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霊界物語あらすじ

説明を読む
ここに掲載している霊界物語のあらすじは、東京の望月氏が作成したものです。
まだ作成されていない巻もあります(55~66巻のあたり)
第1巻 霊主体従 子の巻 を表示しています。
篇題 章題 〔通し章〕 あらすじ 本文
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この『霊界物語』は、天地が分かれてから天の岩戸開きの後、神素盞嗚命が地球上にはびこっていた八岐大蛇を寸断し、叢雲(むらくもの)宝剣を天祖に奉り、至誠を天地に表して五六七神政を成就し、松の世を建設し、国祖を地上霊界の主宰神とした、太古の神代の物語と、霊界探検の大要を略述した。
また、苦集滅道、道法礼節を開示した。決して現界の事象を寓意的に著したものではない。
しかしながら、神幽界の出来事は、現界に現れ来るのであり、これをもって心魂を清め言行を改め、霊主体従の本旨を実行することを希望する。
本文
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自分は明治三十一年旧二月九日、神使に伴われて丹波穴太の霊山高熊山に、一週間の霊的修行を終えた。
それより天眼通、天耳通、自他神通、天言通、宿命通の大要を心得し、今日あるように神明の教義を明らかにするに至るまでには、ものすごい波瀾と曲折があった。
自分はただ、開教後二十四年間のいきさつを、きわめて簡単に記憶より呼び起こして、その一端を示すにとどめる。
竜宮館には、変性男子の神系と、変性女子の神系と、二大系統が、歴然と区別されている。
変性男子:
変性男子は神政出現の予言・警告を発し、苦労を重ねて神示を伝達し、水をもって身魂の洗礼を施し、救世主の再生・再臨を待っておられたのである。
救世主に対面するまで、ほとんど七年の間、野に叫びつつあった変性男子の肉宮は、女体男霊である。
五十七歳で厳の御魂の神業に参加し、明治二十五年の正月元旦から同四十五年の正月元旦まで、満二十年の水洗礼で現世の汚濁した現界・神界に洗礼を施し、世界改造の神策を顕示した。
かの欧州大戦乱も、厳の御魂の神業発動の一端であり、世界の一大警告であった。
変性女子:
変性女子の肉宮は、瑞の御魂の神業に参加奉仕し、火をもって世界万民に洗礼を施すという神務を担っている。
明治三十一年の旧二月九日をもって神業に参加し、大正七年二月九日をもって、満二十年間の霊的神業をほとんど完成した。
物質万能主義、無神論、無霊魂説に心酔する体主霊従の現代も、やや覚醒の域に達し、神霊の実在を認識する者も次第に多くなってきたのは、神霊の偉大な神機発動の結果であり、決して人智・人力の致すところではない。
変性男子の肉宮は、神政開祖(ヨハネ)の神業に入り、二十七年間、神筆を揮って霊体両界の大改造を促進し、今は霊界に入っても、その神業を継続奉仕されつつあるのである。
変性女子は三十年間の神業に奉仕し、もって五六七神政の成就を待ち、世界を善導することにより、神明の徳に浴せしめる神業を担っている。
神業の参加以来、本年をもって二十三年になるが、残る七年間こそ、もっとも重大な任務遂行の難関である。
というのも、神諭には『三十年で身魂の立替立直しをいたすぞよ』言われているが、大正十一年の正月元旦が変性男子の神業成就三十年であり、大正十七年二月九日が、変性女子の神業成就三十年である。
水洗礼によって、霊界と現界の両界の改造することが三十年、これはヨハネ(変性男子)の奉仕すべき神業である。霊魂の改造が、前後三十年を要する、という意味である。また、三十年というのは大要を示されたのであり、奉仕者の身魂の磨かれ具合によっては、期間が変更されるのもやむをえない場合もあるのである。
神諭の「身魂」とは魂のみのことではなく、身が物質界、魂が霊魂、心性、神界等を指している。すべて宇宙は霊が元であり、体が末となっている。
物質的現界の改造を断行されるのは、国祖大国常立神であり、精神界・心霊界の改造を断行されるのは、豊国主神の神権である。
霊主体従の身魂=霊の本(ひのもと)の身魂:
天地の立法にかなった行動を好んで遂行しようとする。
常に天下公共のために心身をささげ、犠牲的行動をもって本懐とする。
至真、至善、至美、至直の大精神を発揮する。
救世の神業に奉仕する神や人の身魂。
体主霊従の身魂=自己愛智(ちしき)の身魂:
私利私欲にふける。
天地の神明を畏れない。
体欲を重んじる。
衣食住にのみ心を煩わす。
利によって集まり、利によって散じる。
行動は常に的が外れている。
利己主義を強調して義務を弁えない。
慈悲を知らない。
心が猛獣のような不善の神や人の身魂。
天の大神は、最初の人体の祖として天足彦、胞場姫を造った。そして、霊主体従の神木に体主霊従(ちしき)の果実を実らせ、食べないようにと厳命したが、二人は体欲にかられて、命を犯して神の怒りに触れた。
これにより世界には体主霊従の妖気が発生し、神人界に邪悪な分子が発生することとなった。
神がわざわざ天足彦と胞場姫を試すようなことをしなければ、邪悪も生まれなかっただろう、という人がいるが、神業は一度進むべき方向が定まったら、逆行したり審判を甘くしたりということは、決してないのである。神諭に『時節には神もかなわぬ』とあるのは、このことを示しているのである。
天地の剖判から五十六億七千万年を経て、いよいよ弥勒出現の暁となった。弥勒の神が下生して三界の大革正を成就し、松の世を顕現するためには、ここに神柱を立て、苦集滅道、道法礼節を開示し、善を勧めて悪を懲らし、至仁至愛の教えを布き、世の中が太平に治まるための天則を啓示し、天意に基づいた善政を天地に広げていく時期に近づいたのである。
私は、このような重大な時期に生まれて、このような神業に奉仕することを得ることができれば、これ以上の幸いはない。
神示には、『神は万物普遍の聖霊にして、人は天地経綸の司宰なり』とある。私は今このときでなければ、いつ天地の神業に奉仕することができるだろうか。いや、今しかないのだ。
また、言霊の幸はう国、言霊の天照る国、言霊の生ける国、言霊の助ける国、神の造りしくに、神徳の充てる国に生をうけた、神国の人たちよ、あなた方もそうなのである。
神の恩の高く、深きに感謝して、国祖の大御心に報い奉らなければならない次第である。
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01 01 〔1〕
高熊山は上古は高御倉山と言った。開化天皇を祭った延喜式内小幡神社のあったところである。武烈天皇が継嗣を定めようとされたときに、穴太の皇子が高熊山山中に逃れ給い、やむなく天皇は継体天皇に御位を譲りたもうた、という故事が残っている。
高熊山には、古来『朝日照る、夕日輝く、高倉の、三ツ葉躑躅の其の下に、黄金の小判千両埋けおいた』というものである。自分は大正九年に登山して、ふと休息すると足元に三ツ葉躑躅が生えているのを見出し、はじめてその謎が解けたのである。
「朝日照る」:天津日の神の御稜威(みいづ)が、旭が昇る勢いで世界全体に輝きわたり、夕日が輝くというように、他の国々までも神徳が行き渡る黄金時代が来る、ということであり、この霊山に、その神威霊徳を秘めておいた、という神界の謎である。
「三ツ葉躑躅」とは、三つの御魂、瑞霊を意味する。ツツジとは、万古不易という意味の言霊である。
「小判千両埋けおいた」:大判は上を意味し、小判は下を意味する。判は確固不動の権力の意味である。また、小判は小幡でもあり、神教顕現地(こばん)ともなる。穴太の産土に、開化天皇を御祭神とする小幡神社が御鎮座されていたのも、畏れ多くも深い神策によることであると思われる。
自分が明治三十一年如月の九日、富士浅間神社の祭神・木花咲耶姫命の神使である松岡芙蓉仙人に導かれて、高熊山に一週間の修行を命じられたのも、決して偶然ではないと思われる。
神示のままに修行した自分の霊力発達の程度は、非常に迅速であり、過去、現在、未来に透徹し、神界の秘奥をうかがい知ることができ、また現界の出来事は数百年数千年の後までことごとく知るに至った。
しかしながらすべては一切神界の秘密に属することであるので、残念ながら今日これを詳細に発表することはできないのである。
本文
01 02 〔2〕
霊界の業といえば、深山幽谷に入って世間を出て、難行苦行をなすことと考えている人が多いようである。しかし、業は行であり、顕幽一致、身魂一本の真理により、顕界において可急的大活動をなし、天地の経綸に奉仕するのが、第一の行である。
たとえ一ヶ月でも人界の事業を廃して山林に隠匿し、怪行異業に熱中するのは、すなわち一ヶ月の社会の損害であり、神界の怠業者、罷業者である。
自分は二十七年間、俗界で悲痛な修行を遂行し、その後にただ一週間、一回のみ空前絶後の実修を行ったのみである。
本文
01 03 〔3〕
高熊山の修行は、一時間神界の修行をさせられると、二時間現界の修行をさせられた。しかし神界の一時間の修行のほうが、数十倍も苦しかったのである。
現界の修行は寒空に襦袢一枚で岩の上に正座し、飲まず食わずで過ごすというのみであった。ある晩、人を殺めると噂の山の大熊に出くわしたが、寂しく恐ろしい修行中には、大熊のうなり声さえ恋しく懐かしく思え、一切の生き物には仁慈の神の生き御魂が宿っていることが、適切に感得された。
猛獣でさえそうであるのだから、ましてや人間ほど人間の力になるものはないのである。人は四恩を思い起こし、助け助けられて行くべきものなのである。
本文
01 04 〔4〕
また、一週間水を口にしないことで、水のありがたさを身にしみて感じることができた。草木の葉一枚でも、神様のお許しがなければ戴くことはできないということを知り、どんな苦難でも自若、感謝の気持ちで対することができるようになった。
そしてまた、衣食住の恩とともに、空気の恩を感謝せなくてはならない。空気ばかりは、ただの二三分でも呼吸しなくては生きることができないのだから。
本文
01 05 〔5〕
霊界には、天界・地獄界・中有界の三大境域がある。
天界は正しい神々や正しい人々の霊魂が安住する国である。
地獄界は邪神が集まり、罪悪者が堕ちていく国である。
天界、地獄界の中でもそれぞれ上下二界に分かれており、程度に区別がある。さらにその中に三段の区画が定まっている。それぞれ神徳、罪悪の違いによって、行く世界が違っている。
霊界:
天界(=神界)
天の神界(三段に分かれている)
地の神界(三段に分かれている)
中有界(浄罪界、また精霊界)
地獄界(幽界)
