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文献名1出口王仁三郎著作集 第2巻 変革と平和
文献名2第2部 社会批判の展開よみ(新仮名遣い)
文献名3世紀末観よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2016-11-25 01:54:08
ページ193 目次メモ
OBC B195302c24
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本文  世界よ何処へ行く。
 全く、世界は何処へ行く!のか。
 仏典将又あらゆる神示に於て示されたる末世は来て居るのであって、所謂、八岐大蛇・醜狐亦は曲鬼.探女の白昼横行の現代は、仁義道徳等は全く忘却されて了って影もなく、暗黒無道の世態は正に常夜の暗と謂わねばなりません。
 人心の荒び、これは全く恐ろしい事でありまして、親子の睨み合い、兄弟の争い、親戚の離反、朋友間の信義の忘却、主僕の疎遠、上と下との反目、意志の疎隔、労資の対峙、或は何、亦は何と、世道の頽廃は実に言語に絶して居ります。人道は今や潰滅して了ったと云わねばなりますまい。
 国家社会は刻々に危機におちいり、あらゆる曲神は此の時と許りの横行振りを発揮して居ります。
 高貴、卑賤のけじめは乱れて仕舞い、富豪家の堕落は、社会を極度に汚し淫酒にふけり、敢て成す事をせず、社会の心臓たるべき都会人は、安逸快楽に馴れ切って奢侈の限りをつくせば、従って純朴の気は田舎から去って仕舞う。国家の中堅で社会の第一線に立つべき青壮年は、此の乱れ切った悪風に眼は眩惑されて了って、争って悪魔のトリコとなり、国内に異邦的精神の発生をみるまでに至り、未来の賢妻良母たるべき子女は、紅白粉を塗り立てて蝶の様な生活に日を過す。全く淫靡の世風は吹き荒んでいると云わねばなりませぬ。
 従って不良青年・少女の続出は益々社会の秩序を混乱せしめ、拾収すべからざる現代と化し果てて了まいました。
 糟糠の妻は家にあって泣き、蓄妾は安逸の日を外に過し、芸娼妓屋の繁昌は、地上に於ける唯一の天国である可き家庭を益々地獄と化せしめて、聖者の遺訓あっても鼻紙程の重きを得られず、法命あっても此の人心を如何ともする事が出来ない。全くなげかわしい事であります。
 人心の堕落はすべてに反映して、経済的の危機も正に来て居るのであって、農業の不振は、商業或は工業に大なる影響を来す事は言を俟つまでもなく、此の世界的の不景気風は、フーヴァ風・犬養風がいくら吹くと云っても、止む事を知らぬものの様であります。
 国家の富が増進したと云って喜んだ時もあったが、然し実際は人々の頭上に饑餓は迫って来ているのであります。
 経済的不備は生産過剰を招いて、物価の凋落は一層世間を不景気に落し、輸入超過につぐ超過で、経済界は赤字亦赤字でありまして、窮乏極に達したの観があります。
 商店は互に謀計を事として、信用等と云うものは其処に微塵も見出すことはできない。
 かくて国庫は正に窮乏して、兌換借款とその行く処を知らず、経済界は益々危くなって来ました。
 人心の悪化・経済界の危機は、人々の生命財産をおびやかす事正に甚大でありまして、法警の完備した現代に益々殺傷行われると云う事は、寒心にたえぬ事であります。
人心の悪化は政界の不完を物語るとみてよく、暴戻の横行に誠の人士は進むの道をうばわれて仕舞い、奸佞邪智の者の天下となって、挽回するのよすがもない娑婆世界になって了いました。
 国家の元老は名のみ希い、己の勢力と配下を持つ事のみに余念なく、政客に正義なく、只政権を弄ぶかの如く見え、我が党擁護が彼等の仕事となったの観があります。
 彼の神聖無垢であるべき我等の議事堂に、あたかも雲助輩の行動を演出するとは、全く慷慨にたえぬ事であります。
 いやしくも国家の選良である彼等は、大切な国議を軽視し侮辱している。そして国帑を只浪費して、民の負担を日に日に重くさせて行くの外何の能事なく、かくて国家破産の緒を開いて行くとは、如何に末世とは云い乍ら歎げかずには居られませぬ。
 医学の完備した世に悪疫の益々蔓延して行く現代であります。
 交通機関の完備して、有無相通ずるの道もない今日です。
 学説出でて益々その偏狭陋劣さを現わし、怪論迷説は世を暗黒に導くのみの現代であります。
 国防成って国辱頻りに我が身辺に興るの時、武人は士道華やかなりし頃の気慨なく、むしろ物質に愛着を感じている現代を思う時、益々世界よ何処へ行くかの感を深く致します。
 人心を天国浄土に導くべき宗教はどうしたのかと、叫ばずには居られませぬ。
 宣教師亦は僧侶は、仏・エホバの教義を曲解し、誤説して、彼等は一生懸命に宗祖の教旨を滅ぼして行くのです。
 そして神仏の道を説く彼等の品行の堕落は、正視する事の出来ぬまでになり、返って精神界を攪乱する事になっています。
 不安の世相は正に頂天に達したの観があり、外侮・国交の非運・思想の悪化と考え到る時、噴火山にあるの思いが致し、此を思い彼を想う時、心配の為め夜も碌々眠られず、涙の顋辺に下るの思いが致します。
 古今未曾有の此の世相に、天神地祇も正に怒られたの観があります。
 台風、時ならぬ雷鳴、頻りに到る水難、亦はおそろしき旱魃、打続く地震、各地に起る大火、正に軍神怒りて、天の賊や地妖を隈無く鏖殺し清め玉う御心を覚らねばなりませぬ。
 然し神は愛であり、慈悲である。神は恵みの主であらせられる。
 神様は聖約された。みろくの下生を、キリストの再臨を。
 即ち神の恵みは、天来未知の大偉人の御力に依って最後の峠を越さしめ、選民を永久に救って下さるのであって、かく五六七の御代と成れば、爰に始めて天国浄土は芽出度地上に顕現するのでありまして、邪神を懲しめ善神を救わせ玉う神様の大なる御経綸──これこそ吾々に賜わった神の御遺訓なのであります。
 が然し、聖訓あれど、世人の心は曇りに曇り、此の神訓神意を解し体するの人士なく、大義を没し、名分を覚らぬ者許りであります。
 茲に於て再び世人を導き救い玉わんと、国祖大神は大本の教を立てられたのでありました。
 かくて真人の生れ来りなば、神は御喜びなされて、自然に天地清まり、五風十雨の順序も正しく、神の国は到来するのであります。
 アア五逆十悪の濁世を、誠の神の現れまして治め玉わるの時はいつか、松間の長き鶴の首、亀の齢の常永に守らせ玉えと祈り奉るのみであります。
「昭和青年」昭和七年四月号
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