文献名1出口王仁三郎全集 第8巻 わが半生の記
文献名2【上巻】故郷の弐拾八年よみ(新仮名遣い)
文献名3靴音よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考『霧の海』p15-22
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データ最終更新日2023-11-01 08:21:43
ページ84
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本文
─二十三四歳の頃─
牧場に一人寝ねたる月の夜をしのび入り来る女ありけり
この女まだ十六の秋ながらいたくませたりつかつかもの云ふ
つかつかともの言ふ女をはづかしみわが面ほてりてうつむきて居り
この女二世を契れと泣きつきて帰らぬ夜半を井上入り来る
井上は女の姿見るよりも此処には置かぬとわれを追ひ出す
追ひ出されのめのめ居るよな男かと啖呵きりつつ彼女の家に行く
若き女に随ひゆけば其の家の老いたる母はわれをたしなむ
そんなこと知らぬ知らぬと云ひながら寝床の中にもぐりこみたり
手に合はぬやんちや男といひながら彼女の母は夜具をきせたり
靴のおと高く井上入りきたり吾を引張り牧場にかへる
勉強をせなくてならぬ年ごろでちと心得と井上が云ふ
これからは心得ますと云ひながら吾うつむきて舌を出したり
ぷんぷんと怒りて井上帰りゆく後より吾は腮をしやくれり
舌を出し腮をしやくりし吾がわざを文助親爺がそつと見て居り
文助は一部始終をまつぶさに告げたるらしき井上の面
井上はそれより言葉あらたまり吾を先生先生と呼ぶ
先生はあなたのことよわしは今書生と云へば井上空向く
舌を出し腮をしやくるは俺よりも先生なりと井上皮肉る
何となく師弟の間折り合はず言葉の端にもかど立つが見ゆ
このやうなやんちや男はたまらぬと井上弟を牧場に入れたり
井上の弟徳はわれよりも一段ましてやんちやなりけり
徳松をともなひ毎夜劇場に乞食芝居を見にかよひたり
徳松を誘惑したと井上が弟のひいきばかりするなり
○
十六のをんなたちまち発狂し喜楽喜楽とさけびまはれり
母親は娘の病なほすため一度来れと呼びに来にけり
てれくさいながらも女に会ひたさにいやさうな顔してついて行きたり
恋しくて会ひたく思へるその矢先母の招きはもつけの幸ひ
ゆきて見れば彼女は高き水枕頭に氷嚢あててさけべり
喜楽さんが来てくれたよと母云へば彼女は忽ち笑ひ出したり
井上が後を追ふかと案じつつこはごはながらしばし看護りつ
喜楽さんこの娘をどうしてくれるかと母親お松の膝づめ談判
いひほどく術も無ければやむを得ず医者になりたら妻にすると答ふ
その言葉間違ひなくば安心とよろこび娘に云ひ聞かす母
その日より娘の病つぎつぎに全快したれど母親会はさず
母親になぜ会はさぬとなじり問へば医者になつたら会はすとくび振る