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文献名1霊界物語 第1巻 霊主体従 子の巻
文献名2第1篇 幽界の探険よみ(新仮名遣い)ゆうかいのたんけん
文献名3第8章 女神の出現〔8〕よみ(新仮名遣い)めがみのしゅつげん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ玉は次第に大きくなり、たちまちうるわしい女神の姿に変化した。全身金色にして紫摩黄金の肌で玲瓏透明にましまし、白の衣装と緋のはかまという出で立ちの、愛情あふれるばかりの女神であった。女神は、自分は「大便所の神である」と告げ、懐から八寸ばかりの比礼を授けると、再会を約して電光石火のごとく天に帰って行った。後に教祖のお話にあった金勝要神であることがわかって神界の微妙なる御経綸に驚かざるを得なかった。女神と分かれた後、太陽も月も星も見えない山野を進んでいった。冷たい道の傍らに汚い水溜りがあり、その中に三十歳余りの青年が陥って虫にたかられ、苦しんでいた。思わず「天照大神、惟神霊幸倍坐世」と繰り返すと、青年は水溜りから這い上がることができた。青年は感謝の念を述べ、竜女を犯した自分と祖先の罪により、あのような罰を受けていたと語った。それから自分は天照大神の御神号を一心不乱に唱えつつ前進した。すると神力著しく、たちまち全身が温かくなった。四五十丁も行くと、断崖に突き当たった。後ろからは鋭利な刃物が迫ってきており、下を見ると、谷川の流れに落ちた旅人を、恐ろしい怪物が口にくわえて、浮き沈みしていた。自分は神号を唱えると、怪物の姿は消えてしまった。怪物の難から助かった旅人は、舟木と言った。彼は喜んで自分の道連れとなった。二人連れで進んでいくと、口の大きな怪物が、二人を逃がすな、と長剣をふるって襲い掛かってきた。神号を唱えても効果がなく、進退窮まったところへ、先ほどの女神が現れて、比礼を振るようにと言った。比礼を振ると、怪物は退却してしまった。やれやれと思うまもなく、突然大蛇が現れて二人を飲み込んでしまった。そして轟然とした音と共に、奈落の底へ落ちていった。気がつくと、幾千丈とも知れない滝の下に、両人は身を横たえていた。周囲は鋭い氷の柱で囲まれており、身動きすれば氷の剣に身を貫かれてしまう態であった。自分は満身の力をこめて、「アマテラスオホミカミサマ」と唱えると、身体が自由になり、滝もどこともなく消えうせてしまった。今度は、茫々たる雪の原野が現れた。雪の中には幾百人ともわからないほど、人間の手足や頭の一部が出ていた。にわかに、山が崩れるかという響きがして雪塊が落下し、自分を埋めて身動きができなくなってしまった。一生懸命、惟神霊幸倍坐世をなんとか唱えると、ようやく身体の自由が利くようになってきた。舟木の全身が雪にうずもれていたので、比礼を振ると、舟木は雪の中から全身を現した。天の一方より、またまた金色の光が現れて雪の原野は一度にぱっと消え、短い雑草の野原に変わった。雪に埋もれていたあまたのひとびとは自分の前にひれ伏し、救世主の出現と感謝した。救世主と一緒に、神業に参加したいと希望する人もたくさんあった。その中には実業家、教育家、医者、学者なども混じっていた。以上は水獄の中でも一番軽いところであった。第二段、第三段となると、このような軽々しい苦痛ではなかった。
主な人物 舞台 口述日 口述場所 筆録者 校正日 校正場所 初版発行日1921(大正10)年12月30日 愛善世界社版37頁 八幡書店版第1輯 58頁 修補版 校定版36頁 普及版19頁 初版 ページ備考
