文献名1霧の海
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3膝栗毛よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要28歳の頃
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データ凡例
データ最終更新日2023-05-08 00:00:00
ページ58
目次メモ
OBC B119800c023
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本文
二十八歳の頃
道者の言にはげまされ 丹波の国に帰らんと
心の駒に鞭打ちて 車も呼ばずトボトボと
梅田の駅につきにけり 仕度なさんと懐中を
探りてみれば情なや 残りの金は二銭半
汽車はあれども乗るすべも なんと線路の真中を
一直線に膝栗毛 腹も吹田のうまやぢの
茶店にひさぐ蒸芋は 栗より甘い十三里
道程一歩又一歩 茨木町を北に取り
丹波をさして帰り行く 頃しも三月十五夜の
月は東の山の端に 丸き面をあらはして
ニコニコ笑ませ玉へ共 夕べの空の何となく
心淋しき一人旅 東も西も南北も
知人もなくなく山路を 空の月かげ力とし
一度通りしおろ覚えの 山と山との谷路を
どこやら不安の心地して 岐路ある所に停立し
首をかたぐる時もとき 忽ち前に現はれし
怪しき白衣の旅人は 四五間先へ立つて行く
吾身が進めば彼進み 立止まれば又止まり
モウシモウシと声をかけ 呼べと答へぬ白い影
或は現れ又は消え 変幻出没不思議なり
二股路に現れて 又もや案内をする如し
怪しみながらも力得て 足を運べど空腹と
疲れのために進みかね 眠気の鬼におそはれて
街路に転倒しながらも 眠たさ怺へて帰り行く
西別院の村外れ 下り坂にとさしかかる
水さへ音なき丑の刻 道の片辺の細谷川を
隔てて狭き墳墓の地 六地蔵さんを祀りたる
寂しき所と知り乍ら 天の与へと喜びて
六体ならんだ石地蔵の 後へに身をば横たへて
手枕したままグウグウと 華胥の国へと上りゆく
ああ惟神惟神 御霊幸はひましませよ
墓原の怪
寂然と静まりかへる墓原の地蔵のうしろに眠りゐたりぬ
枕辺に女の忍び泣ける声かすかに聞えて眼ざめたりけり
子を背に負ひたる女月かげを浴びて新墓の前にたたずむ
いやらしさ身の毛もよだつ思ひして息をころしつ窺ひゐたりき
ちくちくと怪しのかげの近づけば居たたまらずして逃げ出しにけり
突然にわが逃げ出す姿見て怪女の背の児泣き出しにけり
神の道伝ふる身にてありながら墓場の怪は淋しかりけり
月かげのおぼろにさせる谷道を地響きさせて吾家に帰る