文献名1青嵐
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3第二の計画よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ最終更新日2024-10-31 04:40:00
ページ430
目次メモ
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本文
上田こそわが大本の御世継と鳩のごとくに神示降れり
大神の神示降りしその後は野心家連も鳴りしづめたり
春蔵や竹村足立谷口等首をあつめて密議をこらせり
普通にては上田を排斥なし得ずと反間苦肉の策をめぐらす
塩見順子四方すみ子に意をふくめ足立は第二の計画をなす
顔のよき塩見せい子をわがそばに侍らせ道を破らんとせる
足立等の計画われは前知してこころの帯をゆるめざりけり
十八の塩見せい子は足立等の計画われにうち明し泣く
せい『先生よ用心なされ足立等は女でしくじらせようとしてゐます』
そんなこととくの昔に知つてゐるとわれのいらへに面ほてるかれ
わが母は足立の唯一の味方です用心あれと彼女の忠告
どこまでも私は先生の潔白を証明しますと彼女は誓へり
母に似ぬ君が親切感謝すと言ひつつ思はず涙にくるる
折もあれ足立は足音しのばせて眼つり上げ入り来りけり
上田さんその有様は何事とそろそろ足立はもつれかかりぬ
足立さん冗談いつては困るよとわれ平然と一矢を報いる
正信はいやらしき笑みを湛へつつさやうですかと空うそぶけり
正『塩見さんお前は若い身を以て男の居間へ何しに来たのか』
せい『知りません私は私の用ありて先生にお伺ひしてゐるのです』
正『へんそんなうまい言訳したとてもこの黒い目が承知いたさぬ』
正『この黒い目はなかなかにだまされぬお前はわしに反対するのか』
せい『私は正しい人に味方する悪だくみする人はきらひよ』
お前さんは上田の舌にまきこまれ裏切つたのかと声高にいふ
せい『お前さんこそ先生を裏切つて私をここへよこしたでないか』
奸佞な足立もさすがに一言の答へも得せず青息をつく
畳ざはり荒く竹村入り来り二人ゐるのが論より証拠だ
竹『襖しめて若い男女がひそびそと囁く場面は臭いあやしい』
上『汝等はわれを陥穽に落さんとたくらみてゐる不届きな奴』
不届な奴は貴様といひながら竹村拳骨をかためてせまる
拳骨をうちふり迫る竹村の足をさらへばどつと倒れし
この方をつき倒したと竹村が顔をしかめて難題をいふ
天罰は覿面こころを改めよとさとせばますます荒ぶ竹村
エエお芽出度いところへ出て来た私が憎いは道理と妙なこと言ふ
おそろしい突き倒されてはたまらない恐いこはいと顎しやくり笑ふ
わからない人には相手にならないと二人に背をむけて黙しぬ
塩見さん早く帰ろと正信は無理にせい子の手を引き出す
せい『足立さんあなたの謀みをことごとく包まずかくさず素破ぬいたよ』
正信は苦笑しながらそれでよしうふんうふんと鼻先で笑ふ
正『上田さんもう駄目ですよ今日からは綾部にをつては貰へませんぞ』
正『これからは役員信者を呼びあつめ相談するから覚悟をなされ』
上『如何なりと勝手になされ磐石の決心つよき私に対して』
両人は手持不沙汰の面持に顔蒼ざめてをののきゐたり
をりもあれ四方平蔵入り来り開祖の命をつぶさに語る
足立さん竹村さんにかまひなく綾部にお帰りなされとすすむる
平蔵の言葉をしをに黄昏を上谷立ちてかへり路につく
両人は面ふくらせて平蔵をうらめしさうに睨めつけてをり
凩の夜
たそがれの山路を帰る淋しさよ木の葉散りしき凩さむし
西北の風がもてくる雪しばきわが頬なめて冷たき坂道
眼の悪き四方平蔵とぼとぼとわがうしろより従ひ来る
大橋のたもとにかかる折もあれ四方勇佑息せき馳せくる
勇『御開祖が大変心配遊ばして迎へて来よとおつしやいました』
勇『足立等はよからぬ謀みしてゐると開祖に神示が降つた故に』
御両人御無事で先づ先づお芽出度うと茶瓶頭がはなすすり泣く
勇佑は勢こんでとんとんと橋板ならしわがさきに立つ
鬼の首抜きたるごとき勢で六歩踏みつつ前行く勇佑
勇『開祖様は豪いお方だ神様だ何も御存じじつとしてゐて』
勇『悪人の企みは到底成就せぬとはじめて知つたこの勇佑も』
勇『誰が何と言つても先生は帰さぬと出口開祖の堅い決心です』
勇『三千世界一度に開く梅の花いよいよ神代になりかけてきた』
勇『油虫蛆虫足立の食潰し勇佑一人でも放り出してやる』
勇佑は気焔万丈大橋をヤツコス踊して響かせわたる
勇『谷口の熊の野郎が又しても良からぬ謀みをやつて居ります』
勇『足立奴が塩見の婆婆を籠絡し身欲ばかりを考へてゐやがる
勇『四方すみ黒田おきよの両人にも気をつけなされやられますぞや』
勇『良い顔をしてゐて四方の春蔵は猫をかぶつてねらつゐますよ』
勇『目の上の瘤は上田と竹村が福島さんと密談してゐました』
勇『上田さんの味方は開祖と澄子さん私と平蔵さんばかりですよ』
勇『平蔵さんもしつかりしてゐて下されや私も死もの狂ひで働く』
平『神様の尊い経綸の御用です腹帯しつかりしめねばならぬ』
平『神様と開祖のお言葉さへ守りやどんな邪魔でも排除出来ます』
一本木並松の川辺打過ぎて本宮四ツ辻会場に安着す
御開祖は門に自ら出で迎へ皆さん御苦労と機嫌よげなり
お出迎へ勿体ないと勇佑が鼻をこすりて嬉し泣きする
細い目をこすりこすりて平蔵も涙ながらに感謝して居り
平『謀叛人が上田先生に難題をかけてゐました無茶な奴です』
いきせきと塩見せい子はただ一人金明会に走りてかへる
足立さんその他のお方がもうすぐに此処へ帰るとふるひつついふ
陰謀が露見したのであやまりに急ぎかへると雄猛ぶ勇佑
せい『あやまりに帰りて来るやうなけはひなし先生を去なす相談のために』
せい『平蔵さんしつかりなさい今夜こそ足立の面をむいてやりましよ』
心配はいらぬ一切神様におまかせなされと開祖は笑ませり
勇佑は膳部をこしらへ甲斐甲斐しくわれに夕飯しきりにすすむる
夕飯も食ふ気にならず何処となく心おちゐず腹立たしきわれ
澄子さんの姿が見えぬと平蔵は心配さうに尋ねだしたり
今の先まで此処にゐたと御開祖は平然として落着き顔なる
産土に参拝をはり帰りましたと表口より澄子入り来る
平蔵と勇佑二人は手を拍ちて神の御前に感謝するのみ
開祖様初めわれわれ五人連れ四方山話に小夜更けわたる