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文献名1霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
文献名2前付よみ(新仮名遣い)
文献名3序文よみ(新仮名遣い)じょぶん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ各国には、その国に合った建国の精神があるように、日本には固有の大和魂というものがある。吾(出口聖師)は、明治三十一年より、その大和魂の宣揚に努めてきた。今、大和魂を奉じる団体が沢山現れてきたことは、喜ばしいことである。東方に位置し、万世一系の国家として他に類を見ない日本国とすれば、自身が持っている国民精神=大和魂に基づいてこそ、日本の文化文物の特異性を世界に訴え、賞賛を受けることができるのである。今日、大和魂を発奮して国民が覚醒しなければ、その輝きも徳も失われてしまう、と叫ぶ向きもあるが、堅固で純粋な大和魂はそう簡単に消えたり磨り減ったりするものではない。むしろ、常に明るく澄んで、磨かれつつ光を放っているのである。では、大和魂がどのようなものであるかというと、忠孝、信義、友愛、大侠、義勇、正義、自由、それぞれが、純真な意識的行動によって、発現される=大和魂なのである。日本の比類ない国体を護り、国家を支持する精神はすべて、このような国民性が持っている、誇りと矜持なのである。それこそが、日本人の国民性のみが占有する、独占的な特質なのであり、他のいかなる国民も、真似をしたり奪ったりできないところである。たとえて言えば、これは大和魂が約束する、絶対に侵すことの出来ないひとつの手形である。もしもこの手形を手放す者があるとすれば、大和魂=国民的精神は奪い去られ、精神的財産は跡形もなく消えうせるということになる。現代日本に生を受け営みつつ、これを手放す精神的亡者があるとすれば、それは日本精神を賊し冒涜するものであり、筆者としては心外千万の沙汰である。顧みて、欧米の文明が日本(精神)に何をもたらしたか。理知や物質的・機械的なものは先走り、上滑るほどに盛りだくさんであった。欧米文明の心酔者は、それに幻惑され、愛溺し、重宝がった。その結果残ったのは、思想の偏りと荒廃くらいなものである。そんな状況の中、ややもすれば、この思想の変遷を助長し促進して、とんでもない方向へ脱線し奔放をほしいままにする一部の国民さえ現れたのである。基本的に、欧米文明の長所を取り短所を大和魂で補う、ということの正しさは、いかに古臭い学者といえども、もはや否認する道理もない。しかし、短を補うのではなく、あまりに長所を盲信し、機械と物質のロボットと化してしまったことによって、脱線・奔放をほしいままにする「似非自由主義者」という怪物が、のさばり出すようになってしまった。つまり、常軌を逸した状態が、ただ政治や経済組織の上に見られるだけでなく、人間の思想の上にも存在するようになってしまった。まことに呪わしい世相・人間世界となってしまったのである。具体的に、どのような異常状態が、現在の人間精神にあるかと言うと、欧米文明をあまりに広範に取り入れてしまった結果、欧米文明の長所が本来どこにあったか、という指標が狂ってしまった。そうして終に、脱線し歯止めがなくなり、ありのままの姿をさらけ出してしまった。その結果が左翼化、共産主義化である。左翼・共産主義が、資本主義の是正を叫び、統制経済の確立を叫ぶのは、既存の組織のあり方を正すという点では、一つの努力とみなすことはできる。しかし、大局的に大きく物事を見たときに、果たしてそのような方向で大和魂は、発揚したり、その豊かな味わいを発揮したりできるのだろうか。左翼的・共産主義的な是正ではなく、先祖に報い始めに返る精神で是正をしていかなければ、日本の国民精神は滅亡してしまうかもしれない。このような事態の中、皇国日本の真の精神と、天壌無窮の皇室の尊厳とをあまねく国民に現し、そうすることで、この非常時に直面している国民同胞を迷いから醒ますために、『天祥地瑞』の神書を著したのである。東洋、特に日本の天地開闢・宇宙創造説を、西洋諸国と比べて見ても、外のものは根拠のない神話物語であり、これを見ても非文明的である理由がわかるであろう。さて、この巻は、八柱の御樋代神の一人、朝香比女神が、スウヤトゴル山で太元顕津男の神と再会し、英雄的活動により大曲津見を言向けやわし、新しい国土を経営し国魂神を生み出でますという、紫微天界での大活動の序幕の物語である。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月12日(旧10月25日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月30日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 583頁 修補版 校定版前付 1頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm770001
