鋭敏鳴出神、天津女雄の神に報告した。一同は驚いて外苑に出てきてみれば、朝香比女はすでに駒の背に倉を置き、片手に手綱を取ってまさにあぶみに足を掛けて乗り出でようとするところだった。高野比女は急ぎ馳せよって駒のくつわを固く握って押さえ、出立をいさめる歌を歌った。朝香比女は右手に手綱を取りながら、返答歌にて、顕津男の神への恋しさに、道にそむくと知りながらも、旅立つ心を押さえられない気持ちを伝えた。高野比女は厳然として諭しの歌を歌うが、朝香比女はさらに強い自分の思いを返答歌にして返すのみであった。朝香比女の神の勢いに驚いたその他の神々も、比女を思い止めようとさまざまに諭しの歌を歌うが、朝香比女はそのたびに自分の強い決意を歌にして返した。最後に天津女雄の神がいさめの歌を歌うが、朝香比女は決然として別れの歌を歌い、駒に一鞭あてると、まっしぐらに夕闇の中へ旅立っていってしまった。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月06日(旧10月19日) 口述場所水明閣 筆録者谷前清子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月23日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 533頁 修補版 校定版291頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7607
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本文  長途の旅に疲れたる百神等は、各自春の日の夢を結ばせ給ひ、高地秀の宮居の広庭は水を打ちたる如く静まりて、小鳥の春を囀り交す声のみぞ聞ゆ。
 胎別男の神は駒の疲れを休ませむとして、限りも無き広き外苑の若草萌ゆる清庭に、駒を放ちて遊ばせ給ひつつありける。
 春風は徐ろに吹き花の香を四辺に送り、四方はおぼろに靄立ちこめて、げに長閑なる晩春の景色なりける。
 朝香比女の神は長途の疲れもいとひ給はず、この長閑なる春日を眠るは惜ししと、花の蕾のほぐれたる清庭に立ち出で給ひ、心静に御歌詠ませ給ふ。

『梓弓春の女神は夏山の
  みどりの園にうつらせ給ひぬ

 吹く風も長閑なりけり晩春の
  野辺の景色は湯の沸ける如し

 百千草所せきまで萌え出づる
  野辺の遊びは心地よろしも

 露おびし若草の上を踏みて行く
  素足の裏のさも心地よき

 紫の花はほぐれて池水に
  咲くも床しき庭のあやめよ

 やがて今あやめの花は紫と
  日々に匂ひて夏深むらむ

 池水の底に泳げる大魚小魚
  鰭の動きのすみやかなるも

 背の岐美はいづくの果てにお在すらむと
  朝な夕なを思ひわづらふ

 爛漫と咲きほこりたる桜木の
  花もつれなく散る世なりけり

 白梅は早や散り果てて若葉萌ゆる
  梢につぶら実のぞきゐるかも

 天津日は霞の空にほのぼのと
  光やはらげて昇りましける

 駿馬の嘶き強く草むしる
  愛ぐしき姿に夏は来むかふ

 山も野もみどりの衣着飾りて
  夏の粧ひものものしけれ

 われもまた御樋代神の一柱
  ただいたづらに時を待つべき

 天地の森羅万象はうつり行く
  この天界に黙しあるべき

 いたづらに岐美を恋ひつつ歳を経し
  わがおろかさを今更悔ゆるも

 御樋代神は御子生みのみにあらずとは
  知れど如何でか忍ばるべしやは

 岐美を恋ふる心の駒ははやり立ちて
  女神の胸は高鳴り止まずも

 草の露素足に踏みて行く庭の
  果てにも霞む晩春の色

 躊躇の弱き心を立直し
  勇み進まむわが背の岐美許に

 吾行かば背の岐美怒らせ給ふらむ
  言霊照して和らげて見むかも

 鋭敏鳴出の神の出でましし大宮居は
  弥栄えなむわれ居らずとも

 百神に議らば心ず止められむ
  吾はひそかに旅立たむかも

 天津日の西にかたむく夕暮を
  駒に跨り御空をたづねむ』

 朝香比女の神はひそひそと述懐歌をうたひ乍ら、芝生を逍遥し給ひけるが、胎別男の神は耳ざとくも朝香比女の神の御歌を聞き給ひ、驚きて大宮居に馳せ帰り、七柱の御樋代神始め鋭敏鳴出の神、天津女雄の神に事の由を詳細に告げ給へば、各自驚き給ひて夢を破らせつつ、朝香比女の神の出立を止めむと、夏草萌ゆる外苑に立出で給へば、朝香比女の神は吾乗らむ駒の背に鞍を置かせ給ひ、片御手に手綱を取り、左の御足を駒の鐙に半ばかけむとし給ふ折なりければ、高野比女の神は驚き給ひて馳せより、駒の轡を堅く握らせ給ひて御歌詠ませ給ふ。

