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文献名1霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申の巻
文献名2第4篇 猛獣思想よみ(新仮名遣い)もうじゅうしそう
文献名3第16章 亀神の救ひ〔2043〕よみ(新仮名遣い)きしんのすくい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじセンリウと取り替えられたチンリウ姫は、丸木舟に乗せられて嘆きの歌を歌いつつ、「かくれ島」に送られていた。姫を護送してきた騎士は島につくと、姫を上陸させ、送り届けた印に姫の左の耳を切り落として去っていった。次第に島は水没してゆき、姫は進退窮まってただ死期を待つのみとなってしまった。島の頂上に立って悲嘆の歌を歌ううちに、海水は姫の膝まで届くほどになり、最早これまでと覚悟を決めた。するとその折、大きな亀がどこからともなく現れ来ると、姫の前にぽっかりと甲羅を浮かせた。そして、背中に乗れとばかりに頭をもたげて控えている。チンリウ姫は、これこそ神の助けと亀の背中に乗ると、亀は荒波をくぐりつつ南へ南へと泳ぎ始めた。姫は海亀の助けに感謝し、またこれまでを述懐するうちに、敵国の王妃になったセンリウの身の上に憐れを催し、自分の身魂が汚されずに済んだことに感謝を覚えた。アララギの悪計も、結果として自分の操を守ることになったことに思いを致していた。亀はイドム国の海岸を指して海を泳ぎ渡り、イドム国真砂ケ浜に姫を下ろした。チンリウ姫が感謝の歌を歌うと、亀は二、三度うなずいて海中に姿を消した。真砂ケ浜は月光山の西方の峰伝いに位置し、丘陵が迫った森林地帯であった。姫は、現在父母が月光山に篭もっているとは夢にも知らず、ただ木の実を探ろうと、不案内のまま森林深く忍び行ることとなった。
主な人物 舞台 口述日1934(昭和9)年08月15日(旧07月6日) 口述場所水明閣 筆録者谷前清子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年12月30日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 516頁 修補版 校定版347頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm8116
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本文  山川は清く爽けく果実は  豊かに実る伊佐子の島の真秀良場や
 天国楽土と聞えたる  イドムの国に名も高き
 イドムの城の御主  アヅミ、ムラジが二人が仲に
 昇る朝日と諸共に  初声挙げしチンリウ姫は
 こよなき宝と両親が  日夜心をつくしつつ
 育みここに二十年  花の盛りの春の宵
 サールの国のエールスが  暴虐無道の魔軍に
 攻め破られて父母は  遠くイドムの城を捨て
 月光山に逃れまし  一陽来復時待ち給ふ。
 『かなしき吾は如何にして  かかる憂目に会ふものか
 天地の神のいますならば  吾等が今日の悲しみを
 救はせ給へ惟神  偏に願ひ奉る
 春の夜の暖かき夢を破られて  敵に捕はれ縄目の恥を
 主従三人遇ひながら  さも荒々しき駿馬の
 背に運ばれはるばると  恋しき故国を後にして
 大栄山の嶮を越え  前も後も魔軍に
 囲まれサールの国中の  木田山城の牢獄に
 歎きの月日を送る折  仇の太子の恋慕より
 又も一きは悩みしが  賢しき乳母の忠言を
 心ならずも諾ひて  木田山城の奥の間に
 エームス王と結婚の  儀式を挙ぐる間もあらず
 乳母アララギの奸計に  うまうまのせられ忽ちに
 大罪人にと強ひられて  口には嵌ます猿轡
 撃ち打擲のその揚句  血潮したたり面破れ
 見るかげもなき吾姿  センリウ侍女とさげすまれ
 数多の騎士に送られて  荒浪猛る磯ばたに
 送られ是より独木舟  潮の流れのそのままに
 身を捨小舟忽ちに  逆まく波のゆくままに
 これのさびしき島ケ根に  知らず知らずに着きにけり
 ああ如何にせむ今となりて  言問ふ由も泣く涙
 空ゆく雁の影あらば  吾憂きことを垂乳根の
 御側近く伝へむと  思へど望みは水の泡
 消えてあとなき泡沫の  闇路を辿る心地かな
 闇路にさまよふ心地かな』
 独木舟をあやつり、ここに送り来りし一人の毛武者の騎士は、隠の島に姫を上陸させ、声もあらあらしく、
『こりや尼つちよ、端女の分際としてお国の宝を打ち毀した天罰によつて、その方はこの隠島に捨てられたのだ。もうかうなる上は、今日ぎりの生命だ、覚悟するがよからう。この島は隠の島と言つて、昼は水面にポツカリと浮んでゐるが、そろそろ陽が沈み出すと潮が高まり来り、この島はずんぼりと波の底に沈んで仕舞ふのだ。この島に捨てられたが最後、魚でない限り到底生命の助かりつこはない。てもさてもいぢらしいものだ。俺も内密で貴様の様な美人を助け出し、女房にしたいは山々なれど、磯端には沢山の目附が騎士を引き連れて監視してゐるから、それも仕方がない。可哀さうだが、もう暫くの生命だ。いづれ鮫がやつて来て腹の中へ葬つてくれるだらう。まあ感謝したがよからう。泣いても叫んでも、かうなりや仕方がない。然しながら貴様をこの島に捨てたと言ふ標がなくては承知せまい。肉の附いた一握りの髪の毛を持つて帰るか、お前の耳をそいで帰るか、それでなくちや袖でも捩ぢ断つて、隠島特有の貝でも持ち帰り、証拠にせなくつちや今日の勤めが果せぬのだ。可哀想だが、たつた今死ぬる生命だ。耳の一つ位取つたつて惜しくもあるまい』
と言ひながら石刀を懐より取り出し、姫を矢場に地上に打ち倒し、しきりと泣き叫ぶ姫に目もくれず、鋸引きにして左の耳を切りとり、血の滴る姫の顔を冷やかに打ち眺めながら、
『ヤアもう時刻が迫つた、ぐづぐづしてゐると、俺の舟までどうなるか解らない』
と言ひながら足早に独木舟に飛び乗り、艪をあやつり夕靄の包む海原を急ぎ帰りゆく。
 姫は進退維谷まり悲歎やる方なく、運を天にまかせて、死期を待つより何の手段もなかりける。
 姫は刻々に沈みゆく島の頂上に立ち微かに歌ふ。
『思ひ廻せば廻す程
 吾ほど悲しき者は世に
 又とあらうか父母は
 敵に城をば落されて
 今は行方も白雲の
 遥の国に出でましぬ
 妾は騎士に送られて
 敵の本城木田山に
 縄目の恥を忍びつつ
 昼夜の別ちもあら涙
 泣き暮したる折もあれ
 エームス王の恋慕より
 色々様々言問はれ
 止むを得ざれば本心を
 まげて仇なるエームスに
 仕へむとせしは一生の
 あやまりなりしか村肝の
 心汚き乳母母子に
 うまうま計られ今ここに
 吾身は悲しき捨小舟
 鳥の声さへ絶へはてし
 隠の島に捨てられて
 今に知死期を待たむより
 果敢なき吾身となりにけり
 この世に生きて仇人の
 牢獄に繋がれ朝夕を
 縄目の恥をさらすより
 いつそ死なむと思ひつつ
 また父母の御上に
 心くばりて再会を
 望みしことも仇なれや
 浪は次ぎ次ぎ高まりて
 吾立つ島は荒潮に
 その大方は呑まれたり
 ああさびしもよ、かなしもよ
 夢になりともこの歎き
 父と母とに知らせたや
 歎きの涙つきはてて
 今は知死期を待つのみぞ
 浪の音いや高まりて寄せ来るは
 吾身の生命を奪ひ去る
 猛き獣の声にして
 さも恐ろしき夕かな』
 斯く歎きの歌を歌ふ折しも、隠島の最頂上に立てる姫の膝を没するまで水量まさりけるが、姫は最早これまでなりと覚悟を極むる折もあれ、大いなる亀いづくよりか現はれ来り、姫の前にボツカリと甲羅を浮かせ、わが背に乗り給へと言はむばかり頭をもたげてひかへ居る。チンリウ姫はこれこそ神の助けと矢場に亀の背に打ち乗れば、亀は荒浪をくぐりながら南へ南へと泳ぎゆく。
 チンリウ姫は亀の背に立ちながら微かに歌ふ。
『この亀は神の使かわが生命
  完全に委曲に救ひたるはや