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本文  近来漸く世間に日本魂の発揚と国民精神の高調を計らむとする種々の団体が発生したるを聞く。まことに慶賀すべき現象である。
 吾人は明治三十一年より今日に至る前後三十六ケ年間、日本魂の高調と皇道宣揚のために一大獅子吼を続けつつ万難を排して進んで来たが、天の時到りて現代の日本国は超非常時に直面したれば、国民の各階級を通じて日本精神の作興、国民精神の高調を云為する者の日に月に多きを加ふるに至りたるこそ皇国日本更生の先駆として結構なことであると思ふ。併し日本には日本固有の精神があり、欧羅巴にはヨーロッパの精神があり、亜米利加にはアメリカ精神と言ふものがあつて、建国の大精神として国民の伝統性を象徴すべき事は言ふまでもないことである。
 殊に東方に国し、万世一系の国家として万邦に冠絶する日本国とすれば、われわれのみの有する国民精神、即ち日本魂でなくては、我文物制度の諸々の特異性が、世界万邦に強記され驚嘆さるる筈はないのである。
 特に日本魂の高調によつて、国民の覚醒を求めなければ、わが日本魂は光暉もなく徳沢もないと主張する人々もあるやうだが、而もわが日本国民には牢固たる日本魂、純乎たる国民精神なるものは、決して脆く消磨し又は喪失すべきものとは断じられない、のみならず、この精神には益々高く清く且つ明澄に常住坐臥、磨きをかけられ光暉を放ちつつあるものと観なければならない。
 日本魂なるものは忠孝、信義、友愛、大侠、義勇、正義、自由の各自純真な意識行動によつて発励さるるを本義とする。我万邦に比類なき国体を護り国家を支持する精神は、咸く皆これら国民性の固有する負誇矜持であつて、他の国民の模し且つ奪ふべからざる独占的所有権である。この占有権には絶対の保障がなくてはならない。即ち日本魂の約束する一つの手形である。この絶対不可侵的手形は既成宗教的信仰心の裏書によつて容易に手放されぬ。もし手放すものがありとするならば、茲に日本魂即ち国民精神は奪ひ去られて、国民の持つ処の精神的財産、精神的衣糧は跡形もなく消え亡せるであらう。然り、この精神的亡者、精神的自殺者が現代日本国に生を享け生を営みつつありとせば、それは日本精神を賊し且つ冒涜するもので心外千万の沙汰である。
 顧みれば欧米の文明なるものは果して日本に何物をもたらしたか、只その文明の心酔者が先走り上辷りたる理智本能と物質的機械的なる盛装に眩惑し、愛溺し、重宝がつただけの事象は認められようが、得るところ残さるるものは、思想の偏傾と荒頽とを挙げ得る位のもので、この間動もすれば思想の変遷を助長し促進して、あらぬ方面への脱線、奔放を体現する一部の国民なしとは断言されない。
 欧米文明の長を採り短を補ふと言ふ本来の意義は、如何に固陋な旧道学者と雖も否認すべき道理がない。けれども短を補ふの程度を踰え、余りに長所を盲信した機械と物質のロボツト化せしことによつて、脱線的思想家を生じ、自恣奔放なる似而非自由主義者の怪物がのさばり出すやうになつた。これで見ると、凡そ世に変態と称し得べき範囲に於て、啻に政治の上に経済組織の上にのみ時に変態の称を冠し得る事実の発生を記憶する以外に於て、人間の思想の上にも亦変態的事実の存在を否認されぬこととなる。洵に呪はしい世相であり人間世界である。
 何をか人間の思想に変態事象ありと言ふか。いはゆる欧米文明のあまりに広範囲に無際限にとり入れられた為に、その長所の標識が狂ひ出して、終に脱線奔放のありの儘のすがたをさらけ出してしまつた。即ち国民思想の一部に、左傾し赤化する事実の認定を首肯するものは、これを思想の荒頽的変態事象として指摘するに敢て憚らざるべしと思ふ。資本主義是正、統制経済確立、これらの組織的努力は、組織構成の歪曲を正す上には一の努力には相違ないが、高所大局から見て我日本魂はこれと共に発揚し豊潤味を示しつつあるであらうか。一部の左傾赤化の歪曲精神から報本反始的是正に努力せなければ、我日本国民精神の全体を滅亡せしむるに至るやも計り難いのである。
 斯かる事態にある皇国日本の真精神と、天壌無窮の皇室の尊厳とを普く国民に示現し、以て非常時に直面せる同胞に対し迷夢を醒まさしめむがために、茲に『天祥地瑞』の神書を著はしたる次第である。東洋特に皇国日本の天地開闢宇宙創造説と西洋諸国の説とを比較し見るも、外諸国の論説は根拠なき神話物語にして、非文明極まれる理由を覚り得るであらう。
 扨本巻は八柱の御樋代神の一柱なる朝香比女神の英雄的活動より、西方の国土を巡生中なる太元顕津男の神とスウヤトゴルの山に会し、大曲津見を言向け和し、美しき新しき国土を経営し、国魂神を生み出でますといふ紫微天界に於ける大活動の序幕的物語である。
   昭和八年十二月十日 旧十月二十三日   於大阪分院 口述者識
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