文献名1歌集・日記
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3花明山よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ最終更新日2025-12-24 12:58:17
ページ27
目次メモ
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本文
詩歌
五月の雨
出口瑞月(王仁)
楽しんで旅から帰れば草苺かげもかたちもなくなつてゐる
植ゑいたみした松の木が土になじんで春が来た
ひそやかに君がり通ふオートバイの爆音に何か心慰さまず
今日も松明草の花が机に光つて私の心をあかるみへ誘ふ
机の上で松明草の花が笑つて私の暗い心を明るみへ誘つてゆく
土砂降りの五月の雨に虫のやうな栗の花が梢に揺れてゐる
短歌月刊
第一部
ぢりぢりと焦げつく様な夏蝉の声聞くさへも汗滲み出づる
第二部
臨検と尖つた声に耳をさされ膝を直した独房の朝だ
窮屈な編笠一つかぶらされ予審廷に引き出されゆく朝の日葵だ
あけび
出羽の旅
堅田落雁(王仁)
青あらし蓬々と吹きて夏ながら衣手すずし出羽の国はら
鳥海の高嶺ゆおろす雪かぜにこの夏庭の木の葉そよぐも
越のたびやうやく終へつ風きよき出羽の国原くるま走らす
鳥海山横雲なびきわが汽車の窓吹く風の涼しくもあるか(遊佐駅にて)
並み立てる浜松の梢に青き海見えてすずしき福浦駅かな
家々のいらかに夕陽映えにつつさざ波しはむ女鹿の浦かな
ここだくも稚松苗を植ゑこみし石塊の丘になでしこの咲く
鳥海の山のかたちの変り行きて合歓の花咲く谷路涼しき
創作
湯ケ島遊記
粟津晴嵐(王仁)
幸多き今日の吾が身ぞ思ふこと一つもあらず温泉にひたる
浮き雲の空行く見つつ思ふかな消えてあとなき人の命を
くさまくら旅の温泉のたのしさよおもふがままに心遊ばす
ぬば玉の闇に真白くはえながらたぎち泡だつ狩野の流れの
空しかる心抱きて湯の宿にほととぎすきく今日の吾かも
馬も牛も湧き出づる湯に浸りゐて珍らしきかな湯ケ島の里
瀬々の音雷のごとひびかひてそばだつ谷の空にくもあり
願ふこと一つ無き身も湯ケ島の温泉の里は長く住みたき
蜿蜒と一すぢしろきやまあひの道つたひ来し湯ケ島の里
連山のいただき晴れて雲もなく風さわやけき湯ケ島の朝
来し方の事もおもはず行く末のゆめもおもはず温泉に遊ぶ
絽の羽織つけて川辺にたたずめば水の音さへ肌寒くして
青々と千引の岩にこけむしてかけひに引ける温泉あふるる
谷川に高く架けたるかけひよりゆまりの如く落つる温泉
山せまり川またせまる湯の宿に心広々と今日も暮れたり
狩野川の流れを見つつ湯にをれば釣竿かたげし人睨みゆく
一度は逢はまく欲りし君がりに時惜しみつつ訪ねけるかな
忘らえぬ夢となりけり池の辺に二人佇みカメラに入りし日
水甕
石山秋月(王仁)
草の葉の露をいのちとたのみつつ鳴く音も高き夏の山蝉
うつせみの殻を梢にのこしつつ露をちからに鳴きわたる虫
秋の日もはや近づきて夏蝉の鳴く音さびしき夕ぐれの山
むかつ山雨にけむりてはるけくも山郭公聞くゆふべかな
