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文献名1座談会
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3出口王仁三郎氏に物を訊く座談会よみ(新仮名遣い)
著者
概要
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タグ データ凡例 データ最終更新日2018-03-17 01:54:38
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於 天恩郷 瑞月庵

   日印通商断交

【記者】 今夕は日印通商断交問題と国際経済会議について、御伺い致したいと思いますが、日印通商が断交に決したのですけれど、日本は印度を断念しなければならないでしょうか?
【出口】 断念せんでもいい、一時的の現象や、とても長く続くもんじゃない。
【記者】 政府当局者は外交的解決に期待しておりますが、どんなもんでしょうか?
【出口】 外交的に幾分は、やらんならんけれど、放っといても、いつまでもよう耐えせん。それは印度の方から、通商して来なならなくなって来る。これは英国が、尻を押していると思うなア。
【記者】 そういう事からして、印度の独立運動が、起こりはしないでしょうか、印度の農民は日印通商断交によって、二重の大打撃をこうむるといわれております。
【出口】 そうやさかい、いつまでも続きやせん。慌てる必要はない、大勢は放っといても行ける。

   西蔵の独立

【出口】 それから西蔵が独立運動をやっているやろ、あれもダライ喇嘛の坊主が英国から尻押しをされて、やっているのだ。

   国際経済会議

【記者】 六月十二日から開かれる国際経済会議は、新聞によりますと、第一に、働きたくても仕事がない人が、世界で三千万人は下らない。
 第二には、生産しても、算盤に合わないから、資本が機械や工場の形で眠っている。
 第三には、商品は買い手がない為に、倉庫の中で欠伸をしている。
 人が空しく坐し、資本が眠り、商品が倉で欠伸をしておれば、国民の所得は減るほかはない。
 この不況魔を、どうかして追い払わなければならないという目的で、国際経済会議が開かれるに至った、と出ておりますが、こういう事は、この会議でどういう風に、どん辺まで、解決が出来るものでしょうか?
【出口】 それは出来ないね、言うべくして、行われない。頭から改良せな駄目や。
【記者】 どういう風に改良するのでしょうか?
【出口】 各自に覚醒せないかん。みんな、なまくらして、人の物を食ってやろうと、考えている。そういう一般の潮流になっているから、働かなんだら食われん、何なとせないかんということを自覚させないかん。遊んで食うというのが、そもそも間違っている。
 今の世の中は、遊んで食ってるのが多い。日本国民八千万全部が、上下一致して働けば、毎日一時間で、仕事は無くなる。それでも収入があって立派に食って行ける。今は働く者と働かぬ者がある。

   著述が一番の労働

【出口】 しかし、労働だけが働く事のように思うが、筆を採って働くもの、新聞やとか、雑誌を出すもの、或いは本を著述する者が、一番の労働や。
 ワシは一切の労働をして来た。百姓もやれば、車引きにも行ったし、丁稚もすれば、人の雇いにも行ったし、何から何まで、労働という労働はみな、した。その中には雪の降る寒い日や、夏の暑い最中には、随分苦しかったが、晩に戻って来て、風呂に入ると、すっかり癒る。しかし物を考えたり、著述するくらい、頭を疲らすものはない。一晩くらい寝たかて頭が癒らへん。一番の労働は、文筆に親しむものだ。
 それやから絵描きや小説家が金をなんぼ出しても、書かんと遊んでおったり、芸者に呆けたりして、一冊を拵える。普通やったら、そうせな出来やせん。
 他の仕事やったら出来る。労働なら、毎日時間を決めて、やるから楽だ。
 それから大臣とか、ああいう役は、並大抵の労働ではないそうだ。ワシはお鯉さん(安藤照子女史)に聞いたが、桂さんが「ワシはもう死ぬ」と言われたほどや。
 総理大臣したら、寿命が縮まるそうや。面会ばっかりで、新聞読む間もない。それをせなんだら、何とかかんとか、悪く言われるから、とてもでないそうだ。また元老の機嫌やら、貴族院議員の機嫌も取らんならんし、閣僚や、新聞記者も操縦せんならん。そのほか百般の事が各所から出て来る。
 新聞読む間も無いほど忙しいんだから、頭がグンニャリなる。
 あのくらい苦しい事はないそうだ。大隈さんが、百二十五まで生きると言ったが、あれは取り消したやろ。
 総理大臣になったから、取り消さないかん、と言って取り消したのや。
 責任が重いから、一番苦しいのや。
 皆が一生懸命、仕事をしたら、一日に一時間働いたら、楽に食うて行けるのだ。現在では、八時間労働やとか、六時間労働やとか言うているけれど、そんなに働く人は少ない。八時間、時間を潰しても、働きやせん。八時間のうち、二時間以上休息している。ワシらの若い時は、十四時間も十五時間も働いた。
 昔はそれで、一年中の百姓の収入を平均すると、家内五人働いて、一日八厘になっている。今でも十銭にはならん。なんぼ働いても、五人家内で、十銭にならん。それやのに、今の百姓は、贅沢な事をやるからいかんのだ。
 ワシらは、麦と菜っ葉と、米をちょぼっと入れて食っとった。それも、人間の食うようなものは、食っておらなんだ。
 今の百姓は、俵代は取るし、水が乾いて田が旱魃したらと言うてまた日当を取る。そういう具合に、今では、大分ぼろいが、それでも一日十銭にならんのやから、しれたもんや。
 自分らの若い時にはとても酷いもんやった。

