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文献名1霊界物語 第80巻 天祥地瑞 未の巻
文献名2第1篇 忍ケ丘よみ(新仮名遣い)しのぶがおか
文献名3第2章 行倒〔2006〕よみ(新仮名遣い)ゆきだおれ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ臥所を起き出た冬男に、三人の乙女らはお茶を勧めた。のどが乾いていた冬男は何も考える間もなくぐっと飲み干したが、その味わいは香ばしいが臭みがあった。もしや水奔草の茶ではないかと驚いたが、何食わぬ体で天地を拝し、天之数歌を歌った。するとたちまち家も笑い婆も三人の乙女も消えうせ、あたりは白樺と雑草の茂る丘の上となってしまった。冬男は驚いて草原を進んでいったが、だんだんに頭は痛み足はだるみ、気分が悪くなってきた。小さな丘にたどりついたが、体は腫れ上がり身動きもできなくなってしまった。すると闇の中から笑い婆の声が聞こえてきた。そして、冬男を計略にかけ、毒茶を飲ませたことを誇らしげに歌った。三人の乙女は娘などではなく、やはり水奔草の毒茶で命を落とした水奔鬼であった。冬男は息も切れ切れになりながら笑い婆に抵抗するが、笑い婆は冬男をあざ笑う。冬男は無念の歯を食いしばりながら笑い婆の思い通りにはならないと意気を歌うが、ついにその場に打ち伏して命を落としてしまった。
主な人物 舞台 口述日1934(昭和9)年07月26日(旧06月15日) 口述場所関東別院南風閣 筆録者林弥生 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年12月5日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 299頁 修補版 校定版30頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm8002
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本文の文字数2942
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本文  水奔草の生ひ茂る  野路を遥々渉りつつ
 広き丘辺に突き当り  息休めむと上りゐる
 頃しも空は黄昏れて  ぼやぼやぼやと生温き
 風は腮辺をいやらしく  なめてゆくなりこの丘の
 ふとある藁屋に立ち寄れば  中より出でし白髪の
 婆さんは笑みを湛へつつ  門の戸近く佇めり
 冬男は疲れし声をあげ  われは旅ゆくものなるぞ
 一夜の露の宿りをば  許させ給へといひければ
 婆さんはにつこと打ち笑ひ  わたしは「笑ひ」といふ婆よ
 サアサア御泊りなさいませ  アハハハハツハ、イヒヒヒヒ
 ウフフフフツフ、エヘヘヘヘ  オホホホホツホ面白や
 あなをかしやと転び伏す  あやしき婆に目もやらず
 神を念じて居たる折  婆はむつくと起き上り
 三人乙女が奥に待つ  早く通させ給へよと
 いふより冬男は奥の間に  疲れし足を引きずりて
 進めば不思議や三人の  玉を欺く乙女等が
 冬男の顔を打ち眺め  甘き言葉を並べたて
 此処に来ませし上からは  元津御国へ帰さじと
 各自に論ひ  恋の征矢をば放ちける
 冬男は身体くたぶれて  前後も知らず寝ねければ
 山、川、海の三乙女は  冬男の全身を撫でさすり
 喋々喃々夜を明し  一夜の夢は覚めにける
 冬男は眼をこすりつつ  臥床を起き出で眺むれば
 三人の乙女はにこやかに  笑みを湛へて居たりける
 冬男はこれの光景を  怪しみながら問ひけらく
 『われは旅行にくたぶれて  一夜の宿を願ひしが
 辺りの空気は何となく  心に染まぬけはひなり
 これの主とおぼえたる  婆さんはしきりに笑ふなり
 それに引き替へあでやかな  乙女三人がわが側に
 甘き言葉を繰り返し  われに迫るは何事ぞ
 高光山の聖場に  神の御言をかがふりて
 進まむわれよ一時も  早くこの場を立ち出でて
 任けのまにまに進むべし』
 語れば三人の乙女等は  頸を左右に振りながら
 『日頃焦れて待ち居たる  君の来りし今日こそは
 如何でたやすく帰さむや  先づ先づお茶を召し上れ
 われ等が勧むる茶の湯こそ  不老と不死の妙薬ぞ
 この湯を飲めば忽ちに  汝の心は爽かに
 疲れも清く治まらむ』
と言ひつつ姉娘の山は、木製の椀に湯を汲み、冬男の前に差出しけるにぞ、一日の疲れに喉の乾きたる冬男は、何を考ふる暇もなく、貪る如くグツと飲み下せば、その味はひ何となく香ばしけれど臭みあり。若しや水奔草の葉もて作りたる茶には非ずやと、一時は驚きけるが、何喰はぬ体を装ひ、天を拝し地を拝し、声を限りに、

