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文献名1霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻
文献名2第2篇 縁三寵望よみ(新仮名遣い)えんさんちょうぼう
文献名3第8章 放棄〔1416〕よみ(新仮名遣い)ほうき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじアヅモスは炊事場に戻ると、お民に小言を言い始めた。アヅモスとお民は口げんかになった。お民はフエルにも矛先を向け、柄杓を水に汲んで二人にぶっかけた。アヅモスとフエルは鉄拳を振るってお民を叩きつけた。お民の悲鳴を聞いて、番頭の一人・アーシスが走り来たり、お民からアヅモスを引き離した。フエルは逃げてしまった。アヅモスはアーシスを箒で叩きつけて、逃げてしまった。アーシスは、お民の態度をたしなめて注意を与えた。アーシスはふと、お民に素性を尋ねた。お民は自分の母がビクトリヤ城に奉公に行っていた間に刹帝利のお手がかかって生まれたのだ、と明かした。一方アーシスも、自分は左守キュービットの落とし子だと明かした。二人は出生の秘密を明かしたからには夫婦となろうと言いあった。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月03日(旧01月16日) 口述場所竜宮館 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年3月30日 愛善世界社版99頁 八幡書店版第10輯 69頁 修補版 校定版101頁 普及版42頁 初版 ページ備考
OBC rm5508
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本文  アヅモスはフエルと共に炊事場に帰り、下女のお民を捉まへてそろそろ小言を云ひ初めた。
アヅモス『オイ、お民、貴様が確りしないものだから大変な恥を掻いたぢやないか。何の為に炊事の御用をして居るのだ。女と云ふものは飯焚きが肝腎だ。折角の珍客さまに灰まぶれの飯を食はさうとしたぢやないか、ちと心得ないと当家には置く事は出来ぬぞ』
お民『アヅモスの番頭さま、さう注文通に御飯が焚けるものぢやありませぬよ、今日の日天様でも照つたり曇つたり遊ばすぢやありませぬか、…………

 朝夕の飯さへこわし柔かし
  兎角ままにはならぬ世の中……

と云ふ歌さへあるぢやありませぬか。さう小言を仰有ると此方の方から尻をからげて「左様なら」と出かけませうか。此頃は彼方や此方に沢山の工場が出来て女は払底ですよ。こんな月給の安い下女になるものは滅多にありませぬよ。私が此家の下女に来て上げたのは、恩恵的に社会奉仕の一端だと思うて来て居るのですよ。万公別と云ひ、お前さまと云ひ全然女の腐つた様な男だな。女の事を構ふ腰抜けは目なつと噛んで死んだがよろしいわいなア、これでも家政学校を卒業したシヤンですからねえ、ヘン余り構うて貰ひますまいかい』
アヅモス『偉さうに云うて居るが、今朝の料理の仕方は一体何だ。あんな加減の悪いものが食へると思ふか、偉さうに云ふない』
お民『食へなけりや食はいでもよいぢやないか。お前達は料理法を知らないものだからゴテゴテ云ふのだらう、下司口だからなア。松魚節の煮汁か、昆布の煮汁か、雑魚の煮汁か、味の素を使つたか弁別のつかないやうな下司口が、料理の小言を云ふ資格がありますか』
アヅモス『偉さうに云ふない、何だその風は、のめのめと売女の出来損い見たやうな風をしやがつて、そんな事で立派な料理が出来ると思ふか。抑料理に取りかかるには襷をかけるか、エプロンを着けるかして身仕度をきちんとして髪の毛もバラバラせぬやうに、そして苔の生えたやうな手を、曹達ででも洗つて清潔にしなければ、折角の御馳走に黴菌が伝染るぢやないか。そして米を磨ぐにも砂を注意して取るのだ、クレクレと揺つて居ると砂は底にイサルから容易なものだ。今朝のやうに灰や砂の混つた飯は誰だつて食はれぬぢやないか。さうして洗ふにもお米を砕かないやうにして、水が澄みきり白水がないとこ迄洗ふのだぞ』
お民『エエ八釜しい番頭ぢやな。お前さまは何処でボーイでもやつて居たのかな、好うこせこせと釜の下までゴテづく吝嗇坊だなア』
