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文献名1歌集・日記
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3花明山よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2025-12-24 13:13:17
ページ345 目次メモ
OBC B119000c12
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本文 詩歌

   霜が烟る
      出口瑞月(王仁)

霧があがつて日がこぼれる、とみる間、さつとくる雨、空の忙しい秋の丹波だ
製材所の湧き上るやうなサイレンがゴツソリ減つた腹にこたへる
二人が立つてはなすそらに月がたかい、橋には霜が烟る
瀬を月が砕けて流れる、千鳥が飛び交ふかげが目に浮く、霜の夜さだ
愛宕山上から見下す谷間、むらむら起る雲の果てしもない秋だ
一年かかつて作つた菊が品評会で劣等の劣等だつた皮肉に晴れた秋空
花明山高台の公孫樹が真つ裸になつてゐる寂しいが朗らかな朝の空気だ
何百万の蚕を焼殺す郡是製糸の煙突だドス黒い焼場の烟だ

つきくさ

   牛飼ひし頃
      唐崎霞松(王仁)

三年たてば由良石灯篭にも苔むすを何時までつらき思ひなるかな
たらひたる身にも大いなる悲しみは君に別るる秋の夕暮
神の道にいそしむ際を絵筆持つ時のたのしさ雑音きかず
恋人のなみだに魂は蘇生せりわれ牛飼ひしわかき日の春
学ならば晴れて添はむと契りてし人の淋しも今は世になく
吾妹子は熟睡して居り小夜更けの文机に倚り歌書きしるす
ゆたかなる君の肉おき忘れ難く夜なよな見るかな桃色の夢
吾妹子と出雲のたびに立つゆふべよみがへり来も若き日の心

短歌月刊

   わが庵
      唐崎霞松(王仁)

そよそよと庭樹をゆする夕暮の風さむざむと晴るる松江市
わがいほは赤山のうへ松江市がはんぶん見ゆる風光の庵
向つ岡老樹の森の下かげに電灯しるくまたたき初めたり
あかやまの冬はしづかにたそがれてはるかに響く自動車の笛
野辺とほく黄昏ふかく和倉山目路にかくれて街の灯まばら
赤山のふもとの坂道カラカラと車曳きゆくがきこゆる夕暮
清水岳ゆふかぜさむくたそがれて藁屋の軒に子の泣く真冬
松風のおとも冷ゆなる赤山のこのゆふ空に星まばらなり

心の花

   朝の事務室
      出口王仁三郎

片減りの下駄穿ちつつ砂利道を歩みあゆみて歩みなれたり
黙々と十脚の椅子ならび居て人待ち顔なるあさの事務室
ひもときしあとだに見えず円本に薄ぐろく積む埃さびしも
生水は身体の害といひし医者いまはなまみづのめとすすむる

創作

      粟津晴嵐(王仁)

わがにはの湯津桂木に鴨鳥の今朝も来りて冬をささやく
小夜更けを囁く如き小雲川のいとも静けきせせらぎの音
月照山みろくの塔の尖端に月はうごかずしもよは更くる
一と本の銀杏のかげに月を仰ぐわが眼かすめて渡る五位鷺
ひさかたの空青々と澄みいりて月かげ高きに雁なきわたる
秋の野の一本松のかげにたてばものの淋しもゆふ風わたる

水甕

      石山秋月(王仁)

冬籠りせむとや村の家の軒に赤き松葉の積みてありけり
漬けおきし米は氷に閉されて炊ぐよしなし朝のさむきに
大井川霧立ちこむる真夜中のそらわたりゆく五位鷺の声

蒼穹

   雪の朝
      十和田勝景(王仁)

木のありし山も裸のはげやまもひとつに見ゆる雪の朝あけ
雪ばれの月照る野路を辿りゆけばつきてありけり狐のあしがた
ひとり寝の夢を覚してはらはらと窓をうちつつ霰逃げゆく
下駄のゆき払ふ足音きこゆなり夜半にや君の訪ね来ぬらむ
夕暮のおばしまに立てばたもとより肌すきとほす初冬の風
玄武洞あれよと指さす間もあらずわが乗る汽車は駅をはなるる