根の国(三段)
底の国(三段)
自分が芙蓉仙人の先導で霊界探検をしたのは、身は高熊山に端座しており、ただ霊魂のみが行ったのである。
数百千里を大速力で空中飛行を続けた後、大変な大きな河のほとりで立ち止まり、仙人は『いよいよ是からが霊界の関門である』と言った。
河は渡ってみると深くなく、自分が着ていた紺色の着物は不思議にもたちまち純白に変じた。対岸へ渡ってから振り向くと、河の水が大蛇となって火焔の舌を吐いていたのには驚いた。
多くの旅人がいずれも河を渡ってくるのが見えたが、やはり服の色が種々変化していた。そして渡りきると、どこからともなく、五六人の恐い顔をした男が、旅人の姓名をいちいち呼び止めて、一人一人の衣服に切符のようなものを付けていた。
河から一里ばかり行くと、役所のようなものが建っており、番卒が現れて旅人の衣服に付いた切符を剥ぎ取り、また衣服の変色模様によって、衣服を剥ぎ取ったり、重ねて着させたりしていた。そして、一人一人、番卒が付き添って規定の場所に送られていった。
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01 06 〔6〕
ここは黄泉の八衢というところで、米の字の形をした辻である。その真ん中に霊界の政庁があって、恐ろしい番卒がたくさん控えている。
芙蓉仙人の案内で中に入って行くと、小頭と思しき恐ろしい顔つきをした男が慇懃に出迎えた。仙人は自分を、大神の命によって幽界の視察をせしめるべく、大切な修行者を案内して来た、この者こそ丹州高倉山に古来秘めおかれた三つ葉躑躅の霊魂である、と紹介し、大王に伝えるようにと言った。
小頭が仙人の来意を奥へ伝えに行った後、ものすごい物音が政庁の奥から聞こえてきた。仙人は、肉体のあるものがやって来たときには、政庁の装いを変えるので、その音であろうと言った。
やがて、先の小頭の先導で奥へと進み入ると、上段の間に白髪異様の老神が端座していた。老神はうるわしく威厳があり、優しみのある面持ちであった。
招かれて進みいり、座に着くと、自分は平身低頭して敬意を表した。老神もまた頓首して敬意を表した。そして老神は次のように語った。
自分は根の国・底の国の監督を天神から命ぜられ、三千有余年、この政庁の大王の任に就いている。
今や天運循環し、わが任務は一年余りで終わる。
その後は、自分は汝(聖師)と共に霊界、現界において提携し、宇宙の大神業に参加するものである。
汝は初めて幽界に足を踏み入れたものであり、実地に研究するため、根の国底の国を探検した上で、顕界に帰るように。
そして、自分の産土の神を招くと、産土の神は自分に一巻の書を授け、頭上から神息を吹き込んだ。自分の臍下丹田はにわかに温かみを感じ、身魂の全部に無限無量の力を与えられたように感じた。
本文
01 07 〔7〕
まずは、大王の許しを得て、自分は芙蓉仙人、産土の神と共に、幽庁の審判を傍聴することになった。
審判の法廷には、河を渡ってきた旅人が土下座になってかしこまっていたが、そこにはさまざまな国の人間が混じっているのを認めた。
高座にある大王の容貌をふと見ると、恐ろしくものすごい顔になっていたので、思わずあっと驚いて倒れそうになったところを、芙蓉仙人と産土の神に支えられた。
裁判はただ、一人一人判決の言い渡しのみで次々と終了して行った。芙蓉仙人の説明によれば、大蛇の河を渡るときに、着衣の変色によって罪の大小軽重が明らかになるので、審理の必要がない、とのことであった。
審判を終えて、元の居間に戻ってきた大王のお顔は、また温和で慈愛に富んだ様子に戻っていた。
神諭にある艮の金神が、改心の出来た人には優しく現れるが、心に曇りがある人民には恐ろしい神として表れる、とあるのを拝読したとき、このときの幽庁の大王のことを思い出さずにはいられなかった。また、教祖の優美にして温和、慈愛に富めるご面貌は、大王のお顔を思い起こさせたのである。
大王が、これから幽界の修行を行うように、と告げると、産土の神は「よろしくお願い申し上げます」と述べて去っていった。また芙蓉仙人も大王に黙礼して退座された。
後には大王の前に自分だけが残されたが、すると再び大王の面貌は恐ろしく変わり、番卒がやってきると自分の白衣を脱がせて灰色の着物に着せ替え、第一の門から突き出してしまった。
辺りを見ると、枯れ草が氷の針のようになり、横の溝にはいやらしい虫が充満していた。後ろからは番卒が、鋭利な槍で突き刺そうと追ってくるので、やむを得ず前に進んでいった。
四五町行ったところで、橋のない深い広い河があった。のぞいてみると、旅人が落ちて体中を蛭がたかって血を吸われ、苦しんでいる。後からは鬼のような番卒が槍を持って追いかけてくる。
窮地にふと思い出した、産土神から授かった書を開いてみると、『天照大神、惟神霊幸倍坐世』としたためてある。自分は思わずこの神文を唱えると、身は大きな川の向こうへ渡っていた。
番卒はこれを見て、元の道を帰って行った。歩を進めると、にわかに寒気が酷烈となり、手足が凍えてどうすることもできない。
そこへ黄金色の光が現れ、はっと驚いて見る間に、光の玉が二三尺先に忽然と下ってきた。
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01 08 〔8〕
玉は次第に大きくなり、たちまちうるわしい女神の姿に変化した。全身金色にして紫摩黄金の肌で玲瓏透明にましまし、白の衣装と緋のはかまという出で立ちの、愛情あふれるばかりの女神であった。
女神は、自分は「大便所の神である」と告げ、懐から八寸ばかりの比礼を授けると、再会を約して電光石火のごとく天に帰って行った。
後に教祖のお話にあった金勝要神であることがわかって神界の微妙なる御経綸に驚かざるを得なかった。
女神と分かれた後、太陽も月も星も見えない山野を進んでいった。冷たい道の傍らに汚い水溜りがあり、その中に三十歳余りの青年が陥って虫にたかられ、苦しんでいた。
思わず「天照大神、惟神霊幸倍坐世」と繰り返すと、青年は水溜りから這い上がることができた。
青年は感謝の念を述べ、竜女を犯した自分と祖先の罪により、あのような罰を受けていたと語った。
それから自分は天照大神の御神号を一心不乱に唱えつつ前進した。すると神力著しく、たちまち全身が温かくなった。
四五十丁も行くと、断崖に突き当たった。後ろからは鋭利な刃物が迫ってきており、下を見ると、谷川の流れに落ちた旅人を、恐ろしい怪物が口にくわえて、浮き沈みしていた。
自分は神号を唱えると、怪物の姿は消えてしまった。怪物の難から助かった旅人は、舟木と言った。彼は喜んで自分の道連れとなった。
二人連れで進んでいくと、口の大きな怪物が、二人を逃がすな、と長剣をふるって襲い掛かってきた。神号を唱えても効果がなく、進退窮まったところへ、先ほどの女神が現れて、比礼を振るようにと言った。比礼を振ると、怪物は退却してしまった。
やれやれと思うまもなく、突然大蛇が現れて二人を飲み込んでしまった。そして轟然とした音と共に、奈落の底へ落ちていった。
気がつくと、幾千丈とも知れない滝の下に、両人は身を横たえていた。周囲は鋭い氷の柱で囲まれており、身動きすれば氷の剣に身を貫かれてしまう態であった。
自分は満身の力をこめて、「アマテラスオホミカミサマ」と唱えると、身体が自由になり、滝もどこともなく消えうせてしまった。
今度は、茫々たる雪の原野が現れた。雪の中には幾百人ともわからないほど、人間の手足や頭の一部が出ていた。にわかに、山が崩れるかという響きがして雪塊が落下し、自分を埋めて身動きができなくなってしまった。
一生懸命、惟神霊幸倍坐世をなんとか唱えると、ようやく身体の自由が利くようになってきた。舟木の全身が雪にうずもれていたので、比礼を振ると、舟木は雪の中から全身を現した。
天の一方より、またまた金色の光が現れて雪の原野は一度にぱっと消え、短い雑草の野原に変わった。
雪に埋もれていたあまたのひとびとは自分の前にひれ伏し、救世主の出現と感謝した。救世主と一緒に、神業に参加したいと希望する人もたくさんあった。その中には実業家、教育家、医者、学者なども混じっていた。
以上は水獄の中でも一番軽いところであった。第二段、第三段となると、このような軽々しい苦痛ではなかった。
本文
01 09 〔9〕
雑草の原野で、ふたたび自分は一人になっていた。ザラザラと怪しい音がすると、自分の両岸に焼け砂のようなものが飛び込み、目が焼けるような痛さで開くこともできなくなった。
頭上からは冷たい氷の刃が降ってきて、梨割りにされる。一生懸命、「アマテラスオホミカミ」を唱えると、目の痛みがなおり、自分は女神の姿に化していた。
舟木がはるか遠方から、比礼を振りつつこちらへ向かってきた。再開の歓喜にしばし休息していると、後から悪鬼がやってきて、氷の刃で切ってかかった。舟木が比礼を振り、自分は神号を唱えると、悪鬼は退散した。
どこからともなく、「北へ北へ」という声が呼ばわり、自分の体が自然に進んでいった。「坤」という字のついた王冠をかぶった女神と、小松林という白髪の老人から筆を託され、自分は五百六十七冊の半紙を書いた。すると、「中」という鬼が現れて書いたものを槍で突き刺し、空に散乱させてしまった。
他にも鬼がやってきて、自分の書いたものを焼いてしまった。「西」という男が、自分の書いたものを抜き出して、もって来る。鬼たちは「西」を追いかけるが、自分が比礼を振ると、逃げてしまった。「西」は書いたものを抱えて南の空高く姿を隠してしまった。
本文
01 10 〔10〕
自分は寒さと寂しさに、「天照大神」の神号を唱えると、にわかに全身暖かくなり、芙蓉仙人が現れた。うれしくなって仙人に近寄ろうとすると、仙人は厳しい顔をなし、自分は第二の門を開くために来たのであり、近づかないようにと諭した。
ギィーという音がしたせつな、自分は第二の門内に投げ込まれていた。氷結した暗い道を地の底へと滑り込んでいった。前後左右に苦悶の声が聞こえる。たちまち足元がすべり、深い地底へ急転直落した。
全身を岩角に打って血みどろとなったが、神名を奉唱すると、自分の四辺だけが明るくなってきた。御神号を唱えて手に息をかけ、全身を撫でさすると、神徳たちまち現れて傷も痛みも全部回復した。
再び上の方でギィーと音がすると、十二三人の男女が転落して自分の足元に現れ、助けを求めた。比礼を振るとたちまち起き上がり、「三ツ葉様」と叫んで、泣きたてた。一同は氷の道をとぼとぼと自分の背後から着いてきた。
本文
01 11 〔11〕
一歩一歩かろうじて前進すると、広大な池があった。池の中には虫がたくさんおり、蛇体の怪物がいた。後ろからは鬼が槍で突きに来る。
