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文献名1出口王仁三郎全集 第8巻 わが半生の記
文献名2【上巻】故郷の弐拾八年よみ(新仮名遣い)
文献名3誘惑よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考『故山の夢』p326-331
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-11-06 17:54:23
ページ169 目次メモ
OBC B121808c76
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本文 ─二十六七歳の頃─

西条の飲食店にあそぶ夕べ見知らぬ女艶書くれたり
雪隠にいりて艶書をひもとけば明日の夜某所に来れと記せり
友の目の多きその夜は一目だも眠らず夜の明くるを待ちけり
花匂ひ蝶は舞へども春の日のたそがれ遅きを待ちあぐみたり
乳牛に夕べの食をあたへおきて人目をしのび牧場を出づ
彼の女たづねて行けば影もなしただ一通の置手紙あり
置手紙とる手遅しとひらきみれば内丸町の某家と記せり
足速に某家に行けば当の女酒や肴をこさへてまてり
恋人のあつき心を無にせじと舌もつるまで盃かたむくる
荷車のゆく音ききて目を覚まし夜明けと思ひとび起きにけり
彼の女吾が衣手をばひきつかみ真夜中ですよと止めてやまず
昼のごと明き月夜にあざむかれとむるもきかで飛び出し帰る
彼の女追つかけ来り明日の夜はゆつくりネーと半ば泣き居り
    ○
風の口の野路に帰れば空暗くねむけもよほし足も運ばず
真夜中の野路を睡魔におそはれて道に藁しきよこたはりけり
藁の上によこたはりしまま熟睡して華胥の御国に遊ぶ春の夜
野の小路にいねたるわれは牛車ひく大牛に起されにけり
目覚むれば牛は鼻にて吾が顔を息もあらあらかぎてゐたるも
牛の鼻ぐつとつかみてやうやくに微傷だもせず起きあがりたり
牛車ひきたる人は六人づれ夜のあそびの友のみなりき
こりや喜楽馬鹿にするなよ亀岡へ行きよつたのだおごれと呶鳴る
おごるともそりやおごるともおごるとも牝牛の睾丸もてこいといふ
馬鹿にすな牝牛に睾丸あるならば馬にも角があると友いふ
風の口の朝の空を春風にふかれて帰る眠たさつらさよ
車清の土橋を渡るねむた目の足の千鳥のあやふかりけり
小幡川板橋渡れば朝風のぼやぼや眠し朝がへりの身に
小幡神社華表の下に手を合はせ昨夜の吾の行為を詑びたり
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