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文献名１冬籠
文献名２〔一〕綾部の冬籠よみ（新仮名遣い）
文献名３（二）よみ（新仮名遣い）
著者浅野和三郎
概要
備考
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データ凡例
データ最終更新日2025-01-24 22:22:00
ページ9
目次メモ
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今でも雑誌「神霊界」は皇道大本の純機関雑誌として続刊されて居る。そして今後もまだまだ続刊さるる事と信ずるが、その創立の次第は、ざつと上に述ぶるが如きものであつた。
大正六年から今年に至るまで正に四箇年、この間に世界の大勢も違つて居るが、皇道大本の内部も違つて居る。「神霊界」だけが元の通りで変らぬといふ訳には行かぬ。自分が殆ど独力でその経営に当つたといふのは最初の約一年足らずであつた。その後約半歳目位に内容、体裁、編輯者が変遷を経て今日に及んで居る。
「神霊界」発行の眼目は、いかにして世人をして大本神諭に親ますべきかにあつた。日本人としての最大急務は何よりも先づ神諭を熟読することであると自分は最初から確信した。神諭さへ熟読すれば、その結果日本及び日本人の使命が判り、過去現在未来に亘りての世界の大勢が判り、神と人との関係が判り、人生の意義が判る。最後に何うしても在来の邪念妄想を打葉てて、一意専念君国の為め、又正義人道の為めに献身犠牲の真生涯に突入することとなる。
いかにせん、大本神諭と現代人との間には多大の距離があり過ぎた。第一に現代人士は浅薄なる物質論者の言説にかぶれて霊魂の存在を否定し、まして元の活神の存在に至りては訳も判らず一笑に付したがる。既に無神論者、無霊魂論者である以上は、頭から大本神諭を莫迦にして取りかかるのは当然である。無学なる出口直子刀自の現肉体を認むるのみにて、之に憑依せる国祖の神霊を認め得ない。読んだ上で判らぬといふのならまだ可いが、読まずに判らんのだから始末にいけない。次に現代人士は、一方に於て非常に高慢不遜の態度を執ると同時に、他方に於て極端な卑屈盲従の習癖に陥つて居る。大本神諭の文字用語の通俗にして野趣満々たるは、識者の歓ぶ点であるのだが、少許の学問が鼻につく連中は却つて之を軽蔑する。その癖横文字で書いてでもあると、西洋の人達の唱へる異端邪説をも三拝九拝して鵜呑にする。其心理状態はとても想像の及ぶ限りでない。次に現代人士は余りに物欲にかぶれ、目前の小利小害に捕はれ過ぎて、その日ぐらしが好きである。従つて一路明白に霊主体従の目標を指示するところの大本神諭は余りに高く、余りに清くて、とても実行の出来ない相談位に考へる。次に現代人士の神経は余りに複雑なる事業と、強烈なる刺戟とに銷磨し尽され、従つて紆余曲折を極め、一見雲を掴むが如き謎沢山の神諭を心静かに翫味して見るだけの余裕がない。
斯んな次第であるから、大本神諭を原文の通り、仮名のままで世間に提出して見たところが、到底天下の視聴を勣かすことは出来ない。什麼かして之を読ませる方法はあるまいかといふのが出口先生の多年の苦心焦慮の種であり、又自分とても同様に心を病めた。鎮魂帰神の神法を公開して神霊の実在を体験せしむべく努めたのも之が為め、又言霊の活用を以て本邦古典の真意義を解明すべく努めたのも之が為め、雑誌「神霊界」の刊行も亦之が為めに外ならなかつた。自分は固より辛うじて霊学の一端を噛つた丈、今日とても決して大家を気取り、知つたかぶりをするのでも何んでもない。況んや大正五年六年頃の自分は、今日よりも遥に実験も乏しく、材料も少く、説明も下拙であつたが、二千年に亘りて顕幽交通の途が杜絶えた結果は、当時の自分丈の知識を有つたものすら哲学界にも宗教界にも、何所にもただの一人も見当らなかつた。理窟は甘く並べる、受売りは巧妙だ。書物の上の知識にかけて、到底自分などが脚下にも及ばぬ人が沢山あつた。ただ活きたる神そのもの、個性を具へたる霊魂そのものとの直接交渉を開始して居るものが無かつた。其必然の結果として、言ふ所、説くところが兎角主観的、抽象的で茫漠たるを免れない。就中その実行力がさつぱり無い。口と心と行ひとがまるきり一致しない。口に神力の偉大を説きながら、感冒一つ引いてもモウ医者と薬とを神仏以上に信ずるといふ陋態を演ずる。不敏ながら自分にはそれ丈はなくなつて居た。適不適にかかはらず自分でも衝に当るより他に、人があるまいではないか。
誌上には神諭の原文が掲載された。読み易いやうに仮名に漢字を当嵌めたのと、重複の箇所が省かれたのとより外に、一字一句の修正も施されて居ないことは、真筆と読みくらべたものの熟知するところである。世間には神諭の偽作などと途力もない事を吹聴するものもあるやうだが、為めにする所ある悪霊の囈語で、何等取るには足りない。そんなものは社会人生のバチルスと心得、警戒して感染せぬことだ。神諭以外は主として自分が書いた。神界の組織、神人の関係その他霊学に関する事を記述したのであるが、まるきり門外漢なので何と書いて可いか常に困つた。が一心不乱に鎮魂して、それから筆を執ると奇妙にスラスラと書き下すことが出来た。自分で自分の書いたものを読んで見て、初めて成程と発明する場合も少くなかつた。実際の所を白状すると、自分は大本に入信以来神諭以外の書物は殆ど一冊も読まない。間違つて居やうが居まいが、自分の言説は全部自分自身の内部から湧いたものだ。