吾妹

   月の瀬音
      出口王仁三郎

速川の瀬音たかみてつるやまのそら行く月をふるはせてゐる
小雲川霧立ち昇り釣舟のかげは見えつかくれつ晴るるとするも
真昼間の日向に庭の木犀のかたへのゆきはとけおちにけり
ゆきつもるこのあさにはを幼児はゑらぎ遊べり跣足のままに

香蘭

   霧の海
      三国一峰(王仁)

椢生のこずゑに霜夜の月冴えて鳴く音もさむき野良犬の声
外輪山のぼりゆくてに大阿蘇の噴火の灰は雪をそめたり
霧の海の波に聳ゆる花明山の公孫樹ひときの上枝のみ見ゆ
柏木の並木の松に積む雪をゆりおとしつつ汽車のゆくなり
吾を訪ふ人ありと聞きて迎へてみれば嬉し昔の友にしありけり

アララギ

      玉川清風(王仁)

綾部町ひとめに見おろす鶴山の穹天閣にかがよふふゆの日

潮音

      嵐山桜風(王仁)

なだれ落つる屋根の深雪の凄じき音におびえて稚児夜泣きすも
雪ふかき愛宕の尾根に煌々とケーブルカーの灯はともりをり
霧の海にほのかに山の尾のうきてしづかにあくる神苑の朝
世の中の義理人情にからまれて悩みぬきたるわれの来し方
親しかる友のしたしみつづけむと心ひらきてわが居るものを

御形

   冬の日
      比良暮雪(王仁)

凩に木の葉吹き散る山路辿り冬の更けしを淋しみにけり
風立ちてにはかに寒し冬の日の夕ぐれそめて雪ふりそめつ
十神山沖行くふねの真帆片帆冬陽にしろくまたかげりたる
霰ふる古江の村のうぶすなの杜にちらちら灯のともる見ゆ
あめまじりあられ古江のやまがきに一夜いねたり空鴨の声

自然

   朝霧
      出口王仁三郎

朝霧のたちこめてみえず水車小屋臼搗く音のみしづかに聞ゆ
ささ波の志賀のうらわに朝霧の晴れてみえ初む伊吹高山
朝霧のうすれつきれつ和知の川堤の松の見えかくるなり
裸木となりてまばらのかへでの枝蓑虫こもる蓑のさがれり
蓑虫の蓑にこもりてさがる枝の冬木楓にしぐれそぼふる
霧立ちてへだつる秋の山の道茸狩るとゆきし友の見えずも
愛宕山朝霧深く立ちこめてケーブルカーの音のみ聞ゆる
ひとのせて下る船の音きこゆなり保津川の渓に濃霧たちこめて
この朝をわが家の窓に霧こめて庭に聞ゆるは家鶏の声のみ

橄欖

   寒椿
      室戸岬月(王仁)

ふゆふかみ霰ふりたる庭つちに寒椿の花のくびはぬけをり
玉の井にかげをうつしてあかあかと椿の花は咲きさかりけり
いけみづの底にうつれる丹椿の花にもの云ふをさなごのあり
千葉椿の花珍らしとうなゐ児が髪のかざしにさして遊べる
よもすがら音にも立たずみ雪ふり驚かされぬ朝戸出の庭に

八合

   南天の実
      矢走帰帆(王仁)

冬されば垣根にもゆる南天のくれなゐの実も花と見えつつ
池の辺のやなぎの梢も散りはてて吹くかぜさむし初冬の空
小雲川はしの欄干にしもおけばみそらに白く月はうごかず
月も星もみ空に凍る冬の夜をもの思ひをれば雁の音きこゆ
赤赤とみのる万年青を床に生けてさ夜更けにけり君を待ちつつ
君と立ちし沼津の千本松原も今日は淋しく時雨降るなり
四ツ辻にひとり君まつゆふぐれを芒の穂並み吹きまくる風
庖丁をグサリとメロンの皮に刺せばかをりただよふ朝の高殿
枠に張りし尺五の絹本に山水画描きてあれば窓に射す冬の陽
小雲川かは霧たちて鉄橋をわたる汽車の音のみぞきこえく

ポトナム

      宮城野萩(王仁)