進退窮まっていると、頭上から女神の声がして、一本の大幣が下ってきた。大幣を手にとって思わず、「祓戸大神祓いたまへ清めたまへ」と唱えると、池はたちまち平原になり、鬼も怪物も姿を消してしまった。
数万の老若男女の幽体はたちまち蘇生し、「三ツ葉様」と叫んだ。各人の産土の神が現れて、氏子を引き連れて喜び帰って行った。
さらに平原を一人行くと、巨大な洋館が聳え立っていた。中に入ると、獄卒が亡者をひどく責め立てていた。中にたくさんの婦女子が槍で刺されたり、赤子の群れに血を吸われたり、毒蛇に巻かれて苦しんでいる光景があった。
またもや大幣を左右左に振ると、苦しんでいた大勢の婦女子は助けられて、うれし泣きに泣いている。また各人の産土の神が現れて、氏子を伴い、合掌しながら帰って行った。天の一方には歓喜に満ちた声が聞こえる。
本文
02 00 - 本文
02 12 〔12〕
高熊山山中における顕界と霊界の修行の実践を、大略述べてみたが、述べた部分は実はほんの一小部分にしかすぎない。
すべて宇宙の一切は顕幽一致、善悪一如である。絶対の善もなく、絶対の悪もない。絶対の極楽もなければ、絶対の苦患もない。
根底の国に堕ちて苦悩を受けるのは、自己の身魂から産出した報いなのである。
顕界の者の霊魂は常に霊界に通じ、霊界からは常に顕界と交通を保っている。これは、幾百千万年といえども、変わることはない。
天国浄土と娑婆社会は、本質はまったく同じである。ただ、その本然の性質を十分に発揮して適当な活動をするかしないかで、神俗、浄穢、正邪、善悪が分かれるのである。
あることも天下公共のためにすれば善であり、私有のためにすれば悪ともなる。
神は一切万有を済度しようとする。凡俗は我が妻子眷属のみを愛すだけである。人の身魂そのものは、本来は神である。したがって、宇宙大に活動できる天賦の本能を備えているのである。この天賦の本質である、智、愛、勇、親を開発し、実現するのが人生の本分である。
肉体を捨てず、苦あり悪ある現実社会を離れず、これを美化して天国浄土を目の前に実現させる。これが自分が考える神性の成就であり、目的とするところである。
本文
02 13 〔13〕
自分はなお進んで水獄の二段目を奥深く極めた。そして三段目を探検しようとしたとき、にわかに天上から喨々と音楽が聞こえてきた。
空を仰ぐと、天使が共を連れて、自分の方に降臨してくるのが見えた。そして、都合により産土の神のお迎えであるから、一時帰るがよい、とお達しがあった。
三四十分、ふわりふわりと上へ上っていくような心地がし、気づくと高熊山の岩窟の前に端座していた。それから約一時間ばかり経つとまた、再び霊界にいた。
すると、産土様である小幡神社の大神様が現れた。そして、霊界が切迫しているため、幽界より先に、神界の探検をする必要があることを告げた。
自分の体が捉まれて運ばれ、おろされたところは綺麗な海辺であり、富士山が近くに大きく見えた。今から思うと、三穂神社に行ったのである。そこで、夫婦の神様に、天然笛と鎮魂の玉を授かった。
と思うせつな、不思議にも自分は小幡神社の前に端座していた。帰宅の念を天使にたしなめられ、神界へ旅立つことになった。天使は、神界と幽界が今、混乱状態であることを告げ、神界へ旅立って高天原に上るように、と告げた。
天の八衢までは天使が送っていくので、そこから鮮やかな花の色をした神人が立っている方へいくように、と教えられた。
神界といえども善悪不二であり、よいことばかりではないこと、現界と霊界は相関しているので、互いに出来事が移ってくること、また神界にいたる道には、神界を占領しようとする悪魔が邪魔をしようとすることを聞いた。
やがて自分ひとり、天然笛と鎮魂の玉を持ち、羽織袴装束で、神界へと旅立ちすることになった。
本文
02 14 〔14〕
すでに二三丁来たかと思ったが、八衢に引き返してきてしまっていた。そして、地獄に落ちる亡者が、地の底へ急転直下の勢いで落ちていくのを見た。
天然笛を吹くと芙蓉仙人が現れたので聞いてみると、この亡者は大悪の罪により頓死したので、急速に地獄に落ちたのだ、という。
人は死ぬと死有から中有に、そして生有という順序で推移する。死有から中有まではほとんど同時である。四十九日の間が中有であり、その後、親兄弟が決まって生有となる。そのときの幽体は、三才の童子のように縮小されている。
ただ、大善と大悪には中有がなく、ただちに行き先が決まる。大善の者はただちに天国に生まれるが、大悪の者は、先のようにすぐさま地獄に落ちていくのである、と。
それを聞き終わると、ふたたび高天原のほうへ神界旅行に向かおうとした。ところが、顔いっぱいに凸凹のできた妙な婦人が、八衢の中心に忽然と現れた。そして自分の姿を見るなり、神界の入り口指して駆け出した。
自分はひとつ、この怪人の正体を見届けよう、と好奇心にかられて追跡した。そして異様な声を頼りに、怪女と化け物が集っているところを見つけた。
怪女は化け物を放り投げて、化け物が苦しむのを眺め、その血を吸っていた。自分は神界の旅行をしているつもりであるのに、なぜこんな鬼女のいるところに来たのだろう、と合点が行かず、神様に助けを求めようと思った。
瞑目端座して、天津祝詞を奏上した。すると、「目を開けて目を覚ませ、なぜ八衢にいつまでも踏み迷って、神界旅行に旅立たないのだ」と自分をたしなめる声が聞こえた。
化け物がだましている声かもしれないと迷っていると、一喝され、思わず目を開くと、荘厳な宝座が見えた。そのせつな、ふと気づくと高熊山のガマ岩の上に端座していた。
本文
02 15 〔15〕
先は自分の間違いであったことを悟り、心を改めて一直線に神界への旅路についた。神言を唱えながら歩いていき、「幸」という男と「琴」という女が道連れになった。
細い道が幾筋となく展開するところに出た。自分はどの道を選んだらよいか、途方にくれたが、その中で正中と思われる小路を選んだ。橋をいくつも渡ったが、ある橋にさしかかると、真っ黒な四足の動物が現れて、自分を橋の下の川に投げ込んでしまった。
道に沿って溝を泳いで戻り、元の道まで引き返してきた。真っ黒な動物が追いかけてきたが、二匹の白狐が追い払った。再び道を選び、今度は三人が別々の道を進んだ。
山の中腹にさしかかり、大きな滝に出くわした。その滝で身を清めようと打たれてみると、自分の姿は大蛇になってしまった。すると、「琴」という女も大蛇の姿になって苦しんでいるのを見た。
山が急に海に変わると、「琴」の大蛇はものすごい勢いで行ってしまった。すると海も川もなくなって、自分は元の道の別れている場所に戻っていた。
今度は一番細い道を行くと、病人が狸を拝んでいたので、鎮魂で狸を追い払った。病人たちは感謝して喜び、取りすがってきたので一歩も進むことができない。天の声に促されて天の岩笛を吹くと、何もかも消えて、広い平坦な場所に進んでいた。
本文
02 16 〔16〕
さらに進んでいくと、母や祖母や隣人の声と姿を使って、怒ったような泣いたような顔で、自分の神界行きを妨害しようとする者がある。
そこへ「幸」という男が現れて助けてくれた。自分は執着を捨てて北へ北へと進んでいった。
川辺に老いた松が生え、左側には絶壁の山が立っている場所で、男女が道をふさいだ。そして、自分たちは幽界をしろしめす大王の肉身系統の者である、と語った。
男女は北へ行くと大王にあえるので、自分たちの言付けがあったと伝えてほしい、と言った。この者たちは信仰の強い者たちだが、恐ろしい顔の天狗と金毛九尾の白狐という容易ならない物に魅入られていた。
さらに北に進むと、狐を殺した罪で畜生道に落ちた女に出会った。また、強欲のために多くの人を不幸や死に追いやった「横」という男が、怨霊に苦しめられていた。天照大御神に「惟神霊幸倍坐世」と唱えて天然笛を吹くと、怨霊たちは解脱することができた。
真西には、山猟で多くの狐を殺した男が、狐たちの怨霊に苦しめられていた。自分は狐たちに、復讐に走るよりも、めいめい改心して人界へ生まれ変わったらどうか、と諭した。狐たちに変わって天地へお詫びを申し上げると、狐たちはたちまち男女の姿に変わることができた。
そのときの数十の狐の霊は、一部は今日でも神界の御用をしているものがある。途中で逃げてしまったものもあれば、再び畜生道に堕ちたものもあった。
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02 17 〔17〕
神界の場面がたちまち一変し、また自分は元の大橋のたもとに立っていた。大祓詞の声が聞こえて来る方に行くと、五十がらみの爺と四十がらみの女が背中合わせにひっついて、天狗と稲荷をそれぞれ拝んでいた。
自分は神様にお願いして祝詞を奏上すると、二人の体は分離した。二人は感謝して神業に参加しようとしたが、男の方は強欲のために地獄に堕ちて肉体は滅びてしまった。
また光景が一変し、小さな十字街頭で、先ほど見た八つ頭八つ尾の霊が憑いた男が、車に乗るように進めてきたが、自分は断って徒歩で進んだ。
非常に険峻な山坂を三つ四つ越えると、そこには澄み切った河べりに、老いた松が青々と並んでいる景勝の地であった。自分はこここそ神界であると思った。またとぼとぼと進んでいくと、小さな町に出た。地形は蓮華台上にあり、高天原の中心と称してもよいような町であった。
山を下って少し北に進んだ小さな家で、かの幽庁におられた大王が、若い若い女の姿で自分を出迎えた。大王との再会を喜んで珍しい話を聞いていると、虎狼がうめくような声で祝詞が唱えられているのが聞こえた。
その祝詞の声であたりは暗黒に閉ざされ、「足」という鬼に「黒」という古狐が憑いているのが見えた。河からは大きな竜体が、どこからともなく悪魔が現れてきた。自分は「天照大御神」「産土神」を念じて祝詞を唱えると、一天にわかに晴れ渡った。
祝詞も悪魔の口から唱えられると、かえって世の中は混乱する。言霊は身も魂も清浄となった人が使ってはじめて、世の中を清めることができるのである。
自分は八衢に帰っていた。さきほどの鬼、狐、悪竜は自分を追ってきた。鬼は眷属を引き連れて自分を八方より襲撃し、口中から何十万本もの針を吹きかけた。しかし自分の体は神明の加護を受けており、何の影響もなかった。そのありがたさに感謝の祝詞を唱えると、すべての悪魔は消えてしまった。
「足」という鬼は、一見神に仕えるかのような服装をしていた。河から上ってきた竜は竜女に姿を変え、本来は大神御経綸に参加すべき身魂であった。しかし、「足」の鬼と肉体上の関係を結び、使命を台無しにしてしまった。
「足」の鬼は竜女と関係を持った罪のために滅びてしまった。
本来竜女は三千年の苦行を経て、ようやく人間として生まれてきたものであり、人間になった最初の一生は、男女の交わりを絶たなければ、再び竜体に堕ちてしまう。そのため、竜女を犯した者は竜神の祟りを受けて、末代まで苦しまなければならなくなるのである。
