文献名1青嵐
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3小幡神社よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ最終更新日2024-10-31 04:40:00
ページ29
目次メモ
OBC B120200c07
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本文
朝あけの小幡の宮の庭に立てば東天あかく春まだ若し
春若き小幡の宮に額づきてわれは祈りぬ世のゆくさきを
わが宣れる祝詞の声はさえにつつ心自ら春めきわたる
朝のいきを心ゆくまで呼吸しつ杜ふく風のささやきを聞く
参道ゆ人の足音かそけくも聞ゆるままに社側にかくれぬ
ひそやかに社側にたちてうかがへば階段上るは西塔なりけり
鈴の緒に手をかけながら西塔は賽銭投げてがらがらならせり
産土のあしたの庭になりひびく鈴の音清しくわが耳を洗ふ
欲なこと申さぬ一度米相場に勝たせ給へと祈るをかしさ
山も田も家も残らずとられます何卒お助け下されと祈る
性懲りもなく米相場をしてるかと思へば可哀さうになりたり
いつまでも天津祝詞を奏上し執念深くうつぶしていのる
うつ伏して祈れる隙間をうかがひて足音しのばせそと通りたり
足音に気づきたりけん西塔は頭を上げてうしろ向きたり
西塔はわが姿みて顔赤め手もちぶさたな素振りして居り
お早うと声をかくれば西塔はにたりと笑ひ目礼をなせり
この頃は儲かりますかと吾問へば貧乏の上ぬりばかりと答ふる
有りもせぬ金を相場に又とられ二進も三進もゆかぬと答ふる
神様に見捨てられたか相場すればする程負けるといふ顔淋し
気の毒に思へどせん術あらざれば神前を辞してわが家に帰る
嘲笑の声
わが家に帰れば祖母も母上も笑顔たたへて迎へたまへり
不二の山三保の松原珍らしき景色語りて母に聞かせり
旧友の上田和一郎とひ来りもうかりますかと冷笑的にいふ
商売にあらざる限り神の道に金もうけする心なしと答ふ
金あれば馬鹿も賢う見える世に君は量見ちがふと友いふ
喜『大いなる希望の準備最中よ金もうけするわれにひまなし』
和『働かず遊んで気楽に暮さうと思うてる君はずるい男よ』
和『兄弟をこの老人にまかせおきてひどいと人が笑うて居るぞよ』
凡俗におれの心がわかるかと言へば大声あげてあざ笑ふ
嘲笑の声の不快さ腹立ちてかもうてくれなと言ひ放ちたり
凡俗が聖者へ意見はすまないと云ひつつ腮をしやくる和一郎
十年後の吾が成功を見給へと言ひ放ちたる吾が身をあやぶむ
和一郎不承不承に帰りたるあとより訪ひ来る一人の友だち
和一郎のあとに来りし若者は医脇秀吉といふ友なり
村人は今迄お前を神人と買ひかぶりゐたと秀吉が言ふ
さうだらう僕は神人ならずしてこの世の中の大馬鹿者なり
併しながら大馬鹿者にあらざれば世の大業は成就せざらん
秀吉はわれの返答を解きかねて只茫然とわが顔みつむる
弟の由松は治郎松ともなひて足音たかく帰りきたれり
こりや兄貴何をうろうろしてゐよる年寄り子供をどうする積りだ
喜『神様の道に仕ふるその代り神はかならずたすけ給はん』
金儲けきらひな兄貴一時もはやく出てゆけと弟うながす
治郎松は口をとがらしあかんべーしつつからかふ状にくらしも
気のきいた奴狸なればきん袋八畳じきよと又もからかふ
はるばると駿河の国までうろついて金もうけたかと舌出す治郎松
故郷の有象無象のさまたげをのがれんとして若森にゆく
○余白に
今までの世はことごとく偽善者の所を得つつはばりたるなり