谷川の水音聞えずなりにけり凍りけるらむ霜夜の寒さに
夕暮のくもたちのぼる西山の雪をてらして日は入りにけり
和田の原波のあなたに沈む日の名残りをとめて赤き雪雲
稲刈りしあとの水田のうすごほりすべりつつゆく二羽の鶫は
月さゆる天恩郷のゆふぐれははつ冬ながらすがしかりけり

常春

      琵琶湖月(王仁)

ただ一人何かおもひて寝る夜半のまくらに淋しこがらしの音
小寒に入りし今日より風寒く雪さへ交りて雨の降りけり
重ね着をすればするほど肌さむくペンを走らす指先凍れり
まどあけて北の原野をながむればわが面おそふ凩のおと
いただきは雪につつまれ愛宕山夜目にもしるき星月夜かな
風つよく雪神苑にちらつきてさむきがままにこもる朝かな
かぜも無くしづけき宵を行く汽車のおと一入に高く聞ゆる

みづがき

      静波春水(王仁)

不景気のかぜにすさめるひとごころ道ゆくさへも危ふさ思ふ
国民の二ケ月の食料があまるとてさわぐもあはれ政治家の冬
南桑の野は深霧につつまれて花明山神苑陽のかげ見えず
わがにはの南天の実よ梅もどきあかあかはゆるふゆの夕暮
霜置きし庭に立ち出で赤赤とみのる万年青に親しみにけり

高天

   わが思ふ人
      愛宕山樵(王仁)

紅梅のはな咲くにはに立ち出でておもひいやます恋心かな
野の村の夕餉のけむりながるなりわがおもふ人のすめる野の村
あさどこに大根刻むおとすなり妹のすがたはわがそばになし
家をもつ妻のすがたかこがらしに梢ちりてもひるまぬ櫟生
積む雪のまばらに消えし芝生の上に兎の糞の湿りたる見ゆ
産土の杜の大杉夕映えのそらをくぎりて雄々しくそばたつ
凩のまどたたきゆく冬の夜の淋しきものはひとり寝の夜半
今宵また君待ちわびて更けにけりせせらぎの音もわが耳にうとし

ぬはり

      山紫水明(王仁)

漁り人汀にくろうかたまりてどつと揚げたり焚火の光を
ちよろちよろと焚火の光見えながら人かげもなし夕の奥津城
一人一人かんなくづをらかかへ来て焚火にぎはふ作事場の朝
炭焼きの烟しろじろしばやまの腹をなめつつ上り行く見ゆ
櫟生のはやしをゆけばさらさらと霜おくおち葉足下になる

ひこばえ

   地恩郷
      出口王仁三郎

稲の田はみな刈りとられ風さむく霰たばしる地恩郷かな
地恩郷やまの雑木苅りはらひながめもひろくなりてすがしき

おほぞら

      出口王仁三郎

大山のみねよりおろす寒風に鼻腔加答児を感ずるゆふぐれ
別院の庭にしきたる白砂のしめりにかがよふ天津日のかげ
玄界灘うねりうねりて来しふねのこころやすけし瀬戸の内海
蕗の薹芝生に三つ四つ覗きつつまだ山かげは雪の残れる
たかやまの尾上にゆきはありながらふもとの里に霞たつなり
夕まけて小雨はれたり大空につらなる星のひかりするどし
くさまくら旅の夕べはほのぼのと眠気さすなり軽きつかれに
霜がれの庭の面ににほふ山茶花の花をめでつつ君思ふ宵

鳥人

   神憑者
      出口王仁三郎

神憑者すがたあやしくさけび居り神霊科学会の庭のおもてに
神憑者両手をたかくふり上げて目を塞ぎつつ座り居るかも
四つ辻の地蔵のまへに手を合す婆アの頭に冬陽ひかれり
秋の日のゆふべさびしく靴みがく直師のかほに見ゆる赤痣
竹竿にならべつるせる大根のしもしろじろとさむさ身にしむ
亜熱帯この琉球も冬なれや袷着ながらさむさ身に沁む
ふゆの日に蚊帳を吊りてねむりけり海原に浮く沖縄の島
数百のテープの色のあでやかさ港のみづもそまるがに見ゆ