大正六年から今年に至るまで正に四箇年、この間に世界の大勢も違つて居るが、皇道大本の内部も違つて居る。「神霊界」だけが元の通りで変らぬといふ訳には行かぬ。自分が殆ど独力でその経営に当つたといふのは最初の約一年足らずであつた。その後約半歳目位に内容、体裁、編輯者が変遷を経て今日に及んで居る。
「神霊界」発行の眼目は、いかにして世人をして大本神諭に親ますべきかにあつた。日本人としての最大急務は何よりも先づ神諭を熟読することであると自分は最初から確信した。神諭さへ熟読すれば、その結果日本及び日本人の使命が判り、過去現在未来に亘りての世界の大勢が判り、神と人との関係が判り、人生の意義が判る。最後に何うしても在来の邪念妄想を打葉てて、一意専念君国の為め、又正義人道の為めに献身犠牲の真生涯に突入することとなる。
いかにせん、大本神諭と現代人との間には多大の距離があり過ぎた。第一に現代人士は浅薄なる物質論者の言説にかぶれて霊魂の存在を否定し、まして元の活神の存在に至りては訳も判らず一笑に付したがる。既に無神論者、無霊魂論者である以上は、頭から大本神諭を莫迦にして取りかかるのは当然である。無学なる出口直子刀自の現肉体を認むるのみにて、之に憑依せる国祖の神霊を認め得ない。読んだ上で判らぬといふのならまだ可いが、読まずに判らんのだから始末にいけない。次に現代人士は、一方に於て非常に高慢不遜の態度を執ると同時に、他方に於て極端な卑屈盲従の習癖に陥つて居る。大本神諭の文字用語の通俗にして野趣満々たるは、識者の歓ぶ点であるのだが、少許の学問が鼻につく連中は却つて之を軽蔑する。その癖横文字で書いてでもあると、西洋の人達の唱へる異端邪説をも三拝九拝して鵜呑にする。其心理状態はとても想像の及ぶ限りでない。次に現代人士は余りに物欲にかぶれ、目前の小利小害に捕はれ過ぎて、その日ぐらしが好きである。従つて一路明白に霊主体従の目標を指示するところの大本神諭は余りに高く、余りに清くて、とても実行の出来ない相談位に考へる。次に現代人士の神経は余りに複雑なる事業と、強烈なる刺戟とに銷磨し尽され、従つて紆余曲折を極め、一見雲を掴むが如き謎沢山の神諭を心静かに翫味して見るだけの余裕がない。
斯んな次第であるから、大本神諭を原文の通り、仮名のままで世間に提出して見たところが、到底天下の視聴を勣かすことは出来ない。什麼かして之を読ませる方法はあるまいかといふのが出口先生の多年の苦心焦慮の種であり、又自分とても同様に心を病めた。鎮魂帰神の神法を公開して神霊の実在を体験せしむべく努めたのも之が為め、又言霊の活用を以て本邦古典の真意義を解明すべく努めたのも之が為め、雑誌「神霊界」の刊行も亦之が為めに外ならなかつた。自分は固より辛うじて霊学の一端を噛つた丈、今日とても決して大家を気取り、知つたかぶりをするのでも何んでもない。況んや大正五年六年頃の自分は、今日よりも遥に実験も乏しく、材料も少く、説明も下拙であつたが、二千年に亘りて顕幽交通の途が杜絶えた結果は、当時の自分丈の知識を有つたものすら哲学界にも宗教界にも、何所にもただの一人も見当らなかつた。理窟は甘く並べる、受売りは巧妙だ。書物の上の知識にかけて、到底自分などが脚下にも及ばぬ人が沢山あつた。ただ活きたる神そのもの、個性を具へたる霊魂そのものとの直接交渉を開始して居るものが無かつた。其必然の結果として、言ふ所、説くところが兎角主観的、抽象的で茫漠たるを免れない。就中その実行力がさつぱり無い。口と心と行ひとがまるきり一致しない。口に神力の偉大を説きながら、感冒一つ引いてもモウ医者と薬とを神仏以上に信ずるといふ陋態を演ずる。不敏ながら自分にはそれ丈はなくなつて居た。適不適にかかはらず自分でも衝に当るより他に、人があるまいではないか。
誌上には神諭の原文が掲載された。読み易いやうに仮名に漢字を当嵌めたのと、重複の箇所が省かれたのとより外に、一字一句の修正も施されて居ないことは、真筆と読みくらべたものの熟知するところである。世間には神諭の偽作などと途力もない事を吹聴するものもあるやうだが、為めにする所ある悪霊の囈語で、何等取るには足りない。そんなものは社会人生のバチルスと心得、警戒して感染せぬことだ。神諭以外は主として自分が書いた。神界の組織、神人の関係その他霊学に関する事を記述したのであるが、まるきり門外漢なので何と書いて可いか常に困つた。が一心不乱に鎮魂して、それから筆を執ると奇妙にスラスラと書き下すことが出来た。自分で自分の書いたものを読んで見て、初めて成程と発明する場合も少くなかつた。実際の所を白状すると、自分は大本に入信以来神諭以外の書物は殆ど一冊も読まない。間違つて居やうが居まいが、自分の言説は全部自分自身の内部から湧いたものだ。
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