文献名1青嵐
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3駿河の旅よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ最終更新日2024-10-31 04:40:00
ページ249
目次メモ
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本文
修行場を四方藤太郎にあづけおき平蔵伴ひ駿河に旅立つ
大神の神徳広大無辺なるを吾は説きつつ須知山を越ゆ
大原や枯木峠をふみ越えて十津川村の道の辺にやすらふ
平蔵はにはかに発動気味となり全身震動はじめ出したり
やむを得ず枯木峠の頂上に坐して四方の審神をなす
吾こそは汝を神界にみちびきし松岡なりと口きる平蔵
平蔵の得意は天眼透視術松岡天狗の霊感と言へり
神がかり連れての旅はなかなかに審神に骨の折れるものなり
四方氏は白内障を病みてをり足もととぼとぼ行歩あやふし
丹波路は汽車の無ければ園部まで坂道十里かち歩きせり
園部より夜汽車に乗りて八木に下り福島方に一泊をなす
福島は上谷に居り妻久子は八木の茶店に留守をなしをり
福島の久子は吾にたたみかけて綾部の様子問ひただしけり
修行中の有様細細ものがたり朝の汽車にて駿河に向ふ
月見里神社
黄昏を駿河江尻の駅に下り車に乗りて師の家を訪ふ
下清水月見里神社に礼拝ししづかに恩師の門を叩けり
突然の来訪なりと師の君はわが一行におどろきたまひぬ
神様の話しづかに夜は更けて恩師の宅に宿泊ゆるさる
両人は旅の疲れにうまいして太陽ののぼるも知らず朝寝す
やうやくに起き出でみ空ながむれば南に高き富士の神山
頂上まで晴れ渡りたる不二ケ嶺のかげ仰ぎつつ神国を思ふ
四方氏は開祖のことなど細細と恩師の君に語り暮せり
浄瑠璃を好まず恩師は一段をかたりて吾に聞かせ給へり
政治宗教芸術などの漫談にかたりあかせり夏の一夜を
古宮の神前に恩師の審神者にてわれも四方も幽斎に入る
わが精霊小松林とあらはれて日露戦争勃発を教示す
来年は支那に事変のおこるべしと告げたまひけり小松林は
師の君は小松林の精霊に感謝の意義を述べたまひけり
師の君の説明により四方氏は神霊学をさとりよろこぶ
帰途の神恩
なつかしき恩師の館に二昼夜を滞在の上帰綾の途につく
下清水江尻のあひだは二十丁荷物をさげて夜の道ゆく
午前一時急行列車は間もあらず江尻の駅にかけ入りにけり
四方氏は手をかけしまま荷物おひて七八間ばかり汽車にひきずらる
夜に入れば眼のきかぬ四方氏は神の守りに生命助かる
吾もまた重き荷物さげて居り乗りおくれじと汽車に飛び乗る
四方氏が片手をかけし瞬間を急行列車は動き出したる
吾もまた力をこめて四方氏を荷物もろとも引きあげにけり
翌日の午後一時頃京都駅に安着なしてほつといきづく
空腹を癒せんと飲食店に入り蛸のさかなで昼飯をなす
両人は七条通を徒歩しつつ西七条の帳場にいたる
亀岡行の馬車の切符を買ひ了へて発車の時刻を待ちゐたりけり
四方氏は蛸にあたりて吐きくだし顔色青く死人のごとし
乗合馬車の帳場の主人は驚きてコレラ病よと切符をかへす
警察に知れたら何もかも焼かれ営業が出来ぬと帳場は断る
車屋は賃金かへし二人分の切符をとりあげつき出しにけり
開祖よりわれに賜ひしお肌守りを四方の肩にかけてやりたり
おひねりを二体四方の口に入れ鎮魂すれば顔色よくなる
御神徳忽ちあらはれ四方氏は漸くものを言ひ出しにけり
四方氏の手を引き門にたち出でて一丁ばかり国道をゆく
空車ひきて二人の車夫来るを天の与へと直ちに乗り込む
桂川大橋わたれば四方氏はまつたく元気恢復なしたり
車上より四方平蔵氏いさぎよく四方山話をなし始めたり
人力車にゆられて歌を唄ひつつ大枝の坂を安く越えたり
老松の一本たてるくらがりの宮のかたへに車とどむる
篠村の八幡宮の手前まで帰れば四方の腕車はくだけつ
四方氏は真逆様に街路上にほうり出されて怪我なかりけり
一日に三度の危難まぬかれしも神の恵の深ければなり
大神は四方の強き信仰を嘉して救ひたまひしならむ
此処よりは徒歩にて四里の道渡り八木の福島方に立寄る
福島の不在をまもる久子氏は金光教の信者なりけり
霊学の話をすれど疑ひて腑に落ちぬとて鼻であしらふ
わからない人を相手にせぬものと大橋渡りて刑部に向ふ
枕頭の虻
土田氏の館を訪ひて神徳のはなしたがひに語らひにけり
折もあれ急電来り開きみれば従弟の南部危篤との知らせ
土田氏の従弟の南部孫三郎は金光教の教師なりけり
京都に行く旅費もなき土田氏はこの電報に当惑してをり
わが従弟南部の素行をさまらずいつも失敗のみするといふ
京都より備州遠州駿州と十七ケ所の教会ひらけり
教会をひらき婦人に関係し幾度となく追ひ出されたり
この頃は金光教会破門され妹の家に食客して居り
肺結核三年前よりわづらひて今は致死期と土田氏涙す
もう一度お助け願ふたすかれば一生綾部の御用さすといふ
あまりにも気の毒なれば神界に一週間の祈願をこめたり
三年の寿命をのばして貰ふやう大神様に願つてあげましよ
土田氏はわが宣言をこまごまと手紙に書きて京都に送る
七日目に一旦息は絶えけるがふたたび息をふきかへしけり
上田氏の祈願によりて神徳をいただきしと土田氏は語る
つね日頃信ずる金光大陣のおかげと南部は横に首ふる
京都市の島原金光教会へ南部はきかず礼まゐりする
二ケ月の後にはげしく腹痛みまた重態におちいりにけり
室内の運動さへもままならず言葉も出でぬところまで弱る
教会へお百度ふめどしるしなし患部切開せんと医者いふ
病人の衰弱の度のはげしければ生命のうけあひ出来ぬと医者云ふ
やむを得ずわが家に帰りなりゆきにまかせて余儀なく死を待つばかり
土田氏は南部の病なほりなば神にささぐと一心にいふ
神霊の感応ありて南部氏の枕頭大なる虻飛びきたる
大なる虻は病人の頭上をば三回まはりて飛び去りにけり
飛び去りし虻のあとより岩石の崩るる如く腹の音高し
二三升ばかりきたなきものが肛門ゆ排出すれば激痛とまる
日を逐ひて快方に向ひ南部氏ははじめてさとり大本に入る
○余白に
黒金の檻にかひたる獅子王は檻をとびいでうち倒されぬ
獅子虎を檻にかこひて恐れゐる人のこころの愚なるかも
猛獣を檻にかこひて餌を与へ守衛が気をもむ動物園なり
人間の生血をしぼり肉を食ふ猛獣を飼ふ動物園なり
動物園の虎がほゆれば狐まで得意になりてなくよいまはし