梵貝

   亀山城趾
      出口王仁三郎

大いなる月やまの端を覗きたりあれよあれよと見る間に昇る
櫟生のおち葉のうへにしろじろとおく朝露に宿る陽の光
崩壊の箇所を蛇籠でつづりたる亀山城趾は高かりにけり
降るゆきに道ふさがれし温泉のやどにて心おちつきあそぶ
湯殿山羽黒月山おほぞらにかすみてさむし春風吹けども
波の穂をふみて渡りし佐渡の島に見るもさやけし夕映えの雲
いにしへの流され人も佐渡の島の夕空の色になぐさまれけむ
前農相山本俤二郎氏の別邸のにはの生洲にむれゐるおほ鯛
日朗の石像まつる経塚のやまはうはさに聞くより小さき
佐渡のうみへだててかすむ弥彦の尾根をつつめる灰色の雲

のぎく

      山家猿公(王仁)

瑠璃光の光りはなちて東のやまの端出づる初日かげかな
笑まひつつみちに相逢ふ人々のほぎごとかはす新年の朝
鬼の住む丹波のくにも新年の人のこころはおだやかなりけり
鳥が啼くあづまの空のむらさきの雲押分けて初日昇れり
濠の面にうかぶ鵞鳥の羽しろくかがやきわたる初日かげかな
よろづ代のいしずゑかたき花明山の月宮殿にはつ日かげ映ゆ
あたらしき希望に満ちて新年のはるをむかへぬ天恩の郷

不二

   奥津城
      閑居富善(王仁)

西山の父の奥津城しろじろと夜目にもひかれり大理石の碑
わが生れし家の祖先の奥津城をあらたにつくりて心安けし
一本の墓のしるしの老松はこずゑに苔むし葉はまばらなる
しろじろと雪ふるさとの奥津城に歩みなやみつ夕暮を来し
ゆきくれて峠の茶屋を訪ひたるに提灯と杖貸してくれたり
木の葉散るふゆのはじめの木枯を独り聞く夜は妹し思ほゆ
並山のいただき青く浮かせつつふもとはふかき霧海となる
白々と咲く山茶花に雪積みて花のありかもかくれたりけり
信濃路や田毎の月の名所ときき窓開けむ間に汽車ゆき過ぎぬ

地上

      寿翁無塵(王仁)

朝目よく庭の面見ればしろたへの雪降り積みて風冷えわたる
めづらしく早起なして庭の面をみれば白々雪のつみをり
頭腰おもくいたくていとくるしつくゑにもたれ楽書をなす
両眼に手に触るるものみな更生のちからこもれり新年の朝
朝の野に焚火をすれば白烟地上を這ひて霜をなめゆく
霜おける古き俵もわけもなく焚火のやまに投げ込まれけり
小山田に田人のこるかたそがれの幕を照して焚火ちらつく
木の間より漏るる焚火のほの明り透して近き雪の峰かな

勁草

   夢
      出雲八重垣(王仁)

ぬば玉の君が黒髪匂ひけり待ちくたびれていねし夜の夢に
足音をしのびしのびて二人ゆく道の隈手に逢ひし母かな
花として見れどもあかぬ冬の日の床にさしたるこの梅もどき
しろじろと霜おく小野の笹原を狩人らしも犬ひきてゆく朝
亡き父の年忌のまつり水仙のしろきを床に活けてわびしも

二荒

      仙史万公(王仁)

大岩橋わたればしづかに温泉の湯けむりたてり三朝の山色
澄みきりし温泉のそこゆ泡の玉湧き上りつつ冬風寒し
おもてむき保養ととなへ思ふどち親しく浸る湯ケ島温泉
爪弾きの音もしづかにもれて来ぬとなりの二階の四畳半より
朝より霧はれ渡る丹波路はしぐれふるなり必ず午後より
いたづきに瘠せたる君の面ざしに故知らぬ涙こぼれ落つるも
しろじろと霜おく庭に月冴えて光のかぎりを光りけるかも
小夜更けて霜白々とふかみつつ火桶かかへて語り合ふ面赤し
竹藪の梢ざわめきのきこゆ間も嵐わがまどたたいてはしる
向つ山尾上の松はゆるぎけりあなたの渓ゆ吹上ぐる風に