OBC rm0108
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本文  不思議に堪へずして、自分は金色燦爛たる珍玉の明光を拝して、何となく力強く感じられ、眺めてゐた。次第々々に玉は大きくなるとともに、水晶のごとくに澄みきり、たちまち美はしき女神の御姿と変化した。全身金色にして仏祖のいはゆる、紫摩黄金の肌で、その上に玲瓏透明にましまし、白の衣裳と、下は緋の袴を穿ちたまふ、愛情あふるるばかりの女神であつた。女神は、自分の手をとり笑を含んで、
『われは大便所の神なり。汝に之を捧げむ』
と言下に御懐中より、八寸ばかりの比礼を自分の左手に握らせたまひ、再会を約して、また元のごとく金色の玉となりて中空に舞ひ上り、電光石火のごとく、九重の雲深く天上に帰らせたまうた。
 その当時は、いかなる神様なるや、また自分にたいして何ゆゑに、かくのごとき珍宝を、かかる寂寥の境域に降りて、授けたまひしやが疑問であつた。しかし参綾後はじめて氷解ができた。
教祖の御話に、
『金勝要神は、全身黄金色であつて、大便所に永年のあひだ落され、苦労艱難の修行を積んだ大地の金神様である。その修行が積んで、今度は世に出て、結構な御用を遊ばすやうになりたのであるから、人間は大便所の掃除から、歓んで致すやうな精神にならぬと、誠の神の御用はできぬ。それに今の人民さんは、高い処へ上つて、高い役をしたがるが、神の御用をいたすものは、汚穢所を、美しくするのを楽んで致すものでないと、三千世界の大洗濯、大掃除の御用は、到底勤め上りませぬ』
との御言葉を承はり、かつ神諭の何処にも記されたるを拝して、奇異の感に打たれ、神界の深遠微妙なる御経綸に驚いた。
 女神に別れ、ただ一人、太陽も月も星も見えぬ山野を深く進みゆく。

 山深く分け入る吾は日も月も
  星さへも見ぬ狼の声

 冷たい途の傍に沼とも、池とも知れぬ汚い水溜りがあつて、その水に美しい三十歳余りの青年が陥り、諸々の虫に集られ、顔はそのままであるが首から下は全部蚯蚓になつてしまひ、見るまに顔までがすつかり数万の蛆虫になつてしまつた。私は思はず、「天照大神、産土神、惟神霊幸倍坐世」と二回ばかり繰返した。不思議にも元の美しい青年になつて、その水溜りから這ひ上り、嬉しさうな顔して礼を述べた。その青年の語るところによると、
『竜女を犯した祖先の罪によつて、自分もまた悪い後継者となつて竜女を犯しました。その罪によつて、かういふ苦しみを受くることになつたのでありますが、今、あなたの神文を聞いて忽ちこの通りに助かりました』
といつて感謝する。
 それから自分は、天照大神の御神号を一心不乱に唱へつつ前進した。月もなく、烏もなく、霜は天地に充ち、寒さ酷しく膚を断るごとく、手も足も棒のやうになり息も凍らむとする時、またもや「天照大御神、惟神霊幸倍坐世」と口唱し奉つた。不思議にも言霊の神力著しく、たちまち全身に暖を覚え、手も足も湯に入りしごとくなつた。
 アゝ地獄で神とは、このことであると、感謝の涙は滝と流るるばかりであつた。四五十丁も辿り行くと、そこに一つの断崕に衝き当る。止むをえず、引き返さむとすれば鋭利なる槍の尖が、近く五六寸の処にきてゐる。この上は神に任し奉らむと決意して、氷に足をすべらせつつ右手を見れば、深き谷川があつて激潭飛沫、流声物すごき中に、名も知れぬ見た事もなき恐ろしき動物が、川へ落ちたる旅人を口にくはへて、谷川の流れに浮いたり、沈んだり、旅人は「助けて助けて」と、一点張に叫んでゐる。自分は、ふたたび神号を奉唱すると、旅人をくはへてゐた怪物の姿は沫と消えてしまつた。