アヅモス『別に構ひたい事は無いけれど、余り貴様が分らぬから、一応料理法を教へて置くのだ。総て小鳥や魚を串にさして焼く時は火を遠くし、そして強火にした方が、美味しう焼けるものだ。魚は身の方から、小鳥は皮の方から焼くのだよ。昔から魚身鳥皮といふからなア、充分焼いてから裏がへさないと不味なる。さうして網や串の焼けた後で肉を載せるのだ。それから煮る時には醤油や水を十分煮立たして置いて、其後に入れないと甘い汁が出て仕舞ふのだ。野菜は真青に茹るには湯に塩を少し入れて蓋をせずに茹ると其儘の色を保つて居る。さうして茹つたら直冷たい水に入れるのだ。牛蒡や、蕗や、筍や、百合根等の灰汁の強いものは一たん湯掻いてから煮くのだ。さうして使うた道具はいつも定つた場所へキチンと置いて置くのだ、清潔に磨いて元の所へちやんと戻して置かぬとまさかの時に間に合はぬぞ。棚の上に塵が溜つて居るか居らぬかそれも考へて網や串や、薄鍋を置いて置くのだ。そして余つた食物は蠅不入に入れるか、布巾をかけて置くのだぞ』
お民『エエ矢釜しい、お前さまは土方の飯焚きでも仕て居たのだらう。余り喋るとお里が見えますぞや』
アヅモス『これやお民、土方の飯焚きとは何だ。女と思うて容赦をすれば何を吐すか分つたものぢやない、不調法しておきやがつて何を口答へをするのぢや、これでも一家の総理大臣だぞ』
お民『ホホホホ。総理大臣なんて尻が呆れますわい。当家の総理大臣はシーナさまぢやありませぬか、お前さまは二の番頭だ。そこらの隅くたを掃除大臣だ。ごたごた云はずと箒なともつて次の間を掃いて来なさい。万公山が破裂して大変な灰が降つて居ますぞよ。箒を使つたらチヤンと釘にかけて置くのですよ。其処辺に立てて置くと箒の先がサツパリ薙刀のやうになつて仕舞ひますぞや。そしてハタキは手首を下げて、天井裏から障子の棧と上から下へパタパタとはたくのですよ。どうしても動かせない道具は被物をしておいて隅から掃いて来るのです。そして畳の目に逆らうと、塵埃が皆畳の目に滲んで仕舞ひますよ。箒の先を跳ねんやうにしてソツソツと掃くのですよ、それが済んだら椽側の掃除をしなさい。雑巾を緩う堅う絞つて、板の目なりに力を入れて拭くのだよ。角の所は雑巾を三角にして拭けば綺麗になりますわ。夫からニス、漆や、桧の柱は乾布巾で念入れに拭くのですよ。きつと濡れた雑巾で拭いてはなりませぬぞえ』
アヅモス『これお民、何だ下女の癖に番頭に指揮すると云ふ事があるか』
お民『ヘン私が下女なら、お前は下男ぢや、余り偉さうに云うて貰ひますまいか。これこれフエルさま お前が灰撒の発頭人だ。何をグヅグヅして居るのだ、早くアヅモスの下男と一緒に掃除をしなさらぬかいなア』
フエル『さう矢釜しゆ云ふない。俺だつて今朝迄庫の中へ罪人同様突込まれて居たのだから、些とは休養しなければやりきれぬぢやないか』
 お民は、
『エエこの女郎男の腰抜奴』
と云ふより早く柄杓に水を汲んで二人にぶツかけた。アヅモス、フエルは真赤になつて、
『これやお民、馬鹿にしやがるな、これを喰へ』
と双方から鉄拳を振つて一人の女を叩き付けて居る。お民は荒男二人に叩きつけられ、悲鳴を上げて『人殺ー人殺ー』と叫び出した。此声に驚いてアーシスは走り来り、いきなりアヅモスの首に手拭ひを後からパツと引つかけグツと引き倒した。フエルはこの権幕に驚いて裏口から細くなつて逃げ出しけり。
お民『アーシスさま好う来て下さいました。此奴偉さうに云やがつて仕方がないので水をかけてやりましたら、男らしうもない、女一人に二人の荒男が鉄拳を振つて喧嘩を買ひに来よつたのですよ』
アーシス『本当に無茶の事をする男ですね。オイ、アヅモス何だ、下女を捉まへて余り大人気ないぢやないか』
アヅモス『エーチヨツ、横合から飛んで来やがつてちよつかいを出しやがるものだから、折角の折檻がワヤになつて仕舞つた。コリヤ、アーシス、俺の喉を締めてどうするのだ、これ見よ、痕がついて居るぢやないか』
アーシス『喧嘩の結末がついたらそれでよいぢやないか。アー偉い畳中が灰だらけだ。ちと箒なと持つて其処辺中を掃除して来い。これだけお客さまで忙しいのに、女を相手にして居る所かい』
アヅモス『此奴もお民が感染したと見えて箒持て箒持てと吐しやがるな。箒に憚りさまだ』
アーシス『貴様は何時もほうきの守だといつて威張つて居たぢやないか。箒持つのは貴様の性に合うて居るわ。サア早く掃いたり掃いたり』
 アヅモスは庭箒を取るより早く、アーシスの頭を目蒐けて、
アヅモス『コリヤ、伯耆の守さまが、貴様の頭を播磨の守さまだ』
と云ひ乍らピシヤピシヤと撲りつけ尻に帆をかけて此場を逃げ去つた。アーシスは怒つてアヅモスの後を追つ駆けようとするのを、お民はグツと抱き止め声を慄はして、