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02 18 〔18〕
神界と幽界には、時間空間を超越している。過去・現在・未来が一度に鏡にかけたように見えるが、その区別は歴然と推断される。
時間の差異こそあれ、霊界で目撃したことは、必ず現界に現れてくる。
天界は天照大御神のご支配であるが、これについては後述する。ここでは地上神界の紛乱状態を明らかにする。
地上神界の主宰者は国常立尊であった。しかし事情によって引退せざるを得なくなった。その後を襲ったのは盤古大神という神である。盤古大神は悪神ではなく従順な神であった。
国常立尊の時代には国家のような境界はなかった。しかし天孫降臨以来、日本をはじめとしてさまざまな国家が誕生したのである。
そして支那に生まれた盤古大神は、葦原中津国にやってきて国祖の後を襲った。そして八王大神という直属の番頭神を使って、地の世界の諸国を統括したのである。また、各国々には、それぞれの番頭神として、八王八頭という神々を配置した。
これが、国常立尊後復権までの神界の有様である。
盤古大神の世になってから、各地に三種の悪霊・悪神が生じた。
露国のあたり:八頭八尾の大蛇(各国の八王八頭の番頭神の身魂を侵した)
印度:金毛九尾白面の悪狐(各国の八王八頭の番頭神の妻神に憑依)
ユダヤ:邪鬼(すべての神界ならびに現界の組織を打ち壊して、自分が盟主となって全世界を妖魅界にしようともくろむ)
日本は神国であり、これらの悪神の影響を免れたが、地上神界はこれらの悪神たちによって混乱のきわみに陥った。
ここにおいて天上にまします至仁至愛の大神は、このままでは神界、現界、幽界ともに破滅してしまうと思し召し、ふたたび国常立尊を召し出されて、神界および現界の建替を委任した。
坤之金神、金勝要神、竜宮乙姫、日出神が大神業の補佐に任じられた。また、天津神の嫡流である木花咲耶姫命、彦火々出見命が神業を手伝うことになった。
そもそも太古、葦原瑞穂中津国は、大国主命が武力をもって天下を治めていたが、天祖が天使を使わして武力で大国主命の権力をけん制した。そのため、大国主神も力尽きて、現界の政権を天命にしたがって、天孫に奉還したのであった。
この太古の時代の天孫のご降臨は、現在の日本のような小さな区画を支配するというのではなく、全地球の現界を治めるための降臨であったのである。しかしながら未完成な世界にはあらゆる邪悪が充満しているため、天の大神様のご大望が完成するにいたらなかった。
それどころか、弱肉強食の修羅の巷と化してしまい、地上神界、現界がほとんどまったく崩壊しようという状態に立ち至ったのである。
このような情勢に、天津神様は命令を下し給い、盤古大神に地上一切の幽政の権利を奉還させ、国常立尊に返すことになった。盤古大神は時節を知り、素直に大神様のご命令を奉戴することになった。
しかし、八王大神以下の国魂は、邪神のために精霊が汚されていたので、このような時節においても、悪事を画策していた。
かくして、国常立尊が地上の神界を統一する時節はすでに近づいている。神界平定後は、国常立尊は幽政を総覧し、大国主命は日本の幽政をつかさどるはずである。しかし現時点では、悪霊・悪神たちが、盤古大神を擁立して、幽界および現界を支配しようと悪計をめぐらしている。
天界では事態が容易でないことを見て取り、御三体の大神が地上に降臨して、国常立尊のご経綸に加勢することになった。国常立尊は、御三体の大神様のために仮の御息所を蓮華台上に建設してお迎え奉ることになる。
したがって、天の御三体の大神様の御息所ができれば、神界の経綸がいっそう進んだ証拠であると拝察することができるのである。
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02 19 〔19〕
自分は清い水の河で漁をしていたところ、河岸から眼がふさがった男がしきりに呼びかけている。盲目の男は、自分は地の高天原の使いであると名乗り、迎えに来たのだ、と告げた。
先に地の高天原の悲惨な様子を見ていたので拒否したが、にわかに行きたい気になって産土神に祈ると、産土神が現れて、世界を救済する御用だから行くがよい、と述べた。
暗黒で大蛇、毒蛇、狼が跋扈する道を、盲目の使いは平気で進んでいく。盲目の使いは、地の高天原が悪魔の邪魔によって黒雲に包まれているので、ひそかにお迎えに上がって連れてきた次第である、と語った。
果たして、地の高天原では悪魔が自分の来着を知って、狼狽し、反抗運動の真っ最中であった。
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03 00 - 本文
03 20 〔20〕
盲目の神使に迎えられて地の高天原に着くと、大地の主宰神である国常立大神と、稚姫君命が現れた。自分はこの両神から天眼鏡を賜って、神界探検の命を拝受したのである。
眼前の光景が変じて、すばらしく高い山がそびえ立ち、山にはケーブルカーのようなものが架かっていた。山に登ろうと踏み込むと、自分の体は何物かに引き上げられるようにすうっと昇っていった。
これは仏教で言うところの須弥仙山であり、宇宙の中心に無辺の高さで立っているのだが、霊界の山であって物質的な山ではない。自分も、霊で登ったのである。
須弥仙山の頂上に立って、天眼鏡で八方を眺めた。すると、茫々たる宇宙の混沌の中に、ひとつの丸い塊ができるのが見えた。鞠のような形で、周辺には泥水が漂っている。
みるみるその丸い塊は膨大になり、宇宙全体に広がるかと思われるほどであった。眼も届かないほどの広がりに達すると、球形の真ん中に鮮やかな金色をしたひとつの円柱が立っていた。
円柱はしばらくすると、自然に左旋運動を始めた。周辺の泥は、円柱の回転につれて渦巻きを描いた。渦巻きは次第に外側へと大きな輪に広がっていった。
はじめは直立して緩やかに回転していた円柱は、その速度が加わって行くにつれて傾斜していき、目にもとまらない速さで回転し始めた。
すると大きな丸い球の中から、暗黒色の小さな塊が、振り放たれたようにポツポツと飛び出して、宇宙全体に散乱した。それは、無数の光のない黒い星となって、あるものは近く、あるものは遠く位置して、左に旋回しているように見える。
後方に太陽が輝き始めるとともに、星たちはいっせいに輝き始めた。
一方、金色の円柱は竜体に変化した。そして、丸い球体の大地の上を東西南北に馳せめぐり始めた。すると竜体の腹、口、そして全身から、大小無数の竜体が生まれ出た。
金色の竜体と、それから生まれた種々の色彩を持った大小無数の竜体は、球の地上の各所を泳ぎ始めた。もっとも大きな竜体の泳ぐ波動で、泥の部分は次第に固くなり始め、水の部分は希薄となり、水蒸気が昇っていった。
竜体が尾を振り回すごとに、泥に波の形ができ、大きな竜体は大山脈を、中小の竜体はそれぞれ相応の大きさの山脈が形造られた。また低いところに水が集まり、自然に海も出来てきた。
このもっとも大いなる御竜体を大国常立命と称え奉ることを知った。
宇宙はそのとき、朧月夜の少し暗い状態であったが、海原の真ん中に忽然として銀色の柱が突出してきた。銀の柱は右回りに旋回し、柱の各所からさまざまな種が飛び散って山野河海のいたるところに撒き散らされた。しかしまだこのときは、生き物の類は一切発生していない。
銀の柱がたちまち倒れたと思う見る間に、銀色の大きな竜体に変じ、海上を進み始めた。この銀色の竜神が、坤金神と申し上げるのである。
金の竜体である国祖大国常立命と、坤金神は双方から顔を向き合わせて何事かをしめし合わされた様子であった。金色の竜体は左へ、銀色の竜体は右へ旋回し始めると、地上は恐ろしい音響を発して振動し、大地はその振動によって非常な光輝を発射してきた。
このとき、金色の竜体の口からは、大きな赤い色の玉が大音響とともに飛び出して、天に昇って太陽となった。
銀色の竜体は口から霧のような清水を噴出し、水は天地の間にわたした虹の橋のような形になって、その上を白色の球体が上っていく。この白色の球体が太陰(月)となって、虹のような尾を垂れて地上の水を吸い上げた。すると地上の水はその容量を減じた。
金竜が天に向かって息吹を放つと、その形は虹のようになった。すると太陽はにわかに光が強くなり、熱を地上に放射し始めた。
水が引いてくると、柔らかい山野は次第に固まり、銀竜がまいた種が芽を出してきた。一番には山に松が生え、原野に竹が生え、あちこちには梅が生え始めた。ついでその他の木々が生じてきた。山々はにわかに青々として美しい景色を呈してきた。
地上に樹木が青々と生え始めると、今まで赤褐色であった天は、青く藍色に澄み渡ってきた。そして、にごって黄色じみていた海水も、天の色を映すように青くなってきた。
地上が造られると、元祖の神様も竜体である必要はなくなり、荘厳尊貴な人間の姿に変化された。これは肉体を持った人間でなく、霊体のお姿である。
このとき太陽の世界に伊邪那岐命が霊体の人体姿として現れた。伊邪那岐命は天に昇って撞の大神となり、天上の主宰神となりたもうた。
白色の竜体から発生された一番力のある竜神は、男神として現れ給うた。容貌うるわしく、色白く、黒髪は地上に引くほど長く垂れ、髭は腹まで伸び、大英雄の素質を備えていた。この男神を素盞嗚大神と申し上げる。素盞嗚大神は白い光を発すると、天に昇って月界へとお上りになった。これを月界の主宰神で月夜見尊と申し上げるのである。
大国常立命は、太陽と太陰の主宰神が決まったので、ご自身は地上の神界を主宰したまうことになった。須佐之男大神は、地上物質界の主宰となった。
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03 21 〔21〕
大国常立尊は地の世界最高の山頂に登って四方を見渡せば、日月星辰は顕現し、地に山川草木は発生してたとは言え、樹草の類はまだか弱い柔らかいものであった。そこで息吹を放つと、十二の神々が御出現した。
十二の神々の起こした風で樹木は吹き倒されたので、大国常立尊はご自身の骨を粉々に噛み砕き、四方に散布された。その骨の粉末を吸収して、動物には骨が出来、植物は特有の形を取ることになった。また、岩石鉱物が発生した。これが岩の神である。
依然として太陽は強烈な光熱を放射し、月が地上の水を吸収し続けているので、大国常立尊はもろもろの竜神に命じて、海水を持ってこさせた。国祖が海水を天に息吹くと、雲が起こり雨が降り始めた。この竜神たちを雨の神と名づけられた。
