文献名1百千鳥
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3福島夫婦よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ最終更新日2024-10-31 18:51:00
ページ55
目次メモ
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本文
青葉もゆる園部の五月を立ち出でて宣伝のため大阪にくだる
道の辺に若草もゆる小山村老松の並木かげ静かなり
村肝の心は浪速へ鳥羽の里道の広瀬をひた走りゆく
八木福島方
前方にこんもりたてる小北山福島方に立寄りてみし
この家の主福島寅之助何しに来たと面ふくらせり
大本の役員信者をみかぎりて浪速に下ると言へば驚く
ともかくも浪速下りはやめにせよとわれを止むる福島の夫婦
久子の弁舌
福島の久子は弁舌滔滔と口角泡を飛ばして止むる
大神を押しこめなさる先生の浪速下りは失敗と言ふ
布教するあとから邪魔する大本の中にはをらぬと言ひはなちたり
智恵学で道を開こと思うてもあきませぬよと久子が笑ふ
結構な大神様のみ教をわすれたあなたは道のとが人
御開祖の教をあくまで遵奉し綾部に帰れと夫婦が勧むる
綾部にて道ひらかむと思へ共わからずやのみにて手も出されず
何事も神に任して御開祖に心配かけぬが孝行だと言ふ
心配をかける心はなけれども天地の道はなほざりに出来ず
結構な三千世界の大神の側をきらふはよい罰あたり
久子『ほえづらをかはいて帰り失敗の言ひわけたたぬこと出来るぞや』
失敗は覚悟の前とわれ言へば久子は目をむき口を尖らす
竹村や平蔵さんがわからないあなたはあほよと顎しやくる久子
ともかくも今宵一夜は宿泊しわたしの言ふ事きけと勧むる
心ならずも福島夫婦にとめられて小北の山に一夜を泊れり
小北山の月
おそ桜一本匂ふ小北山夕べの嵐に惜しくも散れり
小北山松の木かげに紫のつつじの花は初夏を匂へり
小夜更けを小北の山にのぼりつつつつじに照らふ月を親しむ
十二夜の月は小北の山松にかかりて葉末の露に光れり
小北山尾根に月かげかたむきてわれは静かに床に入りけり
夫婦の祈り
うつらうつらまどろみをれば福島の夫婦は水をあびて祈れり
どうしても浪速下りを止めずば開祖に言ひわけたたぬと祈れり
夫婦らの心をあはれとおもへどもわが決心をとくよしもなし
明日の日は綾部に送り帰さむと夫婦ひそひそささやきてをり
迷信家のむれに再び交はるを恐れてこの家をソツとぬけ出す
裹戸あけ高石垣を辷りおりて尻ひつからげ逃げ出しにけり
やうやくに月山の端に没しつつ暁つぐる鶏の声
虎天の堰関をあとにまつしぐら千原をこえて小川に向へり
福島の追手を恐れ千原より道を転じて灰田に向ふ