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文献名1霊界物語 第79巻 天祥地瑞 午の巻
文献名2第3篇 伊吹の山よみ(新仮名遣い)いぶきのやまおろし
文献名3第22章 天変地妖〔2003〕よみ(新仮名遣い)てんぺんちよう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ艶男は岩ケ根をはじめとする四天王の言葉を尽くしてのいさめに、死を思いとどまったが、なぜか大井の淵が恋しくてたまらず、朝夕に船を浮かべて遊ぶのを、唯一の慰めとしていた。岩ケ根は、艶男にまさかのことがあってはと、真砂、白砂を監視として舟遊びに伴わせていた。小雨が降る夕べ前、大井ケ淵にしばし舟遊びを試み、黄昏の幕が迫るころ、不思議にもかすかな声がどこからともなく聞こえてきた。よく耳を澄ませば、以前に竜の島で艶男に思いをかけていた、白萩の悲しげな声であった。白萩は、艶男が燕子花と逐電したことに恨みを述べ、故郷の竜の島根を捨てて、藤ケ丘に移り住んだのだ、と歌った。艶男は、自分も木石ならぬ身ではあるが、一つの身でいかにできよう、と返し、自分もまた今は悲しみの淵にあり、今はただ両親のために生き長らえているのみなのだ、と歌った。すると、今度は白菊の悲しげな声が聞こえてきて、やはり艶男への恨みを歌った。艶男は、白菊のことを忘れたことはなく、ただ時を待つように、と歌った。また、今度は女郎花の声が、艶男への恨みを歌った。歌が響くおりしも、淵の水はにわかに大きな波紋を描き、水煙とともに、人面竜身の燕子花が立ち現れた。艶男、真砂、白砂は驚き呆然としたが、波紋はますます激しく、舟も覆ろうとするばかりの荒波となった。艶男は意を決して、自分の恋する燕子花のすさびがこれほどまでなら、もはや自分は水の藻屑となろう、と歌った。真砂、白砂は驚いて艶男の手をしっかりと握り、艶男を諭して押しとどめようとしたが、一天にわかに掻き曇り、暴風吹きすさみ、大地は震動して、荒波のたけりに舟もろとも、三人の姿は水中深く隠れてしまった。これより日夜の震動やまず、雷とどろき、稲妻はひらめき、暴風が吹きすさんで雨は盆をかえしたように激しく降ってきた。水上山の聖場は阿鼻叫喚の巷と化し、岩ケ根は竜彦を背に追って高殿に避難して難を免れた。国津神たちは右往左往し、泣き叫ぶ様は目も当てられない惨状となってしまった。ここへ、天より容姿端麗な女神が、四柱の侍神を伴って、この場に降ってきた。
主な人物 舞台 口述日1934(昭和9)年07月20日(旧06月9日) 口述場所関東別院南風閣 筆録者林弥生 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年10月25日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 273頁 修補版 校定版411頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7922
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本文  艶男は、岩ケ根他四天王等の言葉を尽しての諫めに、死を思ひとどまりたれども、何故か大井ケ淵の恋しくて堪らず、朝な夕なの区別なく、淵に舟を浮べて遊ぶを唯一の慰みとなしゐたりける。
 岩ケ根は、若しや艶男に間違ひ無きやと案じ煩ひながら、真砂、白砂を左右に看視兼接待役として従はしめたり。小雨ふる夕べ前、かたの如く艶男は真砂、白砂を伴ひ、大井ケ淵に暫時の舟遊びを試みにける。黄昏の幕稍迫らむとする折しも、不思議なるかな、微なる声何処ともなく響き来るを、よくよく耳をすまして聞けば、以前竜の島根にて、艶男に思ひをかけし白萩の悲しげなる声にぞありける。
 白萩の声。
『秋風を待つ間の長き白萩は
  遠き思ひに尋ね来にけり

