文献名1二名日記
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名35月20日 於高松市紫雲閣よみ(新仮名遣い)
著者月の家(出口王仁三郎)
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データ最終更新日2018-08-19 19:29:12
ページ158
目次メモ
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本文
筆の花墨の実りの芳ばしく永久に栄ゆる紫雲閣かな。
柔肌の若葉の枝に日は刺して朝風清き紫雲閣かな。
紫雲閣若葉の風に吹かれつつ明光兼題選みけるかな。
年古りし庭の赤松翠して光目出度き朝日かがやく。
高松の産土神社へ両総務吾に代りて詣でけるかな。
声潜め揺り起こせども玉の家は旅の疲れに小揺ぎもせず。
玉の家の発熱を見て鎮魂を授くる間もなく笑顔見せけり。
更生の春を迎へて草木の芽ぐむが如く栄ゆる斯道。
新生の弥勒の春に相生の松の緑の色深きかな。
瑞々し二名の島に五つ御魂教伝へけり四国の空に。
明光誌和歌の追加と吾も亦てにはの合はぬ歌を詠みけり。
どうしても聞えぬ歌は詠者には気の毒ながら没とせしかな。
歌らしき歌のみ選れば百分の一にも足らぬ淋しき明光。
いそがしき儘に選者は出詠の歌の修正添削はせず。
どうしても歌にならない屑言葉惜し気もなしに打ち捨てにけり。
天地人秀逸歌の調を見て出詠されたし初心の雅友。
忙しき旅の空にて歌選れば肩凝り頭重くなりたり。
宇知麿ゆ御田村主事の病情や二代来亀の音信届けり。
歌日記十一日まで届きしと編輯部長ゆ報じ来にけり。
白石氏電話をかけて午後六時迎ひに参ると報らせ来にけり。
苦になりし和歌の選みも今日すみてホツト一息吐きにけるかな。
初夏の風庭のおもてにそよぎつつ陽はうららかに雨蛙なく。
青空を写したるかと思ふまで緑に包む初夏の山々。
空も海も山野も青くさえ渡る夏の世界の美はしきかな。
玻璃鉢に錦魚を生けて眺むれば糸長々と糞垂れ放てり。
松林背景とせし小照を白鳥支部長贈り来にけり。
○明光社第十九回
兼題 蛍
夕暮の川辺を縫ふて光り行く蛍の糸の長くもあるかな。
夕闇の野路に小供の声すなり早蛍火のもえ初めにけむ。
早苗振も済みて帰らん道の辺に闇を明かして飛ぶ蛍かな。
人通りさへなき寂しき畔路も蛍飛ぶ夜は賑はしきかな。
幼児につひせがまれて老の身も蛍狩らむと夜の野路辿る。
蚕豆の鞘黒ずみて小溝辺に闇を縫ひつつ蛍とび交ふ。
叢に身を忍びつつかすかなる光を放つ蛍の吾かな。
叢に身をこがしつつ世をなげく吾に似しかな沢の蛍火。
蛙なく田の面の稲を照らしつつ蛍飛び交ふ里の夕暮。
並松の小溝を通れば赤々と水草の根に蛍照る見ゆ。
金龍の池のおもても水底も蛍飛ぶ夜の美はしきかな。
おそ蛍三重の高殿とび越えて何処とも無く闇に消えたり。
葱の葉の筒にほたるをつめこみて川辺にささやく小供愛らし。
山鳩の若葉ふくみてなく夜半の川のおもてに蛍火賑はし。
水草の緑にもゆる川の辺に蛍燃えつつ夜を明すなり。
庭の面に盥を置きて湯をつかふ上に淋しく飛ぶ蛍かな。
亡国の光を放つ蛍火にさも似たるかな今の教は。
蛍火の弱き光を放ちつつ世人を闇に誘ふ曲道。
静なる並松川も蛍とぶ頃は人声賑はしくたつ。
水の面に蛍流るとよく見れば御空の星のうつれるなりけり。
十五夜の月照り栄えて蛍火の光はうすくぼかされにけり。
