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文献名1霊界物語 第79巻 天祥地瑞 午の巻
文献名2第1篇 竜の島根よみ(新仮名遣い)たつのしまね
文献名3第2章 愛の追跡〔1983〕よみ(新仮名遣い)あいのついせき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2017-11-28 09:09:41
あらすじ幼いころより離れたことのなかった麗子の姿が、卒然として見えなくなり、兄の艶男は心をいらだたせ、物寂しさを感じつつ妹の在り処を探すべく、月下の野辺を逍遥しながら声を張り上げて歌を歌っていた。すると、萱草の生い茂る中から、麗子の声で歌が聞こえてきた。艶男は、麗子をたずねてここまで探し歩いてきたことを歌い訴えるが、麗子の声は、自分はすでにこの世に亡き身であり、竜神の都に囚われてしまったことを告げた。今は魂が凝って草葉のかげから歌っているのであり、もはや生きて見えることはできない境遇である、と伝えたのであった。艶男は麗子が竜の都に誘惑され、現世ではもはや再び会うことができないことを知った。そして、この上は死して君の所へ行こうと歌うが、麗子は父母を思ってこの世にとどまるよう諭した。そして麗子の魂は、一個の火団となって舞い上がり、玉耶湖の空さして中天に姿を隠した。艶男は麗子恋しさに思いつめた思いを歌い、玉耶湖をさして急ぎ湖畔にたどり着くと、月に向かって合掌し、竜の都の妹の下へ行こうと歌うと、サブンと湖中に身を投じてしまった。
主な人物 舞台 口述日1934(昭和9)年07月16日(旧06月5日) 口述場所関東別院南風閣 筆録者林弥生 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年10月25日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 175頁 修補版 校定版42頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7902
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本文  四五歳の頃より、何時も御酒徳利の様に離れた事のなき麗子の姿が、卒然として見えなくなりしより、兄の艶男は俄に心いらち、物淋しさを感じ、妹の在処を捜すべく、月下の野辺を逍遥しながら、悲しき声を張りあげて、淑やかに歌ふ。
『久方の御空に月は輝けり
  今宵はさながら天津国かも