現代生活

      亀山万寿(王仁)

沖とほく魚とる人のこゑきこゆ北風吹けるなみにながれて

あしかび

   凍る土
      富善灯火(王仁)

街道のつちはこほれり吾がのれる駒のひづめのあやふさ思ふ
しろじろと霜おくみちに荷ぐるまのわだちのあとの二筋残る
凩に吹きおとされし櫟葉は根にかさなりて日ぬくみ保つ
君と逢ひて茲に三十年経たりけり昔ながらの心保ちつつ
深山路を雪も厭はず訪ね来し君恋ふ心の燃ゆるがままに
霜さむきふゆのゆふべの水枕誰がために病めるこのみづまくら

草の実

      水呑玉子(王仁)

東の窓はほのぼのとうす明るはや山の端に月の出でけむ
向つ山ただ一ところくろずめり月をさへぎる一ひらの雲
玉すだれかけたる如し藁屋根のつららつららに宿る月かげ
多さりて吹く凩にまるやまの椎の葉かへしてたてる白波
目路ひくう人家の灯かげまたたけり山によりたる和知の高駅
乗降の人かげさむし和知の駅にとまれる汽車の窓に雨降る
鉄橋のしたにしろじろ一筋の和知の流れは夜目にもさやけし
よるのあめふりしく山家の駅に来て窓べ淋しも川の音きく

菁藻

   もろこしの野に
      福禄寿翁(王仁)

今日も亦寒さきびしくちらちらと神苑は雪に包まれにけり
甲子の秋を偲びてその折に作りし詩をば色紙にうつしぬ
われもまた人の子なれや流行の風邪の神の見舞うけたり
満蒙の地をいまの間に治めずばやがて御国の仇となるべし
十余万兵をひつさげもろこしの野にたたかひし昔のわれ思ふ
大上将素尊汗と推されつつ兵馬を統べし蒙古野のわれ
男子てふ者の力のありたけを尽せし我に悔ゆることなし
六ケしきかほせしきのふの人おもふ寿ぎ言のぶる年のあしたは
まがことは海のかなたに追ひやりて祝ぎ言交す年の朝かな

短歌

   雑唱
      出口王仁三郎

にぶき陽は芝生にさしてりんだうの花むらさきに匂ふ夕暮
これといふのぞみなけれど八雲立つ出雲の国の旅は楽しも
大山の尾根にわきたつしらくものゆくへ果てなきわが恋心
みじか日の障子をたたく凩に庭木のこずゑさゆれうつれる
うち続く冬の曇りにふさぎたる心はらさむと窓あけ放つ
昨日今日木の葉散りしく明日香山の世のさまさびし凩の風
はきすつる煙草のけむりこくなりて霜しろじろと冬深みかも
電灯のかがやきつよく温泉のわき立つ湯玉のしるき冬の夜

歌と評論

      出口王仁三郎

雪どけのかけひを落つる音冴えて雨気の冬の夜半あたたかき
きらきらと日に輝ける庭の面の雪はまばゆしわが目にしみ入る
栗の葉の散れる林にわけ入れば実の一つなく毬ばかりなる
ふゆふかみ松の梢にかぜたちておち葉かく女のあかき山篭
あさあめの降りしく音の暖かくねむりやすきも鳥取のやど
雨はれの今日の真昼のあたたかさ旅のやどりに妻としゐるも

覇王樹

      和知渓水(王仁)

明光殿にはのおもてに斑鳩のこゑさわやかに啼きわたる朝
またしても軽き疲れのおそひきて眠りに入りつ昼のうつつに
幾度か着替へては見しけふの着つけ気にくはぬなりうつす鏡に
松ケ枝にかぜの音も絶え神苑のよるしづかなり星空の下
疲れ寝のけさ起き出でて直にさす朝の光をまぶしみにけり

   台湾より沖縄へ

山も畑も小ィさき茶の木植ゑられて花白々と咲き充ちにけり
浪の音ゆるくきこえて海風のまど吹く夜半は涼しかりけり
甲板にふりさけ見れば東北の八重山群島はなみにかすめる

竜灯

      南苑二葉(王仁)