『春さりて夏来むかへる清庭に
  何故汝は駒に召さすか

 駿馬に跨りいゆく旅衣も
  早や夏の日となりにけらしな

 草枕旅に立たすは春と秋の
  花と紅葉の頃なるべきを』

 朝香比女の神は右手に手綱を取りながら答の御歌詠ませ給ふ。

『背の岐美の御上思へば恋ふしさの
  心つのりて得堪へずなりぬ

 八十筋に乱れ初めにしわが心
  つかねむ由もなかりけるかな

 大道に違ひ奉ると知りつつも
  吾進まばや背の岐美許に

 駿馬のはやる心を止めます
  公の言の葉恨めしきかな

 いか程にとどめ給ふもわが心
  はや旅立ちを定めたりける

 なまじひに止め給ひそわが駒は
  旅に立たむと足掻き止まずも』

 高野比女の神は儼然として御歌詠ませ給ふ。

『主の神の汝は依さしの御樋代よ
  許しなくして旅に立たすか

 天界は主の大神の御樋代よ
  いかで許さむ独断心を』

 朝香比女の神は答の御歌詠ませ給ふ。

『主の神の道に背くと知りながら
  恋ふしさつのりて死なまく苦し

 日に夜に苦しみもがきし吾魂は
  消なば消ぬべく死なば死ぬべし

 矢も楯もたまらぬまでの恋ふしさに
  胸の高鳴り苦しく止まずも

 今となりて恋ふしき心をひるがへす
  力なきわれを許させ給へ』

 鋭敏鳴出の神はこの様を見て驚きながら、御歌詠ませ給ふ。

『主の神に御樋代神とまけられし
  公にあらずや省みましませ

 草枕女神の一人旅立ちは
  危ふかりけむ時を待たせよ

 いか程に心はやらせ給ふとも
  この稚国土は進む道なし』

 朝香比女の神は決然として歌ひ給ふ。

『よしやよし万里の荒野を渉るとも
  吾は恐れじ言霊剣もてれば

 言霊の貴の剣をふりかざし
  さやらむ曲津を斬りはふり行かむ

 高地秀の宮居は尊し背の岐美は
  一入なつかし黙しあるべきや

 吾一人これの宮居にあらずとも
  鋭敏鳴出の神ひかへますなり

 遠くはかり深く思ひて吾は今
  御子生みの旅に立たむとすなり

 主の神の依さしの神業遂ぐるまで
  吾は帰らじ許させ給へ

 御樋代の比女神等よわが願ひ
  𪫧怜に委曲に聞きて許さへ

 わが心千引の巌より重くして
  如何なる力も動かし得ざらむ』

 梅咲比女の神はしとやかに御歌詠ませ給ふ。

『背の岐美を思はす心のあさからぬ
  朝香の比女の真言を悲しむ

 吾とても日々に恋ふしく思へども
  御許しなければせむ術もなし

 あらためて神の許しの下るまでは
  朝香の比女よ暫く待ちませ

 いたづらにわが思ひねをつき通し
  後にて悔います公を悲しむ

 御樋代の神と仕へてわれとても
  心苦しくけ長く待ちぬる

 汝が心吾は知らぬにあらねども
  神の許しのなきを恐るる

 兎も角も高地秀の宮居に帰りませ
  汝が心のはやりいませば

 落ちつきて身の行く末を語らひつ
  静かに静かにおこなはせませ』

 朝香比女の神は御歌もて答へ給ふ。

『ありがたし梅咲比女の神宣
  心に刻みて忘れざるべし

 さりながら生命消ぬまでこがれてし
  岐美はわが身に捨て難きかも

 百神はいかにわが身をはかゆとも
  恐れず行かむ駒に鞭うちて

 御樋代の神等宮居の司等
  わが旅立ちを詳細に許せよ

 いざさらば駒に跨り出で行かむ
  すこやかにませ御樋代神等』

と言ひつつ、再び駒に跨らむとし給ふにぞ、寿々子比女の神は駒の轡をきびしく手握り給ひて、御歌詠ませ給ふ。

『吾とても岐美を恋ひつつ朝夕を
  歎きて暮らす神魂なりけり

 さりながら主の大神の許しなくて
  これの聖所をはなるべしやは

 汝が神の清き心のそこひまで
  吾は悟れりとどむるも悲し

 止めあへぬ涙かくして夜昼を
  なげきし吾はかくもやつれし

 さりながら神の依さしの重ければ
  忍びて待ちぬ長の月日を

