文献名1惟神の道
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3昭和八年を語るよみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考出典不明
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ページ94
目次メモ
OBC B123900c028
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今年の勅題は「朝の海」と御発表になったが、この勅題によって、昭和八年の日本の運命または国民の使命と覚悟が表示されてあるやうに考へられる。
東雲の空から、黎明にうつり朝が生まれる。朝は万物更生の刻限であり、地上の暗を照らす旭日の隆々昇天する刻限である。海といふのは広く深く到底肉眼を以て見きはめることの出来ないものであり、種々神秘を蔵し、時あっては激浪怒濤となって山嶽を呑み、巨船を覆没し、鎮まってはあたかも大なる鏡面の如く月日を宿し、洋々として安らけく豊けく、これを望むさへも魂が清まりふくれる感じがするものである。朝の太陽が広袤無限なる海洋に輝く時の景色は、真に形容の出来ぬ荘厳さである。
我が皇国は一昨年(昭和六年)九月以来、軍事に外交に自力更生の曙光をあらはしたこと、あたかも朝の海の如く、荘厳であり、広大であり、無限の力があらはれてゐる。内には自力更生が叫ばれ、外交刷新が叫ばれ、外にはゼネバ会議あり、正に七十年来の軟弱外交を更生さすべき秋に向ったのである。
吾々国民はこの更生の機運に際して一日たりとも偸安姑息の行動はなし得ないのである。吾々は国民の一員としてこの勅題を拝するに当り、実に暗黒世界の天の岩戸が開けたやうに感ぜられ、また海洋の如く広く深く、天下に向って愛国的活動を撓まず屈せず倦まず飽かず続け、奮って祖国の安泰と進展を企図すべく努力せねばならないと思ふ。
ひるがへって我が国内の事情を見れば、日本魂の権化たる陸海軍人の犯し難き勇気と忠誠とあり、一方には外国思想に惑溺したる左傾分子あり、また愛国者の美名にかくれて、ギャング、テロなどの悪業を企図するものも少なくないやうに見られる。海外はと見れば、満州国の承認問題、満州国の匪賊の続発、満州国民の我が国精神の不徹底と海外諸国の日本に対する認識不足あり、ゼネバ会議の交渉あり、到底安閑としてゐられない時運に遭遇したのである。我が国民はこの時この際、皇祖皇宗の御遺訓を奉戴して起たねば、再び世界に立って国の威信を保つことが出来なくなるであらう。
「朝の海」といふ勅題は、吾々狭量にして思想浅薄なるまた暗愚なる国民の魂に、日星の如く炳として動かざる輝きをもつべく御訓示あらせられたものと恐察し奉るのである。
ああ惟神霊幸倍坐世。