文献名1出口王仁三郎全集 第8巻 わが半生の記
文献名2【上巻】故郷の弐拾八年よみ(新仮名遣い)
文献名3妙妙よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考『故山の夢』p195-201
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データ最終更新日2023-11-03 10:58:49
ページ110
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本文
─二十四歳の頃─
わが父は家に祭壇あひもうけあした夕べに妙妙と宣る
村人に妙妙さんと綽名され若き自分は恥ぢらひたりけり
歯のいたみ封じて呉れた神様も妙妙だけはいやになりしなり
わが村に五人の妙霊新信者父が宣伝のために出来たり
月次祭に祝詞称へに廻れよと父にいはれて困り果てたる
何よりもはづかしいのが一杯でどうしても口から妙妙が出ず
天津祝詞神言ばかり奏上し妙妙いはず逃げかへりける
本部より岸本布教師巡教のためにきたりて布教師すすむる
岸本氏のすすめによりて吾が父の布教師すすむることの辛さよ
○
故郷の穴太にしばし帰りゐしがまたも園部に逃げ出してゆく
園部町藤坂方にゆきみれば主人は妙妙さんとからかふ
園部にも妙霊信者数十人あれど一つもろくなものなし
内藤の家に到りてやすみをれば河内十人斬りの歌うたひ来る
十人斬りの歌おもしろく門芸者のあとに終日したがひてゆく
村村を従きまはりつつ夕暮に腹をへらして叔父の家訪ふ
叔父の家にいたりて夕飯請求し一夜泊りてまたすすめらる
おまへならきつと立派な布教師になると教祖が宣らせしといふ
又しても叔父の勧めのうるささに朝未明より逃げ出しにけり
心短気な熊太郎弥五郎十人殺して名を残すと吾はそれより唄ひつづけり
十人斬り歌をうたひて藤坂の主人にきつくどなられしわれ
人斬つて名を残すやうな奴の歌うたふ奴は家へ出て来なといふ
ごもつとももうこれからは来ませぬと向ひの内藤方に出でゆく
内藤の菓子屋に入りておもふさま雇人等とうたひあきたり
翌日もその翌日もおなじ歌うたひてつひに内藤氏に怒らる
○
止むを得ず惟平翁のもとにゆきふたたび和歌の講釈をきく
来年は獣医試験を受けぬかと井上来りしきりにすすむる
畜生の医者になるより人間の医者がましだと吾こたへたり
井上は勝手にせよと言ひ捨ててプンプン怒りかへつてぞゆく
井上のかへりし後で諸手組みしばし思案にくれてゐたりき
獣医試験はねつけ見たれど何となく惜しき心地ししばし考慮す