国祖は、雨を調節するために太陽の熱を吸って放射した。この熱から火竜神が生まれた。
ここまで書いた天地造成には、数十億年の歳月を要しているのである。
国祖は人類を始め動物、植物をおつくりになられた。人間には日の大神と月の大神の霊魂を付与し、肉体は国常立尊の主宰とした。そして、神のご意思を実行する機関とされた。これが人生の目的である。神示に『神は万物普遍の霊にして人は天地経綸の大司宰なり』とあるのも、この理によっているのである。
地の一方では、天地間にかすのように残っていた邪気が凝って、悪竜、悪蛇、悪狐、邪鬼、妖魅となって人間に憑依し、邪霊の世界を作ることを企て始めた。大国常立大神は憤りから深い吐息を吐き給い、八種の雷神や荒れの神が生まれた。
荒れの神、地震の神が発動するのは、人類への警告である。
大国常立尊が天地を修理固成してからほとんど十万年の期間は、区画された国家もなかった。しかし世がだんだんと悪化して、大神のご神慮にかなわぬことが始まった。そこで大神は再び地上の修理固成を企画し、大声を発して地団駄を踏んだ。これにより現今のアフリカ、南北アメリカの大陸が出現した。また、太平洋ができ、そこに竜形の島が現れた。
日本の国土は大国常立尊の竜体の形そのものである。もと黄金の柱が立っていた場所にあり、柱が東北から西南に倒れた場所である。そこで、自転倒嶋(おのころじま)と言う。
この嶋が四方を海に囲まれているのは、神々のお休みどころとするためであり、日本の土地全体は、大神の御肉体である。
それから大神は、太陽と太陰から陽気と陰気を吸い込んで、息吹の狭霧を吐き出した。この狭霧から、稚姫君命が現れた。
この再度の修理固成により、地上の生き物はほとんど絶滅した。そこで大神は、再び神々と人間を生む必要を感じ、稚姫君命は天稚彦という夫神をもって、三男五女の神を生みたもうた。
再度の修理固成を行うに至ったのは、天が乱れると地が乱れ、地が乱れると天が乱れることで、その乱れが互いに現れて来るからである。
本文
03 22 〔22〕
太陽霊界:伊邪那岐命の主宰、現界の太陽界:天照大御神の主宰。
太陰霊界:伊邪那美命の主宰、現界の太陰界:月夜見之命の主宰。
大地の霊界:大国常立命の主宰、大海原:須佐之男命の主宰。
しかしながら、太陽界と大地球界(大地の霊界、地上霊界)は、鏡を合わせたように、混乱紛糾の状態となった。太陰の世界のみは、現幽いずれも平和に治まっている。
後に稚姫君命は、天稚彦とともに天界に神政を司ろうとしたが、付き従っていた邪神たちに誤られて天地経綸の仕組みを損じることとなり、ついに国常立命とともに地底に潜まざるを得ない事になったのである。この物語は後に詳述する。
さて、大国常立命はまず、混乱を収めて邪悪分子を一掃するために、幽政を敷こうとされた。坤金神を内助の役とし、大八洲彦命を天使長兼宰相とした。非常に厳格な規則に基づき、天の律法を制定した。これにより数百年は立派に神政が治まっていた。
しかし次第にご神政に反抗する神々が現れたため、大八洲彦命は宥和的な政で世を治めようとした。このとき霊界はほとんど四分五裂の勢いとなった。
一方には盤古大神(塩長彦)を擁立する一派、他方には大自在天大国彦を推す一派が、地の高天原を占領しようと画策するに至っていた。
国常立尊は天の御三体の大神様、天照大御神、伊邪那岐尊、伊邪那美尊にご降臨を願って助けを求めたが、盤古大神、大自在天それぞれを擁立する勢力の勢いははなはだしく、御三体の大神様でも言向け和すことができなかった。
そこで天の御三体の大神様は国常立尊に退去を命じた。国常立尊は自ら髪を抜き、手を切り取り骨を絶ち、筋を千切って残酷な処刑を甘んじて受け、尊の退陣を要求する神々にやむを得ず屈したのであった。
天の御三体の大神様が君系であるのに対し、国常立尊は臣系である。しかしながら、地上神界においては、天の御三体の大神様といえども国常立尊が生みたもうたのであり、親神であるのだが、混乱を収めるためにやむを得ず、大神様も尊に退去を命じたのであった。しかしながらこのとき、天の大神様たちは、尊に後日の再起を以心伝心的に伝えて、天にご帰還された。
その後盤古大神一派と大自在天一派は激しく争い、ついに盤古大神派が勝って幽政の全権を握ることとなった。
地上神界の主宰神がご引退され、地上の主宰であった須佐之男命もまた、神々に追われて自転倒嶋に至り、世界のはしばしに流離うこととなった。しかし須佐之男命は現界で八岐大蛇を平らげたように神界においても、すべての悪神を掃討して地上を天下泰平に治め、地上の主宰の大神に戻るというのである。
これから国常立尊に随従する神々のご活動を述べ、盤古大神派や大自在天派の暴動ぶりを、神界で目撃したように述べていく。
本文
03 23 〔23〕
地の高天原にはヨルダン河(またはイスラエルの河、五十鈴河という)が流れており、そこには非常に大きな黄金の反り橋がかかっている。非常に勾配が急で渡るに難しく、また金に身魂が映って本性を表すので、悪魔はこの橋を渡れない。
自分は橋を渡ってエルサレムの聖地(地の高天原)に着いた。そこには荘厳な大神の宮殿が造られていた。宮殿のあるところは蓮華台上である。四方は青山に囲まれ、ヨルダン河と湖水が麓にある。湖水には大小無数の島があり、檜作りの宮が建てられている。
湖にも黄金の橋がかけられており、黄金造りの高殿に通じている。これが竜宮城である。
盤古大神一派、大自在天一派は竜宮城を占領して地の高天原の主権を握ろうとたくらみ、潜入しつつあった。
蓮華台上の珍の宮に登ることができる身魂は、神界から大使命を帯びた神人である。竜宮に至ることができるのは、中位の神の身魂である。竜宮には竜神が集まり、解脱して人間に生まれ変わる神界の修行の場所でもある。
竜宮の宝は麻邇の珠であり、風雨雷電を叱咤するという神宝である。珍の宮には真澄の珠という宝がある。
竜神は畜生の部類をまだ脱することができない身魂であり、人間よりも一段下の位である。しかしながら、人間界が堕落するにつれて、下位の竜神を崇める人間が出てくるという身魂の転倒が起こったのである。
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03 24 〔24〕
神界においては、国常立尊が厳の御魂として顕現し、神政発揚直(ヨハ子)の御魂変性男子を機関とする。豊雲野尊は神息統合(キリスト)の御魂を機関とする。そして、地の高天原から三千世界を修理固成するために、竜宮館に現れた。
竜宮界においては、三千年の長い間に艱難苦労をなめた竜神の乙米姫命が、変性男子の系統の肉体の腹を借りて現れ、二度目の世の立替のために、すべての珍宝を授けられた。
乙米姫は元来貪欲な竜神であったが、宝を捨てて大神に帰順したため、罪を許されて日の出神の配偶神として顕現された。
次に、地底の暗黒に押し込められていた大地の金神、金勝要神が竜宮館に顕現した。この神は稚姫君命の第五女の神である。金勝要神が地球中心界の全権を掌握して国常立尊に奉呈し、国祖は地の幽界を総覧する、という御経綸である。
瑞の御魂は国常立尊のご神業の補佐役となって、金勝要神と相並んで活動される、ということになった。ここまでのことは、数千年の太古の地上神界における有様である。
盤古大神一派と大自在天一派の悪神たちは、地の高天原に潜入するに際して黄金の大橋に阻まれていた。そこでこの大橋を破壊しようと攻撃したが、橋は金輪際の地底から湧き出たもので、びくともしなかった。
そこで、大地の霊である金勝要神を手に入れようとしたが、この計略は瑞の御魂の防御により失敗した。また、悪神たちは瑞の御魂を讒訴したが、悪神の正体は神鏡に照らされて敗走した。
そこで、悪神たちは第二の計略に移ることになったのである。
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04 00 - 本文
04 25 〔25〕
武蔵彦、春子姫、足長彦ら悪神は、小金橋破壊に失敗したため、魔軍を組織して竜宮上を占領しようと画策していた。
このためには、地の高天原を内部的に瓦解させることが必要と感じ、探女を放って瑞の御魂の肉体を陥れようとしていた。
瑞の御魂は霊を降して大八洲彦命と現れて、探女を追い払って悪神の企みを打ち砕いた。
春子姫は竜宮の従臣神である小島別を説きつけて竜宮を攻めようとしたが、これも大八洲彦命に見破られ、小島別の立ち戻りもあって、春子姫は悶死して根底の国に堕ちて行った。
春子姫の親である武蔵彦は筑波仙人の肉体を借りて、竜宮城の占領を企て、盤古大神を押し立てようとしていた。武蔵彦は竹熊を使って大八洲彦命を襲わせた。大八洲彦命は雷のごとき言霊を駆使して敵を追い払った。このとき、地の高天原では稚姫君命が不思議な神術を実行されて神助を現した。
敗走した竹熊一派は、稚姫君命の前に表面改心を現して謝罪したため、許されたが、心の底では悪計を企んでいた。大江山から現れた邪神の頭領・鬼熊は、竹熊を密議をこらしていた。
しかし竹熊の参謀である木常姫は鬼熊と意見の相違から大争闘を始め、鬼熊は大打撃を受けた。これはすべて、邪神の権力争いから起こったのである。
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04 26 〔26〕
竹熊らは懲りずに目的を達しようとし、今度は金勝要神を手に入れようとしていた。足長彦も金勝要神を狙い、寅熊もこれを狙っていた。また魔子彦は大八洲彦命に近づいてすきあらば刺し殺そうとしていた。
元の謀主は竹熊であったが、邪神たちはおのおの野望を秘めて、互いに自己本位の計画を立てていた。これらの魔軍は表面一致して竜宮占領の計画をしていたが、やがていま一息というところで四分五裂してしまった。
竹熊は足長彦を遠くに追いやり、魔子彦に監視させた。魔子彦の同僚である熊彦の部下たちが、魔子彦の悪事に愛想をつかし、足長彦に魔子彦の悪事を報告したり、魔子彦をヨルダン河に沈め殺そうという者が出てきた。
また、中でも梅若彦、八島姫、高山彦らは魔子彦のきたないやり方に憤り、善心に立ち返って邪神の行いを大八洲彦命に報告し、帰順した。
大八洲彦命は魔子彦を帰順させ、また杉山彦の帰順によって竹熊の謀計をさとり、竹熊軍が待ち伏せをする橄欖山を取り囲み、一挙に天の磐船から火弾を投げつけた。竹熊軍はたちまち敗走した。
本文
04 27 〔27〕
竹熊、魔子彦、熊彦の同盟は内部分裂により統制を失って離散した。竹熊は厳の御魂の信任を得る作戦に出た。厳の御魂は竹熊が改心したものと思い、安堵をしていた。
竹熊は厳の御魂の系統である木常姫と力を合わせて、竜宮城を内部から瓦解させようとしていた。そのために、自分の妻・菊姫を離縁して、猿飛彦の妻であった木常姫を奪おうとした。