   教育が根本

【記者】 そうすると、各自が覚醒するよりしょうがない訳でございますか?
【出口】 みんなが、自覚せないかん。日本の根本経済政策を実行したら、何でもないけれども、それには、頭から治して行かなあかん。
 それをやったら、金は何ほどでも出来るけれども、今の人間は、冥加という事を、ちょっとも知らんからいかん。月日と土の恩を知れというが、それを知らない者ばかりだ。
 月日と土の御恩を本当に体得するもんでなかったら、経済は立て直らへん。
【記者】 各自が自覚して、月日と土の御恩が解って来れば、経済組織は自然に直るでしょうか?
【出口】 直っては来るが、教育から変えてしまわなければいかん。
 教育が根本問題や。教育さえ良けりゃ、政治も自然に直って来る。人心が変わって来れば、政治はまるで玩具みたようなもんや。人心が悪いから善い政治を実行しても、効果が上がって来ない。誰が出たかてあかん。根本問題は、矢張り、天地の御恩を知るのが一番だ。天地の冥加を知らなんだら、善い政治は出来やせん。

   経済封鎖

【記者】 国際経済会議を素人の考えで──人間的に考えますと、日本いじめのように思いますが……
【出口】 日本いじめやが、日本は困りゃせん。
 しかし、一遍困らして貰う方がいい。
 物が多過ぎて贅沢になり過ぎているから。
 しかし経済封鎖になって、着物や何も来んようになっても、今までのものでつぎしても、どないしてでも二十年やそこらはやって行ける。
 だが向こうが、とても、そんなに耐える気遣いはない。
 不景気やとか、何とかいうけれども、毎年稲が一杯に出来る。三百六十五日を米と粟とで、生命をつないでおったらいいのや。
 だが上流社会や、大きな商人が困るが、細民にはかえってよい。
 皆がそうなって来たら愚痴は言わん。二十年ぐらい綿布一つ、毛布一つ来んかって困らへん。いっそ二十年くらい経済封鎖してくれて、何にも来ない方がワシやよいと思う。
【記者】 経済封鎖は結局あるんでしょうか?
【出口】 あってもこたへん。大きな商人が、銭儲けが出来んくらいで、我々はちょっとも困らない。日本は自給自足が出来る。外国には、ちょっとも世話にならんでも立派に行ける。あの広い満州国と手を握っているんやから、生命をつなぐだけのものは、なんぼでもあるんやから。
【記者】 国際経済会議が導火線となって、世界と戦うような問題は起こらないでしょうか?
【出口】 いずれ、どうなるか分からんが、戦う事は決まっている。重爆撃機、軽爆撃機というものを、どこやかって、何のために造っているのや?
 国民は不景気で苦しんでいるが、それがあるために、互いに猜疑心を持って、造っているではないか?
 兎に角、結果は日清日露戦争でも、つまり国家経済の戦争になっている。
 凡てが生活問題からや。みなそうや。経済問題がなかったら、戦争は起こっておらん。普通人同志でも、矢張り金からや。
 飲食店なんかによく、
  貸して不仲となるよりも、いつもニコニコ笑う現金
という事が書いてあるやろ。あいつと同じ事や。
【記者】 決裂になったとすれば──新聞では、それから世界の大戦になる、と言うておりますが……
【出口】 国際連盟みたいなもんじゃ。あれでも何でもなかった。それでまたやって来だしたのや。何なと言うて、日本を困らそうとしているのだ。日本は経済封鎖されても、天産自給が出来るんやから、足らなんだら、満州国でやったらいいんや。日本はまだなんぼでも、拓く余地がある。
 北海道なんか、二割より拓けておらん。あと八分は遊んでいる。
 昔は政府が山を拓け、と言うて金をくれたが、金を貰うておいて、木だけ売って、後は放かしてしまう。
 それで今ではなかなか、政府が金をくれんのや、なんせそういう日本人ばっかりやからな。

