文献名1惟神の道
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3魂魄は滅びずよみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考「人類愛善新聞」昭和一〇年九月号所収「肉は殺しても魂魄は滅ぼせぬ」とほぼ同じ
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ページ342
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本文
不安なる内外の世相に当面して、余は広く人々に告げておきたいことがある。それは人の肉体は滅ぼすことは出来るが、その魂をも殺すことは出来ないといふことである。勿論これは誰でも口にするすこぶる平凡なことであるが、本当にその意義を理解し、正しくその精神に基づいて行動する人が今の世にはまことに少ないやうである。たとへば国家社会の実状を憂ふる者が世を荼毒すると信ずる元凶を殺害するとしても、またその反対に真に祖国のために奮闘する士が、氏衆の誤解のために或ひは時の勢力によってことごとく斬伐されるとしても、その魂は間もなく新たなる人々に憑依して前以上の力を発揮するものであるといふことに気が付かねばならない。それは七生報国の忠臣の魂が生き通しであると同様に、逆臣の魂といへども人間の力でこれを殺滅することは出来ないものである。
故に皇道運動はあくまで思想の善導であり、魂を悔い改めしめる運動であらねばならない。かつて水戸公が、孝の道を知らない罪人に孝道を教ふること三年、道を悟らしめてしかる後に刑を行なったといふが、まことに立派なことである。故に共産主義者を手当り次第に獄に投じ、また重刑に処したとしても、それによってその思想を永遠に葬り去ることは絶対に出来ないものである。刑罰をもって社会善導の第一義とするのは間違った考へである。
現在の経済組織にも幾多の矛盾があるであらう。政治機構にも少なからぬ誤謬があるであらう。だがそれらの指導的立場にある人物を殺害することによって誤れる経済組織、政治機構を変改することが出来ると思ふのは大変な間違いである。
永い間我が国は、日本固有の大精神を忘却した欧米流の教育が施されて来た。故にかかる指導精神に育まれて、その経済組織、政治機構の下に自已の名を挙げ栄えを得ようと焦慮して居るいはゆる思想的予備軍が国内に充満して居るのである。もし今日の我が国の各般に亘る組織機構の欠陥を是正しようとするのならば、そのよって立つ思想の本源を糺弾して正道に向はしめなくては駄目であって、一部の革命思想家の考へてゐるやうな一人一殺主義は、かへって新進気鋭の後備軍を前線に続々と誘導して味方を不利に陥らしむるに過ぎないものであることに気付かねばならないのである。
それから、今一つ注意すべきことは、たとへ巷間の流説を妄信して凶暴をあへてした者に対しても、当局は水戸公の精神を以てこれに当るべきものであって、本人の魂を言向和すことをなさず、いささかでも政略を混じてこれを処断することがあつてはならないのである。祖国の非常時局に際して、いはゆる急進派と云はるる人達もまた穏健派と唱ふる人々も、共に国を思ふ赤誠に変りがないのならば、よくよくこの点に留息して、霊主体従の大精神に基脚して皇道維新に邁進すべきものであることを余は強調するのである。