 この度は思ひ止まり給へかし
  牡丹の花も開き初むれば

 爛漫と咲き匂ひたる桜花も
  夜嵐に散る世を思ひませ

 愛善の紫微天界も永久に
  花も梢のものならざらむ』

 宇都子比女の神は、駿馬の前にしとやかに立たせ給ひつつ、朝香比女の神の旅立ちを止めむとして御歌詠ませ給ふ。

『春さりて夏はやうやく来向へる
  野に若草は萌えさかりける

 夏草の萌ゆる聖所を後にして
  旅立たす公の心あやしも

 願はくば暫しを待たせ主の神の
  やがて許しの下る日来らむ

 何事も己が心のままにならば
  吾も黙して止まらざるべし

 汝が神の切なる心は悟れども
  天界のために吾はとどめむ

 大宮居に朝な夕なを仕へます
  汝の勤めを汚し給ふな

 言霊の御樋代神とつつしみて
  高地秀の宮居に暫し仕へませ

 吾とても同じ思ひに泣きながら
  忍びて宮居に仕へゐるなり』

 狭別比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『朝香比女神の神言の出で立ちを
  とどめむとする吾は苦しも

 苦しさを忍びてとどむるわが言葉
  うべなひ給へ朝香の比女神よ

 高地秀の峰の桜は散り果てて
  野は常夏の色をそめたり

 高地秀の春のはじめの桜花も
  はや散りにけり御樋代神の身に

 春過ぎし花なき木草の如何にして
  花なる岐美と水火の合ふべき

 夏草は所せきまで萌え出でぬ
  汝が神すでに歳古りにける

 歳古りし御樋代神は言霊の
  もとゐとなりて天界を守れよ

 吾も亦歳ふりし身よ言霊の
  御樋代神となりて仕へむ

 高地秀の宮居の名花を散らすかと
  思へば惜しし公の旅立ち』

 花子比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『花子比女花の姿はあせにけり
  朝香の比女も斯くやましけむ

 あさからぬ朝香の比女の志
  とどめむとして涙あふれつ

 顕津男の神の御後を訪ねむと
  思ほす公の心かなしも

 顕津男の神は国土生み神生み
  神業忙しく顧みたまはじ

 遥々と遠の山野をのり越えて
  無情に泣かす公を悲しむ

 村肝の心の駒を立て直し
  止まり給へ高地秀の宮居に』

 小夜子比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『小夜更けし身ながら光の顕津男の
  神の御後を訪はす術なさ

 春さりて夏の夕べを旅立たす
  公を悲しとおもひて泣くも』

 朝香比女の神は、決心の色を面に浮べて御歌詠ませ給ふ。

『神々のあつき心は悟れども
  心の駒の足掻き止まずも

 わが神魂愛ぐしと思し給はれば
  許させ給へ今日の旅立ちを

 よしやよし曲神道にさやるとも
  生言霊になびけ進まむ

 言霊の幸に生れしわれにして
  言霊の水火輝かざらめや

 駿馬のはやる心を貫ぬきて
  吾は進まむ背の岐美許に』

 天津女雄の神は憮然として歌ひ給ふ。

『朝香比女の強き心は悟れども
  今暫くを待たせたまはれ

 比女神の矢竹心をおさへむと
  百神等の真心かなしも

 百神のやさしき心をよそにして
  旅立たむとする公ぞつれなき』

 朝香比女の神は矢も楯もたまらず、決然として鞭を右手に手握り、左手に手綱をささげながら御歌詠ませ給ふ。

『いざさらば百神等よ大宮居に
  朝な夕なを仕へましませ

 百神等の御旨にそむくと思へども
  かたき心をわれ如何にせむ』

と言挙げしつつ一鞭あててまつしぐらに夕闇の幕分けつつ一目散に駆け出で給ふぞ是非なけれ。
(昭和八・一二・六 旧一〇・一九 於水明閣 谷前清子謹録)
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