『一二三四五六七八九十百千万
 千万の神救はせ給へ』

と生言霊を宣るや、忽ち家も、笑ひ婆も、三人の娘も、あとかたなく煙と消え失せ、白樺の木が疎に、雑草の萌ゆる丘の上なりける。
 冬男は今更の如く驚き、生言霊の天の数歌をうたひながら、再び葭草や水奔草の所狭きまで生ひ茂れる湿つぽい平原を、皮衣を力に進みゆく。冬男は道々歌ふ。
『ああ訝しや訝しや
 日も黄昏れて漸くに
 一つの丘にたどりつき
 形ばかりのあばら家の
 表に立ちて訪へば
 中より白髪の笑ひ婆
 現はれ来り一夜さの
 宿りを許したりければ
 旅の疲れを休めむと
 奥の間さして進み入り
 三人のあやしき乙女等に
 種々様々くどかれて
 知らず知らずに眠りしが
 辺りの空気の不快さに
 いぶかる折しも夜は明けて
 近くに聞ゆる鳥の声
 乙女の勧むる茶を飲めば
 益々気分悪しくなり
 若しや毒湯に非ずやと
 御空を拝し地を拝し
 天の数歌宣りつれば
 婆さんも娘も其家も
 煙となりて消え果てし
 あとをよくよく眺むれば
 雑草生ふる白樺の
 林と知るより驚きて
 忍ケ丘を逃げ下り
 再び東に向ふなり
 長途の旅に喉乾き
 水を飲まむと思へども
 水奔草の毒気をば
 含める池水川水は
 われ等が口に入るよしも
 なくなく進む長の野路
 何と詮術なかりけり
 頭は痛み足だるみ
 勢力頓に衰へて
 わが目の光りつぎつぎに
 うすれ行くこそ悲しけれ
 夜前の女は正しくや
 水奔鬼には非ざるか
 思へば思へばいぶかしや』
と歌ひつつ進み行けば、又もや小さき丘、行手に横はるを見る。冬男は兎も角も其の丘にたどりつき、水でもあらば、喉を潤し息を休めむと、疲れし身体に勇気を鼓して、其日の黄昏るる頃、小さき丘の辺に着きたり。
 冬男は声細々と歌ふ。

『あへぎあへぎ醜草生ふる野を渉り
  漸くこれの丘に着きぬる。

 この丘に真清水あれば乾きたる
  喉うるほして蘇らむを。

 真清水はよし湧くとても黄昏の
  道なき野路をさがすよしなし。

 あやしかる女に毒茶を飲まされて
  われは死ぬより苦しき宵なり。

 刻々にわが身体ははれ上り
  身動きならぬ今となりけり。

 常世ゆく闇の荒野に只一人
  われは悲しくもだえ居るなり。

 故郷を思へば恋し父母を
  思へば悲し旅の夕暮。

 只一人旅ゆくわれの淋しさは
  野山の奥に住む心地なり。

 玉の緒の生命きれなば如何にせむ
  わが故郷にしらす由なく。

 言霊の厳の力に救はれて
  生命からがら逃げ来つるかも。

 此処に来て露の生命の消ゆるかと
  思へば淋しき吾身なるかも。

 水奔鬼の集へる丘に一夜寝て
  玉の生命を縮めたりけり』

 かく歌ふ折しも、
『アハハハハー
 イヒヒヒヒー
 ウフフフフー
 エヘヘヘヘー

 われこそは忍ケ丘の笑ひ婆よ
  よくも此処まで逃げ来つるかな。

 この婆は人の艱みを見て笑ふ
  黄泉の国の笑ひ婆ぞや。

 身も魂も疲れ果てたる汝が態
  見るにつけても可笑しくぞある。

 われこそは笑ひの婆よ世の人の
  まめやかなるを朝夕ねたむ。

 三人の娘を汝は見たるべし
  あれは毒茶に見亡せし女よ。

 玉の緒の生命きれなむこの間際に
  わが夫となる約束をせよ。

 この婆はきたなく見ゆれど魂は
  玉の如くに輝き居るぞや。

 わが言葉諾ふなれば今よりは
  玉の生命を安く生かさむ』

と、いやらしき声を張上げながら、闇の中にハツと姿を現はした。瀕死の境にある冬男は、婆の罠にかかりし残念さに、歯を喰ひしばりながら息もきれぎれに歌ふ。

『わが生命たとへ死すとも汝が如き
  きたなき婆に従ふべきやは。

 身体はよし罷るとも霊魂は
  生きて汝を苦しめて見む。

 水上の貴の館に生れたる
  われは正しき国津神ぞや。

 汝こそは音に聞くなる水奔鬼の
  幽霊婆よとく此処を去れ』

 婆は耳まで裂けた真青の口を開き、牛の如き舌を吐き出しながら、
『ガハハハハツハ、ギヒヒヒヒ、グフフフフツフ、ゲヘヘヘヘ、ギヨホホホホツホ、てもさてもいぢらしい腰抜け野郎ども、この方が計略にかかり、大事の大事の玉の生命の安売致したウツソリども、嫌なら嫌でもう頼まぬ。ギヤハハハハー、忍ケ丘につれ帰り、一族郎党呼び集め、汝が亡きあとの霊魂の生命を再び取り上げて、恨みを晴らさでおくものか、ギヤハハハハー、てもさても心地よやな』
 冬男は無念の歯を喰ひしばりながら、

『わが生命如何になるとも汝の如き
  悪魔に靡くわれには非ず。

 吾も亦鬼と生れて汝等が
  生命を奪ひなやめてくれむ。

 葭原の国土の秀でて勝れたる
  水上山の王の息子ぞ。

 汝が如きいやしき鬼の果てならず
  われには厳の力ありけり』

 かく歌ひながら息も絶え絶えに、其場に打伏したるまま身亡せにける。
(昭和九・七・二六 旧六・一五 於関東別院南風閣 林弥生謹録)
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