老松のなみ立つ岡の森の上に群れて飛び交ふゆふ鳥かな
稲の田と桑のはたけと松ばやしあちこちならぶ伯耆国原
灯かげ高くここだ並びて沖走る巨船は見る間に島かげに消ゆ
沖とほく月あかあかとのぼる夜の空もねむりて波音もなし
海原の波のうねりもくろぐろと舟をゆすりてたそがれにけり
島かげも見えぬ海原の中にして淋しみにけり月なき夜半を

真人

      出口山風(王仁)

寝屋の戸を真夜中頃にひきあけて御空の月にあこがれにけり
朝戸出の庭のおもてをながむれば雪はましろに風冷え渡る
庭の面にふりつむ雪にきらきらと輝く朝日のいつくしきかな
ふかゆきの上に朝日の照り映えて眼まぶしき神苑のあさ
高天閣かへりてみればかぜさむみ何とはなしに淋しさのわく
ばたばたと障子の塵をはらふ音朝寝の耳にいたくさやれり

冷光

   佐渡ケ島
      松野下露(王仁)

佐渡ケ島海辺の丘に夕べたてばはるかにかすむ寺泊の浦
海辺ふく風のやみたるゆふぐれの夏の佐渡島暑かりにけり
佐渡ケ島根に波の穂ふみて宣伝の旅の夕赤石玉を貰ひぬ
佐渡島は自給自足のうづの国吾とこしへに住みたく思ひぬ
海の辺の丘の上にたちすみきれる水底みれば小魚のむらがる
島ちかく点々並ぶ岩ケ根のあまり奇しきに見惚れてたたずむ
よき人と住む身なりせばとこしへに流され人となるも厭はじ
君います雲のあなたのおほぞらをあこがれてみる佐渡の夕暮
何千尺底より掘り出す鉱石はこの島ケ根に重み添ゆらむ
羅紗帽子まぶかくかぶれる鉱山の技師の眼のあやしく光るも
うみを越えやま越え百里の空こえてわが魂は妹がりに飛ぶ
春といへど霞も浮かず大空の雲のはたてにのりゆく月かげ
うなばらは波にしらけて大いなる月島山をのぼりそめたり
只二人木かげにぬるるたまゆらを照して昇るのちの夜の月
かくまでも冴えたる月をみづかねの今日はねなまし夜の明くるまで
ふたりたつ庭の面にみづかねの月よりおろす袖のつゆかな
常磐木の松の針葉のひとつびとつ庭に描きて月はうごかず
天心に動かぬ月のかげ冴えてみじかくなりぬ二人のたつかげ
庭の面に霜しろじろと冴えながら月はみ空にふるふともなし

帚木

   朝詣
      大江山風(王仁)

うぶすなの神の宮居の朝詣でこれにまされる清しさはなし
さかみちの砂利ふむ音のぐさぐさと足音すなり観音の下
あかつきの空はすがしも鵲のこゑ晴れわたるゆきの神苑
よろこびを胸に湛へてただ二人朝詣でする宮居すがしも
言霊の幸はふ世にもともすれば人の恨みを買ふぞすべなき
ひむがしの山の端のぼる月かげを心つつましく拝みにけり
あかあかと庭に散りしく枯松葉のうへに霜あり朝風さむし
家内みな門に飛び出しなゐふるを恐るる面の色の青白さかな

青垣

      出口王仁三郎

日のくれを霰まじりの雨来りつかの間にして空はれわたる

   人魂

京都にてみまかりしひとの人魂とさとりて天津祝詞を宣りぬ
冬の陽のかがやきわたる神池湖のみづの面はさざ波もなし
神池湖のほとりの家をおとづれて鴨一つがひ買ひて帰る
穹天閣まどをひらけばあけがたの綾部の町の灯はかすかなり
子も孫も穹天閣にあつまりて吾帰れりとひとところに寝る

満洲短歌

      敷島八雲(王仁)

ひそやかに裏戸を出でて帰りゆく君をおくりぬ夜嵐の音
相見れど足らはぬ思ひしみじみと身に迫るかなくちなしの花

久木

      鷲谷芝蘭(王仁)