 草の葉に置く玉露も月のかげ
  宿して星と輝けるかも

 そよそよと吹く夜半の風にあふられて
  草の葉の露玉と散るかも

 わが面をなでて通へる夜半の風の
  ひびきは妹の声に似たるも

 葭原を吹く夜の風のひびきさへ
  妹の声かとあやしまれける

 わが妹はいづらなるらむ今宵はも
  姿見えなくひたに淋しも

 仙人掌の花は路辺ににほへども
  花の姿の麗子は見えず

 昼の如月の光はてれれども
  菖浦の花は色をかくせり

 女郎花黄色く咲けど夜の目に
  真白に見ゆる不思議なる世や

 女郎花路のかたへにむら咲けど
  わが目にとぼしき麗子の君

 麗子よああ妹よ汝は今
  いづらに居るか言挙げせよや

 かくの如月照る夜半も君なくば
  わが魂は闇に等しき

 村肝の心の闇を晴らしませ
  雲を出でたる月の如くに

 なつかしき恋しき妹よ麗子よ
  汝はいづくぞわれ此処にあり

 生命あれば吾にまみえよ麗子よ
  わが行く野辺に百花匂へる

 百千花艶を競ひて香れども
  汝に優れる花の香はなし

 葭原の国土は広けれど汝なくば
  われは淋しく死に度く思ふ

 何故に君は姿をかくせしや
  われは心をはかりかねつつ

 万代の末の末まで誓ひてし
  君は吾身の生命ならずや

 垂乳根の許しは未だあらねども
  なれと誓ひし事は忘れじ

 待てど待てど君の姿の見えぬままに
  われは悲しく探ね来つるも

 大空の月も雲間にかくれます
  ためしある世と思へど淋し

 君無くば吾も生命は惜からじ
  生きて詮なきこの身と思へば

 なれのかげ見えずなりけるたまゆらを
  俄に淋しくなりにけらしな

 君まさぬ淋しさ初めて悟りけり
  やさしき声のはたととぎれて

 君が笑み君が言葉のやさしさを
  今思出でて一入悲しき

 君無くばわれも此の世に無かるべしと
  誓ひし言の葉忘れ給ふか

 一言の言挙げもせず汝は今
  一人淋しく離りましける

 仰ぎ見れば星はささやき給へども
  わが耳遠く聞えぬ悲しさ

 水上の流は如何に清くとも
  汝がよそほひに如かじとぞ思ふ

 虫の声今宵は悲しく聞ゆなり
  わが恋ふ心の色をうつして

 何故に君はわが目を離りますか
  心もとなく迷ひぬるかも

 ちちのみの父は更なりははそはの
  母もさぞかし歎かせ給はむ

 曲神の伊猛り狂ふ夜の野を
  彷徨ふ君に心ひかるる

 朝夕に親しみ交はり楽しみし
  君は見えなく悲しき夜半なり

 野路を吹く風も一入身にしみて
  心淋しき今宵なるかも

 ああ君はいづらにますか虫の音も
  ことに悲しく君をたづぬる

 小田巻の糸長々と繰りごとを
  くり返しつつわれは泣くなり

 片時も離れ給はぬ君故に
  今宵はことに悲しかりけり

 君の声わが耳にまだ残りつつ
  虫の音さへもそれと疑はる』

 かく歌ふ折しも、萱草の生ひ茂れる中と思しきあたりより、麗子の声として、
『なつかしの艶男の君よ恋しさの
  果てなき君よよくも来ませる

 艶男の君の情に堪へ兼ねて
  われは悲しく草野にひそむも

 大空の月の光のあざやかさ
  君のよそほひ其の儘にして

 撫子の花の乙女はあざやかなる
  月の光の露にうるほふ』

 艶男は蘇りたる心地して、
『その声は正しく妹の麗子よ
  早や出でませよ草の褥を

 風吹かば袖に散るらむ萱草の
  葉末の露は玉と乱れて

 君のあと慕ひ慕ひて今此処に
  われは来つるも悲しさのあまり

 限りなく果てなきこれの大空に
  光るは月の光ばかりなり

 われも亦汝の姿を大空の
  月と仰ぎてたづね来にけり』

 萱草の中より麗子の声。
『ありがたしもつたいなしと汝が言葉
  われ叢に潜みて聞くも

 曲神の伊猛り狂ふ世なりせば
  心許すな艶男の君

 天地に一人の君と思ふ故に
  われ叢に魂をとどめつ

 身体は今此処になし魂の
  凝りて草葉の蔭に君待つも

 今は世に身体持たぬわれなれば
  生きてまみえむ術なかりける

 竜神の醜の謀計にあやまられ
  われはあへなくなりにけらしな

 わが魂は竜の都の花園に
  安く遊びつ君を忘れず

 ただ一目君に会ひたく思へども
  今はせむ術なき身なりけり

 謀られし事のくやしさわれは今
  君と現幽境を分てり

 竜神にかしづかれつつ湖の底の
  都にわれは今栄え居るも』

 艶男は此の歌に、麗子は竜の都に誘惑され、現世にては再び会ふことのならざるを歎きながら、
『汝は今淋しきわれを後にして
  竜の都に出でますと聞く

 歎けども呼べども返らぬ君なりと
  思へばなほも悲しくなりぬ

 この上は如何にせむ術なかるべし
  死して再び汝がり行かむ』

 草葉のかげより、
『ありがたし情のこもる兄の言葉
  われは死すともなげかざるべし

 わがあとを尋ね来まさむ真心は
  嬉しく思へどしばし待たせよ

 年老いし父と母とを後にして
  来ますは天地の罪にあらずや

 垂乳根の父も恋しく母も亦
  いとしと思へば迷ひ晴れずも

 せめてもの心なぐさめまつるべく
  君は此世に止まり給はれ』

 艶男はこれに応へて、
『汝が言葉実にうるはしく思ゆれど
  生命保たむ由なかりけり

 玉耶湖の水に沈みてわれは今
  汝が御許に進まむと思ふ』

 麗子は、
『いざさらばわれはこれより竜神の
  都に帰らむ安くましませ』

と歌ひ終り、一個の火団となりて舞ひ上り、玉耶湖の空をさして、長き火光を帯の如くにひきながら、中天に姿をかくしける。
 艶男は麗子の事を忘れかね、仮令幽界に入りたりとも、自分も生命を捨てて彼女があとを追はむものと、玉耶湖水を指して草野を分けながら進みゆく。
『ああ淋し
 ああ悲しもよ
 玉の緒の
 生命の君は罷りけり
 生命の君は今や世になし
 露の生命を保ちつつ
 恋と愛とに泣かむよりは
 われも男の子よ潔く
 この世の中の絆をば
 断ち切り振り切り一すぢに
 妹の後を尋ね行かむ
 如何に波風高くとも
 闇はわが身を襲ふとも
 猛き獣の中までも
 妹の恋しさ懐かしさ
 進みゆくべし今よりは
 父も忘れむ又母も
 捨ててあの世へ進むべし
 天地の神の御怒りに
 ふるるもわれはいとはまじ
 恋故なれば何処までも
 妹故なれば湖底も
 われはいとはじ一道に
 向ひて竜の都まで
 百の艱みをしのぎつつ
 行くはわが身の幸ならめ
 玉耶湖の水は小波の
 手をさしあげて招くなり
 虫の鳴く音もひそやかに
 わが旅立ちを送るなり
 月は御空に輝きて
 死出の旅路を守るがに
 われは思ゆも百千々に
 砕くる心は星光か
 思へば恋しく悲しもよ』
 かく歌ひながら、玉耶湖の方面指して急ぎつつ、漸く湖畔にたどりつき、月に向つて合掌し湖水に向つて再び手を拍ち、
『天晴れ天晴れわれはゆくなり水底の
  竜の都の妹が側に』

と歌ひ終り、ザンブとばかり湖中に身を投じ、あと白波と消え失せにける。
(昭和九・七・一六 旧六・五 於関東別院南風閣 林弥生謹録)
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