文献名1百千鳥
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3下阪の旅路よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ最終更新日2024-10-31 18:51:00
ページ259
目次メモ
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本文
御開祖に気の毒なれど役員の妨害にたへず綾部を立ち出づ
かぞへ年二才になれる吾が長女朝野はなつきて寸時も放れず
年老いし母と妻子に別れゆく涙の雨に袖しぼりつつ
二銭の旅立ち
断然と心を決し今暫し綾部を去らむと旅装をととのふ
懐中に二銭の旅費を持ちながら草鞋うがちて綾部を立ち去る
小雲川水ゆるやかに流れつつ無心の月を浮べて寒し
十五夜の月照る宵をただ一人須知山峠にさしかかりたり
須知山の狂女
須知山の峠の麓妙見の堂より女の悲鳴聞こえ来
月の夜を幸ひ秋の草分けて森かげに吾そと立ち寄りぬ
よく見れば妙見坊主ただ一人女をしばりて折檻してをり
森蔭の小さき堂の前庭に坊主になぐられ狂女は叫ぶ
須知山の私は狐だ許してと両手を合せ狂女は叫ぶ
又しても人をなやます悪狐殺してしまふと坊主は呶鳴る
坊主『今晩で一週間の御祈祷にまだのきよらぬかしぶとい狐め』
どこまでも妙法蓮華経の功力にて退散さすと坊主威猛る
題目を一つ唱へて一つ打つそのたび狂女はひしり泣くなり
南無妙法蓮華経と蛸坊主如意棒持ちて女の尻たたく
きやあきやあと髪ふり乱し縛られし体をもがく狂女の哀れさ
お前さん狸を使うて人人をなやます坊主と狂女は罵る
坊主らの題目ぐらゐで須知山の狐がのくかと狂女は威猛る
迷信坊主
法力でのかして見せると蛸坊主は眉つり上げて威猛高なり
私『乱暴な事を致してこの女死んだら貴様死刑になるぞや』
森かげの闇にまぎれて惟神神言宣れば狂女は笑ふ
わが祈祷さまたげするは何者と声とがらして坊主は呶鳴る
大阪へ行く道なれば面倒と吾はこの場をひそかに立去る
この坊主迷信深く病人を責めさいなみて遂に殺せり
殺人の罪を裁かれ宮津なる監獄に入りて牢死なしたり
須知山越え
月の照る須知山峠をえちえちと神歌うたひつ一人上れり
十五夜の月は照れども風寒み夜明真近く霜置きにけり
須知山の峠を越えて枯木峠榎峠の頂上に着く
夜の道さかしき峠を三つ越えて吾が足やうやく疲れおぼゆる
三ノ宮保野田を越えて檜山の坂原方に朝を着きたり
役員の追跡
坂原の家にし着けば綾部より四方ら三人吾を待ちをり
をりもあれ咫尺を包む霧の幕を幸ひ裏より逃げ出しにけり
裏口ゆ吾逃げ出せしを知らずして四方ら三人坂原を説けり
坂原は半時なりと暇どらせ吾を遠くに逃がさむとせり
須知水戸観音峠をのり越えて漸く園部の町につきたり
園部支部に帰りて見れば神具みな跡かたもなく消え失せてをり
神殿は如何為せしとたづぬれば浅井の宅にうつせしと言ふ
大阪の黒葛原氏来たり浅井氏と争論の上分離せしといふ
浅井方に吾訪ね行けば神殿のみ何一つさへ残りて居らず
綾部より送り来たりし御神璽も掛軸のこらず売りとばしたり
何人が売り払ひしと調ぶれば八木清吉が屑屋に売り居り
清吉は吾が持物まで売りつくし皆酒にして呑みたりといふ
この男忽ち急病突発し苦しみもだえ神去りにけり
何も彼も売りとばされて是非もなく吾は再び浪速に下れり
とぼとぼと一人浪速に下り行く小山松原に清吉と出逢ふ
清吉は吾を見るより一目散ものをも言はず逃げ去りにけり
浪速の冬
やうやくに大阪内藤方につき市内の布教にいそしみにけり
つぎつぎに陽気下りて冬となれば浪速の街は暖かなりけり
この冬は愛染坂の内藤家に在りて宣伝につとめ居たりぬ
この冬は別に変りし事もなく平安無事に年越えにけり