猿飛彦は木常姫の陰謀を知ると、怒ってこれを追い出した。竹熊と木常姫はこれ幸いと猿飛彦と菊姫を讒言した。厳の御魂は竹熊と木常姫を信任していたので、両者の結婚をやむを得ず承諾した。
金勝要神は猿飛彦と菊姫の陳情によって、竹熊・木常姫の悪事を知った。また大八洲彦命は彼らの陰謀を見破っていたので、金勝要神とともに、厳の御魂に彼らの悪事を知らせて、二人の結婚を破棄するようにと諫言した。
竹熊と木常姫は怒って魔軍を駆り、大八洲彦命と金勝要神を攻撃した。竜宮城の戦闘は激烈を極め、地の高天原も竜宮城も暗雲に包まれてしまった。
厳の御魂は驚いて竜宮城を立ち去り、シナイ山に避難した。竜宮城は金勝要神がわずかな武将とともに死守していたが、ほとんど全滅に近い打撃を受けていた。
本文
04 28 〔28〕
大八洲彦命は、元彦に命じて橄欖山を守らせた。この山はエルサレムの西方にある高山で、竜宮城防衛のための要所である。
竹熊は魔軍を率いて橄欖山の背後から襲撃を行った。大八洲彦命は天の高天原に裁断を仰ぐべく、太陰界に昇って月の大神に援軍を要請した。しかし天上においても正神・邪神両軍が戦闘中であり、大神に拝謁することはかなわなかった。
大八洲彦命はやむを得ず地上に戻り、天山の頂に降った。ここで邪神・胸長彦の伏兵にあったが、天上から『崑崙山に移れ』という神命が下り、天の羽衣を賜った。羽衣によって大八洲彦命以下の従神たちは、伏兵の難を逃れて崑崙山に難を避けることができた。
崑崙山は険峻であるが、山頂には広い平原が開けて、草花が咲き、果物がたくさん実っている。胸長彦の軍勢は崑崙山に攻め寄せたが、大八洲彦命たちは桃の実を取って打ちつけると、敵軍は雪崩のように山麓に落ち、敗退した。
このとき空中からは大自在天の部下の軍勢が、妖雲に乗って攻めかけてきた。大八洲彦命は桃の枝を折って左右に打ち払えば、たちまち妖雲は払われて、大自在天の軍勢は消えうせた。
一方、山麓からは胸長彦の軍勢が、体勢を立て直して再挙を図る声が聞こえてきた。大八洲彦命以下は、天に向かって天津祝詞を奏上した。すの清めの祝詞に、敵軍の声も大自在天のささやきも、風と消えうせた。
本文
04 29 〔29〕
大八洲彦命は少数の神軍とともに、広大な原野を東に進軍していた。すると、常世彦が魔軍を指揮して四方から火を放った。
進退きわまった大八洲彦命は真澄の珠を空中に投げた。珠は爆裂して数十万の星となった。星は地上に落下すると数十万の神軍となった。神軍の発射する言霊によって火炎は消滅し、後には魔軍の死骸が累々と横たわっていた。
大八洲彦命は、胸長彦の残党が立て籠もる天保山を討とうとしていた。しかし真澄の珠から現れた神軍は、残らず天に帰ってしまった。
大八洲彦命は多いに落胆したが、そこに二柱の女神が命の前に降り、加勢を頼むような心持では、到底このたびの神業はならない、これは天の大神の試練である、と神示を下した。
大八洲彦命は援軍が来ないことを観念したが、天教山に八島別が球援軍を組織していることを知らなかった。一方胸長彦は天保山が攻撃されることを恐れ、大八洲彦命に偽って一度帰順して、天教山の八島別軍を殲滅しようと計画を立てた。そして、天教山に敵軍が現れたと大八洲彦命を欺こうとした。
大八洲彦命は胸長彦一派の偽りの帰順を受け入れ、両軍あわせて天教山に攻め込んだ。しかし、先鋒の胸長彦軍は八島別軍によって殲滅されてしまった。
この様子を見た大八洲彦命は、天教山に帰順の神書を送った。この神書を見て、八島別は大八洲彦命の消息を知り、自分は命の救援軍を組織してきたのだ、と命に伝えた。
大八洲彦命は真相を知って喜び、天に向かって神言を奏上した。こうして、敵軍を殲滅した天津神の神算鬼謀は実に感嘆の次第である。
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04 30 〔30〕
大八洲彦命は黄河のほとりに進軍し、竜宮城に帰還しようとしていた。しかしそこには金毛九尾の一派の武将・稲山彦が城を構えて守っていた。
大八洲彦命はこれに気づかずに城下を通過しようとするのを、稲山彦は殲滅しようとしていた。シナイ山の厳の御魂はこれをみそなわすと、天の磐船に載せて救援軍を派遣した。
救援軍は空中から襲い掛かり、敵城を粉砕した。そこへ蒙古から数万の魔軍を指揮して大虎彦という悪神が襲い掛かってきた。
このとき、天から竜神・乙米姫が現れて、大八洲彦命に麻邇の珠を渡した。命はシナイ山からの応援軍の田子彦、牧屋彦に麻邇の珠を預けたが、田子彦、牧屋彦は裏切って敵軍についてしまった。
このために大八洲彦命軍は、敵軍に散々に打ち悩まされてしまった。
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04 31 〔31〕
大八洲彦命は一度天教山に退却した。稲山彦は潮満の珠をもって天教山を水没させようとした。地上はたちまち泥の海と化した。
このとき天神が雲間より現れて、魔軍に火弾を投げて発射し、天教山の神軍を応援した。泥海に火弾は効果を発揮しなかったが、白煙が立ち上ってそれが敵軍を悩ませた。
稲山彦は潮満の珠によってますます水かさを増して、天教山は危機に瀕した。ここにおいて稲山彦は降伏の文書を天教山に送り、大八洲彦命が竜宮の職をなげうつか、自殺するか選択を迫った。
大八洲彦命は天運ここに尽きたと覚悟を決めて、まさに自殺をしようとしたその刹那、東の空から天教山に下ってきた足玉彦、斎代姫、磐楠彦の三部将は風軍を引き連れ、大風を引き起こした。
水は天教山からさかしまに、稲山彦の陣取る天保山に打ち寄せた。さらに竜神を引き連れた部将神たちが、水を天保山に発射して応援した。
稲山彦は潮満の珠を取り出して、再び天教山に水をあふれさせた。水はたちまち大八洲彦命の首の辺りまでも浸すほどになってしまった。
このとき突然、天教山は大音響とともに高く突出し、逆に邪神の陣取る天保山は水中深く没してしまった。天教山は、富士の神山となった。
天教山の頂上から鮮麗な光輝が立ち上ると、木花姫命を頭とする天人たちが現れ、大八洲彦命に真澄の珠を与えた。
天教山が天高く突出したのは、国常立尊が蓮華台上で雄たけびしたもうた神業の結果である。天保山の陥落した跡が、今の日本海となった。
九山とは、九天に届くばかりの高山を意味し、八海とは、八方に海をめぐらした国土の意味である。ゆえに、秋津島根の国土を、九山八海の霊地と称するのである。
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04 32 〔32〕
天保山が陥落して海底に沈んだ稲山彦は悪竜と変じて、海底に沈んだ潮満、潮干の麻邇の珠を奪おうと海上を探っていた。大八洲彦命は悪竜に岩石を投げつけたが、悪竜は海底に隠れ潜んでしまった。
このとき命が投げた石が、佐渡、壱岐、対馬の島となった。
竜宮からは乙米姫の竜神が現れ、悪竜と争って勝ち、麻邇の両珠を奪い返し、木花姫命に奉呈した。木花姫命は乙米姫の殊勲を激賞し、罪を許された。
大八洲彦命は真澄の珠、潮満の珠、潮干の珠の三個の宝珠を木花姫命より授けられ、天地の修理固成を命ぜられた。大八洲彦命は三個の珠により神力旺盛となり、ついに三ツの御魂大神という御名がついた。
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04 33 〔33〕
大八洲彦命は三個の宝珠を捧持して、竜宮城に帰還した。竹熊、木常姫らの邪神は、大八洲彦命が無事に帰還したことを知って狼狽し、にわかに改心の状を表した。
そして、自分たちが割拠するエデンの園で、命の凱旋を祝うために宴会を開いた。
実は、大八洲彦命を酒に酔わせて、八尋殿に宿泊したところを火を放って焼き殺そうとしたのである。
このとき真澄の珠から大風が起こり、潮満の珠から竜水がほとばしった。またたくまに八尋殿の火炎は打ち消された。また潮干の珠から猛火が噴出し、エデンの城は瞬く間に焼け落ちてしまった。
竹熊一派はヨルダン河を渡って遠く北方に逃れた。
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04 34 〔34〕
エデンの野で破れた竹熊一派は、堂山の峡谷に身を潜めた。竹熊はふたたび魔軍を招集し始め、シナイ山を攻撃することを企んだ。そして大虎彦に援軍を頼み、蒙古から数万の軍を集結した。
大八洲彦命は竹熊軍を掃討してシナイ山の厳の御魂を救おうと、少数の神軍を率いて出陣した。金勝要神は出陣を思いとどまるように命に懇願した。それというのも、竜宮城内に身を潜める木常姫一派が、着々と謀計を進めていることを察知していたからである。
大八洲彦命は金勝要神の請いを容れて、出陣を思いとどまった。そこへ、大虎彦は大群を率いてシナイ山に攻めかかった。
厳の御魂は配下の神軍に命じて防戦に努めたが、衆寡敵し難く、陥落も間近と思われるほどになった。さらに天空からは、大自在天の部下の魔軍が現れて火弾を投下し、厳の御魂の神軍は窮地に陥った。
厳の御魂は鷹取、雁姫を急使として、竜宮城の金勝要神に援軍を要請した。
大八洲彦命は考えに考えた末、真澄の珠を鷹取、雁姫に託した。鷹取と雁姫は帰還し、真澄の珠を厳の御魂に奉った。厳の御魂は喜び勇んで珠を手に取り、珠を口にあてると、力をこめて敵軍に向かって息吹きの神業を行った。
すると魔軍はたちまちに壊走し、姿を消してしまった。シナイ山の神軍は隊伍を整えて堂々と無事に竜宮城に帰還することを得た。
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04 35 〔35〕
厳の御魂の大神はシナイ山で魔軍を破り、大八洲彦命は各地の山の戦闘で敵を破り、天教山で三個の神宝を得て竜宮城に帰還した。続いてエデンの園に割拠していた竹熊の魔軍を破った。
神界は一時的に平和に治まったが、魔軍は常に、三個の神宝を狙っていた。
そこで、艮の金神国常立尊は、山脈が十字型を作っている地球の中心・蓮華台上に登られ、頭上の冠に神気をこめて海上に投げた。
これが冠島となった。この島の各所から稲が豊かに実ったため、稲原(いばら)の冠島と呼ばれた。またの名を茨の冠と言う。また、竜宮島とも言う。
また、履いていた沓に神気を込めて投げると、沓島となった。沓島は一名、鬼門島と言う。
国常立尊は、厳の御魂・金勝要神に命じて、この二つの島に三個の神宝を隠させた。
潮満の珠は、厳の御魂である。「いづ」は泉の「いづ」である。泉のように清らかな神水が無限に湧出する神宝である。これをヨハネの御魂という。