 助かつた旅人の名は舟木といふ。彼は喜んで自分の後に跟いてきた。一人の道連れを得て、幾分か心は丈夫になつてきた。危き断崕を辛うじて五六十丁ばかり進むと、途が無くなつた。薄暗い途を行く二人は、ここに停立して思案にくれてゐた。さうすると何処ともなく大声で、
『ソレ彼ら二人を、免がすな』
と呼ぶ。にはかに騒々しき物音しきりに聞え来たり、口の巨大なる怪物が幾百ともなく、二人の方へ向つて襲ひくる様子である。二人は進退これ谷まり、いかがはせむと狼狽の体であつた。何ほど神号を唱へても、少しも退却せずますます迫つてくる。今まで怪物と思つたのが、不思議にもその面部だけは人間になつてしまつた。その中で巨魁らしき魔物は、たちまち長剣を揮つて両人に迫りきたり、今や斬り殺されむとする刹那に、白衣金膚の女神が、ふたたびその場に光りとともに現はれた。そして、「比礼を振らせたまへ」と言つて姿は忽ち消えてしまつた。懐中より神器の比礼を出すや否や、上下左右に祓つた。怪物はおひおひと遠く退却する。ヤレ嬉しやと思ふまもなく、忽然として大蛇が現はれ、巨口を開いて両人を呑んでしまつた。両人は大蛇の腹の中を探り探り進んで行く。今まで寒さに困つてゐた肉体は、どこともなく、暖い湯に浴したやうな心持であつた。轟然たる音響とともに幾百千丈ともわからぬ、奈落の底へ落ちゆくのであつた。
 ふと気がつけば幾千丈とも知れぬ、高い滝の下に両人は身を横たへてゐた。自分の周囲は氷の柱が、幾万本とも知れぬほど立つてをる。両人は、この高い瀑布から、地底へ急転直落したことを覚つた。一寸でも、一分でも身動きすれば、冷きつた氷の剣で身を破る。起きるにも起きられず、同伴の舟木を見ると、魚を串に刺したやうに、長い鋭い氷剣に胴のあたりを貫かれ、非常に苦しんでゐる。自分は満身の力をこめて、「アマテラスオホミカミサマ」と、一言づつ切れ切れに、やうやくにして唱へ奉つた。神徳たちまち現はれ、自分も舟木も身体自由になつてきた。今までの瀑布は、どこともなく、消え失せて、ただ茫々たる雪の原野と化してゐた。
 雪の中に、幾百人とも分らぬほど人間の手や足や頭の一部が出てゐる。自分の頭の上から、にはかに山岳も崩るるばかりの響がして、雪塊が落下し来り、自分の全身を埋めてしまふ。にはかに比礼を振らうとしたが、容易に手がいふことをきかぬ。丁度鉄でこしらへた手のやうになつた。一生懸命に「惟神霊幸倍坐世」を漸く一言づつ唱へた。幸に自分の身体は自由が利くやうになつた。四辺を見れば、舟木の全身が、また雪に埋められ、頭髪だけが現はれてゐる。その上を比礼をもつて二三回左右左と振りまはすと、舟木は苦しさうな顔をして、雪中から全身をあらはした。天の一方より、またまた金色の光現はれて二人の身辺を照した。原野の雪は、見渡すかぎり、一度にパツト消えて、短い雑草の原と変つた。
 あまたの人々は満面笑を含んで自分の前にひれ伏し、救主の出現と一斉に感謝の意を表し、今後は救主とともに、三千世界の神業に参加奉仕せむことを希望する人々も沢山あつた。その中には実業家もあれば、教育家もあり、医者や、学者も、沢山に混つてをつた。
 以上は、水獄の中にて第一番の処であつた。第二段、第三段となると、こんな軽々しき苦痛ではなかつたのである。自分は、今この時のことを思ひだすと、慄然として肌に粟を生ずる次第である。
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