五月雨の野路をし行けばめづらしく耳にさえたり郭公のこゑ
まぐさ刈るをとめの袖に卯の花のにほふ山路や郭公なく
蒼穹
琉球に旅して歌へる
十和田勝景(王仁)
灯台の灯は追々ととほざかり四日月ひくく海面照らせり
浪の音ゆるる聞えて海風の窓吹く夜半ぞすずしかりけり
甲板に出でてひがしのうみ見れば八重山群島浪にかすめる
弓形に海を抱ける宮古湾の家居のさまはにぎはしく見ゆ
甲板に立ちて海の面ながむれば闇ふかくして咫尺弁ぜず
那覇港ちかく見えつつわたなかに風光きよき慶良間島浮く
あかぐろく海綿のごとき珊瑚岩もちてかためし琉球のしま
陸上をふりさけみれば緑濃き樹の間に赤き人家建つ見ゆ
足びきのやまの常磐木あをあをと朝日に映ゆる美しき島
浮城のならぶがごとく見ゆるかな岩にせかるる沖の白波
古見ケ嶽於茂登ケ嶽のみねたかくのぼる朝日の光新らし
大島の旅にて
碧瑠璃のそらとなみとにつつまれし大島山の朝つ日に映ゆ
十二夜の月はみそらにかがやきて於神の山の尾上明るし
竜神の岩にしらなみかみつきて南勝山にしら雨降るなり
吾妹
北陸の旅
三井晩鐘(王仁)
雨けむるおほうなばらの幕開けてわれにも見せよ越の立山
枝ぶりの良き松ケ枝に包まれて汀に立てる女岩すがしも
駒に鞭打ちて蒙古の朝風に旗挙げしたるすがたしのばゆ
紫の雲棚びきて佐渡ケ島に夕陽落ちゆくわが目のまへに
称へても称へつくせぬうるはしき佐渡の島根を包む夕雲
香蘭
下北半島
三国一峰(王仁)
ゆふかぜに尾花なびきて大空の月冴え渡る秋ぞさびしき
虫の声清く冴えたるこの夕べわがふる里の偲ばれにけり
朝凪ぎの海の面に陽は映えてしづけきなみに芦崎うかぶ
釜伏山朝日にあをく映えながら風凪ぎわたる陸奥湾の面
芦崎の松のなみ木の空とほく八甲田山のすがたかすめる
落葉松の林ながなが栄えつつ海の面見えぬまでになりけり
アララギ
玉川清風(王仁)
漕ぎかへる古君岬の釣舟の帆かげすずしきなつの夕ぐれ
足羽山藤島神社のおほまへに御国さかえの神祝を宣る
潮音
嵐山桜楓(王仁)
連山のなかに突き立つ愛宕山峰ひとところ黒雲わきたつ
あかつきの空白みくれば五位鷺の翼しづかにかけり行く見ゆ
とこなげの山のきは白く雲うごき暁ちかからん鵲のこゑ
田蛙のこゑ鳴きそろふなかにして一きはしるし雨蛙の声
あかつきの空に雨雲うごききて船井山々かくれけるかな
紅錦をちぎりし如き朝の雲わきてたなびきぬ愛宕の峡より
あかつきの空に眺むる山本の尾上の松はいつもうるはし
山の端に旭のぼりてとこなげの山は覗きぬ白雲のうへに
現代文芸
保津渓流(王仁)
炎天の街を重い荷車曳いて汗かいて行く俺の後から自動車の奴め泥ぶつかけて行く
○
一日を釣り暮したる川の鮎口にも入れず売る人わびしも
狩野川の速瀬に下りて魚釣りの糸垂るる人の面の日に焼けたるも
御形
愛宕山上の展望
比良暮雪(王仁)
保津の川帯のごとくに流れつつかがやきてみゆ愛宕山の上
わが植ゑし茘枝の苗の伸び立ちて赤々みのる籬すがしも
玉敷の京都の街を包む灯の砂金のごとく見へてゆれ居り
たそがれの山上にたてば寒々し山の峡より露せまり来ぬ
トマトーの匂ひ臭しといひゐしがいつしかわれも好きになり居り