潮干の珠は、瑞の御魂である。また、キリストの御魂という。「みづ」は「みいづの御魂」という意味である。みいづの御魂は、火の活動を万有に対して、無限に発射する。世界を清める活用がある。
稚姫君命、大八洲彦命、金勝要神は、三個の神宝を携帯して竜宮島に渡り、神殿を建てて納めた。潮満の珠は紅色であり、豊玉姫神という。また潮干の珠は純白であり、玉依姫神という。冠島は、海原彦神(綿津見神)を国魂として守護せしめた。
続いて、沓島に真澄の珠を納めた。国魂の神である、国の御柱神に守護せしめた。
いずれの宝も、世界の終末に際して、世界改造のために大神が御使用になる神宝である。これを使用する神業が、一輪の秘密である。
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04 36 〔36〕
国常立尊は邪神から守るために、冠島・沓島に三個の神宝を隠したのだが、実は島には珠の体のみを納めておき、珠の精霊はシナイ山の山頂へ、誰にも知らせずに隠しておいたのである。これが一厘の仕組といわれる神示である。
武熊別は、三個の珠が冠島・沓島に隠されたことを知ってからよからぬ心を起こし、竹熊とはかって、両島を襲撃して神宝を奪おうとした。
攻め寄せる竹熊・武熊別の大軍に、両島の国魂神は迎撃するが旗色悪く、神宝の神力を使って敵を滅ぼそうとしたが、珠には何の力もなく、効果を発揮しなかった。これは、珠の霊を国祖がシナイ山に隠しておかれたからである。
国魂神は急を知らせる信書を、信天翁(あほうどり)の足にくくりつけて、竜宮島に送った。信書を受け取った金勝要神は、金幣で邪気を祓い、信天翁の背に金幣の一片を括り付けて送り返した。
すると信天翁は金の鳶と化して、空から魔軍に火弾の雨を降らし、敵を悩ませた。また天の雲間から高津神が現れて旋風を巻き起こし、魔軍の艦隊を沈没させた。
国常立尊はこの戦闘の様を見て、魔軍を憐れに思い、神言を奏上した。すると天は晴れ渡り、沈没した魔軍は浮かび上がって救われた。
敵味方を問わず、国常立尊の大慈大悲の御心に感謝の念を抱かない神人はなかった。
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05 00 - 本文
05 37 〔37〕
天使・稚姫君命、大八洲彦命、金勝要神らは、諸神を引き連れて、天の安河の源に上った。この山の水上には、シオンの霊山が雲をつくほど高くそびえていた。
シオンの山の意義とは、浄行日域と言って、天男天女が常に来て音楽を奏で、舞曲を演じる、という意味である。
山の頂には広い高原があり、珍しい花が一年中咲き満ちている。また、さまざまな美味の果実が実っている安全境である。
この高原の中央に、高さ五十間、幅五十間の方形の堅固な岩石が据えられている。これは、国常立尊が天の御柱となって星辰を生み出したとき、最初に現れた星巌である。神業祈念のために、最初の一個を地上にとどめて、地上の国魂の守護として隠しておかれたのである。
天地が分かれた初めから、一週間ごとに十二柱の天人がこの山上に現れて遊楽するとき、この星巌を中心にして巡り、舞曲を演じる。そのときに天人の羽衣の袖にすり磨かれて、星巌の容積は自然に減じ、今は中心の玉だけになっていた。
玉は直径三尺の円球となっていた。ここまでになるのに、すでに天地の初めから幾億万年が経過していた。
稚姫君命は星巌に近づき、天人たちの功績を賞してそれぞれに宝を下した。星巌は地球に酷似していたが、大地の神霊である金勝要神は星巌を手に取って息吹の狭霧を吹きかけた。すると星巌は光沢を放射し始めた。
金勝要神は突然、山頂から星巌を天の安河へと投げ捨てた。神々は星巌の行方を追っていくと、星巌は滝に洗われて、金剛不壊の宝珠を化していた。金勝要神は竜体となってその玉をすくい上げると、稚姫君命に奉呈した。
このたまは顕国の御玉であり、表面は紫で、中心には赤・白・青の三つの宝玉が包まれているのが、外部から透けて見えるのである。
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05 38 〔38〕
一行は顕国の御玉を奉呈して竜宮城へ帰還し、三重の金殿に深く秘蔵した。この御玉は、ある尊貴な神の御精霊体である。
また、このときの従神であった高杉別、森鷹彦はシオンの滝の清泉を大神の命によって持ち帰り、竜宮城の真奈井に注いだ。この井の水は、黄金水といわれるようになった。
顕国の御玉は光の度を増して、あまりの光の徳のまばゆさに、直視するときは失明するほどであった。そこで国常立尊は、三重の金殿に深く、これを安置したのである。
三重の金殿は光を増して葦原の瑞穂国をくまなく照らし、金色の鳶が飛び回り、善神が集まって音楽を奏した。五六七の神政の様相を呈していた。
天の真奈井の清泉はにわかに金色に変じ、水の精が十二個の玉となってそれぞれ違った色をなり、地上に降下した。これを目ざとく見つけた十二の神司がこれを拾って、珍蔵した。これらの玉はそれぞれ、神変不可思議な力を持つものである。しかしながら、玉は十二個そろって神力を発揮するものであり、一つ欠けても用をなさないものであった。
さて、大神の慈悲によって冠島・沓島での敗戦から救われた竹熊は、元の邪神と化し、顕国の御玉を汚し曇らせようと画策していた。そしてまず、黄金水の十二の玉を奪ってその神力を得ようと計画した。
本文
05 39 〔39〕
竹熊はまず、白色の玉を持つ田依彦から玉を奪おうとしていた。田依彦の姉・草香姫は麗しい容貌を持っていた。草香姫は豆寅の妻であったが、魔子彦に思いを懸けていた。
竹熊は魔子彦に宝や美しい衣装を与えて、草香姫を誘惑するように命じた。草香姫は魔子彦への恋慕の情に、病に伏せることになった。
田依彦は姉の病気を治そうとして苦慮していたが、魔子彦は、田依彦が秘蔵している白色の玉を草香姫に抱かせれば、病気が治る、という神夢をでっち上げた。姉の病気を治したい田依彦は、玉を姉に渡した。
魔子彦は見舞いを装って草香姫を訪れたため、草香姫の病はほとんど癒えてしまった。魔子彦は草香姫をだまして玉を渡させ、邸内の松の木から鳥船に乗って遁走してしまった。
竹熊は部下の大虎彦に命じて魔子彦を殺させ、玉を奪ってしまった。
本文
05 40 〔40〕
竹熊は次に、玉彦の持つ黒玉を狙った。玉彦は地位が低かったが名誉欲が強く、黒玉を得てから慢心を起こしていた。
竹熊は大八洲彦命の部下であった長彦をたぶらかし、黒玉を得ようとした。長彦は、玉彦が黒玉を得てから自分の命令に反抗するようになったことを、面白くなく思っていた。
竹熊の間者は、大八洲彦命の命令と偽って、「近頃慢心する玉彦から黒玉を奪い、汝が保有するように」と長彦を焚きつけた。
長彦は、玉彦が妻の坂姫の言うことなら何でも聞くことを知った。また、坂姫が舞曲が好きであることを知ると、竹熊の間者・鳥熊と計って自ら舞曲を会得し、舞曲を通じて坂姫と親友になってしまった。
あるとき坂姫は長彦・鳥熊と舞曲に興じているときに、舞曲の小道具として、黒色の玉を使わせてもらうよう、玉彦に懇願した。玉彦はやむなく黒色の玉を持ち出して舞曲に供した。
鳥熊は舞曲を演じる振りをして黒色の玉を奪って樹上に上ると、追ってきた長彦を蹴落として打ち殺した。長彦の死に玉彦・坂姫が驚き狼狽している間に、鳥熊は大虎彦の鳥船に乗って、その場を逃れてしまった。
そして大虎彦は鳥船から鳥熊を投げ殺すと、黒色の玉を奪って竹熊に献上した。
本文
05 41 〔41〕
竹熊は、残りの十個の玉を一挙に奪おうと画策した。まず、大八洲彦命の前に出て、涙とともに以前の罪を謝罪する振りをした。
大八洲彦命は竹熊の懺悔を憐れみ、これを許した。竹熊と大虎彦は新しい八尋殿を建てて祝宴を張り、大八洲彦命とその従神たちを歓待した。大八洲彦命が退席した後、黄金水の玉を持っている従神たちをたぶらかして、玉を一気に奪おうとしたのである。
竹熊とその従神たちは、偽の宝玉を出して自慢をし合い、大八洲彦命の従神たちを挑発した。杉生彦、猿彦はまんまと計略に乗って、おのおの持っていた黄金水の玉を取り出して自慢を始めた。
一方、高杉別、森鷹彦、鶴若、亀若、時彦らは、どれほど挑発されても、玉を出そうとはしなかった。
本文
05 42 〔42〕
挑発に乗って玉を取り出した五柱の神々と竹熊たちは、玉を取り出そうとしない竜宮城の五柱の神々を責め立てたが、高杉別、森鷹彦、鶴若、亀若、時彦らはどうしても挑発にのらなかった。
竹熊らは玉を出さない五柱の神々に虐待を加え始め、汚い虫や牛馬の糞尿を無理やり食わせた。しかし五柱の神々は拷問に屈せず、頑として玉の供出を拒否し、生命に変えても玉を離すことはない、と意思をあらわにした。
すると金色の烏が数限りなく現れて、五柱の神々を竹熊の館から救い出し、竜宮城へと連れ帰った。一方で怪鳥がまた数限りなく現れると砂礫の雨を降らせ、玉を竹熊に供出してしまった芳彦、神彦、倉高、杉生彦、猿彦の頭上を砕いて悶死させてしまった。
黄金水の玉は七個までが、竹熊の手に渡ってしまったのである。
本文
05 43 〔43〕
鶴若は赤色の玉を黄金水から得てより、信念強固となり、シオン山で多年の修行を重ねるようになった。そしてついに神通力を発揮し、鶴に変じて空を飛び、神界の天使となろうと行に励んでいた。
竹熊らは鶴若から神通力を奪って地上に落下させようと画策していた。
あるとき鶴若はアルタイ山で天女・鶴姫と出会い、夫婦の契りを結んだ。それとともに鶴若は飛翔の通力を失ってしまった。二人はアルタイ山の岩窟に住み、永の年月を送っていたが、年寄っても子供ができないのを寂しく思っていた。
竹熊の部下である鶴析姫は、二人の岩窟の前に鮮やかな色の玉と化した。二人はその餅のような玉を見ると、にわかに食べたくなって食べてしまった。するとにわかに情欲が起こり、鶴姫は妊娠して女の子を産んだ。二人は女の子を鶴子姫と名づけた。
鶴子姫は、黄金水の赤玉を欲しがって泣くようになった。鶴若と鶴姫は、赤玉を鶴子姫のおもちゃとして与えた。
鶴子姫は成長すると、ある日とつぜん黒竜となって玉を奪って逃げてしまった。鶴若・鶴姫は、鶴子姫が邪神の化身であったことを知り、赤玉を奪われたことを嘆いた。
本文
05 44 〔44〕
緑の玉を死守していた亀若は、竹熊の宴席で拷問にあい、それが元で健康を害して帰幽してしまった。妻の亀姫は悲しんで百日の間、喪に服した。
このとき、ガリラヤの海から異様な動物が現れ、美しい神人に化けると、亀若の喪を弔いにやってきた。これは高津彦という邪神である。神人に化けた高津彦の容貌は、亀若そっくりであった。驚く亀姫に高津彦は、自分は亀若の再生である、と騙して夫婦となってしまった。
