文献名1百千鳥
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3浪速の秋よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ最終更新日2024-10-31 18:51:00
ページ235
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本文
没分暁漢の妨害に吾もたへかねて園部に移り大阪に向ふ
大阪と園部を吾は往復し各地に教を伝へてうまず
園部にも百舌鳥のささやき繁くして神の福音聞く耳ふさげり
止むを得ず母弟妹を園部町に残して吾れは浪速に布教す
泥亀の婆婆
天王寺愛染坂の内藤方に居を定めつつ宣伝につとむ
内藤のとなりに住める七十婆婆は泥亀と言ひて亀を売りをり
この婆婆の面を見れば目も鼻も口も全く亀に似てをり
天王寺濠のいし亀夜なよなにとりて泥亀と騙し売るなり
真夜中に婆婆が出て行く後追いて吾れも天王寺境内に入る
幾百の亀の浮べる池の中に玉網入れて亀あさる婆婆
こりや婆さん殺生すなと吾れ言へば人だすけだよかまふなと言ふ
寺の亀盗んでよいかと詰り問へば懲役覚悟と空をうそぶく
この婆さんあげ面しながら内藤の内の居候と顎しやくりをり
人の事かまはずとつとつと馳せ帰り神さんに勉強せよとほざけり
この婆婆の営業さまたげする奴は鬼よ悪魔と婆さんはののしる
ブツブツとつぶやきながらこの婆婆は見るみる亀を篭に満たせり
交番に知らすでないぞと睨みおきて月夜の境内を婆婆帰り行く
亀料理
内藤の家の壁穴ゆのぞきをれば婆婆は亀の料理してをり
亀を料る婆婆の面は忽ちに泥亀のごとくなりてをかしき
亀よ亀泥亀になれ泥亀になれよと言ひつつ婆婆亀を切れり
婆婆よ婆婆亀になれよと穴のぞき笑へば婆さん穴をつめたり
亀婆婆の詰めたる穴を指をもて押せば雑巾はらりとおちたり
このたびは息をこらして穴のぞき亀の料理を床しみ見たりき
さあこれで亡者を騙し金まうけせうかと婆さんはニヤリと笑へり
いやらしく笑へる婆さんの面ざしはますます亀に似てゐたりけり
数年間婆婆が殺せし亀の霊うつりて顔まで亀に似たるか
内紛
製乳の技師なる山田文辰は遂に同志を裹切りにけり
同志なる内藤池川奥村は怒りて文辰に詰問を為す
弟の上田幸吉製乳の技術を覚えて同志を助けし
幸吉の技術に一同安心し山田文辰と手を切りにけり
吾も又見るにたへかね文辰に向つて一言注意をなしたり
吾が注意聞くより文辰怒り立ち拳をふり上げ吾れに向ひ来
まあまあとなだめすかせど文辰は棍棒うちふり尚せまり来る
止むを得ず吾れ文辰が足蹴れば忽ち土間に転落なしけり
神様が人を傷けよきものかと起き上りつつ文辰にらめり
文辰は製乳技師をたてにとりあまたの出資者喰ひつぷしをり