文献名1大本教開祖御伝記
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名32-1よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ最終更新日2024-11-01 03:15:00
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大本教活歴史(二)
百済博士王仁
世界の文明は日進月歩底止する処を知らず、所謂物質的文明の壮年時代と化し去り、理科学上の新発明は恰も神秘の鍵を持て神門を開きたるが如く、社会は種々の方面に大々的競争の火焔を揚つつ偏屈ある道学者、哲学者等現はれ倫理上の学説は頻々として奇抜なる声を放ち来りて世俗を迷はせ、偽予言者、偽救主は各所に出現し多数人類を欺瞞し世人は其信拠する所を知らず。文明利器の交通機関は倍々完備し地球の表面は追次狭隘となり国土は接近し、衣食住は倍々贅沢に流れ、世界の各政府は形而下の学説のみを尊重し科学的智育の普及のみに焦慮し、博士学士等理論に生活する一種の動物は雲霞の如くに族生し、空理空論の旺盛なる今日の社会より甚だしきは無し。盲目千人のたとえに漏ぬ世俗は皆斯る物質的文明を謳歌しつつあり。是向後世界の惨憺たる滅亡を招致すべき大原因たるべし。凡て精神的文明の伴はざる物質的文明は最も恐怖戦慄すべきものにして決して謳歌す可きものにあらず。精神的文明の伴はざる物質的文明と徳義信仰とは相両立すべきものにあらず。人類は不完全なる病的智能のみ発達するひ従ひ徳義信仰とは益々浮薄となるのみ。
斯る人類の日に月に増加する程国家社会の為に恐るべきものは無し。今の時に当つて我天朝の臣民たるもの大に奮起して惟神の大道を天下に鼓吹し全世界を覚醒するにあらずんば国家社会の維持最困難にして、遼からず世界の滅亡を招かむこと火を睹るよりも明かならむ。吁天下の憂に先んじて憂ひ天下の覚醒に先んじて覚醒し世道人心の救済の為に身命を賭するの偉人出現せざる乎。
処世小訓に曰く、天下の憂は一国の民人が其の国家に対して無頓着なるより甚だしきは無し。即ち天下の憂は、天下の憂をうれふる者なきより甚だしきはなし。剛励なるケトーが羅馬人の腐敗を罵りし間は羅馬は未だ全く腐敗せざりし也。慷慨なるテモシニースが、亜雅市民の腑甲斐なきを叫びし際は亜雅の民政は未だ全く地に堕ちかりし也。所謂非国教徒の良心なるものが政治的勢力の一たる迄は、英国政界の光明は依然として赫々たるべき也。政界の紛擾決して意とするに足らず。恐るべきは波無く風無きと同時に生命なき也云々実に至言なる哉。
茲に大本教開祖は天下の腐敗を憂ひ抜山蓋世の勇を以て婦人の身の雄々しくも皇国古有の神教を再興し、以て皇室の尊厳を維持し国民の団結力を強固にし自主的思想を伸長し、以て細矛千足の国の民生を教へ導かせ給はむとして現はれ給ひぬ。古語に、国乱れて忠臣現はれ家貧ふして孝子出で天下道無くして聖人起る、と。宜なるかな、宗教界の偉人出口開祖の出顕されしも至仁至愛にして万物を守らせ給ふ天神天祖の厳の配剤なる可し。アア尊とからずや。
三千世界一時に開く梅の花、艮の金神の世に成りたぞよ 三千世界一時に開き
須弥山に腰を懸け鬼門の金神が守るぞよ
昔から此世の来るは知れて居る 絶対絶命の世に成りたぞよ
吁是れ開祖が開教の始に当りて大声呼号せられたる獅子吼なり。文辞の雄大にして細微に透徹せる、神意の幽玄不可測にして世情を観破したる、凡人の企て及ばざる所大本教の骨子は茲にあり。即ち警世教俗の本義、神の威力、神の慈愛等、数言にて尽されたりと謂ふ可し。
御照しは一体 七王も八王も王が在れば世界の苦説が絶えぬぞよ、世界中一つに丸めて一つの王で治める仕組が致してあるぞよ、日本は神国 かみの守る誠の親国ぞよ
大本教信条第五条の
我等は大教主の予言の如く、天に一つの太陽ありて万物を統べ給ふ如く、地にも亦一つの国王の顕はれて総ての国を治め給ふに至る事を信ず、とあるは右の聖旨に本づきしもの也。
本条の精神を略叙せんに、凡て秩序と統一は宇宙の理法にして森羅万象悉く秩序と統一を有す。例へば一家族は其家長に由りて統一せられ、一村は其村長によりて統一せられ、一郡は其郡長によりて統一せられ、一府県は其県府知事によりて統一せられ、内務行政は内務大臣に由て統一せられ、外交は外務大臣に由りて統一せらるるが如くに、一国家の総ての事は帝王又は大統領等に依りて統一せられ、天に一つの太陽ありて天体の運行を統一する如く地にも又一つの主権者に依りて統治せらるべきものたるは当然の勢なり。
然るに現今は一国家の統一ありと雖も世界には多数の帝王亦は大統領ありて互に領土を争ひつつあり。これ至粋至醇なる惟神の大道の未だ天下に行はれざるに職由せる不道理不自然の極なり。即ち天に一つの太陽ありて万物の中心となり、宇宙を遍照して統一するが如く、地上にも必ずや一人の義しき帝王の出顕して個々独立せる世界万国を惟神大本教の教理の下に総合統一せらるるべからず。亦た自然の大道は必ず茲に至るべき事を信ずるなり。これ皇祖天照大神を初め本教開祖の唱導し給へる万古不易の確言なり。斯る事実の出現は前途頗る遼遠なる論理にして容易の事にあらず。畢竟一の甘き空想に過ぎずとして一笑に付し去るものあらんも、是ぞ天下の大勢を知らざる愚者の見にして大なる誤想と謂ふ可し。見よ世界の実際は着々として此予言に近づきつつあるにあらずや。