あるとき、高津彦はにわかに病となり、床に伏してしまった。亀姫は悲しんで看病していたが、そこに竜宮城の神と名乗って、高倉彦という神人が見舞いに訪れた。高倉彦の容貌も亀若に酷似していた。
そして高倉彦は、自分は亀若の双子の兄弟だが、父母が世間をはばかって、今まで隠していたところ、亀若が病床にあると聞いて見舞いに訪れたのだ、と語った。そして、家宝の緑の玉こそ、亀若の病を癒す神宝である、と騙った。
亀姫が緑の玉を取り出して高台に安置するや否や、黒竜が玉を掴んで西方の天に去ってしまった。これまで夫亀若の再生と思っていた高津彦は大竜に変じ、また高倉彦はガリラヤのすっぽんに還元して、姿をくらましてしまった。
騙されたことを知った亀姫は悔しがり、その精魂は緑毛の亀となって竜宮海に飛び込んだ。
本文
05 45 〔45〕
時彦は黄金水の十二の玉が次々と邪神の手に落ちていくさまをみて、自ら所有する黄金の玉を保護しようと、ヒマラヤ山に立て籠もった。そして岩窟を掘って地中深くに玉を隠し、その上に神殿を建てて守っていた。
数年後、山中にときの声がするのを怪しんでみれば、大八洲彦命ら諸将が、軍勢を率いてデカタン高原に進軍中であった。山上より見れば、十二の輿に宝玉を乗せて進軍している。
時彦が部下に様子を見に行かせると、部下たちは大八洲彦命の軍容の壮大さを復命した。時彦はみろく神政の成就に遅れてはならじと、ただちにデカタン高原にはせ参じた。
するとおりしも、荘厳な宿営地にて、大八洲彦命は演説をしていた。曰く、みろく神政成就のために、ここデカタン高原を地の高天原と選定した。ついては、時彦の持っている黄金の玉が神政成就に必須の神宝である。もし時彦があってこの玉を奉納するならば、神界の殊勲者として天神に奏上し、我が地位を譲ろう、と。
これを聞いた時彦は名誉欲にかられて群神の中から名乗り出で、黄金の玉を献上した。大八洲彦命は黄金の玉を輿に納め、十二個の玉すべてが揃った祝いに、荘厳な祭典が催された。
すると天の一方に妖雲が起こり、雨が滝のように降り注いだ。神司たちは争って神輿の中から玉を取り出し、解散してしまった。荘厳な宿営地の宮殿は、いつしか荒涼たる原野と化していた。
時彦が驚いて輿の中に残っていた黄金の玉を取り出すと、見た目はまったく変わらなかったが、重量が軽い偽物にすりかえられていた。このとき天から『大馬鹿者!』というお叱りの叫びが聞こえた。
大八洲彦命の軍勢と見えたのは、邪神・武熊別の変身であった。
本文
05 46 〔46〕
竹熊、武熊別は黄金水の玉を十個まで手に入れたことで、残る二個はたやすいと祝宴を張っていた。
そこへ部下の鬼彦がやってきて、竜宮城の高杉別、森鷹彦が、残る二個の玉を献上に来た、と注進した。
竹熊は高杉別、森鷹彦を引見し、自分に神宝を献上に上がった理由を尋ねた。二神は、すでに十個の玉を奪った竹熊の神算に恐れをなして、降参に来たと理由を語った。
そして実際に二個の神宝を竹熊に献上すると、その光沢は本物のように見えたので、竹熊は歓喜した。高杉別、森鷹彦は、自分たちが献上する二個の玉はとりわけ穢れを嫌うので、厳重に箱に封印して奥殿に奉安し、いざというときのみ、取り出して使うように、と述べた。
これより高杉別、森鷹彦は竹熊の信任を得て、重く用いられるようになり、邪神軍の中で武熊別と並ぶほどの地位を得た。
しかし、二神が竹熊に献上した玉は偽者であって、森鷹彦の玉はすでに大八洲彦命に献上されており、高杉彦の玉は、部下の杉高に呑み込ませて、地中海の列島の島に守護神として封印していた。
杉高は島に岩窟を深く掘って玉を納め、その上にしるしの松を植えておいた。これが一つ島の一つ松と言われている。
本文
05 47 〔47〕
高杉別、森鷹彦が重用されるようになったことを、武熊別は面白からず思っていた。そして高杉別、森鷹彦を滅ぼそうと、ひそかにウラル山の鬼熊と通じた。
鬼熊は妻の鬼姫に策を授けて竜宮城に潜入させた。鬼姫は稚姫君命、大八洲彦命の信任を得るようになり、その結果、鬼熊は竜宮上への出入りを許されるようになった。
ところで、鬼熊夫婦には月彦という心の麗しい息子がいた。邪神夫婦にも、このような清らかな子が生まれることがあるのである。月彦は稚姫君命のお気に入りとなった。
稚姫君命は国常立尊の神命によって月彦、真倉彦を伴って沓島に渡り、魔軍鎮定の神業を行った。このとき秋津島根に邪竜・邪神軍が攻め寄せたが、神軍によって邪竜は殲滅された。
しかし地上にはびこる邪神軍は勢いが激しく、鎮定の目処が立たないままであった。地上の邪神軍は、実は鬼熊の部下のウラル山の悪霊たちであった。
竜宮城には、稚姫君命の留守として、大八洲彦命をはじめ、竹熊、高杉別、森鷹彦らも守りを固めていた。武熊別はこの好機に竹熊、高杉別、森鷹彦を滅ぼそうと、鬼熊夫婦に、大八洲彦命と竹熊が、ウラル山に侵攻して鬼熊を滅ぼす計画を練っている、と嘘の情報を流して、けしかけた。
鬼熊は怒って、まず邪神軍を竹熊のエデン城に向けて駆り、襲撃した。竹熊は竜宮城の守備についていたため、エデン城は簡単に鬼熊の手に落ちた。
本文
05 48 〔48〕
エデン城を奪取した鬼熊夫婦は、竜宮城の裏口からひそかに潜入した。そして、今度は病に伏せっている大八洲彦命を二人で襲撃した。
鬼熊夫婦が大八洲彦命の籠もる部屋を打ち破ろうとしているとき、竜宮城の諸神司が駆けつけて、二人を取り押さえた。そこへ竹熊が現れて、鬼熊に鉄槌を打ち下した。また、真澄姫と竜代姫は、鬼熊を茨の鞭で打ちすえた。
大八洲彦命は驚いて病床より立ち上がって部屋を出ると、この惨状に出くわした。そして怒って、鬼熊を打った無法者は誰だ、と詰問した。
鬼熊は自分を打った者が竹熊だとはわからなかったので、竜世姫、高杉別、虎彦の名を挙げたが、事件の目撃者である小島別が、竹熊の仕業であると証言した。
稚姫君命はそれを聞くと怒って、竹熊を根の国底の国に下そうとした。大八洲彦命は、このような不祥事が生じたのも、自分の不注意のせいであるので、代わりに自分を根底の国に落とすよう、涙ながらに嘆願した。稚姫君命は大八洲彦命の真心に感じ、この場はお咎めなしとした。
しかし鬼熊はこの負傷が原因で落命してしまった。鬼姫は竹熊の仕打ちを恨んで、武熊別と組んで弔い合戦を計画していた。また、鬼熊の怨霊は凝って、ウラル山の黒竜となった。
本文
05 49 〔49〕
竹熊は一度はお咎めなしとされたが、衆神人の手前、竜宮上への出入りは禁止されざることになった。居城であるエデン城に帰ろうにも、エデン城は鬼姫に占拠されていて帰れない。
また、高杉別、森鷹彦は竹熊に反抗するようになり、竜宮城の門扉を固く閉ざし、今までの竹熊の暴虐をののしる有様であった。
仕方なく竹熊は鬼城山に割拠する木常姫に救援を求めた。木常姫は竹熊を受け入れ、軍をエデン城に進めた。木常姫は雨を呼んでヨルダン河を氾濫させ、エデン城を水攻めにした。
鬼姫は旗色の悪さに、十個の黄金水の珠と二個の偽珠を持って、竜の姿に変じて城を脱出し、ウラル山目指して逃げていった。
そこへ国常立尊の命により、奇晴彦、村雲別は火竜となって鬼姫を取り囲み、前後左右から炎を吹いて攻め立てた。
鬼姫軍は力尽きて地上に落下し、大震動とともに長大な湖水が生じることになった。これがバイカル湖である。鬼姫はバイカル湖の黒竜と変じ、後には杵築姫となって竜宮上をつけ狙うことになった。
本文
05 50 〔50〕
鬼熊・鬼姫が竹熊との争いに敗れたことで、竜宮城はやや安静になった。国常立尊はこの功績により、稚姫君命と大八洲彦命に霊国天使の神位を授けた。
竹熊は高杉別、森鷹彦の裏切りを恨み、両神を滅ぼそうと考えたが、そのためには両神の上に立つ大八洲彦命を滅ぼそうと画策していたのである。
竹熊はエデン城を回復すると、木常姫軍と連携して、大八洲彦命を襲撃しようと計画をめぐらしていた。しかしこの計画は、猿飛彦・菊姫の密告により、大八洲彦命に伝えられた。
これを知った大八洲彦命は、竜宮城の守りを部下に固めさせると、高杉別、森鷹彦、時代彦らの神将を従えてシオン山に出発した。そして天神に竹熊の暴虐を奏上した。諸天神はこれを受けて、竹熊征伐の神策を定めた。
天上の天使・天明彦命は大八洲彦命に、危機一髪の場合は、天軍の応援があるだろう、と伝え、頭槌(くぶつち)の玉を授けた。玉を三個授けると、この精霊で魔軍を掃討するように、と神示を下して天に帰って行った。
そのとき、竹熊・木常姫連合軍は竜宮城を取り囲んでいたが、守備の神将たちの活躍によって攻めあぐんでいた。竹熊、木常姫は大八洲彦命がシオン山に居ることを知ると、軍を返してシオン山に攻め寄せた。
竹熊らは空中からシオン山の大八洲彦命に攻め寄せたが、命は頭槌の玉の一個を、魔軍に向かって投げつけた。すると玉は爆発して数万の黄竜となり、竹熊を取り囲んだ。力尽きた竹熊は十個の黄金水の玉とともに地上に落下した。
落下した竹熊が体勢を立て直そうとするところへ、金勝要神、未姫命の二柱が天の逆鉾を竹熊に向かって投げつけた。二つの逆鉾は竹熊を貫き、竹熊はその場に息絶えた。
竹熊の血はあふれて湖水となった。これを死海という。竹熊の悪霊は棒振彦となって、大八洲彦命を執念深く悩ますことになる。竹熊の部下たちも死海の怨霊となって世界に広がり、水死の災厄をもたらし続けている。
一方、大八洲彦命はさらに頭槌の玉を木常姫軍に投げつけると、玉の爆発の神威に打たれた魔軍は墜落して最期を遂げた。木常姫の悪霊はのちに高虎姫となって、棒振彦とともに、大八洲彦命を悩ますことになる。
竹熊の所持していた黄金水の十個の玉と、二個の偽玉は死海に沈んだ。そして竹熊の血に汚されて悪霊と化し、雲気となって舞い上ると世界各地に墜落して邪気を散布した。これらの玉が散布した地は、もっとも国魂の悪しき土地となってしまった。
天の一方から村雲を押し開いて天使の群れが幾百千となく地上に下ってくるのが見えた。するとたちまち瑞月の身体は極寒を感じた。目を開けると、身は高熊山の岩窟の前に、寒風にさらされて坐していた。
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霊界物語は百二十巻を予定している。
しかし、刀剣は鯉口一寸を開けて見れば優劣がわかり、蛇は三寸も見れば全体の見当がつくように、冒頭の一篇を十分に玩味して腹に畳み込めば、神幽現三界の経緯がわかり、すべての精神が明瞭に理解できる。
最奥天国の天人になると、知恵正覚がたいへんに勝っているので、簡単な一、二言によって、深遠微妙な大真理を悟ることができるのである。
まだ霊性が第一天国天人の境域に達していない人たちのために、神意により、このように長い物語を著述することになったのである。
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