 生命までもと思ひし人は影もなく
  あと白萩の花と散りけり

 添はまくと思ひし夢の悲しさに
  身もしら萩の花は萎れつ

 恨めしき君なりにけり燕子花の
  花のみ手折りて露もおくらず

 この思ひ何時の世にかは晴らさむと
  恋ふるも悲しき萩の仇花

 現世に生くる甲斐なきわが身ぞと
  思へば苦し君に捨てられて

 百花の多かる中に汝が君は
  燕子花のみ愛づるは恨めし

 朝な朝な露重げなる萩が枝に
  君は心をかけて見ざりしよ

 故郷の竜の都の白萩を
  藤ケ丘辺に移して匂へり

 白萩は情の露に捨てられて
  細き生命を汀辺に保てり

 橘と香れる君のよそほひは
  われを思はす種にぞありける

 荒波をかき別け乗り切りこの淵に
  伊寄り来りて君に焦るる

 御声を朝な夕なに聞かまほしと
  白萩われは淵に潜むも

 太刀膚のわが身に怖ぢていとこやの
  君は島根を離りましけむ

 いとこやの君を生命と頼みてしを
  つれなき心恨めしみ思ふ

 竜神の身にしあれども人恋ふる
  心に変りあるべきものかは

 恨めしさ悲しさ此処に凝まりて
  恋の淵瀬に悲しみ泣くなり』

 艶男は微にこの声を聞きて、白萩の心の憐れさに両眼をうるほしながら、
『われとても木石ならぬ身なれども
  一つの身なり如何に報いむ

 われも亦歎きの淵に沈みつつ
  胸晴らさむと此処に遊べる

 黄昏を君の歎きの声聞きて
  悲しく淋しくなりにけらしな

 恋故に生命惜しまじわれはただ
  垂乳根の為めながらふのみなり』

 かくいふ折しも、又もや上手の方より悲しき声聞え来る。
『われこそは汝を慕ひし白菊の
  露に霑ふ蕾の花よ

 一本の花橘と思ひしを
  君は百花千花を手折れり

 恨めしく悲しく生命堪へがてに
  われは湖路を渡り来しはや

 わが思ひいや深ければ此の淵の
  底に潜みて竜となりぬる

 万代の末にも枯れぬ白菊を
  枯らし給へる君ぞ恨めし

 千早振る神代の事も人ならば
  問はましものを白菊の花

 君ケ代をいと長月の空清く
  咲かむ白菊あはれと思へ

 水上山菊の下水如何なれば
  流れて淵に沈むなるらむ

 祈りつつ待つ長月の菊の花を
  何れの時か君の手折るや

 山の端を出でゐる月の顔は
  君の面と白菊の花

 わが思ひいや深ければ八千尋の
  湖を渡りて慕ひ来つるも

 類なき君のよそほひ見染めてゆ
  白菊われは乱れむとせり

 玉の緒の生命惜しまじ君許に
  近く棲みなば淵の底ひも』

 艶男はこの声を聞き、狂気の如く胸を燃やしながら、
『今日は又悲しき声を聞く日かな
  今は前後も白波の上

 秋されば白菊の花手折らむと
  われは心を替へずありける

 白菊の匂ひめでたくわが袖に
  香りて時じく忘らへなくに

 惜しまるる生命ならねど今しばし
  わが子の生ひたち待たせ給はれ』

 白菊の声として、
『御言葉偽りなくばわれとても
  なやみ晴らして時を待つべし』

 かかる折しも、稍下流に当りて、女郎花の細き声ひびき来る。よくよく耳をすまして聞き居れば、
『われこそは竜の島根に育ちたる
  か弱き花の女郎花ぞや

 君恋ひてわが身やつれぬ玉の緒の
  生命死せむと幾度思ひし

 八潮路を渡りてここに大井川
  淵瀬に沈むも君おもへばなり

 細々と降り来る雨は君思ふ
  悲しきわれの涙なるぞや

 如何にして悲しき思ひ晴らさむと
  波路を分けて此処に来つるも

 水上山斜面に匂ふ女郎花の
  やさしきよそほひ見そなはさずや

 君恋ひてここに幾日を重ねけり
  露の情の雨に濡れむと

 われは今見るに堪へざる醜神の
  竜と思へば悲しかりけり

 幾千代もこれの淵瀬に沈みゐて
  君が御幸を護らむと思ふ

 白萩も白菊の君もわれも亦
  藤ケ丘辺に君を待つなり

 玉の緒の君が生命の果つるまで
  なやみ苦しみ待たむとぞ思ふ

 竜神の悲しき心を思ひやり
  夢の枕にも偲ばせ給へ』

 かく響く折しも、淵の水は俄に大なる波紋を描き、水煙とともに立ち昇りたるものあり。よくよく見れば人面竜身の燕子花なるに、艶男も真砂、白砂も一度に驚き、茫然として、あちらこちらと立ち狂ふ水煙を眺めゐる。波紋は益々激しく、遂には舟も覆らむばかりの荒波となりければ、艶男は意を決して立ち上り、
『わが恋ふる燕子花姫の荒びにや
  われはとどむる力だになし

 かくなれば何をいなまむわれも亦
  水の藻屑となりて消ゆべし』

 真砂、白砂の両人は驚きて、艶男の左右の手をしつかと握り、涙ながらに、
『若君よはやらせ給ふ事なかれ
  君には父母と御子いまさずや

 玉の緒の生命死するはいと易し
  重きは国の務めなるぞや

 思ひきや大井の川の舟遊びに
  かかる歎きの身に迫るとは

 上津瀬にはた中津瀬に下津瀬に
  聞ゆる声は魔神なるらむ

 若君よ魔神の甘き言の葉に
  かかりて生命捨てさせ給ふな

 若君の生命はわれ等があづからむ
  真砂、白砂力限りに』

 白砂はあわてて、
『風荒れて波高まりぬいざ舟を
  岸辺に寄せむ真砂よ舟漕げ』

 真砂はこたへて、
『艫も櫂も波に浚はれ如何にして
  岸辺に着かむこの荒川を』

 斯くいふ折しも、一天俄にかき曇り、暴風吹き荒み、大地は震動して、荒波の猛りに舟諸共に三人の姿は水中深くかくれける。
 これより日夜の震動止まず、雷轟き、稲妻閃き、暴風吹き荒み、雨は盆を覆せし如く、地鳴震動間断なく、さしもに平穏なりし水上山の聖場は、阿鼻叫喚の巷と化し去り、岩ケ根は竜彦を一大事と背に負ひ、高殿に上りて、難を免れゐたりける。
 国津神たちの右往左往に泣き叫ぶ状、目も当てられぬ惨状なりける。
 かかるところへ、天より降り来ませる容姿端麗なる女神、四柱の侍神を伴ひ、此場に降らせ給ふ。
(昭和九・七・二〇 旧六・九 於関東別院南風閣 林弥生謹録)
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