開け行く御代は蛍の名所も名のみ残りて電灯かがやく。
葱の葉の筒を手にして保津川に蛍狩せし去年をしのばゆ。
蓄積せる旅中の雑用も今日無事に片付き稍安心せしものか、俄に睡魔に襲はれ夢心地して半日を空しく送る。鈴木少年は小豆島に随航して帰り途、壇の浦の亡霊に悩まされ、発熱激しく寝汗をかきて臥床に呻吟せり。王仁是を聞くや直ちに寝床訪づれて鬼を追出しければ、忽ち元気快復して面上笑を湛るに至れり。
壇の浦恨みの鬼に憑依され打伏しにけり鈴木少年。
数歌を謡ひて鬼を追ひやれば鈴木少年笑ひ出したり。
曲神の猛り狂へる世の中は神より外に頼むもの無し。
最近の真如能光珍らしく吾手に届きて通読せしかな。
紫雲山 摺鉢山や亀命山何れも劣らぬ眺めなるかな。
玉蘭の梢は庭に拡がりて風孕みつつ上下に舞ふ。
一行の記念の為と保多織を十反買ひて頒ちけるかな。
十反の保多織買入れ代金は二十五円と九十銭なり。
分所長 支部長来たり新宣使任命の礼宣りて出で行く。
水打ちし庭の若葉に日の照りて落つる水玉水晶に似し。
苔の生す庭の伏石水打てば居間の内まで凉味漂ふ。
薄暗き部屋の角より昼も蚊の襲ひ来るこそ心地悪しけれ。
薔薇の花瓶にさしたる文机にもたれて今日の一日暮れけり。
梅の実は若葉の蔭に鈴生りて春の名残を留むる庭の面。
半日の休日利用し今日も亦二十八枚四半切書く。
徒然の余り今日も亦夕方よりたはむれ歌なぞ詠みて笑ふは吾のみならず、出雲の神も笑ひますらむ。
君思ふ心の空の五月暗なきつつ渡る時鳥かな。
瀬戸の海い渡り行けば美しき家守る汝の目におどるかも。
忙しき旅の身ながら朝夕にやさしき汝の目にうつるかな。
かほのよき人と朝夕かたる身も君居まさずて淋しかりけり。
吾妹子をしのびて寝ぬる春の夜の夢おどろかす家鶏鳥の声。
二名島愛媛朝夕ながむれど吾妹子ならねばせんすべもなき。
露の瞳紅の唇玉の声汝に逢ふたび胸はもえたつ。
瀬戸の海景色眺めて思ふかな妹とし見れば一入ならむと。
この景色家守る君に見せばやと思ふは吾のまことなりけり。
のろけ歌毎日聞かされやりきれぬなぞと岡やき初めだしたり。
吾妹子は天恩郷にありと聞きて吾たましひは亀岡に飛ぶ。
年頃の娘の前で恋の歌詠みて聞かせる馬鹿おやぢかな。
初めての国に旅してはじめての人に思はれうぬぼれはじめし。
吾恋ふる君の姿は世を救ふ聖観音の面に似しかな。
遠目より見たる美人も近よれば皺くちやだらけの赤ら顔なる。
ほれたよな顔して見せりや鼻高く美人ぶりだす馬鹿女かな。
暇あれば恋歌のみよむ吾こそは時候のせいかどうかしてゐる。
恋の歌あまり沢山こきすぎて尻のつばめの合はぬ吾かな。
歌と云へば第一恋を歌ふこそわが敷しまの道にぞありける。
八雲たつ出雲八重垣つまごみの歌敷島の栞なりけり。
引臼の様な妻をば持ち乍らこひのふなのと馬鹿らしきかな。
大空に星はまたたき風 死して静なる夜に妹思ふかな。
風吹けば妻をし思ひ雨降れば心わづらふ弱き吾かな。
たはむれによみし恋歌も疑ひの眼に見ればあやしかるらむ。
蚊のせまる机にもたれ吾恋歌しるし行く人気の毒なるかな。
のろけ歌書かされおならかがされて鼻もちならぬ吾ぞあほらし。
ふるふよな美人を見せて敵をばうたんと云へるよき人のあり。
とびきりの美人を見せて吾輩をとろかす人は悪魔なるらむ。
飛びついてふるひつくよなとびきりは夏の田の面に雨をよんでる。
満月が障子の穴からのぞき込み吾恋歌によだれ垂らせり。
目と目にて言葉を交し忍ぶ身も人目の関を越ゆるすべなし。