お民『もしもし貴方、一寸待つて下さいませ、これだけ沢山のお客さまでお取り込みでもあり、病人さまもあるのに、番頭同士が喧嘩なさつては家の親方に済みませぬ。又スガールさまやスミエルさまの病気に障るといけませぬからなア』
アーシス『さうだと云つて此儘にする訳には行かぬぢやないか、後の為にならぬからなア』
お民『まアまア今日は辛抱して下さいませ、親方や娘さまが心配なさいますからな』
アーシス『ウンそれもさうだ。そんならお前の意見に従つて今日は忘れる事にせう。併しお前も此家へ来たらチツと言葉を改めて呉れぬと困るよ。御主人様を親方と云つたり、お嬢様の名を呼んだりすると云ふ事があるか』
お民『そんなら何と云つたらよいのですか』
アーシス『お上の方をお呼びするには御主人様を旦那様と云ふのだ。奥様はお部屋様とか奥様とか云つてよい。さうして御老人は御隠居様とか、大旦那様とか申上るのだよ。男のお子様なれば坊様、女のお子はお嬢様、或は坊ちやま、お嬢さまなど云つたらよい。二人以上の時は大きな坊ちやま、小さいお嬢様と云ふのだ。そして自分の事は私と云ひ、ウチだとか、アテだとか、ワタシなどは見つともないから云はぬがいい。さうして受け答へはヘエなんと云つてはいけない、ハイと云ふのだよ。朝起きたらお上へ御挨拶をするのに「お早う厶います」と云ひ、晩は「お寝み遊ばせ」、外出の時には「行つて参ります」、自分の用事で外出する時は「一寸やつて頂きます」と云ふのだ。帰宅の時は「唯今帰りました」、御飯の時は「頂きます」とか、「頂戴致します」とか云ふのだ。そして旦那様の外出の時は「行つていらつしやいませ」、お帰りになつた時には「お帰り遊ばしませ」と、かう叮嚀に云ふのだよ。総て言葉使はハツキリと叮嚀にさうして柔しみのあるやうに注意するのだ。使に往つて来たら、必ず直様復命しなくてはならない。後から序に申上ますと云ふやうな懶惰事をやつて居ると何時の間にか肝腎の用を忘れて仕舞ふからなア』
お民『何とまア此処の内の男衆は俄旦那様を初め、誰人も彼れも女みたやうな事を云ふ人が集つたものだ、オホホホホ、これで私も大分に勉強を致しました』
アーシス『お民さま、お前はどこともなしに下女に似合はぬ垢抜がして居るが、実際は何処から来たのだ。一寸聞かして貰ひ度いものだな』
お民『私はビクの城下に生れた者で厶いますが、一寸様子があつて親の名を名乗る事が出来ないのですよ』
アーシス『ウンさうすると父なし子だな』
お民『まアそんなものでせう。併し父親なしに出来る子は広い世界に一人もありますまいから何処かにあるでせう』
アーシス『お前の父親と云ふのは一体誰だ』
お民『私は血沼の村の卓助と云ふ人に育てられた者ですが、私のお父さまは立派な方だと云ふ事です。私の母が奉公に行つて居つて腹が膨れ、奥様が八釜しいので父が金をつけて卓助の家にやつたのださうですが、養家の両親も既に亡くなつて仕舞ひ、只の一人ぼつちで仕方がないので其処辺中を奉公し歩き、二三日前に此処に雇はれたのです』
アーシス『実の事は俺もビクトリヤ城下の生れだが、そいつは妙だなア』
お民『ヘエ貴方もビクトリヤ城下ですか、さうしてお父さまは何と云ふ方です』
アーシス『これは秘密だから云はれないのだが、人に云はなければ知らしてやらう。俺も実はこの村へ、そつと里子にやられたのだ。俺の父といふのは左守の司のキユービツトと云ふお方だ。何でも下女との中に俺が生れたので、藁の上から此村の首陀の家へやつて仕舞つたと云ふ事だ。どうかして一遍遇ひたいのだけれど、名乗る訳にもゆかず困つたものだよ。さうして一体お前は誰の子だい』
お民『私のお母さまは皐月と云ひました。ビクトリヤ城内へ御奉公に上つて居る時、刹帝利様のお手が掛かつて腹が膨れ、それが為にそつと卓助の家へ下されたのださうです。こんな事云つて貰うと私の命が無くなりますから、どうぞ秘密に頼みますよ』
アーシス『成程道理でどこともなしに気品の高い所がある。ヤア恐れ入りました』
お民『斯う双方から何事も打ち合けた以上は、一層の事貴方と夫婦になつたらどうでせう、さうすれば互に秘密が守れますからなア』
アーシス『そりや有難いが何だか勿体無いやうな気がしてならないわ、世が世ならお前は立派な王女様だ。私は臣の身分だからなア』
お民『そんな斟酌が要りますか、サア手つ取り早く相談を定めやうぢやありませぬか』
 斯く二人が話して居る次の間に何人とも知れず足音がスウスウと次第に細く消えてゆく。これはアヅモスが二人の話を立ち聞きして居たのである。
(大正一二・三・三 旧一・一六 於竜宮館 加藤明子録)
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