かをりよく熟れしトマトー篭にして帰る夕庭に子等競ひよる
自然
蝦夷ケ島
瀬田橋影(王仁)
送らるる身にして寂しこのさ夜を新月冴えて汽笛ひびかふ
汽車に倦し船にも倦じ自動車に倦じはてにつ蝦夷の旅ゆく
箱風呂の温る湯にひたり身のすがし今日の疲れの消えぬ夕べに
青草の丘の上に猟人ゐて手真似して何か合図なしをり
垂乳根の親の牝馬のあと逐ひてその乳房吸ひつつつきゆく仔馬
北の海の果たてゆ寄する逆浪の打ちて砕くる山崎のはま
国縫ひて幾日したしむ蝦夷の地の山野の緑あたらしも眼に
ひつそりとひそまる中の沢の駅に白々と咲けるにべの花かも
夜となればこの真夏をも冷えびえと身に沁む風は蝦夷ケ国吹く
ねむごろの心をもてるこの国の道の人々うれしかりける
長旅のうさも忘らゆここに来てあした夕べの野山見飽かず
何処にも落葉松茂る蝦夷の国あした夕べの風はさやけし
桃李梅桜今一時にはなさかす蝦夷国原を縫ひてたびゆく
かがみなす大沼の面の島影にみのめづらしき銭波のうつ
新創作
記念日
大井清流(王仁)
大正の辛酉二月十二日嗚呼吾未決監に投げ込まれし記念日
京都府の使いの警部補笑顔つくり吾を欺き刑務所へ送りき
欺かれて大正日々新聞社長室よりそのまま梅田駅発車京都府庁に伴はる
この日こそ十年事件を作製したる○○部長の得意の絶頂
何事かもわからぬ儘に府庁より地裁判所へ自動車で送らる
すぐさまに京都の刑務所に送られて身体検査を厳重にさる
独房に二月の寒夜抛り込まれ寒さにふるへ一夜明かせし
寒夜の独房に一人座して権力者の無情と無智とを怒り且つ憐みたり
何一つやましき事なき吾ながら凡人に裁かるるを危ぶまれける
みぞれ降る風寒き夜の独房に眠らず怒り笑ひ唄ひ明かしぬ
ガチヤガチヤと錠前の音高く響き編笠の被告曳かれ行く見ゆ
運動場に一輪咲ける蒲公英の花看守の靴が折々蹴つてゆく
如月の刑務所の庭に咲いた一輪の蒲公英の花の首ポロリと落ちたり
入獄の翌朝地裁へ曳き出され思はぬ事のみ訊問されたり
思ひきや御国の為に尽す身の裁きの庭に今日立たむとはと述懐なせば法官苦笑す
八合
楽焼
矢走帰帆(王仁)
天恩郷かすみの幕にぼかされて浮けるが如き高天閣かな
梅の実が黄色く熟れた吾が庭にはばかる様に五月雨が降る
山形の友から貰つた桜桃のつやは子の子(孫)の頬に似て居る
楽焼の窯をのぞいて息つけば顔さへもゆる真夏の真ひる
土を練り陽に干してさて漸くに烈火の窯に投げこむ楽焼
傑作品出来さうもない夏の日に汗かき乍ら焼く楽の茶碗
ぢつとして居れない俺だ苦しうても暑くても焼く心の楽焼だ
釉薬や絵の具を今日も京都市へ買ひにやりたりせはしい楽焼
斎入の特別製品窯から出して自然にもるる会心の笑みだ
二三日続けばいやになる楽焼を五年六年焼いて来た俺だ
営業的既成宗教の殻を破つて新たに生れた惟神なる道だ
道は単一だ道は無難だ宗教は宗祖に由つて説はかはるが
湯ケ島の温泉に遊ぶ三日目に浄蓮の滝でやまめを釣つた
理想農園サイドカーに乗つて行き青いトマトを撫でまはしてみた
やうやくに十六羅漢描きあがりやつと仏相になつた吾が顔
惟神なる御国の道を宣伝する自分を宗教家視さるるのが癪だ