 大いなる海亀の背にのせられて
  故郷に帰ると思へば嬉しも

 様々の悩ひに遇ひて海亀の
  助けの舟にのせられにける

 亀よ亀よサールの国に近よらず
  イドムの磯辺に吾を送れよ

 独木舟にまして大けきこの亀は
  海の旅路も安けかるべし

 海原に立ちのぼりたる靄も晴れて
  御空の月は輝き初めたり

 天地の神も憐れみ給ひしか
  助けの舟を遣はし給へり

 何事も神の心にまかせつつ
  浪路を渡りて国に帰らむ

 曲神の伊猛り狂ふ醜国に
  送られ吾は悩みてしかな

 アララギの深き奸計は憎けれど
  吾は忘れむ今日を限りに

 たのみなき人の心を悟りけり
  乳母アララギの為せし仕業に

 センリウは吾身に全くなりすまし
  妃となりてゑらぎ居るらむ

 外国の仇の王の妻となる
  センリウ姫は憐れなりけり

 吾霊魂身体共に汚さるる
  真際を救ひし彼なりにけり

 かく思へばアララギとても憎まれじ
  吾操をば守りたる彼

 暫くの栄華の夢を結ばむと
  仇に従ふ心の憐れさ

 吾は又心の弱きそのままに
  仇に身魂をまかさむとせし

 ありがたし神の恵の深くして
  吾身体は汚さずありけり

 夕されば波間に沈む島ケ根に
  捨てられし吾も救はれにけり

 この亀は次第々々に太りつつ
  海原安くなりにけりしな

 大空に水底に月は輝きて
  海原明るく真昼の如し

 亀よ亀イドムの国に送れかし
  アヅミの王のいます国まで』

 亀は無言のまま荒浪を分け、一瀉千里の勢ひにてサールの国の方面へは頭を向けず、南へ南へと、イドムの海岸さして走りつつありける。
 暁近き頃、大亀は数百ノットの海面を乗りきり、イドムの国の真砂ケ浜に安着した。
 チンリウ姫は無事浜辺に上陸し、亀に向つて感謝の心を歌ふ。
『汝こそは尊き神の化身かな
  玉の生命を救ひ給ひし

 いつの世か汝が功を忘れまじ
  海原守る神とあがめて

 あぢ気なき吾身をここに送り来し
  汝は生命の親なりにけり』

 斯く歌ひ終るや、亀は二三回頷きながら水中にズボリと沈み、跡白浪となりにける。
 この地点は月光山の峰伝ひ、遠く西方に延長したる丘陵近き森林なりけるが、姫はイドムの国とは略察すれども、現在父母の隠生せる月光山の麓の森林とは夢にも知らず、不案内のまま雨露をしのぎ、木の実を探らむと森林深く忍び入りける。
(昭和九・八・一五 旧七・六 於水明閣 谷前清子謹録)
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