文献名1百千鳥
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3亀山城跡よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
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データ最終更新日2024-10-31 18:51:00
ページ514
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本文
幸助を伴ひ八木の島を越え千原に進めば知人に逢ひたり
わが知人上田ゑん子は両人の姿を眺め目を丸くせり
上田ゑん子四五人の女伴ひて帝釈山に詣づる道なり
故里の女
いつまでも故郷に親を苦労させ不幸者よとしきりに罵る
行く先を見て下さいとわが言へばゑん子はフフンと鼻で答ふる
ゑん『神様にほうけてゐるより故郷へ帰りて親に孝行しなさい』
王仁『神様にほうけてをらぬ国のため東奔西走して居ますのよ』
ゑん『ソンナ事を言ふて気楽に暮さうとお前は実にずるい人ぞや』
王仁『はるばると帝釈山へ参詣するあなたもほうけりてゐるのぢやないか』
そんな事かまうておくれな左様ならと上田ゑん女は急ぎ出で行く
幸助は歯ぎりを噛んでくやしがり拳振り上げ空をなぐれり
亀山城趾
とぼとぼと行けば亀岡旧城趾狐狸の巣窟なりけり
旧城趾公孫樹のもとに立ち寄れば草ばうばうと虫の音高し
大公孫樹梢に駒鳥数多居てことさやぎつつ秋風わたる
法城を築かむ時はまだ遠し努力せばやと吾れ一人ごつ
独り言聞きて幸助ふき出だし誇大妄想狂よと笑へり
旅費さへも持たぬ身ながら大言を吐く先生と幸助は笑ふ
笑はれて吾れもをかしくなり出し二人樹下にて哄笑をなす
伯母の家
旧城趾叢わけて内丸町の山陰街道に立ち出でにけり
亀岡の西竪町の伯母が家にしばし休らひ茶をよばれたり
茶をすすりあれば吾が伯母そろそろと小言八百言ひ初めたり
わが伯母の小言ひしひし耳痛く逃げるが如く飛び出しにけり
伯母の家に柿は沢山実れども取り食ふひまもなかりけるかな
すき腹をかかへて進む広道の茶店の柿をあがなひて食ふ
三銭の柿に腹をばふくらせつ二人は大枝の坂を越えたり
伏見・宇治
とんとんと足元せはしく進み行けば伏見の里に日は落ちにけり
伏見町安田の家に立ち寄りて茶づけよばれし時のうまさよ
安田家をたち出で進む豊後橋水の流れは泡立ちにけり
宇治川の流れに浮ぶ月かげを眺め入りつつ時を移せり
豊後橋南に渡り宇治川の堤たどりて宇治に向へり
宇治駅の灯はあかあかと野の中に火竜の如く輝きてをり
茨木清次郎方
宇治橋の詰にかかれば元教は信者と共に出迎へてをり
漸くに茨木清次郎方に入り旅の草鞋をぬぎすてにけり
吾れを待ちし数多の信者つぎつぎに訪ね来りて家に満ちたり
神前に祝詞を奏し神界の話あらまし語らひ休らふ
小夜更けて信徒家路に帰りゆきわれはやすやす眠りにつきぬ