   本位貨幣

【記者】 土地本位になりますと、金はなくなるでしょうか?
【出口】 通用する為に、札がある。つまり古事記の上からいうと、仲哀天皇の御代に、神功皇后が三韓征伐を先にしようか、熊襲を先に討とうか、という事があった。
 その時の御神勅に「西方に国あり、これを先ず先にせよ、そうすれば熊襲の如きは戦わずして、従う」という御神勅があった。
 その時日本はまだ金銀為本でなかった。しかし西方の国は金銀為本の国である。
 吾今帰賜其国というのは、経綸するという事である。その国は金銀で治まらないから、日本の通りに、土地本位にするという、御言葉であった。
 しかし、その後にだんだんと外国の事を真似して、金銭が出来るようになった。これを使ってみると、非常に便利がいい、金銭を持っておったら豊年の時には米がウンと買える、そういうような具合で、よその国へ旅行するにはそれを持って行った。旅行するのには、食料なんか持って行けないから、その為に金を拵えた。それがとうとう、金本位になってしまった。日本も外国のようになったが、外国は上に立つ大統領が人間やから、そんな人間を信用する訳には行かないから、金というようなものをやったのだ。金なんか飾り物くらいにしかならず、腹が減っても食えるものではない。

   日本は外国と違う

【出口】 日本には、金より尊い皇室の御稜威というものがある。御稜威によって、札をなんぼ出されても、国民は喜んでこれを使う。外国では、そういう事は出来んが、日本は出来る。
 これは神勅だから、どうしてもそうなる。普天の下、率土の浜は、みな皇室のもんや。御神勅によって、皇室のものに決まっておる。皇室は、これを継承されておられるのだから、一旦これを全部皇室にお還しするのや。土地本位になるのやから、土地を奉還する。
 その土地が一千二百億円のものやったら、それだけの財産が皇室のものになる。皇室からは一千二百億円の札をお下げになるから、国民にそれだけの金が廻って来る。土地本位やから、国民がその土地を借りるのや。ワシは昔から、そう言っている。
 今でも、土地を国民が勝手に自分のもんやと思っているが、これはみな皇室のもんや。皇室のもんやから税金を払っているのだ。それやから、そういう方法にしたら、日本の中がうまく出来る。
 外国は金銀為本で困っているから、日本の札を用いたらいい。嫌なら、物々交換したらいいのや。それで内地だけに札を通用さして、よその国とは物々交換をしたらよい。
 世界には日本の札なら、どこでも通用するようになる。そうすれば外国の経済までが救われて来るのだ。
【記者】 不換紙幣を発行して、兌換するのですか?
【出口】 兌換はしてやらない。皇室に奉還するのやから、兌換とか不換という観念がなくなる。
 応挙が書いた絵でも、何万円の金の代わりに通用しているではないか。絵描きの描いたものでも、それだけの値打ちがあるんやから、これが皇室から出たものなら、どんなに尊いものか分からん。
 そうやから金持ちは一万円の札を額にして掛けておいたらよい、いつでもまた、使うと言うたら使えるんやから。
 外国では、そういう事は出来ん。
 日本は皇室の無限の御稜威があるから、出来るのだ、金銀には、限りがあるから駄目や。

   国教樹立

【記者】 そうなりますと、官吏や何かは、雇人という事になるのですか?
【出口】 雇人やない。皇室が御本家やから、我々は家族や。そうすれば、何も要らへん。煙草税も酒税も、取らないでもよい。用があったら汽車に乗ったらよい。一家族の制度になるんやが、タダで乗せるようになって来たら、またしょうがないから、安くしてくれるのだ、そう無茶苦茶に乗ったりする事は出来ん。
 それから自治体が出来て、働かん者には制裁を加える。また日本の国教というものが出来て、今までの宗教は自然に消滅する。国教を奉じない者は、何にも使わない事になる。
 国同の安達さんが、政府が金をやって買い上げると言っている。ワシの言う事と、ちょっと違うが、そこまで分かって来た。
 そうなったら国民は鼓腹撃壌や。働かな居れんようになる。金があると言うて、遊んだりする事は出来ん。
 そのためには教えが必要や。天地の冥加を知ったら、一人でに動かんならんようになって来る。
 法律でせんでも、根本問題はそうしたところにあるから、それまでに国民の教育をしっかりやらねばならぬ。

   価格の変動

【記者】 札の値段に変動はないでしょうか?
【出口】 それはない。国内だけで、外の影響を受けやせんから。
【記者】 一人で沢山貯蓄するようにならないでしょうか?
【出口】 自分が使うだけより、ためやせん。
 そして矢張り、身分相応にせんならん。誰も彼も同じという訳には行かない。
 百姓が要りもせん余計な、家を建てたりする事は出来ん。不必要なものを作ったら、自治体が承知せん。
 この間、ある代議士が来たから、言うてやったら、
「出口さんの経済説は、誰のよりも後へ引かん。私は初めて、こういう説を聞きました」
と言ってビックリしていた。
 古事記の上から言っても、言霊学の方から解しても、そうなると言うてやったら、「こういう経済学者は、世界中探してもない」と言って非常に喜んでいた。
【記者】 一時的に今しばらく、経済のゴタゴタしているのを押さえるために、統制経済ということが、盛んに言われておりますが、これは実現されましょう? どうでしょうか?
【出口】 言うているけれども、実行は出来ん。
 手も足も出んとこまで、行かな駄目や。
【記者】 では、今晩はこれくらいで失礼させて……
 どうもいろいろ、有り難うございました。
 (終)

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