寝台の席さだまりてややしばし喫煙室に入りてやすらふ
硝子窓たちまちくもる喫煙室のそとながめむと指もて拭きぬ
山も野も眼に入らぬ夜の旅は吾が若き日の恋に似しかな
かにかくに楽しきものは吾妹子と出雲のたびに立つ夕べなる
下り坂の汽車もどかしく思ふかな妹の乗り込む綾部の駅まで
山の端に月のぼりけむくもりたるひくきみ空もほのあかりつつ
ほのぼのと空あからみてくつきりと山の尾上も見えそめにけり
高く低く灯かげ見えたり汽車のまどゆ夜しづかなる和知の山里
和知の駅ちかづきにけむ鉄橋をわたらふ汽車のおと細みたり

ひのくに

      望月萩庭(王仁)

人の情うすきこの世に住める身はいのちの糧につねにくるしむ
いつまでも算盤とれぬ小作農をやめたく思へど術なきものか
あかるき世にたたむと思へども丹波路の農家はとても頭あがらず
八雲たつ出雲の宮のすがにはにゆたかに降れるしらゆきを見つ
かならずとたのむ使のたより待つこのゆふぐれの心ときめく

ささがに

   雑稿
      出口王仁三郎

わきかへる胸のおもひは山水のながれて袖にしみて乾かず
山と積み雲と湧きたつ思ひねのほのほとなりて天を焦しつ
蒙古野の芒の原の果てしなくおもひに燃ゆる野火ぞ情なき
速川の岩にせかるる瀬々良岐のおと聞く夜半の独寝寂しも
初雁の過ぐるみそらにおもふかなわが恋ふ人の遠きすみかを
水底の月影取らむとする猿にわが恋は似たり如何にせばや君を
朝夕におもひなやめど何時までもあきらめがたし君のおもかげ

青虹

   雲仙嶽
      丹波太郎(王仁)

雲仙の高嶺に映ゆる丹躑躅のまだそのうへをわれ歩みけり
雲仙嶽硫黄温泉ゆたちのぼるけむりなりけり雲と見えしは
外輪山道のカーブに毛の脱けし老いたる犬の自動車よけをり
噴火口に飛び込みし人ありと聞く夕べを黒し阿蘇の噴烟は
外輪山ふもとのあをき芝原にくさ食みあそぶ数十頭の馬
愛宕嶺はうすらかすみにぼかされて保津の川辺に霧たちのぼる
わがまどに斜に刺せる冬の陽のにぶき光よ肌さむき午後
みくまりの神の神山をすがすがとにはかに時雨降り出でにけり
シダラ樹や蘇鉄雑木あをあをと生ふる於神の山のさやけさ

土筆

   公孫樹
      出口王仁三郎

世に勝ちぬ悪魔に勝ちぬいざさらばわれ憚らず神国開かむ
バイブルの頁めくれば昨年の秋にはさみし公孫樹の薫したしき
冬の夜の窓あけ待てど君は来ずほしいままなる吹雪飛び入る
大井川西へ流るる世ありともかへさざるべし千代のちかひは
菊のはなこの花明山に薫らずば君にまみえむ術なかりけむ
烏羽玉のきみがくろかみ霜おけど昔ながらにこひまさるかな
君見ずとあきらめながら菊の宴にはからず逢ひぬときめける心
たそがるる愛宕の尾根のうすら霞見つつ思ふも故郷の空を
独り居の吹雪の庭のまどあけておもふは君が消息なりけり
わが居間の橡の障子をかすりつつかげの過ぎゆく庭すずめかも
みちのくの雪積む野辺になやみてしさまこまごまと妹に書く文
鳥海の尾根を包みて吹雪する羽前はさむしたびのゆふぐれ

婦人時代

   宗教とマルキシズム
      大井青竜(王仁)

宗教とマルキシズムとは絶対に提携出来ぬ事さとりたり
唯物主義の共産党と宗教は理想において天地の相異
なにごとも尖端をゆく現代に後端をゆく既成宗教
マルクスは大和御国の白蟻とつくづく今日はさとりけるかも
いきてゆく道は闘争あるのみと世をみだしゆくマルキストかな
マルクスの理想社会をつくるには闘争こそは一義の武器といふ
物質にのみ拘泥して神霊の世界知らざるマルキストかな

歌集『花明山』終
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